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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ラグーン学園三年生二学期

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第1679話 進む法整備と公にできない事情

 玉座の間での謁見は、一時間近くにも渡って続いた。

 まずジョシュアが氷の洞窟での『精霊誘拐未遂事件』のあらましを語り、その次にアレクシスが先日起きた炎の洞窟での『炎の女王襲撃と朱雀の暴走事件』を語った。


「ラグナ大公、つきましては我がプロステス近郊の炎の洞窟とツェリザーク近郊にあるの洞窟に関する法整備、即ち『探索申請許可制』の施行及び公布を一刻も早く推進させていただきたく存じます!」

「我がツェリザークと氷の洞窟は、切っても切れぬ縁。そしてそれはウォーベック候のプロステスの炎の洞窟も同じこと。どちらもなくてはならぬ存在であり、これ以上無法者達によって蹂躙され続ける訳には参りません!」

「ふむ……」


 アレクシスとジョシュアの熱弁を、ずっと真面目な顔で聞いていたラグナ大公。

 二人の熱意を受けて、すぐに判断を下した。


「よかろう。どちらも古来より管理を任せてきた洞窟。其方らの手腕で、無法者達から洞窟と精霊達を守るがよい」

「「ははっ!ありがたき幸せに存じます!」」


 両者の念願である洞窟の探索申請許可制が認められたことに、アレクシスとジョシュアが跪いたまま深々と頭を下げる。

 そしてここで、ラグナ大公が素朴な疑問を口にした。


「しかし……その無法者達は何故精霊を襲ったのだ? 肉や皮などの有用な食糧や素材となるような魔物でもないのに……精霊を狙うような目的があるというのか?」

「その理由は、俺から話そう」

「ぬ? レオニス、其方は無法者達が精霊を襲う動機を知っておるのか?」

「ああ。もともとは俺が取った行動が遠因になっているからな」


 ラグナ大公の尤もな疑問に、レオニスが率先して答えていった。

 レオニスが去年と今年の鑑競祭りで乙女の雫を出品したこと、オークションで競り負けた者達が乙女の雫を独自で入手するために冒険者ギルドに採取依頼が激増したこと。

 しかし乙女の雫はもともと入手困難なため、結局その後誰も乙女の雫を入手できていないこと。それに業を煮やした者が、傭兵を使って氷の洞窟に突入させたこと等々。


「俺が鑑競祭りに【水の乙女の雫】と【火の乙女の雫】を出品したのは、スラム街の再開発計画のために強制退去しなければならなかったラグナロッツァ孤児院を再建するためだった。乙女の雫なんて貴重なものをオークションに出したおかげで、俺の目的だった孤児院再建は無事に果たせた。だが……その裏で、強欲な人間達が目の色を変えて乙女の雫を求めるようになっちまった」

「ふむ。それが先程其方が言っていた『事件の遠因』という訳だな?」

「ああ。乙女の雫を生み出せる属性の女王は全部で十一種類いるが、地上にあって誰でも出入りしやすいのは炎の洞窟と氷の洞窟くらいしかないからな」

「なるほど……」


 レオニスの分かりやすい説明に、ラグナ大公も頷きながら感心している。


「其方の志は本当に崇高なものだが、欲に目が眩んだ輩をも引き寄せることになってしまったのだな」

「ああ……しかも奴らはとんでもない思い違いをしている。乙女の雫は普通の精霊が作れるもんじゃない。乙女の雫を作り出せるのは、精霊の頂点である女王だけなんだ」

「何と……罪なき精霊を攫うは無意味ということか」

「そう。ただ、奴らがそれを分かっていて炎の洞窟を襲撃した可能性もあるがな」


 レオニスが引き続き乙女の雫の由来をラグナ大公に語って聞かせていく。

 ラグナ大公は為政者であって冒険者ではないので、そうした冒険者由来の専門知識には乏しいのだ。


「我が妃が気に入っているティアラに、【水の乙女の雫】が使われているというのは余も聞いて知っていたが……そのような貴重な品だとまでは知らなんだ。鑑競祭りで何千万Gもの値がつくのも道理よの」

「そうだな……去年はラグナロッツァ孤児院の再建のために出品し、今年は鑑競祭りの担当者から直々に出品依頼が来たから再び出品したが……俺はもう金輪際、乙女の雫を鑑競祭りに出さないつもりだ。今更控えたところで、迷惑をかけた炎の女王や氷の女王に対する詫びにもならんがな」

