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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
森の友

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第30話 冒険者仲間

「ちょっと、レオ兄ちゃん!すっごく高価な本なんだから、もっと丁寧に扱ってよぅ!」

「空間魔法陣に適当に仕舞ってるだけだぞ?」

「だからって!ポイポイ投げるように入れないで!もっと優しく出し入れして!」

「空間魔法陣の中に入れても、他の物と混ざったり汚れたりも全然しないぞ?」

「それでも!ダメなものはダメ!これは、気分的な問題なの!」

「うーん、ライトは神経質だな……」


 スレイド書肆にて20万と1000Gで購入した8冊の書籍の扱いを巡る、ライトとレオニスの闘い(やりとり)である。

 食糧を入れる時と全く変わらず、本をひょいひょいと空間魔法陣に放り込むレオニスと、その様子を見て慌てて制しながらプンスコ怒るライト。

 二人の横で、グライフがしたり顔でうんうんと頷いている。


「そうですよ、ライトさんの言う通りです。レオニス、いくら破損しないからって、ぞんざいに扱っていいということにはなりませんよ?本は大事に扱うものです」

「ほらー!本のプロであるグライフさんも、そう言ってるでしょ!」

「ぐぬぬぬぬ……」


 二人に責められて、レオニスは後ずさる。


「レオ兄ちゃんだって、ぼくがレオ兄ちゃんからもらったものをそこら辺にポイポイ放り投げてたら、悲しくならないの?壊れたり汚れたりしないからって、適当な扱いしてても平気なの?」

「ゔッ……それは……ちょっと、悲しく、なる、かも……」

「でしょ?だったらレオ兄ちゃんも、これからは物を大事に扱ってね?」

「うん、分かった……」

「本だけでなく、食べ物とか服とか装備とか、全てにおいて、だよ?」

「はい……」


 困ったような顔で諭すライトと、しゅんとしょぼくれるレオニス。幼い7歳児に優しく諭される24歳児、の図である。

 二人の姿を見て、グライフはくすくすと笑いだした。


「全く……天下の金剛級冒険者も、ライトさんにかかれば形無しですね」

「ゔゔッ……言うな、グライフ。ライトはグランの兄貴の子なんだ。ライトに文句言われると、グランの兄貴やレミ姉に怒られてるような気分になるんだ……」

「ああ、ライトさんはあのお二人のお子でしたか。それならライトさんが聡明なのも、レオニスが弱いのも頷けますね」


 グライフは納得といった顔つきを、レオニスはバツが悪そうな顔をしている。

 ライトはグライフに向き直って話しかけた。


「グライフさん。ぼくのことは、ライトと呼び捨てにしてください。見ての通り、ぼくはまだ子供ですし、グライフさんの方がずっと年上ですから」

「おや、お客様に気を遣わせてしまうとは。申し訳ございません」

「いいえ、ぼくは王侯貴族でも何でもない、ただの平民です。それなのに、ぼくよりずっと年上のグライフさんから、名前をさん付けで呼ばれる方が、絶対におかしいですし」

「そうですか。では私のことも、是非ともグライフとお呼びください」

「えッ、そんな訳には……」

「いいえ、貴方はレオニスが大切に思い、大事に育てているお子です。その上、レオニスが尊敬して止まないグランさんとレミさんのお子ならば、私にとっても大事な仲間です」


 ライトはグライフから思わぬ言葉と提案をかけられ、少しびっくりした。


「今日初めて会ったばかりのぼくを、仲間と思ってくださる、んですか?」

「ええ、もちろんですとも。だって貴方も、いずれは冒険者を目指すのでしょう?」

「はい!父さんやレオ兄ちゃんのような、強くて立派な冒険者になりたいです!」

「ならば、元冒険者である私とも、仲間になっていただけますか?」


 胸に手を当てながら、優しい眼差しでライトを見つめるグライフ。

 一貫して崩さない紳士然とした優雅な所作と、その柔らかい笑顔にライトは破顔した。


「……!グライフさん、いえ、グライフ、ありがとう!!」

「これからもよろしくお願いいたしますね、ライト」

「はい!こちらこそ!」


 固く握手を交わす二人の姿を見て、レオニスは嬉しそうに微笑む。

 ライトとレオニスは店の外に出る。グライフも二人を見送るために、店の扉の前までいっしょに外に出た。


「そういえば、グライフはぼくの父さんや母さんのことを、知っているんですか?」

「ええ。貴方の父グランとは、何度かいっしょにパーティーを組んだこともあります。レミさんは、グランの家にお邪魔した時にお会いした程度ですが。いつも笑顔を絶やさない、優しくて穏やかな女性でしたよ」

