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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
八咫烏の里

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第274話 カルチャーショックと可愛いおねだり

「さあ、そしたら今度は人里の美味しいものを食べましょう!これもレオニスさんのご厚意で、たくさん持たせていただいたんですよ!ラウル、出してもらえる?」

「おう、任せとけ」


 マキシに頼まれたラウルが空間魔法陣を開き、皆の前に料理が乗った皿を次々と出しては手際良く置いていく。

 置き場所は鳥の巣の縁というなかなかにスリリングな図だが、この議場は巣が密着しているので巣同士の縁が隣接していて案外物が置きやすい。

 そして料理の方も、一口サイズに丸めた揚げドーナツや小さくカットされたアップルパイ、エビルバードのサイコロカットステーキ等々、様々な種類の料理が並ぶ。

 それらはウルス達八咫烏にもその姿のままで食べやすいように、というマキシの事前のリクエストにより作られた、心遣いに満ちたラウル特製料理である。


 普段の八咫烏達の食事がどのようなものなのかは分からないが、ウルス達は興味半分不安半分といった様子でラウルの出した食事を繁繁と眺める。

 だがそれら全て、彼らと同じ八咫烏であるマキシが普段から大絶賛とともに食べているものなのだ。ウルス達にとっても毒であるはずがない。

 マキシはそれを証明するために、出されたものを一つづつ食べていく。いわば自ら毒見役を率先しているのである。


「ンーーーッ!ラウルの作る料理は本当に、いつもどれもすっごく美味しい!」

「んなもん当たり前だ。俺様の作る料理に不味いものなどあり得ん」

「うん、それはもう十二分に分かってるんだけどさ?それでもやっぱり美味しいと言わずにはいられないんだ!」

「……まぁな、そうやって素直に美味しいと言ってもらえれば、俺としても料理の作り甲斐があるってもんだけどな」


 料理を頬張りながらその美味しさを心から絶賛するマキシに、その賞賛を少しだけ赤面しながらも嬉しそうに受け止めるラウル。

 そんなマキシ達の微笑ましいやり取りを見ていた八咫烏達の中で、真っ先に翼を伸ばして土産の料理を食べた者。

 それは誰あろう、マキシの双子の妹ミサキであった。


「……何これ!すっごく美味しい!」


 先程マキシから土産にもらった、ファイヤーオパール付きのミニティアラを頭にちょこんと乗せたミサキ。

 まず一口目に選んだ揚げドーナツの美味しさに驚きの声を上げたミサキは、他の料理にも次々と翼を伸ばしていく。


「これも美味しい!あっ、こっちも美味しい!いやーん、どれもこれも全部美味しいなんてー!」

「ていうか、美味しい以外の言葉が出てこないー!」

「ねぇねぇ、これ全部ラウルちゃんが作ったの!?すごーい!ラウルちゃんって天才なんだね!」

「マキシ兄ちゃん、こんなに美味しいものをお外で食べていたの!?」


 ミサキが怒涛の勢いでラウルの料理を食べては、その都度絶賛していく。料理を頬張りながらあちこちの皿に翼を伸ばしてはモリモリと食べ続け、忙しなく動き回るミサキのきゃわきゃわとした姿が何とも愛くるしい。

