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第2話 甦る記憶(side:ライト/橘 光)

 第21話までは、一日三話もしくは二話投稿します。

 本日は三話投稿です。14時に第三話を投稿します。

 天涯孤独だった俺の前にレオニスが現れた日。

 あの時に甦った、俺の脳内で嵐のように暴れ津波の如く押し寄せ続けるあらゆる記憶。

 その膨大な情報量の整理に、俺は1年以上の月日を要した。


 まぁ、見た目はまんま赤ん坊だし実際に0歳だし、身体こそ自由に動かせなかった分考える時間だけは腐るほどあったから、大して問題ではなかった。

 問題といえば、如何せん乳幼児なので身体がすぐに睡眠を欲するのと、レオニスとの邂逅直後に高熱を出して数日寝込んだくらいか。

 ……さすがにあのずぶ濡れではなー……あん時レオ兄も俺に雨がかからないように、マントにしっかり包んでくれてはいたが、記憶が甦った時の衝撃でレオ兄の腕の中で結構暴れた気がするし……んー、ごめんよレオ兄。


 寝る子は育つんだぜーぃ!キャッホーィ!とばかりに睡眠を欲する幼児の身体に、これまたそれに抗えぬもどかしさと戦いつつ―――何一つ忘れてなるものか!と、とにかく記憶の発掘と整理と定着に勤しむ日々。

 未知の世界でこれから生き抜いていくためには、一に情報、二に情報、三四も五六も十百千万全ては情報だぁ!!


 2歳になる手前あたりからは、「お絵かきしたい!」という口実で紙を都度たくさん貰い、下手くそないたずら書きでカモフラージュしつつ、記憶の要点をこっそりと書き溜めていた。

 そして絵本や地図を眺める等して、前世とは明らかに違う今いる世界の情報を集め続けた。


 そうした涙ぐましい努力の末、おおまかではあるがこの世界の全容というか一端?がようやく見えてきた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 何の因果かは分からないが、前世の俺―――(たちばな) (ひかる)がこよなく愛したフィーチャーフォンゲーム【ブレイブクライムオンライン】がこの世界―――いや、今住んでいるこの国、アクシーディア公国のベースシステムとなっている。


 ブレイブクライムオンライン―――通称ブレクラ、BCOはRPG系ゲームとしてはわりとありふれた作りであった。


 所謂冒険ファンタジーもので、剣や魔法、騎士団、対人戦、冒険ストーリー、討伐任務等々、ごくごく普通のありふれたソーシャルゲーム。

『フィーチャーフォンゲーム』という点からお察しの通り、スマートフォン全盛を極めた時代より少し前にリリースされた、元はガラケー時代にほんのちょっとだけ人気の出たゲーム。

 だが、その後特にブレイクして更に名を馳せるでもなく、スマートフォンでもプレイ可能な対応をしつつ、無名中の無名でひたすらかつ細々と生存し続けていた。


 とはいえ、「蓼食う虫も好き好き」という諺の通り、同好の士も少なからず存在した。

 ゲームそのものを楽しむのももちろん大事だし楽しかったが、何をするのも当人の自由という、相当にゆるい空気が好きだった。

 騎士団戦や対人戦等のガチバトル要素もあるにはあったが、それとて誰に強要されることもなく完全ソロプレイしてもいい。

 光にとって何よりも大事だったのは、ゲームそっちのけでゲームで知り合った仲間とゲーム内チャットでくだらない与太話をして交流をすること。それが許される空間こそが、ただただ心地良かったのだ。


 ブレクラ内で知り合った仲間達とも、オフ会と称してリアルで遊んだりもした。半年に1回は、誰かしらと落ち合って飲み歩いたりもしたなぁ。

 前世の最後の記憶も、恒例のブレクラオフ会で皆して散々どんちゃん騒ぎしてたような気がする……が、どうにも最後の記憶だけが曖昧過ぎて思い出しきれない。

 もしや泥酔して道端で寝こけて、タクシーやトラックに轢かれてしまったとかの超ベタな異世界転生展開でも起こったんだろうか?


 まぁそこら辺は今すぐ思い出さなきゃならない必須事項でもないし、とりあえず後回しにする。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 俺がまず違和感を覚えたのは、レオニスとともに移り住んだこの国アクシーディア公国ではなく、母が俺を産み育てるために渡ったハイロマ王国である。


 長年慣れ親しんできたブレクラのことなら誰よりも分かるし、大抵のことはすぐに思い出せる。

 だが、あのハイロマ王国はどうにもおかしい。

「ハイロマ王国」という名は、確かにどこかで聞き覚えがあるような気はするのだが、そもそもの毛色が違うというか―――


 レオ兄に会ってから引き取られるまで、その手続きに数日を要した。その間は引き続きハイロマ王国の教会孤児院に預けられていたため、短期間ながらも辺りの光景を垣間見ていたからこそ分かったのだが。

 街の空気や人々の佇まいからして、ブレイブクライムオンラインの世界とは全く異なるのだ。


 何だろうこの喉に刺さった魚の小骨感。どうにかならんもんか、早よ何とかしたいこの違和感。


 その如何ともしがたい謎の小骨的違和感は、俺が3歳を過ぎた頃にアクシーディア公国を含む大陸全土を記した世界地図を見ることにより、ようやく氷解する。

 地図に記された大陸の名は【サイサクス】。


 そう、このサイサクスという名こそ、我が敬愛しつつも可愛さ余って憎さ∞倍の、ブレイブクライムオンラインというゲームを運営している企業の名であった。

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