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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
魔女に開かれた扉

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第209話 友の異変

 バタン!!と勢いよく議場の扉を開けたレオニス。

 そこには多数のオーガ族の怪我人や看病する女性陣、子供達がいた。

 議場にいた全ての者の視線が、けたたましい音を立てて開けられた扉の方に向く。その中には怪我人の治療に当たっていたライトとジャンもいた。


「あっ、レオ兄ちゃん!外の敵はもう片付いたの!?」


 ライトがレオニスの姿を見て、扉のところにいるレオニスのもとに駆け寄る。


「あ、ああ。単眼蝙蝠は全て殲滅したし、敵は粗方片付けた」

「すごい!さすがレオ兄ちゃん!」


 駆けつけてきたライトの問いに、若干上の空気味に答えるレオニス。二人の会話は静まり返っていた議場中に響き渡る。

 固唾を呑んで二人を見守っていたオーガの里の者達は、レオニスの言葉を聞いた数瞬の後ワァッ!と大きな歓声を上げた。

 近くにいた者同士が抱き合い、女性達は涙を流し、子供達も飛び上がって全身で喜びを表している。


 だが、渦巻く熱狂と歓喜の中でたった一人。レオニスだけが不安そうな顔で、議場の中をずっとキョロキョロと見回している。

 そんなレオニスの動きを不思議に思ったライトが、レオニスに問うた。


「レオ兄ちゃん、どうしたの?何かあったの?」

「……いや、この中で何か異変は起きてないか?」

「異変?今のところ、レオ兄ちゃんに報告しなきゃいけないような異変は起きてないけど……」

「…………そうだ、ラキ。ラキはどこだ?」


 ライトの言葉を聞きながらも、その間ずっと議場の中を見回していたレオニス。

 数多の怪我人の中に、オーガ族の族長であるラキの姿がないことに気がついたのだ。


「ラキはここに来ていないのか!?」

「誰か、誰かここでラキの姿を見た者はいないか!!」


 レオニスは焦ったように、議場の中にいたオーガの人達に問い質した。

 オーガ達は近くの者同士で顔を見合わせながら、口々に呟く。


「……いや、族長はここには来ていない」

「単眼蝙蝠の襲撃が起きてからこっち、ずっと最前線で戦い続けておられる」

「議場で手当てを受けるように何度も言ったんだが……」

「族長はまだここには一度もいらしていないわ……」


 レオニスの顔がどんどん険しくなっていく。

 オーガ族の族長ラキがこの場にいないことを知ると、血相を変えて外に飛び出していった。


「レオ兄ちゃん!!」


 レオニスのただならぬ様子にライトが声をかけるも、その声が全く聞こえないかのように走り去るレオニス。

 あっという間に見えなくなっていくレオニスの背中を、ライトはただ見送るしかなかった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 議場を飛び出したレオニスは、広々とした作りのオーガの里を駆け抜けながら頭の中で先程までのことを思い出していた。


 …

 ……

 ………


 レオニスがオーガの里に到着してから真っ先に見つけたのが、単眼蝙蝠達の空中攻撃を一身に浴び続けていたラキだった。

 あの時点で既に満身創痍だったラキに、レオニスは単眼蝙蝠を撃ち落としながら声をかけた。


「この場は俺が片付ける!お前は手当てを受けてこい!」

「……いや、族長の俺が戦場から離れる訳にはいかん……」

「馬鹿野郎!そんな意地張ってる場合か!お前もうとっくに全身傷だらけだろうがッ!!」

「だが……」


 戦場から離れることを渋り、なかなか頷こうとしないラキに業を煮やしたレオニスが周囲のオーガに叫ぶ。


「おいッ!お前らの頑固な石頭族長を向こうへ連れていけ!!いい加減手当てしないと手遅れになるぞ!!」

「族長の命を救いたけりゃ、引きずってでも治療を受けさせろ!!」


 レオニスの厳しい檄に、ラキの周囲にいたオーガの戦士達が慌ててラキを取り押さえ始める。


「おいっ、お前ら!やめろ!俺は最後まで戦わねばなr」

「族長!ここはレオニスの言うことに従ってください!」

「そうです!族長の傷だってかなり深い、身体はもう限界に近いはずです!」

「今ここで治療を受けてくれなければ、俺達は族長を失ってしまう!それだけは絶対に御免だ!!」


 仲間達の悲痛な懇願を聞いてしまっては、さしものラキも反論することができなくなる。

 おとなしくなったラキを、両脇から仲間達が肩を貸して支えた。

 両脇を支えられながら、ヨロヨロとした足取りで議場のある方向に向かうラキ。


「お前ら……すまん」

「レオニス、後のことはしばらく頼む……治療が終わったらすぐに戻る」

「おう、任せとけ!!」


 ラキが少しづつ戦場から遠ざかっていく。その背中が見えなくなるのを確認し終えると、レオニスは再び空中を舞う単眼蝙蝠を容赦なく全力で撃ち落とし続けた。


 ………

 ……

 …


 あの時ラキは、確かにオーガ族の仲間達とともに議場に向かったはずだ。なのに、議場の中にラキの姿はなかった。

 治療を受けてからまた戦場に戻るべく飛び出していったのでもない。まだ一度も議場に来ていない、と中の者達は言っていた。



 ラキはどこにいった?


