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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ラグーン学園三年生二学期

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1696/1700

第1696話 ハリエットの願い

 作者のミスによる大規模データ修正のお休みをいただき、ありがとうございました。

 すんげー紆余曲折ありましたが、何とか予定通り連載再開いたします。

 十二月初旬に起きた炎の洞窟での大事件。

 それを画策した首謀者のダリオ・サンチェスと、彼の依頼を受けて実行犯を差し向けたフェデリコ。

 二人の処罰が確定したのが十二月二十一日。クリスマスを迎える直前に事件が一段落し、ライト達の生活にも日常が戻ってきた。


 ライトやラウル、マキシは炎の洞窟の主達の災難と彼女達の身をずっと案じていたし、中でもレオニスは火の女王の報復回避のために猛烈に多忙を極めていたため、気分的にはクリスマスどころではなかった。

 そしてそれはライトだけでなく、ハリエットも同じだった。


 ハリエットの場合、父親のクラウス・ウォーベックがプロステス出身で、ハリエットも盆暮れには一家で必ずプロステスのウォーベック侯爵家に帰郷している。

 そのためプロステスという地はハリエットにとっても第二の故郷であり、その象徴である炎の洞窟で事件が起きたことに彼女も心を痛めていた。


「プロステスの伯父様達だけでなく、私のお父様やお母様もそれはもう炎の洞窟のことを心配していて……私は炎の女王様に会ったことなどありませんが、それでもやはり炎の女王様や朱雀様の御身が心配でなりません」

「そうだよね……ハリエットさんのウォーベック家は、プロステスととても縁が深いもんね」

「はい……特にここ最近のお父様は、いつにも増して夜遅くまでずっとお仕事をいていらっしゃるんです。『炎の女王とフラム様に仇なした者を、必ず捕まえてやる』と仰って……」

