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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ラグーン学園三年生二学期

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1657/1680

第1657話 無名の四人組パーティー

 時は少し遡る。

 夏が過ぎ、秋の気配が満ちてもうそろそろ冬の足音も聞こえ始めてきた十一月半ば頃。

 炎の洞窟に、四人の冒険者らしき人族のパーティーが入っていた。


 一人は大盾を持ち重厚な鎧で身を固めた大男、一人は剣を腰に佩いた軽装備の男。そしてもう二人は女で、一人は華美なローブを着て大きな杖を持ち、一人は上がビキニで下はタイトなミニスカートという超軽装で右手に短剣を握っている。

 歳の頃は、全員二十代前半から半ばあたりか。


 盾持ちの大男と剣の男が前を歩き、短剣の女と杖の女はその少し後ろを歩いている。

 その風体から、大盾持ちの大男はタンク役の重戦士、軽装備の男は剣士、短剣の女はローグ、派手なローブの女は回復役を兼ねた魔術師と思われる。


 彼らは洞窟の入口からすぐのところをずっと彷徨いていて、クイーンホーネット、極炎茸、レッドスライム、マンティコアなど、炎の洞窟を住処とする魔物達が次々と侵入者に襲いかかっていた。

 しかし侵入者四人組は全く怯むことなく、襲いかかってくる魔物達を屠り続ける。

 そして何故か四人は、戦いの最中でも常に周囲をキョロキョロと見回しては観察していた。

 特に洞窟内の壁の至るところで吹き出す炎を注視しているところをみると、何かを探しているように見える。


「チッ、なかなか出てこねぇな」

「あーもう、クッソ暑ぅーい……これだから炎の洞窟は嫌いなのよ!」

「ホントよー!せっかくのメイクが汗で落ちちゃうじゃなーい!」

「おい、うっせーぞ。暑いのはお前らだけじゃねーんだからよ?」

「全くだ。そもそもマスクにゴーグル着けてて、化粧もへったくれもあるか」


 炎の洞窟内部の暑さにブーブーと文句を垂れる女二人に、男二人が腐すように応戦している。

 四人とも、炎の洞窟内のあちこちで常に舞い散る火の粉やガス対策のために、ゴーグルとガスマスクで目と口元を覆っている。

 故にタンク役の重戦士風の男の言う通りで、顔の化粧が暑さによる汗で流れ落ちたとして誰にも分からないだろう。


 しかし、年頃の女性にとって化粧はとても重要なことだ。

 そうした乙女心など全く慮らない男二人の言い草に、女達は「ホンット、こいつらってデリカシーなさすぎー」「そんなんだからモテないのよ」等々言いながらプンスコと怒っている。

 するとここで、ローグの女が一際大きな炎の吹き溜まりを見て叫んだ。


「あッ!今あそこから出てきた!」

「え、マジ? どこどこ?」

「ほら、アレ!」


 若干耳障りな甲高い声で、前方にある炎の吹き溜まりの横を指差すローグの女。

 その指の先には、小さな炎の精霊がいた。


「……あー、あれじゃちっこ過ぎてダメだ」

「えーーー、炎の精霊なら何でもいいじゃーん」

「そういう訳にはいかん。俺らが受けた依頼は『身長30cm以上の大きな身体を持つ炎の精霊を生け捕りにする』だからな。ありゃ30cmどころか10cmあるかないかってとこだろ」

