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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ラグナ教の異変

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第254話 ルティエンス商会再び

 クレア十二姉妹の判別が一生できなさそうなことに、ライトが軽い絶望を覚えながら歩いていくと二人のお目当てのルティエンス商会の前に着いた。


「あ、レオ兄ちゃん、ここだよ」

「ほう、ここがルティエンス商会か……」


 小さい規模ながらも威風堂々とした外観で、良い意味での歴史を感じさせる建物を仰ぎ見るレオニス。

 早速二人して店の中に入っていく。


 カラン、カラン……。


 前回ライト達が訪れた時にも聞いた、扉の内側につけられた鈴が鳴る。相変わらず軽やかで心地の良い、澄んだ美しい音色だ。

 店内に他の客は一人もいない。やはり取り扱うものが生活必需品ではなく、趣味嗜好性の強い珍品稀品が多いせいか。

 しばらくすると、扉の鈴の音を聞きつけた店主が店の奥から出てきた。


「いらっしゃい。……おや、以前特殊氷嚢をお求めになったお客様ですかな?」

「はい。あの時はお世話になりました」

「いえいえ、こちらこそ。二度目のご来店、ありがとうございます」


 ルティエンス商会の店主は、前回ライトが特殊氷嚢を買い求めた時のことを覚えていたようだ。

 お互いに軽く挨拶を交わすと、店主が早速問うてきた。


「本日はどういったご用件ですかな?何かお買い求めのお品がおありで?」

「こちらのお店で、鍛冶屋さんで使う強化素材が入手できると聞きまして」

「ほう、強化素材ですか?どれをお求めですかな?」

「大珠奇魂という名の強化素材をですね……えーと、レオ兄ちゃん、何個要るんだっけ?60個?」

「そうだな。最低でも54個要るんだが、一応余裕を持たせて60個欲しいところだな」


 ライト達の会話を聞いた店主が、とても驚いた顔をしている。

 普通に考えて、武器防具の強化素材をそんなにたくさん注文する者などまずいないだろう。強化素材を主に使う鍛冶屋ですら、一度にそこまで大量購入するはずもない。


「60個とは、これはまたたくさんの数が御入用ですな」

「あ、一応交換に必要な素材は鍛冶屋さんに聞いて全部持ってきてるんです。……レオ兄ちゃん、後の説明よろしくね」

「了解」


 ここでライトはレオニスに、説明のバトンタッチを強制執行する。

 大珠奇魂の必要素材のことなら、レオニスに頼らずともゲームの知識を持つライト自身が店主に説明することはできる。いや、むしろライトこそが誰よりも詳しく説明できるかもしれない。

 だが、こんなニッチな専門的知識に詳しい8歳児というのも相当おかしいだろう、とライト自身も思うからだ。

 故に、自身はそこまで詳しくは分からないから、という体で以後の説明はレオニスに丸投げ!したのだ。


「今この子が話した通りで、今日は大珠奇魂を買いに来たんだ。大珠奇魂をそのまま買うことも可能だが、必要素材をこのルティエンス商会に持ち込めば格安で交換してもらえる、という話を馴染みの鍛冶屋から聞いてな」

「そういうことでしたか。それにしても60個とは、一体何にお使いになるので?鍛冶屋をお始めになるのですかな?」

「……あー、そこら辺言わなきゃ買えんか?」


 あまりにも常識外な個数に、店主は僅かに驚きつつその使い道をレオニスに尋ねた。

 だが、レオニスとしては正直答えたくない類いの質問だった。

『オーガの里の結界運用に必要な【加護の勾玉】を小人族のナヌスに作ってもらうために、大珠奇魂が要る』

などと本当のことを説明したところで、理解を得られるとは到底思えないからだ。


「いいえ、単に私個人の好奇心からお尋ねしたことです。お客様相手に興味本位で聞いていいことではありませんでした。お気に障りましたら申し訳ございません」

「いや、別にこちらも気分を害した訳ではないから、店主も気にしないでくれ。確かに60個なんて普通に買う量じゃないからな。問いたくなるのも当然だろうし、謝られるほどのことでもない」

「当方の不躾をお許しいただき、ありがとうございます。そう仰っていただけると救われます」


 店主が使い道を尋ねたのは、単なる興味から思わず尋ねただけのようだ。

 謝る店主に対し、レオニスも特に怒ってる訳ではないので諭すように店主を宥める。


「で、60個という数は用意できるか?もちろん今日一度に購入していこうとは思っていない、何回かに分けて買いに来てもいい」

「在庫を確認して参りますので、少々お待ちください」


 店主はそういうと、店の奥に消えていった。

 その間ライトとレオニスは店内の商品を眺める。前回ライト達が尋ねた時と同じく、遺跡から出たらしい品々や年季を感じさせる謎のアイテムなどが多数並べられていた。


 そして、これまた以前と同じく所狭しとばかりに左右の壁一面に掛けられた、大小様々なサイズの数多のお面。

 今日もこれらがライト達をじっと見つめているようで、ライトは内心非常に落ち着かない。そわそわするどころか、内心で『うひぃぃぃぃ!』と叫び出したい衝動を必死に抑えているくらいだ。