「うちのレオ兄ちゃんも、ずっとあちこち飛び回っているよ。早く事件の首謀者が捕まるといいね……」

「ええ、そう願うばかりです」


 時折下校時にハリエットに誘われて、彼女の送迎のたの馬車でいっしょに帰る途中などで、二人してそれぞれの家族のことを心配していた。

 実際クラウスもレオニスも、ダリオ捕縛と火の女王の報復回避のために粉骨砕身でずっと働き詰めだった。


 しかし、炎の洞窟で起きた大事件やアクシーディア公国滅亡の危機など全く知らない市井の民達は、例年通りクリスマスというビッグイベントを堪能していた。

 ラグナロッツァだけでなく、アクシーディア公国の全ての街はすっかりクリスマス一色に染まっている。


 市場にはクリスマスツリーが飾られ、雪だるまやデフォルメされた可愛らしいサンタの置物などが街を彩る。

 炎の洞窟での事件が解決する少し前、ライトはラグーン学園で学友達とクリスマスの話をしていた。


「去年のクリスマスはさー、ライト君がプレゼントくれたでしょ? だから今年は、私から皆に何かプレゼントしようと思うんだー」

「リリィも!……といっても、リリィのお小遣いで買えるものなんて、ホントにささやかだけどね?」

「イヴリンちゃんやリリィちゃんからもプレゼントをもらえるなんて……ならば私も、皆さんに贈る品を今から用意しなくては!」


 クリスマスの話題で盛り上がる女子達。

 イヴリンやリリィのプレゼント話は、ここ最近塞ぎ込みがちだったハリエットを元気づけるためだ。

 キャッキャウフフ♪と華やかな女子トークを繰り広げるハリエット達の眩しさに、ライトとジョゼも嬉しそうに見守っている。


 そしてその日の帰りも、ライトはハリエットに誘われていっしょの馬車に乗せてもらっていた。

 その馬車の中で、ハリエットがライトに一つの提案を持ちかけた。


「ライトさん、その……私から一つ、ライトさんにお願いがあるのですが……」

「ン? 何?」

「あの、その……」

「?????」


 顔を赤らめながら、モジモジとしているハリエット。

 何を言い淀んでいるのか分からないが、ライトはハリエットから話してくれるのを待っていた。


「去年のクリスマスに、私達にプレゼントをくれた時のこと、覚えてますか?」

「うん、もちろん覚えてるよ。確か去年は、ツェリザークのルティエンス商会で買ったチラミバードの羽根ペンを皆にプレゼントしたよね!」

「その……ライトさんは今年もそのお店、ルティエンス商会?でクリスマスプレゼントを選ぶのですか?」

「うん、そうするつもりー」


 ハリエットからのいくつかの質問に、ライトが快く答える。

 ルティエンス商会は、今ではライトとラウルの御用達店と化しているくらいに懇意にしている。

 店の中は胡散臭い品々で溢れかえっているが、勇者候補生にとってはお宝の山がザクザク出てくる魅惑のセレクトショップにも等しい存在なのだ。

 ただし、ラウルの場合は『ルティエンス商会=世にも珍しい調理器具を売っている面白い店』となっているのだが。


 するとここで、ハリエットが目をギュッ!と閉じて、胸の前で両手を組みながらお願いを口にした。


「もしよければ、ライトさんの今年のクリスマスプレゼント選びに、私もそのルティエンス商会に連れていっていただきたいのです!」


 最後は半ば叫ぶように、ライトに懇願するハリエット。

 それはきっと、伯爵令嬢であるハリエットにとってはすごく勇気の要ることだったに違いない。

 あらん限りの勇気を振り絞ってお願いをしたハリエットに、ライトは破顔しつつ応える。


「うん、いいよ!」

「ッ!!あ、ありがとうございます!!」

「だって去年、約束したもんね。ハリエットさんがツェリザークに行く用事ができたら、ぼくがルティエンス商会に案内してあげるってね!」

「……その約束も、ちゃんと覚えていてくださったんですね……」


 去年のクリスマスの会話をライトが覚えていたことに、ハリエットの顔が感激に染まっている。

 一年前に交わした何気ない約束など、すっかり忘れられてしまっているかもしれない―――ハリエットはそう思っていた。

 だが、そんなことはなかった。

 ライトが自分との約束を忘れずに覚えていてくれたことに、ハリエットは大きな喜びを感じていた。


 その一方で、ライトが心配そうにハリエットに話しかける。


「でも、そのー……去年も言ったけど、ルティエンス商会ってあんまりというか、絶対に女の子が喜ぶようなお店じゃないよ? お店の中は本当に胡散臭いし、中で売っている品物も変なものが多いし……」

「そんなことありませんわ!去年ライトさんがくださった桜色の羽根ペン、ものすごく使い心地が良くて今も愛用してますもの!」

「あれは、たまたまぼくが買い物に行った時に良いものがあっただけだからね……」

「それでも!あの羽根ペンはすごく良い物です!お父様やお兄様に見せたら、皆挙って自分も欲しいって言ってましたもの!だから、私からお父様やお母様、お兄様へ渡す今年のクリスマスプレゼントに、あの羽根ペンを是非とも買いたいんです!」


 老婆心で忠告するライトに、ハリエットが懸命に言い募る。

 あのルティエンス商会の胡散臭さを実際に目の当たりにしたら、ハリエットがドン引きしてしまうかもしれない。

 しかし、ハリエットの意気込みは本物だ。


 それは、去年のクリスマスの日の晩こと。

 ライトからもらった羽根ペンを、ハリエットが嬉しそうに家族に自慢した。


「お父様、お母様、お兄様、この羽根ペンを見てください!今日ライトさんが、私達級友にクリスマスプレゼントで贈ってくださったんです!」

「おお、とても可愛らしい羽根ペンだな!」

「まぁ、ライト君は抜群にセンスがいいのねぇ♪」

「ハリエット、肝心の書き心地はどうなんだい?」

「もちろん書き心地もとても素晴らしいですわ!」


 晩御飯の後の家族の団欒時に、チラミバードの羽根ペンを家族に披露するハリエット。

 それがチラミバードという魔物の羽根などとは、一家全員全く夢にも思っていない。

 しかし、見た目だけなら貴族御用達の文房具店の品にも引けを取らないし、何なら書き心地だって超一流の高級品にも負けない高品質さだ。


 その後実際にチラミバードの羽根ペンを、父クラウス、そして兄ウィルフレッドが試し書きをした。

 その結果、二人とも「おお……本当にハリエットの言う通り、とても滑らかな書き心地だな!」「ええ……きちんと細い線を書けているのに、全く掠れない……これは素晴らしい羽根ペンです!」と、それはもう手放しで大絶賛していたのだ。


