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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
魔女に開かれた扉

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第218話 飛行日和と呑気な光景

 翌日の月曜日。

 ライトはラグーン学園の授業を無事終えて、猛ダッシュでカタポレンの家に帰宅する。

 そこまで急いで帰宅する理由。それは、日のあるうちにオーガの里でナヌスの長も含めて今後の話し合いをするためである。

 昨日の今日で忙しいが、事が重大なだけにあまりのんびりと構えてはいられないのだ。


 カタポレンの家に戻ると、レオニスが既に待機していた。

 ライトは予め用意しておいたアイテムリュックを背負い、レオニスとともにナヌスの里に向かう。

 日のある明るいうちに行動しなければならないので、時間短縮の秘策を実行する。久しぶりにレオニスの腰に引っ付いて、空中を飛んでいってもらうのだ。

 空は快晴、まさに飛行日和である。


「んー、ウィカチャに瞬間移動で連れてってもらう方が早くね?」

「緊急事態でもないのに、ウィカをこき使うのはダメでしょー」

「まぁなぁ……そりゃそうなんだけども」

「それにぼく、こうしてレオ兄ちゃんに飛んでもらうの、すっごく楽しい!」

「……そうか?」

「うん!こんな風に飛んでどこかに連れてってもらえるのも、今のうちだけだしね!!」


 ライトがレオニスの腰の後ろで嬉しそうに風を受ける。

 ライトの言うことももっともだ。ライトが大きくなれば、こんな風におんぶの亜種のような連れ方もできなくなる。

 子供が小さいうちにしかできないこと、してあげられないことはたくさんある。

 それらができなくなる前に。してもらえなくなる前に。今この瞬間を、思いっきり堪能しよう。

 そんなライトの気持ちがレオニスにも伝わってくる。


「……そうだな。よーし、ここはいっちょ全力疾走といくか!」

「ン?え、何?レオ兄ちゃん、何か言った?」

「ライト、しっかり捕まってろよ!!」

「……ンぎゃッ!!」


 それまでの速度の倍以上の速さで、突如空を駆け出すレオニス。ギュイーーーン!という効果音がどこからともなく聞こえてきた、気がする。

 突然の急加速に、ライトは驚く暇もなく必死の形相でレオニスの身体にしがみつく。


「ンがががッ……ちょ、待、レオに、ぃひぇぇぇぇッ」

「カーッ!気ぃー持ちいいなぁ、ライトぉ!!」

「◇★♭△♯◎≠&▼□ッキョィェァァァァ!!」

「アッハハハハハ!!ヒャッホーーーイ!!」


 超絶ご機嫌なレオニスの心底楽しそうな歓声に、ライトの声にならない絶叫は掻き消されてしまう。

 非凡な人族二人の愉快な空の旅が、カタポレンの森の一角で催されていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「……ゼェ、ハァ、ゼェ……」

「いやー、やっぱ空の旅はスカッとするなぁ!」


 ナヌスの里の結界間際の場所に到着した二人。空からストン、と降り立つレオニスとライト。

 空中飛行をとことん満喫して大満足そうなレオニスに対し、地上に着いた途端にレオニスの腰からへなへなと地面に崩れ落ちるライト。明暗真逆の対極的な図である。


「……レオ兄、ちゃん……次、飛ぶ、時は……命綱、着けてちょうだい……」

「ん?命綱か?……ああ、そうだな、ライトの身の安全をより確保するなら命綱はあってもいいな」


 ぼくの身の安全を思うなら、あんな超高速飛行しないでよね!ったく、スピード違反もいいとこでしょ!オービスあったら絶対に捕まって二桁万円の罰金刑確実だからね!?この世界にオービスないけどさ!!ッキーーーッ!!


 喉の手前、舌の根元まで出かけた数多の抗議の言葉をライトはグッと呑み込む。

 そもそも空からの移動をレオニスにおねだりしたのはライトの方だ。今しかしてもらえない空の旅。今だけ許されるおねだり、我儘、子供の特権。

 突如ジェットコースター化したのはさすがに想定外だったが、これもまた今この瞬間にしか味わえない特別な思い出となったのもまた事実だった。


 ただし、次回は絶対に命綱を着ける!と心に誓うライト。何ならおんぶ紐で括りつけられてもいいかもしれない。

 さすがにそれはほぼ赤ん坊プレイになってしまうので、そこまでは絶対にしないだろうが。


 ヘロヘロになりながらも、レオニスとともにナヌスの里の境界線で待つ長のヴィヒトのもとに近づいていく。ここは昨日オーガの少年ジャンがナヌスの里に危機を伝え、ライトやレオニスとも出会った場所だ。