「そうですか……また今度、父さんや母さんのお話を聞いてもいいですか?」

「もちろんいいですよ。レオニスほど話すネタはないと思いますが、私個人のささやかな思い出でよろしければいつでも」

「ありがとうございます!」


 ライトにとって、両親の昔話を聞けるのはグライフが二人目だ。

 もう既にこの世にいない両親のことを、今でも覚えてくれている人がいる。そのことが、ライトにはとても嬉しかった。


「今日は、いろいろとお世話になりました。とても楽しかったです!また、近いうちに来ますね!」

「はい、いつでもお越しください。またのご来店、心よりお待ちしております」

「グライフ、また冒険者に戻る時には真っ先に俺に声かけろよ?」

「ええ、万が一にもそんな時が来ましたら、ね。レオニスも、その時まで死んだり大怪我しないように、くれぐれも注意してくださいね」

「ちょ、おま、何つー不吉なフラグを……」


 三人は、別れを惜しむように言葉を交わす。

 その中に、何やら危険なフラグが見え隠れしているが。

 フラグなんて、気にした方が負けだ!キニシナイ!


「冒険者とは、常に死と隣り合わせの危険な職業ですからね。如何に金剛級の貴方とて、それは例外ではありません」

「ま、そりゃそうなんだがな……」

「貴方とて、ライトを残してどうにかなる訳にはいかないでしょう?」

「当ッたり前だ!俺はライトの嫁と子供と孫を見るまでは、何が何でも死ねん!!」


 ……ん?何やらレオニスがまたおかしな寝言を紡ぎだしたようだ。


「レオ兄ちゃん、ぼくの孫が生まれるのって、それ、何年後?その頃にはレオ兄ちゃん、歳いくつ……?」

「俺はあと100年くらいは余裕で生きられるぞ!」

「んー、確かにレオ兄ちゃんなら、それくらい平気でやってのけそうではあるけども……」

「だろ?この俺様に、できないことなどなーい!」


 シャチホコかエビ反りかってくらいに、えっへん!と得意気にふんぞり返るレオニス。

 そんな能天気なレオニスに、ライトは小さくため息をつきながら無慈悲な打撃を与える。


「でもさ、レオ兄ちゃん。ぼくのお嫁さんとか、子供や孫とかの前にさ……」

「前に??」

「……レオ兄ちゃんのお嫁さんとか、子供とかのが先、じゃないの……?」


 店の外には、雲一つない澄み切った青空が晴れ渡っているというのに―――レオニスの元に、容赦なく数多の落雷が迸る。

 その場に膝から崩れ落ち、打ちひしがれるレオニスを憐憫の目で見つめる、ライトとグライフ。


「レオ兄ちゃんって、ものすごくカッコいいし、見た目だけじゃなくて、お金、地位、名誉、実力、本当に全てが揃っている、正真正銘の最優良物件なのに……」

「そうなんですよねぇ。彼、昔っからこんななんですよねぇ……」

「何でなんだろう、女性から全くモテない、訳じゃない、ですよね?」

「ま、レオニスにはレオニスの事情があるのでしょう……優しく見守ってあげるのも仲間の務めというものです」

「そうですね……」


 ライトとグライフの、仲間意識や親密度が上がった瞬間だった。

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― 新着の感想 ―
長文の返信ありがとうございます。ですが私が言いたいこととずれています。結局は「なぜ異世界の人が知らない言葉や慣用句を言っているのか」と言う違和感は残ります。それはせっかく作った物語の世界観を汚すことに…
フラグってのはプログラミング用語だから、この世界の住人が使ってるのは違和感しかないですね。主人公が使う分には問題無いでしょうけど
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