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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
師走は大忙し

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第289話 受付嬢クレサ

 翼竜牧場で念願の素材、ビッグワームの大顎を無事入手したライト。

 ラグナロッツァの屋敷でひと休み後、転移門でプロステスに移動するため冒険者ギルド総本部に来ていた。


「クレナさん、こんにちはー」

「ライト君、こんにちは」


 にこやかな笑顔で挨拶を交わす、ライトとクレナ。


「今日はプロステスに行くご予定でしたか?」

「はい。同級生のハリエットさんの伯父さんがプロステスの領主だそうで、ハリエットさんが冬休みをそちらで過ごすということでアップルパイを届けに行くんです」

「ああ、ウォーベック家のご令嬢ですね。確かにプロステスはウォーベック家の本家が治める都市ですが……わざわざプロステスまでアップルパイをお届けに行くんですか?」

「えーと、友達のハリエットさんからのお願いってのもあるんですが……今日はレオ兄ちゃんもプロステスでお仕事してるんで、それもあって時間を合わせて行くことにしたんです」


 ライトがプロステスに行く理由を話す。

 クレナは冒険者ギルドの受付嬢をしているだけあって、他の地域の領主のことなども知っていた。やはり各地の基本情報くらい知っていなければ、冒険者ギルドの受付嬢は務まらないのだろう。


「そうでしたか。レオニスさんも年の瀬ギリギリまでお仕事とは、大変ですねぇ」

「いやいや、クレナさんだってこうして受付嬢のお仕事してるじゃないですか。いつも本当にお疲れさまです」

「あらまぁ、お気遣いいただきありがとうございますぅ。そんなことを言ってくれるのは、ライト君くらいですよぅ」


 クレナはライトのプロステス行きの理由に納得しながら、レオニスの働きぶりに感嘆する。

 そういうクレナも今こうして目の前で仕事をしているのだが、それをライトに労われると嬉しそうに微笑んだ。


 そして、ライトが今最も気になる質問をクレナにしてみた。


「ところで、プロステスにもクレナさんの姉妹のどなたかが受付嬢をしているんですか?」

「ええ、プロステスには三女のクレサが受付嬢として勤務しております」

「三女のクレサさん……クレナさんにとってお姉さんですね。どんなお姉さんなんですか?」

「そうですねぇ……一言で言えば『超絶有能な働き者!』という感じですかねぇ?」


 ライトの予想通り、プロステスにもクレア十二姉妹が受付嬢として勤めているようだ。

 その三女クレサを五女クレナが評すると、何でもものすごく有能な働き者らしい。


「クレナさんも十分有能な働き者ですけど、そのクレナさんが絶賛するくらいにすごいんですか?」

「ええ。プロステスは商業都市と呼ばれるくらいですからね。物流の多さはもとより、その流れに惹かれて人の出入りもとても多いんです。それはもうたくさんの人々が集まる都市なんですよ」

「あー、それなら確かに冒険者ギルドもとても忙しそうですねぇ」

「商隊の護衛や素材採取の依頼、街の清掃業務に店の売り子兼用心棒、なんて仕事も常時たくさん募集されていますからね。依頼の募集規模で言えば、このラグナロッツァと比肩するかもしれませんね」

「そんなにすごいんですかぁ……」


 確かにプロステスには『商業都市』という二つ名のような肩書がついているくらいだ。その名に相応しいだけの物流や人の出入りの多さがあるのだろう。


「ラグナロッツァに負けないくらいに繁盛している都市ですので、お店や露店なんかもいっぱいありますよ」

「そうなんですか?それは楽しみだなぁ!」

「クレサに美味しいお店を聞くのも手かと」

「はい!プロステスに行ったらクレサさんに聞いてみます!……あ、これ本日の通行料です」

「いつもご利用ありがとうございますぅ♪」


 クレナのアドバイスに、ライトも嬉しそうに返事を返す。

 そして冒険者ギルドの転移門の使用料として、小さな魔石を一つクレナに手渡す。


「では、いってきまーす!」

「どうぞお気をつけてー」


 クレナに見送られながら、ライトは転移門のある部屋に向かいプロステスに移動した。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 冒険者ギルドプロステス支部に移動したライト。

