表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ラグーン学園三年生二学期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1681/1682

第1681話 私室という名の密談部屋

 作者からの予告です。

 作者都合により、数日休載するかもしれません。

 申し訳ございませんが、ご了承の程よろしくお願い申し上げます。

 火の女王が去った後の玉座の間に、長い沈黙が横たわる。

 その痛い程の沈黙を破ったのは、ラグナ大公の深く大きなため息だった。


「はぁぁぁぁ……レオニス、其方、何というとんでもない存在を呼び出してくれるのだ……おかげで余の寿命が確実に三分は縮まったわ」

「そりゃしょうがねぇ。いくら俺達が『火の女王がこう言っていた』と話したところで、与太話だと決めつけて信じない奴は絶対にいるだろう? そういう奴らを黙らせるには、直接自分の目で火の女王を見て女王からの言葉を聞かせるのが一番ってもんだ」

「それは確かにそうではあるが……はぁぁぁぁ……」


 ぐったりとした様子で愚痴るラグナ大公に、レオニスはシレッと事も無げに答える。

 レオニス的には『え、そこは三年とか三日とかじゃねぇの? 三分の寿命なんて大差ねぇっつーか誤差の範疇だろ』と壮絶に失敬なことを考えていたが、口にしなかっただけマシである。


 そしてレオニスの言うことは尤もで、実際のところラグナ大公の側近である大臣達や周囲にいる近衛騎士、宮廷魔導師達の大多数はレオニスの言うことを信じていなかった。

 だが、こうして火の女王を間近に見て彼女の言葉を直接聞いてしまったからには、もはや否定することなどできない。


 青褪めた顔で小刻みに震えながら絶句する者達。

 失神したり失禁にまで至る者は出なかったことだけは幸いか。

 いずれにせよ、レオニス達が綿密に画策した大勢の前でのデモンストレーションは見事成功したようだ。


 一回どころか何度も繰り返し深いため息をついていたラグナ大公。

 五回目のため息の後、意を決したように顔を上げた。


「……とりあえず、其方らが言っていたことは紛れもない真実であることは分かった。この問題は最優先で解決せねばならぬ」

「分かってもらえたようで何よりだ」

「ラグナ大公、我ら冒険者ギルドはこれより総力を挙げて犯人確保に臨む所存でおります!」

「小生達魔術師ギルドも、パレンちゃん達と連携して協力していきます!」

「うむ。其方達の働きに期待しておるぞ」


 ラグナ大公の決意に、レオニスはもとよりパレンやピースも賛同する。

 そんなレオニス達の協力的な姿勢に、ラグナ大公は満足げに頷く。

 そして玉座の横に立っている宰相に声をかけた。


「時にピエールよ。この後謁見は入っていたか?」

「二件ございます。一つは……」

「ああ、良い良い。その二件は明日の朝に回せ。余はこの後パレン達から詳細を聞いて、火の女王の報復回避に努めねばならん。残りの二件についての処遇は其方に任す」

「承知いたしました。すぐに通達してまいります」


 ラグナ大公からの指示を受けて、ピエールと呼ばれた宰相がすぐさま動き玉座の間を後にした。

 そしてラグナ大公が改めて前を向き、パレンに声をかけた。


「パレンよ。先程余は其方に後日話を聞くと言ったが、そんな悠長に構えてはおれん。この後すぐに私室にて話をしようぞ」

「畏まりました」

「ピースにレオニス、其方らにも同席してもらうぞ」

「はい!」「おう」


 パレンだけでなく、レオニスとピースにも私室での話し合い参加を促すラグナ大公。

 もちろんレオニス達に否やはない。二人は即座に承諾した。

 そしてラグナ大公は、目を閉じ眉間に深い皺を寄せながら玉座の背凭れに倒れ込むようにして凭れかかり、ふぅーーー……と今日一番の特大のため息をついた。

 これだけ衝撃的なことが続けば、ラグナ大公でなくとも心身ともに疲弊するであろう。


「……プロステス領主ウォーベック候、ツェリザーク領主スペンサー候、今日は大儀であった。其方らはもう下がってよいぞ」

「「ははっ!」」

「これからも、炎の洞窟と氷の洞窟の管理を頼むぞ」

「もとより我がウォーベック一族は、常に炎の洞窟とともにあります」

「我がスペンサー一族も、これから氷の洞窟の主達とより良き関係を築いていけるよう邁進いたします」


 ラグナ大公の労いの言葉に、アレクシスとジョシュアが深々と頭を下げて玉座の間から退出した。

 アレクシスは炎の洞窟での事件、ジョシュアは氷の洞窟での事件の関係者ではあるが、この先の私室での話し合いにまで参加する必要はない。

 二人とも一刻も早く領地に戻り、洞窟の探索申請許可制の立法を進めていかなければならないのである。


 二人の地方領主が退室し、ラグナ大公が徐に玉座から立ち上がった。

 ラグナ大公は玉座の前にある階段を下り、レオニス達の前に立った。


「さて……では私室に行くとするか。三人とも、余についてまいれ」

「「はっ!」」


 ラグナ大公の指示に従い、四人は玉座の前を後にした。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 四人は玉座の間を出て、廊下を無言で静々と歩く。

