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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ラグーン学園三年生二学期

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第1649話 不思議の森の再訪

 リンドブルムの住処である『修験者の迷宮』から、ライト達はファフニール達が住む『不思議の森』に移動した。

 初めて訪れた前回同様、鬱蒼とした森が広がる中に蛍のような青白く光る何か(森のランタン)がふわふわと浮遊している。


「この蛍みたいなの、前に来た時も見たけど……綺麗だよねぇ」

「ああ。地上では決してお目にかかれない絶景だな」


 不思議の森の不思議な日常空間に、ライトとラウルが感嘆を漏らす。

 この幻想的な光景は、きっとこの先何度見ても飽きることなく都度感動することだろう。

 その一方で、レオニスだけは周囲への警戒を怠らなかった。


 今回もリンドブルムやサマエルとともに来ているので、ここら辺に生息している魔物達は近寄ってこない。

 しかし、そのことに胡座をかいて油断する訳にはいかない。

 何しろここは、サイサクス世界とは違う不思議世界。いつ何が起こるか分からない奇天烈世界なのだから。


 すると、程なくしてライト達の前にチュシャ猫が現れた。

 巨大な頭だけの猫が、リンドブルムに声をかけた。


『リンリン嬢、やっほーーー☆』

『チュシャ!こないだぶりね!元気にしてた!?』

『これこの通り、元気も元気だニャハハハハ☆』

『それは良かったわ!フレジャちゃんのことも、手紙で教えてくれて助かったわ。ありがとうね』

『どういたしましてにゃ☆』


 リンドブルムとチュシャ猫が仲良さげに挨拶を交わし、リンドブルムの方からチュシャ猫にお礼の頬ずりをしている。

 リンドブルムがファフニールの子の孵化を知ったのは、このチュシャ猫からの手紙のおかげだという。


 数日前に、不思議の森に通じる床に一通の手紙がぽつんと置かれていて、その手紙を出したのがチュシャ猫だった。

 何でもファフニールとフレア・ジャバウォックに『うちの子が無事生まれたから、リンドブルムに知らせてくれ』という依頼を受けて手紙で連絡したのだとか。

 チュシャ猫曰く『リンリン嬢達は、比較的簡単にこっちとあっちを行き来できるにゃけど。ボク達不思議世界の住民がそっちに行くのって、実はすんげーしんどいにゃよ』『ンだから、どーーーしてもそっち側に連絡したい時は、お手紙を出すのが一番簡単楽ちんにゃ☆』ということらしい。

 異なる世界を渡るのに、簡単とかしんどい等の差があるとは初耳だが、チュシャ猫がそう言うのだからそれは間違いなく真実なのだろう。


 ファフニールの住処に向かう道中、レオニスがチュシャ猫に声をかけた。


「なぁ、チュシャ猫の好物は宝石だったよな?」

『ン? そうにゃよー』

「そしたらこれを受け取ってくれないか? 前回俺達まで世話になった分も合わせて、今日はいろんな宝石を持ってきたんだ」

『いろんな宝石!? にゃににゃに、どんなのか見せてにゃー☆』


 空間魔法陣を開いて麻の巾着を取り出すレオニスに、チュシャ猫はオレンジ色の目を爛々と輝かせながら食いついてきた。

 レオニスの手のひら二つ分ほどもある巾着。巾着の口を締めている紐を緩めて、中身をチュシャ猫にも見えるようにした。

 ダイヤモンドにルビー、サファイア、エメラルドといった高級かつ定番の宝石の他にも、アメジストやトパーズ、トルマリンにオパールといった色とりどりの美しい宝石類が袋の中にぎっしりと詰まっていた。