 転移門のある部屋から、受付のある広間があるであろう賑やかな音の聞こえる方に歩いていく。

 広間に出ると、そこはラグナロッツァに負けず劣らずたくさんの人々が集う空間だった。


 うわぁ、すごいなぁ……と圧倒されつつも、窓口があると思しき人の多い場所に向かって進んでいくライト。

 何でこんな小さな子供が冒険者ギルドにいるんだ?という冷ややかな視線が全くない訳ではない。

 だが、このサイサクス世界では10歳になれば冒険者登録ができることになっている。体格によっては8歳も10歳も大差ないのだ。

 現にライトより少し上程度の、かなり年若く見える少年少女のグループなどもちらほらと見受けられる。


 そして、ラグナロッツァのように複数ある窓口の中で、一番人集りがある窓口に並ぶライト。

 並んでいた人がどんどん捌けていき、程なくしてライトの番になった。


「次の方、どうぞ」


 読みが見事に当たり、お目当ての受付嬢がいる窓口を引き当てたライト。

 その愛らしくも可憐な声は、ディーノ村を始めとしてラグナロッツァやツェリザークでも幾度となく聞いてきたものと全く同じ声だ。


「本日はどのようなご用件でしょうか?」


 ライトの目の前にはクレア十二姉妹の三女、クレサがにこやかな笑顔で座っていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 淡いラベンダーの髪に四角く薄い眼鏡、全周フリルがあしらわれたラベンダー色のベレー帽にワンピース。

 どこを見てもラベンダー色が必ず目に入る、クレア十二姉妹の出で立ちそのものだ。


 はー、やっぱりここでも全く同じ衣装なんだなぁ。服だけじゃなくて、眼鏡も髪型も体型も全ーーー部同じだし……これもはやお揃いとかいうレベルじゃないよね?マジでコピペかクローンかってくらいに区別できんわぁ……などとライトは考えつつ、早速クレサに話しかける。