「ちぇー。やーっと炎の精霊が出てきたと思ったのにー」


 剣士の男に成果を却下されたローグの女が、頭の後ろで手を組み口を尖らせながらぶつくさと文句を垂れる。

 やはりこの四人組の狙いは、炎の精霊を捕まえることのようだ。


 ちなみにこの四人組に正式なパーティー名はない。

 四人ともかつては冒険者ギルドや魔術師ギルドに所属していたが、重犯罪を犯したため資格を剥奪されて永久追放されていた。

 剣士の男は二桁の強姦、大盾の男は強盗殺人、魔術師の女は度重なる詐欺、ローグの女は暴行と脅迫。

 どれも情状酌量の余地などない悪質な行為で、犯罪奴隷として鉱山送りにされた直後に脱走したお尋ね者だ。

 その後闇医者のもとで顔を整形してフリーの傭兵となり、犯罪者が集う闇ギルドにスカウトされて今に至る。


 四人はそのまましばらく入口付近で魔物狩りを続けていたが、目当ての大きな炎の精霊は一向に見つけられない。

 これに一番先に痺れを切らしたのが、魔術師の女だった。


「やっぱ入口近くじゃ、ちっこいのしか出ないのかしらね?」

「かもなー。そしたらもうちょい奥に行くか」

「えーもーヤダーーー、疲れたから今日は帰ろうよーーー?」

「お前、全然働いてねぇじゃねぇか……」

「帰るの賛成ーーー!私も疲れたーーー!」


 入口より奥に行くという重戦士の男の提案に、ローグの女が駄々をこねながら拒否している。

 それを剣士の男が軽く窘めているが、魔術師の女までローグの女に乗っかって帰りたがっている。

 怠け者の女二人に、剣士の男が顔を顰めながら呟く。


「カミラもラウラも、ホンットにお前らってば怠け者過ぎじゃね?」

「えーーー、別にいいじゃーん、今日は軽く下見をしに来ただけだしーーー」

「そうよそうよー。それに、あの依頼には期限なんてないんでしょー? だったらのんびりやりましょうよー」


 一刻も早く炎の洞窟から出たい女達の言い草に、男達も負けじと反論する。


「いやいや、そうは言っても早くにとっ捕まえて引き渡すに越したこたないんだからな?」

「ジェイクの言う通りだ。それに、一匹につき50万Gだぞ? しかも一匹だけじゃなくて、何匹でも買い取ってくれるってんだからよ。一匹でも多くとっ捕まえて、お貴族様から大金をせしめないと」

「だいたいだな、年中金欠なのは誰のせいだと思ってんだ? お前らの装備品の買い増しや飲み食いで金が消えてんだぞ?」

「俺のこの大盾なんて、もう三年は使ってるってのによ……」


 楽観的な女達に対して、男達の口からは世知辛い愚痴ばかりが出てくる。

 しかし、こんな呑気な会話をしていても、四人とも炎の洞窟の魔物達と戦い屠り続けている。

 炎の精霊の誘拐を企む悪漢達だが、魔物と戦う実力はそれなりに持ち合わせているようだ。


 そして早期帰還を渋る男達に、女達が婀娜っぽい声で話しかける。


「えーーー、でもーーー、私達だってその分アナタ達にいつもご奉仕(・・・)してるでしょーーー?」

「ほらー、今日私が履いてるTバックをよーく見なさいよ? これはテッド、アンタのリクエストで買ったものでしょ?」

「「………………」」


 女達の逆襲に、男達が声を詰まらせる。

 カミラと呼ばれた魔術師の女は、身体こそ150cm弱の小柄だが胸は大きくて腰もくびれていて艶めかしい身体つきをしている。

 ラウラという名のローグも165cmというスラリとした長身に引き締まった身体をしていて、ビキニにタイトなミニスカートがよく似合うナイスバディだ。


 カミラがジェイクという名の剣士に回復魔法をかけるついでに、その腕に豊満な胸をムニュッ☆と押し付けた。

 ラウラもタイトなミニスカートの後ろ側をピラッ☆と捲り、下に履いている際どい下着(Tバック)をこれ見よがしにテッドに見せつける。

 四人の間に甘い空気など全くないが、肉体関係はしっかりあるらしい。


 女達のあからさまな挑発に、思わず生唾を飲み込んだ男達の喉がゴクリ……と鳴る。


「……そ、そうだな、俺も久しぶりにこんなところに来たせいか、少し疲れたな」

「お、おお、ジェイクもか? 俺もちょっと疲れてきたし、この大盾もだいぶガタがきてるから修理に出したいと思ってたところなんだ」

「装備品のメンテナンスは大事だよな!そしたらさっさとプロステスに戻って、防具屋に出してこい。俺も剣の刃毀れを修理に出すからよ」

「「ヤッター♪」」


 先程までの女達への愚痴はどこへやら。

 女達の誘惑にあっけなく陥落した男達のチョロさに、カミラとラウラがニッコリ笑顔で両手を上げて大喜びしている。


「キャッホーィ!やーっと出られるぅー!」

「そうと決まったら、こんなクッソ暑い場所、とっとと出ましょ!」

「あ、おい、待てって!」


 速攻で出口に駆け出し、洞窟の外に出たカミラとラウラ。

 二人の女の尻を追いかけるようにして、ジェイクとテッドも洞窟の外に出た。

 洞窟の外に出てしまえば、炎の洞窟の魔物達が後を追ってくることは絶対にない。

 しかし、洞窟の外には人喰いパイア等の別の魔物がいる。

 そうした魔物達に襲われないよう、カミラが魔物除けの呪符を取り出して真ん中から破り使用した。


「大盾と剣のメンテナンスって、どれくらいかかるのー?」

「そうだな、フルメンテナンスとなると一週間くらいはかかるか」

「一週間かー。じゃあ、盾と剣が戻ってくるまで……四人でゆっくりと休んで、英気を養いましょ?……ね?」

「「ぉ、ぉぅ……」」


 帰路の安全を確保したことで、プロステスに向かって悠々と歩く四人組。

 外はまだ日も高く空も青いが、もはや四人の頭の中はこれから戻る宿屋のベッドで絡み合うこと以外になかった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 それから約一ヶ月の間に、ジェイク達四人組は何度も足繁く炎の洞窟に通った。

