第378話 新スキルと特殊アイテム
シグニスに依頼していた黄大河の原水を無事入手したライト。
早速その日の夜、カタポレンの森の家の自室でイベントクエストのページを開いていた。
クエストイベントの最新ページである7ページ目は、現在次のようになっている。
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★小人族の危機に備えよ act.4【アンチドートキャンディ】を作ろう!★
〔アンチドートキャンディ 原材料〕
【31.毒茨の球根10個 報酬:スキル書【解体新書】 進捗度:10/10】
【32.濃縮イノセントポーション1個 報酬:グランドポーションレシピ 進捗度:1/1】
【33.黄大河の原水3個 報酬:エネルギードリンク1ダース 進捗度:0/3】
【34.濃縮セラフィックエーテル1個 報酬:コズミックエーテルレシピ 進捗度:1/1】
【35.紫のねばねば1個 報酬:解体千本刀 進捗度:1/1】
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まずは黄大河の原水が満杯に詰められた十本のポーション瓶。これを他の素材類と同様に、マイページ内のアイテム欄に一旦収納する。そうしないとクエストイベントの進捗度にカウントされないからだ。
アイテム欄に収納した瓶は『黄大河の原水十個』として無事カウントされ、7ページ目の全てのクエストを達成した。
No.33の報酬も無事受け取りを済ませ、後は最後の仕上げであるアンチドートキャンディのレシピ作成を残すのみである。
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ちなみにクエストNo.31のスキル書【解体新書】とNo.35の『解体千本刀』は、双方ともに早々に素材が確保できたのでサクッと報酬を受け取って日々研究し、その効果の程もある程度は解明してある。
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【解体新書】
SPとMPを使うことにより、魔物を解体して素材に分ける。
スキル専用の特殊アイテム『解体千本刀』と合わせて使用することで、魔物をより素早く解体することができる。
スキルレベルが上がることにより、解体速度が早くなり素材の品質も向上する。
使用SP:1 使用MP:50 (解体千本刀使用時)
使用SP:2 使用MP:100 (解体千本刀非使用時)
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【解体千本刀】
千本の刃で魔物の身体を切り刻み、その全てを余すことなく素材として解体する。
スキル【解体新書】専用特殊アイテム。
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この二つの報酬内容を知った時のライトは、それはもう飛び上がらんばかりに喜んだ。
「え、何、これあれば魔物の解体が超捗るってこと?」
「そしたらこの先、子供の俺一人じゃとても解体できんようなデカブツでも、仕留めさえすれば素材取れるってことだよね?」
「やったぁ!生産職スキル、バンザーーーイ!」
そう、今のライトが最も苦労するのは魔物を狩ることではない。狩った後の素材の確保、つまりはその解体作業だ。
デッドリーソーンローズなどの植物系や暗黒茸くらいまでなら、今のライトでも何とか扱うことができる。だが、それよりもっと大きい魔物となると厳しいのが実情である。
蒼原蜂くらいの昆虫系ならまだいいが、狗狼などの動物系になるとさらに解体の難易度が高くなる。
皮を剥いだり腑分けしたり、骨や牙、眼球なども取り分けねばならない。想像するだけでもスプラッター場面満載間違いなしの、壮絶にキツい作業になる。
だが、今回得た生産職用スキル【解体新書】があれば、そうしたオロロロロ……な場面もかなり軽減されるはずだ。
報酬を得てすぐにスキル書を使用して読み込み、以前セラフィックエーテルのレシピ作成のために解体したことのある暗黒茸を【解体新書】で解体してみることにしたライト。
前回の解体は完全手動で、一体につき十分くらいかかった覚えがある。その時に比べ、スキルでの解体成果はかなりのものだった。
カタポレンの家の裏側にある、解体作業場の机で実践してみたのだが、【解体新書】スキルを発動すると『解体千本刀』を持つ手や身体が勝手に動き、机の上の暗黒茸をスパスパと綺麗に捌いていくのだ。
暗黒茸の他にも、いくつかの雑魚魔物を用いて検証するライト。それらは以前、大珠奇魂の素材集めのために出向いた朝靄の平原に向かう道中でレオニスが蹴散らしたものだ。
その時のお目当てだった蒼原蜂は全てレオニスが持っていったが、他の雑魚魔物は全てライトのアイテムリュックに収納していたのである。
幻の鉱山同様、ここでもライトの『もったいない精神』が大いに役に立った形だ。ビバもったいない精神!