 そうして廊下の突き当たりにある部屋の前に立った。

 先頭を歩いていたラグナ大公が、扉の真ん中にある宝石に右手を翳す。


 これはいわゆる生体認証で、この部屋の扉の開け閉めができるのはラグナ大公と彼の最側近の一人である筆頭執事のみ。

 ラグナ大公が重厚な扉に右手を翳した数瞬後、ギギギ……という如何にも重たそうな音を伴いながら入口が開いた。


 四人全員が入ったところで、ラグナ大公が直々に扉を閉める。

 部屋の中には低いテーブルとロングソファが二脚のみ。

 絢爛豪華な玉座の間とは打って変わって、装飾の類いが一切ない質素な内装だ。


 ラグナ大公はこの部屋のことを『私室』と呼んでいたが、これは普段ラグナ大公が過ごす自分の部屋という意味ではない。

 他人に聞かれたら不味い話をするための、いわば密談部屋である。

 盗撮及び盗聴系の魔導具を隠せるような調度品は極力排除。

 その上で、部屋の出入りもラグナ大公本人もしくは掃除を遂行するための筆頭執事のみが許されるという徹底ぶりだ。


 もちろん警備の方も万全で、魔法は完全に使用禁止。

 部屋を使用している間は、入口に筆頭執事含めて五人以上の人員が警護のために入口前に控えている。


 まずラグナ大公がソファにぽすん、と座り、向かいのソファにレオニス、パレン、ピースの三人が座った。


「ここは茶の一つも出せんが、すまんな」

「いやいや何の、お気遣いなさらず。我らとて、ここでラグナ大公とのんびりお茶を楽しもうとは思っておりませんからな」

「ふむ。それはそれで寂しいがな?」


 大臣や近衛騎士達の目がなくなったせいか、ラグナ大公がソファにぐったりと凭れかかっている。

 そのうちソファにごろん……と横たわるラグナ大公の、何とだらしなきことよ。

 しかし、ラグナ大公とて一人の人間。疲れたらごろ寝したくなるのも致し方ない。


「はぁーーー……どうせなら火の女王と会うのもこの部屋にすれば良かったーーー」

「そうは言いましてもな、こればかりはご寛恕いただきませんと。事は重大であり、大公のみならず我らを含む臣下も一丸となって対処いたしませんとな」


 まるで溶けたスライムのように、ぐでーん……とソファに寝転ぶラグナ大公。

 先程までの威厳溢れる姿はどこへやら。

 レオニス達以外の者達の目がないので、思いっきり羽目をはずしているようだ。


「そりゃ分ぁーってるけどさ? 俺一人だけ火の女王に会わせたところでしゃあない、大勢の人間に危機感を持たせようって腹だろ?」

「ご名答。さすがはラグナ大公、分かっていらっしゃる」

「……そんなに持ち上げたって、何も出ねぇからな?」

「ハハハハ、出るのは大公の愚痴ばかりなり、ですかな!」

「言ってろ、この筋肉だるまめ!」


 スライムのように溶けるだけでなく、口調までどんどん杜撰になっていくラグナ大公。

 そんなラグナ大公に、パレンは窘めるでもなく快活に笑い飛ばしている。


 後で聞いたところによると、ラグナ大公とパレンは歳が近いこともあって幼い頃から親交があったのだという。

 確かにパレンの家は、代々の当主が近衛騎士に対する武術指南役を務める名家。ラグナ宮殿に息子を伴って登城することも多かった。