「えーと、ぼくはディーノ村のライトと言います!」

「まぁ、ディーノ村ですか。クレア姉さんの勤めるところですね。遠路はるばるようこそいらっしゃいました」

「今はラグーン学園に通うために、ラグナロッツァに住んでいます。冒険者ギルド総本部のクレナさんにも、いつもお世話になってます!」

「ああ、出身がディーノ村で首都ラグナロッツァにお住まいなのですね。申し遅れました、私はクレサと申します。クレナもラグナロッツァで頑張っているようで何よりです」


 自己紹介も兼ねて、当たり障りのない世間話的な会話をしていくライト。


「ところでクレサさんは、レオニス・フィアという人をご存知ですか?」

「レオニスさんですか?ええ、それはもちろん知ってますよ。冒険者ギルドでその名を知らない人などおりません」

「ぼく、そのレオ兄ちゃんといっしょに暮らしてまして」

「……ああ!レオニスさんの養い子さんですか!お噂はかねがね姉や妹から聞いております!」


 ここでも『レオニスの養い子』と呼ばれるライト。まぁ紛うことなき事実なので、否定のしようもない。


「今日はレオ兄ちゃんがプロステスで仕事に来てて、お昼にこの冒険者ギルドプロステス支部で落ち合おう、ということで来ました」

「ああ、そういえば朝早くにレオニスさんがこちらにいらしてましたね」

「はい。午前中には仕事を終えて、ぼくといっしょにプロステスの領主様のところに行くんです」

「ウォーベック家のお屋敷に行くんですか?」


 ライトの話に、クレサが少しだけ驚いた顔をした。


「ぼくの同級生の伯父さんが、プロステスの領主様だそうで。そのお土産に是非ともうちの執事のアップルパイが欲しい、と言われまして」

「まぁ、領主も務めるウォーベック家のご令嬢が所望なさるアップルパイですか?それはさぞかし絶品なんでしょうねぇ」

「そりゃもちろん!ですが、今日ぼくがこのプロステスに来たのは、実は他の目的もありまして……」

「その目的とは何でしょう?」


 にこやかに話していたライト、突然何やら真剣な顔つきになる。

 それにつられてか、クレサも思わず引き込まれるように問い返した。


「……商業都市と呼ばれるプロステスに、一度来てみたかったんです!」

「大きな都市なら、美味しいものや珍しいものとかたくさんありそうなので!」

「で、ラグナロッツァのクレナさんからもクレサさんに美味しいお店を聞くのも手だ、と言われまして。これからレオ兄ちゃんとお昼ご飯食べに行くので、クレサさんオススメのお店があったら教えてください!」


 真剣な顔つきから一転、再びにこやかな笑顔で元気に語るライト。

 もちろん真の目的である『プロステス領主の極秘調査』のことは(おくび)にも出さない。あくまでも同級生の家に遊びに来たついでにプロステス観光もしていきたい、という体だ。


 その様子にクレサも若干拍子抜けしながらも笑顔に戻り、ベレー帽から華麗な動作でスチャッ!とメモ帳とペンを取り出した。

 あッ、クレサさんもそこにメモ帳とペンを入れてんだ……もしかしてこれ、クレア十二姉妹のデフォルト装備品なの?でもって収納は絶対にそのベレー帽内なの?

 ライトがそんなことを考えてるうちに、店名や地図などをスラスラと書き記し終えたクレサがメモを切り取りライトに渡した。


「こちらが私のオススメのお店です。よろしければ是非とも行ってみてください」

「ありがとうございます!あ、あとですね、こんな雑談ばかりじゃ申し訳ないんで。一応ギルドにお願い事がありまして」

「はい、何でしょう?」

「多分夕方過ぎとかになると思うんですけど。レオ兄ちゃんといっしょにラグナロッツァに帰るために、また転移門を使わせていただきたいんですが。あ、通行料はレオ兄ちゃんとぼくの二人分を先払いで、これでいいですか?」


 最後の最後に、冒険者ギルドの窓口に相談すべき事柄を伝えるライト。確かにそれまでの雑談だけならば、業務妨害と思われて糾弾されても致し方ないところだ。

 その糾弾を免れるため、という訳ではないが、帰り道の転移門利用を先に伝えておけば帰路もスムーズになるというものだ。

 ライトは小さな魔石を取り出してクレサに渡し、クレサはその魔石を確認した後返事をした。


「はい、十分です。お帰りの際には、また職員にお声掛けくださいね。その時間に私がいれば、この窓口にて私が対応させていただきますので」

「分かりました!では、レオ兄ちゃんが来るまでこのプロステス支部の見学をさせてもらいますね!」

「ええ、どうぞお好きなだけ見ていってくださいね」


 用事を一通り済ませたライトは、早速依頼が貼られてあるボードなどを見て回っていた。

 クレア十二姉妹の四人目、クレサの登場です。

 商業都市というだけあって、プロステスもかなり賑やかな街です。そこを取り仕切る冒険者ギルドの受付嬢ともなれば、ラグナロッツァのクレナ同様相当のやり手で事務処理能力もかなり高くなければ務まりません。


 ……って、こんなこと書くと『閑古鳥パラダイスであるディーノ村のクレアはどうなるの?』と思われてしまいそうですが。

 クレアは十二姉妹の一番上のお姉さんにして間違いなく超絶有能な、元祖『何でもできるスーパーウルトラファンタスティックパーフェクトレディー!』です。

 そんなクレアがディーノ村にいるのは、きっとそれなりの理由があるのです!……多分。

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