「そうか、それは残念だ。あの乙女の雫の美しさは格別で、決して人族には生み出せない至宝。まさに、この世のものとは思えぬ煌めきだからな……もっとも、その美しさもまた強欲な者達を引き寄せてしまうのだろうがな」


 乙女の雫の価値、そしてレオニスの決意を知ったラグナ大公が残念そうにため息をつく。

 だが、レオニスの決意も尤もなもので、これ以上欲深い人間達の乙女の雫に対する執着を刺激し続ける訳にはいかない、という気持ちも察して余りある。

 そんなレオニスの心情を慰めるかのように、ラグナ大公が努めて明るい声で振る舞う。


「しかし、もう心配は要るまい。そこにおるウォーベック候とスペンサー候は優秀な領主であり、名君との呼び名も高い。これより先は、決して無法者達の蹂躙を許すことはなかろう。炎の女王に氷の女王も、安堵して暮らせるはずだ」

「……いや、俺はそうは思わない。人族の欲望は尽きることを知らんからな。それに、先日起きた炎の洞窟での事件。殲滅された四人組は闇ギルドに所属していたことも分かっている」

「うぬぅ……闇ギルド、か……ならばその四人組を闇ギルド経由で雇った者がいる、ということなのだな」

「その通りだ」


 レオニスが示した懸念を、ラグナ大公も即座に理解した。

 ラグナ大公も闇ギルドの存在は知っていて、金さえ積めば強盗や暗殺さえも引き受けるという悪逆無道の集団。

 そのような倫理に反する集団に依頼してまで、乙女の雫の入手を目論む―――その執着心はもはや異常であり、依頼した者もまた倫理や道徳心に欠けた人間であることがラグナ大公にもすぐに分かった。


「パレンよ。其方のことだ、闇ギルドに精霊の拉致を依頼した者のことは大方調べがついているのだろう? そのような邪な輩は早く捕まえるに限る。一体どこの誰なのだ?」

「確かに黒幕の目星はついております。ですが……恐れながら申し上げます、このような場で確たる証拠も無しに名を申すのは何卒ご寛恕いただきたく」

「……そうか……確かに其方の言う通りだ。だが、余にできることあらば何でも申せ。もしこの場では申せぬことならば、後日私室にて聞く故いつでも登城するがよい」

「大公のご厚情、誠に痛み入りましてございます」


 犯人の目星はついているというのに、それをここで言おうとしないパレン。

 そんなパレンの言動を見て、ラグナ大公は凡そのことを察した。

 その人物の名は、大勢の人達がいるこの場で口にするには憚られる程には大物である、ということを。


 そしてここで、パレンが好機とばかりに話を続けた。


「ラグナ大公、一連の事件に関しましてラグナ大公にもお知りおきいただきたいことがございます」

「ぬ? 何だ、申してみよ」

「はっ。これは、そこにいるレオニス卿が炎の洞窟で起きた事件に立ち会った時に、火の女王から直接申し渡されたことにございますが……この一件で、真犯人を捕まえて相応の裁きを受けさせることができなければ……禍龍ガンヅェラとともに人里を焼き討ちに出る、とのことにございます」

「何ッ!?!?」


 謁見での話し合いも進み、ラグナ大公の中ではもうそろそろ終わるかと思った矢先に放たれた超特大の爆弾発言。

 あまりにも驚くべき内容に、ラグナ大公が思わず玉座から腰を浮かしている。

 そしてこの場にいるラグナ大公以外の者達、大臣や近衛騎士、宮殿魔術師達までもがざわつき始めた。


「レオニス、それは真か!?」

「ああ。次の満月までに火の女王を納得させることができなければ、ガンヅェラを起こしてでも人族に報復すると言われた」

「何ということだ……レオニス、其方、その場で火の女王を止めることはできなんだのか!?」

「そんなんできる訳ねぇだろう……」


 思わず気色ばむラグナ大公に、レオニスがはぁ……とため息をつきながら反論し始めた。


「火の女王にとって、炎の女王は同じ火属性の大事な家族なんだ。火の女王は普段から炎の女王を『我が妹』と呼んで、ものすごく可愛がっているしな。そんな炎の女王が、人族の欲望によってあわや殺されかけたんだぞ? 火の女王が怒るのは当然のことだし、犯人と同じ人族の俺が止めることなんざ無理だ。つーか、むしろその場ですぐにガンヅェラを起こして報復に出なかっただけでもありがたく思うべきところだ」

