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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
魔女に開かれた扉

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第223話 伝説の鍛冶屋

 その日のラグーン学園の授業を無事終えたライト。

 帰り支度をしてイヴリンとリリィとともに1年A組の教室を出ると、隣のB組の教室の前で既にイグニスが待っていた。


「あっ、イグニス。待ったー?」

「ううん、俺も今教室出たとこー」

「そっか、じゃあ皆でいっしょに帰ろ!」


 四人でヨンマルシェ市場の方に歩いていく。

 道中で早速イグニスがライトに話しかけてきた。


「イヴリンとリリィがいっしょに帰りたい友達って、君だったのかー」

「うん。あ、ぼくまだちゃんと名乗ってなかったよね?ぼくの名前はライトっていうんだ、よろしくね!」


 二人の会話にさっそくイヴリンが興味津々で問いかけてくる。


「え、何ナニ、二人とも顔見知り?」

「うん、こないだうちの店に来てくれたんだー。イケメンの兄ちゃんといっしょだったよな」

「う、うん。鍛冶屋さんで包丁を研いでもらえるって、前にイヴリンさんから聞いてさ。うちの料理人の包丁も研いでもらおうかなーと思って、イグニス君とこの鍛冶屋さんを訪ねてみたんだ」

「「「……うちの料理人……」」」


 ライト以外の三人が、ライトの言葉を聞いて目を丸くしている。

 確かに『うちの料理人』なんて言葉、セレブなお貴族様専用の台詞である。


「あっ、えっとね?ち、違うんだ、ラウルは料理人兼執事兼何でも屋さんで……家の仕事全部任せちゃってる、万能執事なの!」

「「「……万能執事……」」」


 三人の反応に慌てたライト、あれこれと言い募るもさらなる墓穴をせっせとズンドコ深堀りしていく。

 結果、ライト以外の三人の目は先程よりもさらに大きく丸く見開かれてしまった。


「ううう……」


 ラウルのことを『使用人』などとは言いたくない。それ故に普段は執事ということで通しているのだが、執事という存在自体が平民には無関係のものであり、セレブなお貴族様専用用語みたいなものなのだ。

 上手く言い表せない自分が情けなくなり、言葉に詰まるライト。

 そんなライトを見て、イヴリンとリリィが慌ててフォローに回る。


「ライト君!だ、大丈夫よ!ライト君が普通の平民の子だってこと、皆知ってるから!」

「そ、そうよ、ライト君!ライト君だって私達と同じ、ド庶民(・・・)ド平民(・・・)だもんね!」

「それに!もしライト君が平民じゃなくても、私達が友達であることに変わりはないわ!」

「そうね、ラグーン学園では表向きは(・・・・)貴族も平民もないもの!」

「う、うん……そうだよね……イヴリンさん、リリィさん、ありがとう!」


 懸命にフォローしようとしているイヴリンとリリィの姿に、しょぼくれていたライトは元気を取り戻す。

 そのフォロー内容もよくよく聞けば『ド庶民』『ド平民』『表向きは』などと、なかなかに辛辣成分たっぷり気味ではあるが。

 そんな三人の賑やかな会話を眺めていたイグニスも、明るくカラカラと笑う。


「そうそう、おいら達はラグーン学園の学園生で、友達。それでいいじゃん!」

「そういやあのラウルって兄ちゃん、あの後うちの店に包丁研ぎの依頼しに来てくれたんだぜー」

「お試しってことで最初に依頼した時に、じいちゃんの研ぎや包丁の出来上がりがよほど気に入ってくれたようでさ。あれから三日に一度、一本づつ包丁研ぎの依頼をくれてんだ」

「ラウルの兄ちゃん、今じゃうちの立派なお得意様なんだぜ!」


 イグニスが指で鼻を擦りながら、満面の笑みで嬉しそうにライトの背中をバンバン叩く。

 ラウルがペレ鍛冶屋のお得意様になっていたとは、ライトも初耳だ。いつの間にそんな仲?になっていたのだろう。


「そ、そうなんだ。ラウルがお世話になっているんだね、ありがとう!」

「いやいや、こっちこそご贔屓にしてもらって感謝だぜ!」

「そういやそのラウルさんって、ヨンマルシェ市場の人気者よね!」

「そうそう、特におばちゃんとかお姉さんに大人気だよねー」

「えっ、そうなの!?」


 ライトの知らないラウルの新情報が、三人の口から続々と語られる。

 確かにラウルは容姿端麗の正統派美青年だ。食材の買い出しによく行くヨンマルシェ市場のアイドルになっていても不思議ではない。


「最近は黒髪のちっこい兄ちゃんもたまーに連れてるよなー」

「そうそう、そっちの黒髪少年も人気急上昇よね!」

「まだ名前も年齢も聞いてないけど、見た感じ中等部くらい?」


 ラウルが連れ立っていっしょに歩く黒髪少年。間違いなくマキシのことだろう。人化したその見た目は中等部でも、実年齢はその10倍前後なのだが。

 あー、マキシ君も結構な人見知りらしいもんなー。将来ラグナロッツァに住むことを考えて、市場の案内と人見知り克服を兼ねてるのかな?とライトは内心で考える。

 でもまぁ何にせよ、そうやってマキシもだんだん人里に慣れていくことだろう。


 そんな驚きの新情報だらけの会話を交わしているうちに、ペレ鍛冶屋に到着した。


「えっと、ライトは鍛冶屋の話を聞きたいんだっけ?」

「うん、ちょっと相談したいことがあるんだ」

「相談か、じゃあ立派なお客さんだな。ちょっと待ってな、じいちゃん呼んでくるから」


 ライト達を店の中に案内した後、すぐに店の奥に入っていくイグニス。


「ただいまー。じいちゃーん、客連れてきたぜー!」


 奥からイグニスの大きな声が聞こえてくる。

 そのまましばらく待っていると、奥から一人の老人が出てきた。ツルリと禿げあがった眩しい頭皮に顎髭を生やした、見た目からして頑固一徹オーラを放つ強面の老人。

 おそらくイグニスの祖父その人だろう。


 ゲームでは体調不良による隠居状態という設定で、一度も表に出てきたことがなかった『イグニスのじいちゃん』。

 勇者候補生達全員に『爺さん早よ復帰して!』と切実に望まれた、伝説の腕利き鍛冶屋。

 裏設定のようなその存在に、ライトは初めて会ったのだった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「……わしが店主のペレじゃ。鍛冶屋に聞きたいことがあるというのは、お前さんかい?」