 だがレオニスは、当時ライトといっしょに店の中にいたフェネセン同様お面の視線などどこ吹く風で、謎の品々を興味津々の眼差しで眺めている。

 この神経の図太さは一体どこから来るのだろう?ライトも是非とも積極的に見習うべき点かもしれない。


 そんな対照的な二人のもとに、店主が店に戻ってきた。


「御入用の大珠奇魂ですが、在庫は十分にございます。ですので今日60個ご購入いただくことも可能です」

「本当か!?なら今からここに必要素材を出すから、交換をよろしく頼む」


 在庫ありとの店主の回答に、レオニスは早速空間魔法陣を開いて必要素材を取り出した。

 オーガの族長ラキから預かった高原小鬼の牙に小瓶に満杯入れられた毒茨の花粉、 先週採取した蒼原蜂の前翅に先程狩って解体したての狗狼の呪爪に、幻の鉱山産の粒選りサファイア。

 どれもレオニスの空間魔法陣に入れていたので、保存状態も抜群に良い。


「今ある素材はこれで全部だ。多分毒茨の花粉が足りないと思うが……これで大珠奇魂と何個交換できる?」

「そうですね……他の素材は60個分ありますが、毒茨の花粉だけ若干足りませんね。この瓶ひとつで30個分、といったところですか」

「じゃあ今日はひとまず30個分だけでも交換してもらえるか?残りの30個分は、毒茨の花粉が揃い次第また交換に来る」


 毒茨の花粉が満杯に入れられた小瓶を見た店主は、その量を30個分に相当すると評価した。

 ということは残りの30個分はあと1瓶、今回と同じ量を集めればいいことになる。


「あとは、素材の他に手数料が要ると聞いているが。1個につきいくら払えばいい?」

「大珠奇魂でしたら、素材を全て持ち込みいただいた場合は1個につき5000Gをいただくことになっております」

「30個で15万Gか。よし、買った!」


 1個あたりの手数料5000Gと聞き、レオニスは即決で購入を決める。

 ペレ鍛冶屋での完成品の購入価格が1個5万Gということを考えれば、素材さえ持ち込めばその一割の値段で購入できるのは破格といえる。

 レオニスは空間魔法陣から金貨の入った巾着を取り出し、その場で15万G分の金貨を店主に渡す。


「店主、これでいいか?」

「はい、確かにお受け取りいたしました。では奥の方から大珠奇魂30個を持って参りますので、少々お待ちください」


 店主はそう言うと、再び店の奥に入っていった。

 そしてまた数多のお面に睨まれ怯えるライトと、珍しい品々を興味深そうに眺めるレオニス。


「ほほう、何ナニ……地底神殿の出土品か」

「ハデスの大鎌か……こりゃすげーなぁ、両手で振り回すにしてもかなり扱いが難しそうだ」


 それまでお面の視線にプルプルと震えていたライト、レオニスの呟きを聞きガバッ!とその方向を向く。


「えッ!?レオ兄ちゃん、今何て言った!?地底神殿!?」

「ん?それがどうかしたか?ここに地底神殿からの出土品が飾ってあるんだ」

「どれッ!?見せて!!」


 それまで子鹿のように震えていた姿はどこへやら、ライトは急いでレオニスの傍に駆け寄る。

 そしてそこでライトが目にしたものは、かつてゲームの中に存在していた【ハデスの大鎌】という課金装備だった。

 大珠奇魂の素材持ち込み無しの完成品、ルティエンス商会価格は4万5000Gです。

 ペレ鍛冶屋では5万Gとなっていますが、ラグナロッツァからツェリザークまでの仕入れる手間を考えると5000Gの上乗せはかなり良心的な方です。

 おそらくこの先このネタをさらに事細かに描写する機会もないでしょうから、ここで書いちゃいますが。他の鍛冶屋では6万Gとか7万Gの追加料金を取ることも珍しくありません。


 レオニス達は転移門でサクッと全国各地を移動できますが、他の一般人はそうはいきません。他の街に行くにも馬車で何日もかけて移動したり、欲しい品を他の商隊に依頼して取り寄せたり、何かと手間がかかるのです。

 そして手間暇かかるものは、コストが上乗せされてお高くなる。ここら辺は現実世界でも同じことですね。

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