そして、複数の魔物で何度か【解体新書】を繰り返し実行した結果、このスキルの特性がいくつか判明している。
『血液や花粉などの溢れたり飛び散りやすいものは、他のものと混ざらないように空中で一ヶ所に固まって集められる』
『集められた液体や粉類は、ポーション瓶などの空き容器を接触させると容器に収納される』
『内臓類も空中で一ヶ所に集められ、解体終了後に取捨選択可能』
『利き手に何らかの刃物を所持していないと、スキルボタンを押しても発動しない』
『解体千本刀以外の刃物でも解体は可能。ただし、手に持つ刃物の切れ味によって作業時間や素材の品質は大きく変わる』
『【解体新書】で得た素材類は、全てマイページのアイテム欄に収納できる』
などである。
さすがにゲームや手品のように、解体過程を丸ごとショートカットすることはできないようだ。だが、ライトにとっては熟練職人のように身体が動いて捌けるようになるだけでも十分御の字である。
ちなみに暗黒茸は一体解体するのに一分、昆虫類イモムシ系のグラスセンティピードで三分、鳥類鷹系のメドウウィングで四分だった。
これも【解体新書】のスキルレベルが上がればもっと早くなるだろう。
解体スキルレベルアップのために、これまでアイテムリュックに入れっぱなしだった雑魚魔物の解体を進めていこう!と張り切るライトだった。
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さてここからはクエストイベント7ページ目の仕上げ、アンチドートキャンディのレシピ作成である。
五つのお題で集めた素材を【遠心分離】スキルの半透明の器に全て入れる。
ちなみに今回の紫のねばねばも、スライム飼育場にて購入した『紫のねばねばの源』を適量の水で溶いて練り上げたものを事前に用意してある。
この遠心分離の器もまた以前より少し大きくなり、ライトの両腕を広げた幅より若干大きく成長した。これなら地虫の大顎なども細かく砕かずにそのまま入れられそうだ。
材料を全て投入すれば、後は【遠心分離】のスキルボタンを押すだけだ。
だが、ここで思わぬことが起こる。
「……?? あれぇー、これはキャンディじゃなくね?」
「んーと、えーと、これは……そう、水飴!」
そう、今までのレシピアイテムと違ってキャンディ=飴玉状態にするには、かなり水分を飛ばさなければならない。
原材料五種類のうちの三つが液体なので、一回の遠心分離では水分を絞りきれなかったようだ。
広義的に考えれば水飴も飴には違いないが、キャンディとは言えないのでこれでは完成には至らない。
「んー、これはあと二回か三回くらい遠心分離にかけなきゃなんないかな」
「とりあえず、少しづつ様子を見ながらやってみるか」
ライトはその後【遠心分離】スキルを一回かける毎に水分だけを取り除き、慎重に観察していく。
その結果、三回目にしてようやく丸いキャンディ状のアイテムが出来上がった。
それは紫のねばねばをより濃くしたような色合いの、コロンとしたまん丸の可愛らしい物体。お味は紫のねばねば準拠のブドウ味だろうか?
出来上がった品をアイテム欄に収納すると『アンチドートキャンディ 1個』という表示が出てきた。
念には念を入れて、キャンディをアイテム欄から再び取り出し【詳細鑑定】をかけてみる。
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【アンチドートキャンディ】
身体に受けた毒を中和させる効果がある飴。効果は約一時間。
大抵の毒はこの飴を舐めれば解毒可能。
ただし、特定の解毒剤しか効かない特殊な毒には対応できない。
その場合でもアイテム使用後一時間は毒性を抑えることができる。
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「おおお、間違いなくアンチドートキャンディだぁ……」
「しかし、毒なら何でも治せる訳じゃないのね。……でもまぁよくよく考えればそうだよね、一口に毒と言っても強弱や特殊ケースだってあるだろうし」
このアンチドートキャンディというアイテム、意外なことに全ての毒に効くという訳ではないらしい。
しかし大抵の毒には効くようだし、もし万が一完治に至らない特殊な毒を受けた場合でも一時的に毒性を抑えることは可能なので、毒という状態異常に対してかなり有用性の高いアイテムであることは間違いない。
アイテム欄と詳細鑑定のダブルチェックで確認したライト、何はともあれレシピ作成成功だ。
「はい!アンチドートキャンディの、完成でーーーッす!!」
「さ、次の8ページ目にいくぞー!」
久しぶりのクエストクリアの達成感を味わうライトだった。
52話ぶりにクエストイベントが進みました。
作中では7ページ目に突入してから17日後、約半月でのクリアですが。作者時間では52日ぶり=二ヶ月弱という亀の歩みの如き鈍足ぶりよ_| ̄|●
でもまぁこのクエストイベントをクリアしていくことで、ライトは様々なスキルやアイテムを得ていきます。それだけではなく、必要な素材がどこに棲息しているかという地理的勉強や魔物の特性を理解することにも役立ちます。
それらは将来立派な冒険者になりたいライトにとって、全てが己の成長に欠かせない大事な要素なのです。
【追記】
アンチドート、『麻痺回復』ではなく『解毒』でした……クエストイベント関連の過去回サルベージで発覚。
アンチドートキャンディ初出の第193話ではちゃんとしてたのに!パラリシスの麻痺と一体いつ、どこで、どうしてまるっと取り違えてしまったのだ!?うおおおお、こっ恥ずかしいいいい!><
↑上記理由により、投稿後数時間後に結構な修正をせねばならぬ羽目になりました。作者の黒歴史がひとつ増えた! ←嬉しくない