 厳つい見た目に反して、ペレの物腰は予想外に柔らかい。

 ヨンマルシェ市場という大きな市場の一角で店を開いている以上、商売人としての最低限の接客対応は心得ているということか。


「あっ、はい、そうです!鍛冶屋さんで使う強化素材のことについて、是非お話を聞きたいんです!」

「強化素材か。何の話を聞きたい?」

「えっと、大珠奇魂という強化素材なんですが……」

「ほう、そりゃまたなかなかに珍しいもんを知っておるのぅ」


 ペレによると、数ある強化素材の中で大珠奇魂はランク的に中の上くらいの位置づけらしい。とんでもなく入手困難というほどではないのだが、それでも基材集めが結構大変な方なのだとか。

 なので、装備屋や鍛冶屋の方で必要な強化素材を売ってもらうこともできるが、それはそれでまたかなり高額になるという。


 人間サイズの通常の剣、ロングソード1本を強化するのに小さなコップ一杯程度で足りるらしいが、果たしてその値段は如何程なのか。

 ライトはおそるおそるペレに問うた。


「そしたら……もしこのお店で大珠奇魂を売ってください、とお願いした場合いくらになりますか?」

「そうさな、大珠奇魂なら5万Gじゃな」

「!!!!!」


 ペレの即答に、ライトは声を失う。

 コップ一杯程度が5万G、50万円相当とは驚愕の値段だ。

 そこまでいくともはや別種の新品装備品を買うほうがよくね?とは思うが、遺跡やダンジョンで入手した非売品とか使い込んだ思い出などのプライスレス要因が加わることもあるだろう。


「高いと思うだろう?じゃが、これでもうちは安く提供しておる方だぞ?」

「そしてこれは、わしら強化を施す側が強化素材を用意した場合の追加料金じゃ。依頼品とともに強化素材を持ち込みする場合は発生せん」

「それ故、大抵の場合は強化素材を持ち込みで依頼することがほとんどなんじゃ」

「それでも稀に追加料金払って強化依頼されることもあるので、強化素材類は一応うちでも一通り揃えてあるがの」


 ペレの説明に、ライトはなるほどと得心した。

 5万Gの追加料金を発生させたくないならば、自前で強化素材を用意して店に直接持ち込むしかない。

 だが、その強化素材の基材を全て用意するだけでもかなり大変なのだから5万Gというお値段も致し方ないことなのだ。



『しかし、5万Gかー……レオ兄なら買えない値段ではないだろうけど』

『それでも1個で済む訳ないよなー、【加護の勾玉】30個作るんだし』

『オーガ用の勾玉には、人間の手のひら大サイズの魔石を使うって言ってたから……多分勾玉1個につき大珠奇魂1個が要るだろうな』

『……いや、『石英を大珠奇魂に浸す』って言ってたよな?大きな魔石を浸すっていうと、結構な液量要るかも……』

『となると、大珠奇魂30個で150万、60個で300万Gかかる計算か……さすがにこれは、レオ兄でも無償で出すのはちと厳しいかもなぁ』



 強化素材費用だけで日本円価格1500万~3000万円かかる計算に、ライトは内心でかなりビビる。

 だがここで、ライトにふと疑問がわいた。


「強化素材の持ち込みって、大珠奇魂とかの強化素材を武器や防具といっしょに持ってくるってことですよね?」

「ああ」

「皆その強化素材はどうやって入手してるんですか?もしかして、どこかで売ってたりするんですか?」

「おお、いいところに気づいたの」


 オプションの追加料金5万Gを回避して節約するために、だいたいの客が強化素材を持参するのは分かる。

 だが、その強化素材は一体どこから持ってくるのだろう?他の人達はどうやって入手しているのか?

 ライトの疑問はもっともなものであり、それに気づいたことをペレが顎髭を擦りながらニヤリと笑いつつ褒める。


「各種強化素材だけでなく、その他珍しい品々を取り扱う唯一無二の店があってな」

「そうなんですか!?それはどこの何というお店ですか?」


 思わぬ情報に、ライトが食いつき気味に身を乗り出す。


「ツェリザークにある『ルティエンス商会』という店じゃ」

 転職神殿の巫女ミーア同様、ゲームでは名無しだった『イグニスのじいちゃん』ペレの初登場回です。まぁ店の名前やイグニスとの会話のやり取りだけは前回訪れた時にも出てるんですが。

 こういう裏設定とか隠しキャラとか、ゲームには欠かせない要素ですよねぇ。


 あ、ちなみにペレ鍛冶屋一族はドワーフではありません、ごくごく普通の人族です。

 鍛冶=ドワーフ!なイメージありますけども、そういう設定はないので一応念の為補足ということで。

 でもまぁエルフ風の巫女やらドラゴン、妖精、八咫烏、オーガなどもいる世界だから、探せばどこかにドワーフもいるとは思いますが。いつかドワーフも出せたらいいなー。

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