 それまで躊躇していたウルス達も、ミサキの楽しげな様子に後押しを得たのか皆その翼を伸ばして料理を口にしていく。


「……!!」

「これは……初めて口にする味だが……」

「何という極上の味……」

「人族は、いつもこのような食事を摂っているのか……!」


 皆一様にその味に衝撃を受けているようだ。

 もっとも、人族ならば皆が皆ラウルクラスの料理を毎日食べているという訳ではないのだが。

 だがしかし、そうした多少の誇張や拡大解釈はあっても、人族の食事とは栄養面だけでなく美味しさを追求したものであることは間違いない。


 土産として出された数々の料理が美味であることを知った八咫烏達は、皆だんだんと夢中になりながら食べていく。

 程なくして、数多の料理は見事に全て完食されていった。


「ふぅ……少しだけ味見するつもりが、だいぶ馳走になってしまった」

「……思えば私達、他の種族がどのような食事を摂っているかなんて、一度も考えたことなかったわね」

「いや、それは食事のことだけではなく、文化も生活習慣も……何一つ知らぬ」

「本当に私達は、外のことを何一つ知ろうとしてきませんでしたね……」


 楽しい食事が一転、またも反省会になってしまう八咫烏達。

 これも賢く生真面目な一族故の性なのだろうか。

 とはいえ、実際彼らにとってこの食事会?は楽しいとか楽しむ以前に衝撃の方が強かったのだ。いわゆる『カルチャーショック』という類いの体験である。


 だが、そんな反省会的な空気も何のその、我が道を行くミサキだけは明るい声でマキシ達に礼を言った。


「マキシ兄ちゃん、素敵なお土産たくさんありがとう!」

「ラウルちゃんも、私達のために美味しい食べ物をたくさん作ってくれてありがとう!」

「ライトちゃんも、マキシ兄ちゃんを助けてくれてありがとう!」

「本当に、本当にありがとうね!ワタシ、元気になったマキシ兄ちゃんと会えて本当に……本当に嬉しい」


 マキシだけでなく、ラウルやライトにもお礼を言うことを忘れないミサキ。

 ここにもミサキの真っ直ぐで誠実な本質が伺える。

 そしてお礼を言ううちに嬉しさの気持ちが溢れてきたのか、その眦にじわりと感涙を浮かべるミサキ。


『マキシ兄ちゃんだっていつかは魔力が増えて皆と同じになれる』

『皆だっていつかはマキシ兄ちゃんのことを理解してくれる』


 ミサキが胸の内に長年持ち続けてきた希望。その願いが叶ったことへの喜びの涙でもあった。


「ミサキにそんなに喜んでもらえて、僕もとても嬉しいよ。次に里帰りする時にも、ミサキや皆にまたたくさんお土産持って帰ってくるからね」

「うん!とっても楽しみにしてるね!」

「食べ物と綺麗なもの、次はどっちがたくさん欲しい?」

「どっちも!!」


 マキシからの二択の問いに、ミサキはすかさず両方と答える。

 嘘偽りや建前など欠片も持ち合わせない、実にミサキらしい真っ直ぐな答えである。


「ハハハ、ミサキは欲張りさんだなぁ」

「だって!どっちも嬉しかったんだもの!どっちかなんて選べないよぅ!」

「そうだね、どっちがなんて聞いた兄ちゃんが悪かったね」

「ううん、マキシ兄ちゃんは悪くない!ワタシが欲張りさんなだけだから!」

「そっか、それじゃ僕は頼れる兄ちゃんとして欲張りさんな可愛い妹の願いを全部叶えなくちゃね」

「うん!!」


 兄として、欲張りな妹の願いを叶える―――その言葉は次の帰郷を約束する言葉でもあった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そうこうしているうちに日は暮れて、カタポレンの森は夜の帳に包まれた。八咫烏の里も完全な夜の色に染まる。

 人族の社会と違い、昼行性の神獣や魔物達は夜になればとっとと寝るのが習性だ。八咫烏の里もその例に漏れず、皆それぞれの部屋に早々に入り眠りにつく。

 ちなみにマキシも、ライトの「今日くらいは家族皆といっしょの場所で寝ておいでよ」という勧めにより、樹上の自分の部屋で就寝している。


 その一方でライトとラウルは一旦地面に降りて、ラウルの空間魔法陣からテントを取り出して設置していた。

 妖精族のラウルはともかく、人族のライトが大神樹ユグドラシアのはるか高い位置にある鳥の巣で安心して寝ることは到底無理な話だからだ。

 もちろん族長のウルスからも、テントの設置許可はきちんと取ってある。


 普段の生活サイクルからしたら、日暮れとほぼ同時に就寝するのはライト達にしてはかなり早い方だ。

 だが、今日はたくさんのことがあり過ぎて、ライトもかなり疲れていた。

 朝早くから人生初の翼竜籠に半日乗り、着いた巌流滝から小一時間ほどカタポレンの森を歩き、そして八咫烏の里に着いてからも数々の怒涛の展開。このスケジュールで疲れるなという方が無理難題である。