 その間の活動資金は、闇ギルドが支給した前払い金10万Gで過ごしていたが、ちょっと洞窟に入ってはすぐに脱出という体たらくを繰り返したことであっという間に底がついた。


 さすがに一ヶ月も経てば、それなりの成果を出して闇ギルドに提出しなければならない。

 ジェイク達下っ端構成員には、依頼主がダリオ・サンチェスであることは知らされていなかったが、それでもその金払いの良さから『依頼主は貴族だろうな』ということくらいは分かる。

 貴族を敵に回していいことなど一つもないし、何より闇ギルドからの評価が下がるのもよろしくない。

 そのため、十二月も十日を過ぎた頃には四人組も本気を出さざるを得なくなっていた。


「今日こそ炎の上級精霊を捕まえんとな」

「そうねー。いい加減、闇ギルマスのご機嫌も取らないといけないしねー」

「一昨日は結構洞窟の奥まで進んだと思うんだけど、一匹も捕まえらんなかったし……てゆか、炎の精霊、出て来なさ過ぎ!」

「だなぁ。30cm以上の上級精霊なんて、これまでに三回しか遭遇してねぇし」

「その三回だって、全ーーー部逃げられたし!ホンット、ムカつくぅーーー」


 プロステスの街を出て、炎の洞窟に向かう道中で愚痴り合う四人。

 ここ最近は、何とか依頼達成すべく四人もそれなりに努力はしていたのだが。なかなか成果に結びつけることができず、四人のストレスは溜まっていた。


 するとここで、ムカつくぅーーー!と言っていたカミラがふと思い立ち提案した。


「……ねぇ、そしたらさぁ、もういっそのこと炎の女王を捕まえちゃえば良くない?」

「ちょ、おま、何バカなこと言ってんだ。俺らの実力で、炎の女王をどうこうできる訳ねぇだろ?」

「炎の女王を討伐するんじゃないわよ? 戦って弱らせてから、外に連れ出せばいいんだし」

「いやいや、炎の女王をどうやって闇ギルド本部まで連れていくんだよ……プロステスは絶対に経由できんぞ? 炎の女王の誘拐なんてプロステスの領主にバレたら、それこそ俺達が絞首刑なるわ」

「それもそっか……」


 カミラの突拍子もない案に、ジェイクとテッドが大慌てで止める。

 男二人の必死の説得に折れかけたカミラだったが、ラウラは違った。


「……カミラの案、いいかも」

「「「!?!?!?」」」

「要はさ、炎の上級精霊を二、三体捕まえられればいい訳だからさ。炎の女王を人質に取って、朱雀に『炎の上級精霊三体と引き換え』って交換条件を出して連れ出せばいいんじゃない?」

「「「………………」」」


 ラウラの案に、他の三人が思わず黙り込む。

 おそらく自分達と同等サイズの炎の女王を誘拐して連れ出すのは無理だが、炎の上級精霊三体分なら袋に詰め込んで隠したまま持ち歩くことは可能だ。

 そのための耐火耐熱性を付与した袋(闇ギルドからの支給品)も複数所持しているし、炎の女王その人を誘拐するより余程現実性がある。


「……よし、ラウラの案でいくか」

「そしたら今日は、魔物除けの呪符を使って最奥まで一直線で行こう」

「カミラ、私達に耐火耐熱のバフと炎の女王への氷魔法攻撃をよろしくね」

「OK、任せといてー」


 今日の作戦と方針が決まり、テッドが魔物除けの呪符を使いカミラが四人全員に身体強化魔法をかけるなどして準備を着々と進めていく。


「今日こそは標的を入手してやる」

「これでこのクッソ暑くて退屈な洞窟ともおさらばよ!」

「皆、気を引き締めて行くぞ」

「「「おう!」」」


 四人は気勢を上げながら、もう何度目かも分からない炎の洞窟への突入をしていった。

 非常に胡散臭い四人組の話です。

 ンまーーー、如何にも悪役然とした四人組ですが。悪役でもしばらくは話の中に出てくるので、一応全員に名前をつけました。

 てゆか、黒幕のダリオん時もそうだったけど。可愛げのない悪役サイドを書くのって、ホンット楽しくなーい(;ω;)

 でもまぁダリオよりはこっちの四人組の方がまだマシな気はするけども。多分気のせいでしょう。キニシナイ!(ノ`д)ノ===┻━┻

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