「うぬぅ……」


 レオニスのド直球な正論に、ラグナ大公が黙り込む。

 あまりにも衝撃的な話に、ラグナ大公も思わず声を荒げてしまったが、冷静なレオニスに理路整然と諭されればぐうの音も出ない。


「しかし……ガンヅェラが目覚めるようなことになれば、どれだけの被害が出るか……」

「下手すりゃこの国どころかサイサクス大陸全ての国が滅ぶかもな」

「………………」


 愕然とするラグナ大公に、他の大臣や近衛騎士達のざわつきはさらに大きくなっていった。

 そのざわつきの中には「本当に火の女王がそう言ったのか?」「いや、むしろ火の女王が人族を相手にまともに会話するかも疑わしいだろう」「火の女王に直接会ったというのは嘘なんじゃないのか?」といった疑念の声がちらほらと含まれている。


 そうした疑念が起こるのは、レオニス達にとっても十分想定内のこと。何故なら彼らは、金剛級冒険者の真の実力を知る機会など一度もなく今日まで生きてきたのだから。

 そんな彼らに、レオニスが努めて冷静に声をかけた。


「ラグナ大公、一つ頼みがあるんだが」

「……ぬ? 何だ?」

「ここに火魔法が得意な宮廷魔導師はいるか? いたらちょっくら借りたいんだが」

「火魔法が得意な者……それならそこにいる副師団長、クェンティンが適任であろう。……というか、魔導師をちょっくら借りるって、どゆことぞ?」

「百聞は一見に如かずってな。ま、見てな」


 ラグナ大公から指名を受けた、宮廷魔導師団の副師団長クェンティン・バリモア。

 年は三十そこそこの男性で、右側に緩い三つ編みで束ねた鳥の子色の髪が緋色の立派なローブによく映えている。

 しかしレオニスはクェンティンが誰だか分からないので、ピースに小声で尋ねた。


「ピース、クェンティンってどれだ?」

「アレアレ、あの緋色のローブを着ている三つ編み男子ー」

「そっか、分かった、ありがとよ」


 ピースからクェンティンがどこにいるかを教えてもらったレオニス。

 クェンティンに向かって、ちょいちょい、とレオニスが右手で手招きをした。

 あまりにも突然のことに、何が何だか分からない、といった表情のクェンティンがレオニスの前に立った。


「あんた、ここでも火魔法を使えるよな?」

「ぁ、ぁぁ、それはもちろん」

「なら、ここで火魔法を使って火を出してくれるか? その火を媒介にして、火の女王をここに呼び出す」

「!?!?!? そんなことが可能なのか!?」

「可能だから言ってるんだ。ささ、早いとこ頼む。これ以上ラグナ大公を待たせちゃいかんだろ?」

「うぬぅ……」


 何とも気安いレオニスの言い草に、不承不承といった様子でクェンティンが右の手の平をローブから出して「火球」と唱えた。

 前話に続き、レオニス達とラグナ大公の謁見です。

 ホントはもうちょい先まで書きたかったんだけど、時間的問題と文字数もそこそこあるんで一旦ここで締め。

 読者の皆様方にとってはおさらい的な会話が続きますが、話を聞く側のラグナ大公達にとっては初耳なことも多いですからねー。

 そこら辺は復習も兼ねて、きちんと情報を出しておかないとねッ(`・ω・´)


 そして今日はまた特別に投稿が遅くなってしまったのには訳がありまして。

 今日の作者は昼間からコタツを出すために、お片付けやら掃除やらで一生懸命に働いておりました。

 もうね、普段からそんなに掃除しないズボラな怠け者なんで。一念発起しないとコタツも出せないんですよぅぉぅぉぅ_| ̄|●


 しかーし!昼間に頑張った甲斐あって、晩御飯後にはコタツでぬくぬくと足を温めることができて幸せー♪( ´ω` )

 でもねー、このコタツでうっかり寝落ちしないように気をつけなくては…( ̄ω ̄)… ←去年散々寝落ちした人

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