 故に、ライトとしても今日はもうさっさと寝たかった。


 だが、そんなライト達を放っておかない存在がここに一羽。


「ライトちゃーん」


 皆が寝静まった頃、ミサキが樹上から声を抑えつつ舞い降りてきた。

 いつもなら父母の教えに従いとっくに寝ている頃だろうに、何とも元気な末娘である。


「ミサキちゃん、寝る時間でしょ?」

「うん。だけど、寝る前にちょっとだけライトちゃん達とお話したくなって来ちゃった」

「……ちょっとだけ?」

「……ライトちゃん達といっしょに寝たくって☆」


 ライトがじーっと見つめると、しばらくの沈黙の後テヘペロ顔で思惑をバラすミサキ。

 その素直さも、嘘偽りを吐けぬ性格故か。


「……あのね?ミサキちゃんは女の子でしょ?女の子が家族以外の男の人と同じ部屋で寝ちゃいけないんだよ」

「ん?どうして?」

「どうしてって、それは……間違いが起こっちゃいけない、から?」

「間違いって、なぁに?」

「そ、れ、は…………?」


 そう、性別だけで言えば婚前の男女が同じ部屋で寝るなど間違っても推奨されない。

 だがそれは、あくまで同族同士という前提があってこその話であることにライトも気づく。

 人族のライトと八咫烏のミサキ、そもそも異種族である人間と鳥で何をどうしたら間違いが起こるというのか。よくよく考えたら天地がひっくり返ってもライトの言うような間違いなど起きようもないのだ。


「うん……ミサキちゃんとぼくじゃ何も間違いは起こらない、かな……?」

「だったら、ワタシもライトちゃん達といっしょに寝ても大丈夫?」

「んー、でもぼく達は地面に布団敷いて寝るし、ミサキちゃん達八咫烏の普段の寝方とは全然違うよ?」

「そうよね、でも大丈夫!今日一日くらいなら全然平気!それに……」


 相変わらずニコニコと無邪気な笑顔で、全てを論破していくミサキ。

 だが、その中に僅かながら寂寥感が漂う。


「ライトちゃん達は明日、マキシ兄ちゃんといっしょにおうち帰っちゃうんでしょ?」

「うん」

「だったら今のうちに、たくさんお話聞きたいの!マキシ兄ちゃんが人里でどんなふうに暮らしているか、とか、あとさっきのお土産?綺麗なものとか美味しいもののお話!」


 マキシの普段の様子を気にしつつ、外の世界への興味も尽きない様子のミサキ。好奇心旺盛なミサキらしいおねだりだ。

 ワクテカ顔でおねだりするミサキに、ライトはミサキの願いを叶えてあげたくなった。


「うん、いいよ。でもぼく途中で寝ちゃうかもしれないけど、それでもいい?」

「うん!ありがとう!」

「ライトが寝たら、続きは俺が話をしてやる」

「ラウルちゃんもありがとう!皆大好き!」


 ミサキを中心にライトとラウルで両側を挟み、瞼が抗えなくなるまでたくさんの話をミサキに聞かせてあげたのだった。

 そういえば、昨日は謎のモクヨーク・ハイで後書きに書き損ねてしまったのですが。

 昨日ようやくマキシの兄弟姉妹の名が出揃いました! ←今更

 といっても、実際に発言しているのは末妹ミサキ、次兄ケリオン、長兄フギン、長姉ムニンだけで、次姉トリスと三兄レイヴンは未だに作中では一言も言葉を発せていないのですが_| ̄|●


 あああ、こんなことならカラス=七羽!なーんてアホなことやんなきゃよかったよぅぉぅ(;ω;) ……と思いつつも、同時に

「ええぃ、いつか必ずどこかでトリスやレイヴンの出番も作っちゃるぞ!二羽とも待っとれよー!かーちゃんがんがるからねッ!」

とも考えていたり。

 ええ、作者は諦めませんよ!この二羽も、いつか来たるべき出番を虎視眈々と狙っているのです!


 せっかく名前まで考えたんだから、全員使いたい!物語のどこかに出してやりたい!と思うのは、きっと執筆者の性なのでしょう。

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