 議場に辿り着く前に、どこかで倒れているのか?


 どこだ、どこにいる!?



「ラキ!どこだ!!」

「ラキ!いるなら返事をしろ!ラキ!!」


 全身の肌がざらつくような、嫌な感触がずっとレオニスの身にまとわりついて離れない。

 胸が焼けつきそうな焦燥に駆られながら、一番最初にラキを見つけた場所に向かい走るレオニス。

 時折足を止めては周囲を見回し、あらん限りの声を上げてラキの名を呼びかけ続けていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「……ぅぅ……ぁ……」


 里の中を駆けるレオニスの耳に、どこからか小さな呻き声が飛び込んできた。

 走るのを止めて、辺りをキョロキョロと見回すレオニス。呻き声のした方向を探している。

 どうやらどこかの家の裏側から聞こえてきているようだ。


 レオニスは足音を立てぬように、静かに家の裏側に回る。裏側に近づくにつれて、呻き声が少しだけ大きく聞こえてくる。

 壁伝いにギリギリまで近づいたレオニス、意を決して呻き声のする現場に飛び込んだ。

 すると、何とそこには―――


「ラキ!!何をしている!!やめろ、やめるんだッ!!」


 同族のオーガに馬乗りになり、その首をギリギリと絞め上げているラキの姿があった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ゲホッ!ゴホッ!……カハッ!」


 ラキに首を絞められていたオーガが激しく咽る。

 首絞めの場面を発見したレオニスが、咄嗟にラキに体当たりをかましてふっ飛ばしたのだ。

 そのおかげで解放されたオーガは、ようやく息が吸えて危機を脱したようだ。


「おい、大丈夫か!」

「……あ、ああ……レオニス、か……ゲホッ、ゴホッ……」

「一体何があった!?ラキに何が起きた!?」

「それが……突然のことで、俺らにも何だかさっぱり……」


 助かったオーガの顔を見ると、先程ラキに肩を貸して両脇を支えた一人だった。

 もう一人はどうしたのか?と辺りを見回すと、先程レオニスにふっ飛ばされたラキとは違う別のオーガが倒れている。

 レオニスはそのオーガのもとに駆け寄った。


「おい!大丈夫か!!」

「…………んぁ……ぅぅ…………」


 倒れているオーガは気絶しているようだ。

 ひとまず死んではいないことが分かり、少しだけホッとするレオニス。

 改めてラキの方を見ると、別の家の壁にふっ飛ばされた拍子に壁が崩れ落ち、瓦礫の中に埋もれている。

 頭は項垂れピクリとも動かないが、おそらくはこちらも気絶しているだけだろう。


 ラキの異常行動を目の当たりにしていたレオニスは、少しづつ慎重にラキのいる方に近づいていく。倒れ込んだラキが起き上がる気配はない。

 だが、ラキに近づくにつれてラキの身体に異変が起きていることにレオニスは気づく。


 オーガ族特有の角や牙以外での外見的特徴というと、ジャンのような小麦色の肌と生成色の髪に新緑色の瞳。これがこのオーガ族の標準色だ。

 当然族長のラキもこの標準色に当てはまる。

 だが、崩れた家の壁の瓦礫に埋もれている今のラキは普段の彼と違っていた。


 目鼻立ちはラキの顔で間違いない。

 だが、小麦色のはずの肌はうっすらと青黒さを帯び、肩より少し長めの生成色の髪は毛髪の根元、頭皮側からじんわりと黒く染まっている。

 そして今は目を閉じていて見えないが、先程馬乗りになっていたラキの目は禍々しい赤色に染まっていた。

 この里のオーガ族には一人としていない、全く前例のない色に全身が変化しているのだ。


 そんなラキの変貌した姿を見て、レオニスはどんどん青褪めていった。


「これは……『屍鬼化の呪い』か……!」

 当作にしては何とも珍しいことに、一欠片のジョークもない純度100%シリアス回です。

 一難去ってまた一難、レオニス達はこの危機を乗り越えることはできるのか?果たしてその鍵は何処に―――

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