「レオニス殿、ライト殿、ようこそいらしてくださった」

「ナヌスの里の長殿、待たせてすまない」

「いえいえ、とんでもない。人には人の生活や都合というものもありましょう」

「そう言ってもらえると助かる」


 レオニスとヴィヒトが和やかな会話を交わす。


「さ、じゃあオーガの里に行こうか」

「承知した」


 三人はオーガの里に向けて歩いていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「レオニス、ライト、それにナヌスのヴィヒト殿もようこそいらしてくださった」

「本来ならば我が出向かねばならんところなのだが、起きた事が事だけにあちこち出歩く訳にもいかんのでな……ご足労かけて申し訳ない」

「……ん?ヴィヒト殿、如何いたした?」


 オーガの里に入り、族長のラキが畏まった丁寧な挨拶で三人を出迎える。

 すると、何やらヴィヒトがカチコチに固まっているではないか。これは一体どうしたことか。


 実はナヌスの里からオーガの里まで移動する際に、レオニスがその肩にヴィヒトを乗せてきたのだ。

 その理由は単純に、歩幅の違う小人族の移動を助けるためだったのだが。当のヴィヒトは緊張のあまり、レオニスの肩の上でずっと固まってしまっていた。


「ん?実はナヌスの長殿の移動のために、さっきまで俺の肩に乗ってもらってたんだ」

「そうだったのか。さぞや良い眺めだったろう」

「いやいや、オーガ族の肩に乗る方がよほど眺めも良くて乗り心地もいいだろうがな!ハハハハ!」

「うむ、レオニスも今度我の肩に乗ってみるか?」

「おっ、そりゃいいな!今度乗せてもらうか!」

「「ワーッハッハッハッハ!!」」


 レオニスとラキ、気の合う脳筋親友同士。二人して豪快に笑いながら、互いの肩やら太腿あたりをバシバシ叩き合う。

 その横で未だに緊張で固まったままのヴィヒトが、いつの間にやら硬直したまま地面に横たわっている。

 そんなヴィヒトの横で、ライトがヴィヒトの正気を戻そうと懸命に介抱している。

 どこもかしこも何とも呑気で平和な光景である。


「さ、日が暮れる前に早いとこ話し合いを始めるか」

「承知した。我が家でよろしいか?」

「おう、ちゃんと人払いできるところならどこでもいいぞ」

「では行こうか」


 四人はラキの家に向かっていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ラキの家に入ると、そこにはニルが待っていた。


「おう、ニル爺さん。昨日ぶりだな」

「角なしの鬼も息災で何よりじゃな」

「ニルさん、こんにちは!」

「おお、ライトもよう来たの」

「ニル殿、久しいの。此度の災難、誠に大変であったようだな」

「ヴィヒト殿も幾久しいの。此度の我が里の危機に際し、ナヌス族の方々にも御尽力いただいたと聞く。心より御礼申し上げる」


 三人がそれぞれにニルとの挨拶を交わす。

 特にナヌス族の長であるヴィヒトに対し、昨日会えなかった分改まって深々と頭を下げて礼を述べる。


「ニルの。我等の仲で堅苦しいことは抜きぞ。長年の盟友(とも)ではないか」

「かたじけない……ヴィヒトの」


 極度の緊張による硬直状態から回復したヴィヒト、しっかりとした受け答えで長年の盟友ニルと言葉を交わす。

 巨大なオーガと小柄なナヌス。その身長差は軽く10倍はあろうか。ナヌスははるか上空を見上げるかのように、オーガは地に咲く小花を眺めるかのように視線を交わす。


 彼らの間にもまた、確かな友情が存在していた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ラキに案内されて、一番広い部屋に通される。そこは昨日、屍鬼化の呪いにかけられたラキを隔離し治療した部屋だ。

 オーガサイズの家具は人族はもとよりナヌス族にも全く合わないので、全員で床に直座りである。


 人族、オーガ族、ナヌス族。大きさの全く違う前代未聞の人型三種族の会談が、今まさに始まろうとしていた。

 作中でライトが内心でプンスコと怒っていた、スピード違反にオービス云々罰金二桁万円等々のお話。実はこれもまた第65話の後書き同様、作者の実体験であります。

 いや、某国道の某所に鳥居よろしくデデーン!と常設されてるのは知ってたはずなんですけどね?普段あまり通らない道だからそんなことケロッと忘れてて、いつもよりちょーっとだけスピード出して走ってたら真っ赤な閃光がパシャリ!とそりゃもう光りましてね?

 あッ!ヤバッ!と思った時には既にお寿司……それこそ回転寿司1000皿分以上の罰金を後日ガッツリ徴収されましたですよ……うひーん(;ω;)


 まぁその違反ももう何年も昔のことですし、今はちゃんとゴールド免許を維持しておりますが。

 それでもあのオービスの赤い光、あれに捕らえられた時のことは今でも目に焼き付いていて忘れられずに覚えています。ありゃまさしく地獄の業火か某映画の『火の七日間』の空の色ぞ……

 車を運転する皆様、くれぐれも道交法を始めとして法律は遵守しましょうね……

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