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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ラグーン学園三年生二学期

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1655/1677

第1655話 炎の洞窟の異変

 ラウル所有の大型焼却炉から、突如勢いよく飛び出してきた炎の中級精霊。

 あまりにも突然のことに、ラウルがびっくりしながら炎の中級精霊に声をかけた。


「お、おい、どうした? こっちに来るなんて、何かあったのか?」

『……ッ!!!』


 慌てながら話しかけるラウルの胸の中に、炎の中級精霊がまっしぐらに飛び込んできた。

 火の精霊や炎の精霊がラウルのところに遊びに来るのは、然程珍しいことではない。

 だが、なるべくラグナロッツァの屋敷の厨房の方にいる時に来るように、と言い含めてある。

 それは、このカタポレンの森の方に来るのはさすがに危な過ぎるから、という至極真っ当な理由からなのだが。


 そしてそれは火の精霊や炎の精霊達もちゃんと理解していて、ラウルに会いに来るのはいつもラグナロッツァの屋敷の厨房だった。

 しかし、今日はこのカタポレンの畑の焼却炉の方に来ている。

 これは、彼女達が行き来する場所を選んで動く余裕がないことの現れ。つまりは緊急を要する案件であることを、ラウルは即座に察していた。


『ラウル、助ケテ……女王様ト、フラム様ヲ、助ケテ……!』

「炎の洞窟で何かあったんだな!?」

『トテモ、怖クテ、悪イ、人間ガ、来タノ……』

「悪い人間……そいつらは何人いるか、分かるか?」

『……四人ハ、イタト、思ウ……』

「………………」


 ラウルの問いかけに、炎の中級精霊が涙ぐみながらも懸命に答える。

 小刻みに震える身体で必死に受け答えする彼女の様子からも、炎の洞窟で何らかの異変が起きたことは間違いない。

 しかもそれは『怖くて悪い人間の四人組』が引き起こしているという。

 ラウルはその狼藉者に心当たりがあった。


 それは、乙女の雫を狙う輩共。

 氷の洞窟で氷の精霊達を拉致しようとして、氷の女王に返り討ちに遭って殲滅させられた傭兵集団。

 そいつらと同じような奴らが、今度は炎の洞窟に魔の手を伸ばしているのだ。


 本当なら今すぐに、ラウル一人だけでも炎の洞窟に単身乗り込みたいところなのだが。炎の中級精霊の話によると、少なくとも四人以上のパーティーで侵入しているらしい。

 そいつらの実力の程は分からないが、余程の実力者―――それこそレオニスレベルの強さでもない限り、ラウルの敵ではないだろう。

 しかし、四人組となると話は変わってくる。


 一人一人の力はラウル以下であっても、連携プレーで襲いかかられたらラウル一人で立ち向かうのは厳しくなる。

 今日は平日の金曜日で、ライトはラグーン学園に通っている。

 さすがにラウルも最初からライトを巻き込むつもりはないが、それでもここはせめてレオニスにも連絡を取って二人で炎の洞窟に向かうべきだ―――ラウルはそう考えた。


「……確か今日は、ラーデといっしょにコルルカ高原に出かけるって言ってたな……」

『コルルカ、高原……?』

「うちのご主人様、レオニスの行き先だ。今炎の洞窟にいるという悪い奴らを退治するのに、俺一人じゃ心許ない。万全を期すためにも、ここはレオニスの力を借りておきたい。炎の精霊、少しだけ回り道をするが、いいか?」

『ウン……デモ、少シデモ、早ク、炎ノ洞窟ニ、戻ラナイト……』

「分かってる。コルルカ高原なら、ここにある転移門で辻風神殿に移動してすぐに行ける距離だ」


 ラウルの提案に、炎の中級精霊が戸惑いながらも頷く。


 今朝ラウルがレオニスと会話した時に「今日はコルルカ高原に出かける」と言っていた。

 その目的は二つあり、一つはコルルカ高原奥地にいる金鷲獅子アウルムの様子を見に行くこと。

 もう一つは、辻風神殿に立ち寄って風の女王と青龍ゼスに会って二者の様子を見てくること。

 そしてその話をラウルの横で聞いていたラーデが『アウルムに会いに行くならば、是非とも我も連れていってくれ』と頼み、レオニスもそれを快諾していた。


 レオニスを連れてくるには、辻風神殿に行けばいい。

 幸いにも、既に辻風神殿にもレオニス謹製転移門(通称:『属性の女王と神殿守護神を繋ぐネットワーク』)が設置済みである。

 レオニスも午前中にカタポレンの畑にある転移門から辻風神殿に移動していったし、運が良ければ行き先の辻風神殿でレオニスを捕まえることができるだろう。


 そうと決まれば、一刻も早く移動しなければならない。

 ラウルは出かける支度を整えるべく動き出した。


「炎の精霊は、これからどうする? すぐに炎の洞窟に戻るか?」

『ウウン……今、炎ノ洞窟ハ、悪イ、奴ラガ、暴レテテ……酷イ、コトニ、ナッテル……』

「そんなにか……そしたらここに来た焼却炉から、エリトナ山に避難するか?」

『ワタシ、一人デハ、エリトナ山ニ、行クノハ、無理……上ノ、精霊デナイト、行ケナイノ……』


 己の無力さに、炎の中級精霊が悲しそうに顔を歪めながら涙する。

 しかし、彼女の涙は頬を伝い零れ落ちると霧散して消えてしまう。

 乙女の雫として形を保っていられるのは、やはり女王のみのようだ。


 俯き涙する炎の中級精霊に、ラウルがそっと手を差し伸べた。


「そしたら俺の肩に乗れ。俺といっしょにうちのご主人様を探しに行こう」

『……イイノ?』

「もちろん。この焼却炉の火種は消していかなきゃならんし、もとよりお前一人をここに残して行く訳にもいかんしな」

『ラウル、アリガトウ……』


 ラウルが差し伸べた手に炎の中級精霊が乗り込み、その右肩にそっと乗せた。

 その後ラウルは急いで大型焼却炉の火を落とし、黒の天空竜革装備に着替えてから転移門で辻風神殿に移動していった。

 ちと文字数少なめですが、キリのいいところで一旦締め。

 ……あー、とうとうこの日が来てしまいました……

 作者は基本平和をこよなく愛する生粋の平和ボケ凡人なので、事件的な話を書くのは割とというかかなりしんどかったりします。

 ですが、世の中平和な日常生活ばかりじゃないという、厳しい現実があるのですよねぇ……

 はぁー、しんどいっつか胃に穴が開かない程度に執筆頑張ります……

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