 そして大公一族としても、後継者に年齢の近い友人を作れるのは利点となる。幼い頃から親交があれば、腹を割って話せる腹心として支えとなってくれるからだ。

 もちろんそれは、家柄だけでなく人となりや能力面においても厳選された者に限るのだが。


 一頻りだらけたところで、ラグナ大公がのっそりと起き上がって本題を切り出した。


「……さて、軽口はここまでにしておくか。パレン、先程言っていた『黒幕の目星』とは誰のことだ?」

「ラグナ大公のはとこに当たる、ダリオ・サンチェス卿にございます」

「ぁーーー、あいつかぁ……さもありなん、だな」


 パレンの答えを聞いたラグナ大公、思いっきり顔を顰めながら頭をガリガリと掻き毟っている。

 どうやらラグナ大公も、ダリオ・サンチェスの人柄はよく知っているようだ。


「大叔父上には申し訳ないが、あれと縁戚というだけで俺は憂鬱になる」

「しかし、先々代王弟であらせられるサンチェス公の孫に当たる御方ですからな……おいそれと事情聴取すらできませぬ」

「ああ、それも分かっている。余程確実な証拠でも出さない限り、あれを追い詰めることはできんだろうこともな」


 苦々しい顔で心情を吐露するラグナ大公。

 軽く悪態をついた後、すぐさまレオニスとピースに向かって「あ、お前ら、これオフレコな?」と釘を刺すのも忘れない。

 なかなかどうしてフランクな人柄どころではない、ざっくばらん過ぎてもはや粉々感さえある。


「ラグナ大公、最近のダリオ・サンチェスの動向はご存知ですかな?」

「ンーーー……俺、正直あれのこと嫌いだし、向こうも昔っから俺のことを睨んでくるくらいには嫌ってるからなぁ。公式の場でたまーに見かける程度で積極的に話もしねぇから、あれの動向なんてさっぱり知らんわ。……あ、でもそういや、前にうちの嫁さんのティアラと同じもんが欲しいって騒いでいたって聞いたな?」

「大公、そのティアラに【水の乙女の雫】が使われておるのです」

「ああ、それでか!」


 ダリオの動向をパレンに問われたラグナ大公が、記憶の片隅にあった一年以上前のはとこの言動を思い出した。

 それはダリオが乙女の雫に執着するきっかけとなった件であった。

 中途半端なところで切れてて申し訳ございませんが、先程独り暮らししている実母から電話があり、家の中で滑って転んで足が動かない、という連絡がありまして。

 こりゃ下手をすれば入院するかもしれん、ということでしばらくの間小説の執筆どころではなくなるかもしれない事態となっております。

 自分の身体のことではないので、どうにも先が読めず予定も組めません。

 母の容態が重くならずに済めばよいのですが……


 そんな訳で申し訳ございませんが、とりあえず三日ほどお休みさせていただきます。

 一日も早く帰ってこれるよう、作者も頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
遠方のお義母様の怪我心配ですね。 大事になっていないと良いのですが…お大事にしてください。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