 この時の父と兄の様子を、ハリエットがライトに熱く語って聞かせた。

 それを聞いたライトが、照れ臭そうにはにかんでいる。


「へ、へー……あの羽根ペン、そんなに気に入ってくれてたんだね。由緒正しい伯爵家の皆さんに気に入られるなんて、お世辞でも嬉しいよ」

「そんな!私もお父様もお兄様も、お世辞なんて一つも言っていません!あの羽根ペンは、それだけ素晴らしい品だったのです!」

「う、うん、お世辞じゃなくて本心で言ってくれてるんだね、ありがとう」

「そうです!これはお世辞でも何でもなく、本当に本当に本心なのです!」


 ライトが何気なく言った『お世辞』という言葉に対し、ハリエットが本気で猛抗議している。

 その剣幕はものすごく、馬車の中でおとなしく座っていたハリエットがズイッ!と大きく身を乗り出してライトに迫ったくらいだ。

 ライトの顔先10cmまで近づく勢いだったが、あまりにも近づき過ぎたことにハリエットが我に返って慌てて後ろに退いた。


「……あッ!そ、その……す、すみません、はしたないことをしてしまいました……」

「ぁ、ぇ、ぃゃ、その、気にしないで!……で、その、ハリエットさんもルティエンス商会に行きたいんだよね?」


 顔を真っ赤にして恥じらうハリエットに、ライトが気遣って話をもとに戻した。

 本題に戻ったことにハリエットも安堵しつつ、改めてライトに懇願した。


「あ、はい!もしライトさんが今年もそのお店に出かけるなら、是非とも私もお供させていただきたくて……ダメ、でしょうか……?」

「ダメなんて、そんなことないよ!ただ、ハリエットさんはぼくと違って本当に伯爵家のお嬢様だから、遠出のお出かけには護衛とか絶対に必要でしょ? だから、お父さんとお母さんのOKをちゃんともらって。それがぼくからお願いする、一つだけの条件だよ」

「分かりました!ちゃんとお父様とお母様に相談して、絶対にOKをもらいます!」


 ライトから出された条件を聞き、ハリエットがフンス!と張り切っている。

 実際ハリエットのような伯爵令嬢が、地方都市の街の店に子供達だけで出かけることなどまずあり得ない。

 絶対に複数人数の護衛がつく案件だし、もとより両親に無断で遠く離れた街に出かけるなど論外もいいところである。


 決意も新たにお出かけに意欲を燃やすハリエットに、ライトも思わず励ましの声をかける。


「うん、お父さんお母さんの説得、頑張ってね。ちゃんとOKが出たら、ぼくもレオ兄ちゃんやラウルに転移門の使用なんかの話をきちんと通しておくから」

「分かりました!ライトさん、よろしくお願いいたしますね!」

「もしOKが取れたら、次の土曜日にツェリザークに行こうね!」

「はい!」


 花咲くような笑顔で大喜びするハリエットに、ライトもつられるように綻ぶ。

 まだクラウス達のOKも出ていないのだが、娘のお願いに弱いクラウスのこと。きっと今回も、渋々ながらでもハリエットの願いを叶えるだろう。

 ただでさえ楽しみなクリスマスが、より一層楽しみが増したことに二人は今から胸踊らせていた。

 炎の洞窟での大事件が何とか終息し、ライト達に日常生活が戻ってきました。

 でもって作中の時期がクリスマス直前なので、それにかこつけて何と!ライトとハリエットのおデート in ツェリザークが決定!(º∀º)ヒューヒュー♪

 拙作に最も足りない要素、恋物語テイストを書けることに今から作者は舞い上がっています!ㄟ( ̄∀ ̄)ㄏ ←浮かれポンチ


 嗚呼でもその前に。

 先日発覚した日付と曜日間違いのデータ修正、すんげー大変でした_| ̄|●

 修正のはずなのに、その最中ですら二度もまた間違えてしまい。

 一回目は3月31日が抜けてて、二回目は7月31日を飛ばしてもたという_| ̄|●

 もうね、作者の粗忽さはザルとかいうレベルではなく。グライフじゃないですけど、もはやザルのように引っかかる網すらない枠ですよ、ワク(TдT)

 二日間、何度も間違えちゃあ書き直し、を繰り返した作者。

 データ修正にもう一日必要だったー……と絶賛大後悔しながらも、何とか連載復帰しました。

 その悔しさをバネにした訳じゃないですが。この度目出度くライトとハリエットのおデート回を書けることになり、ちょっとだけウキウキしてたりなんかして♪( ̄m ̄)

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