 ちなみにこの宝石類、産地は幻の鉱山でセイの手によって美しく研磨されたカッティング済みの宝石だ。

 何故原石ではなく研磨済みの宝石を用意したかというと、そっちの方がより綺麗でチュシャ猫のお気に召すかも?とレオニスが考えたためだ。

 原石より格段に美しい煌めきを放つ宝石を見て、チュシャ猫の目がますます大きく見開かれていく。


『おおお……どれもすっごく美味しそうにゃ♪』

「これだけあれば、案内料として足りるか?」

『もちろんもちろん♪ むしろ貰い過ぎな気もするにゃけど……これ、全部貰ってもいいにゃか?』

「もちろん。こっちだって大人数で案内してもらうんだからな、人数分として考えりゃ妥当さ」

『そっか!そゆことならありがたくいただくにゃ☆』


 最初は若干戸惑いがちだったチュシャ猫だったが、レオニスの言い分を聞いてその顔がパァッ!と明るくなる。

 チュシャ猫の右側のヒゲがクイッ、クイッ、と動いたかと思うと、レオニスが持っていた宝石入りの麻袋が勝手に宙に浮いた。

 そして麻袋がチュシャ猫の頭の上に乗っかったかと思うと、スーッ……と消えていった。


『ありがとねー、後でゆっくり美味しくいただくにゃ☆』

「ああ、口に合うといいんだかな」

『それは大丈夫、あれは絶対に美味しいにゃ!だって、すんげー美味しそうな匂いがプンプンしてたにゃもん!』

「そっか、それならいいが……って、宝石にも美味い不味いや匂いがあるのか?」

『もちろんにゃ!原石の野性味溢れる味わいも捨てがたいけど、さっきのように綺麗に整えられた宝石はより洗練された、それはそれは極上の深ーーーい味わいににゃるのにゃ!』

「そういうもんなのか……」


 宝石の味わいを熱く語るチュシャ猫に、レオニスが後退りながら苦笑いしている。

 宝石に美味い不味いがあるというのも不思議な話だが、チュシャ猫は宝石を食べることで力を得るというのだから、そこに美味しいと感じる味覚があってもおかしくはないだろう。

 そして原石ではなく研磨済みの宝石をチョイスしたレオニスの選択は正しかった。

 その先見の明と野生の勘は賞賛に値する。


 美味しい報酬を前払いで貰って超ご機嫌なチュシャ猫に、リンドブルムも嬉しそうに話しかける。


『チュシャ、美味しい宝石をたくさん手に入れられて良かったわねぇ♪』

『うんうん、これもリンリン嬢のおかげにゃ☆ てゆか、人族からこんなにたくさんの宝石を貰えるなんて、思ってもみにゃかったにゃよ』

『そうねー。人族って、巨頭猫族に負けないくらい宝石が好きな種族だって聞くものねぇ』

『そそそ。でもその分、宝石の研磨の腕や使い方なんかはボク達より人族の方が上にゃけどね』

『それは言えてるわね』


 リンドブルムとチュシャ猫が、きゃらきゃらと笑いながら話している。

 チュシャ猫達は宝石を食糧として捉えているが、人族の場合宝石を食べることは絶対にない。

 だが、人族にとって宝石とは富の象徴であり、時として手にした者の権力をも大きく押し上げる。

 特に大粒の宝石は、所持しているだけで輝かしいステータスとなる。

 宝石の魅力を最大限に引き出すべく、人族の間で研磨技術が向上していくのも当然なのである。


 ちなみにレオニスやリンドブルム、チュシャ猫がそんな会話をしている間、サマエルは周囲をふよふよと浮いている森のランタンを手掴みしようとしては逃げられていた。

 この森のランタン、動きが緩慢な割にはサマエルが捕まえようとするとスルリと逃げてしまう。

 愚鈍なようでいて実は機敏な動きもできるとか、なかなかに侮れない。


 そうして移動していくうちに、見覚えのある洞窟の入口が見えてきた。

 そこは、前回ライト達が訪れたファフニール夫妻の新居の入口。

 パッと見では何もないが、きっとここには前回同様に今でも強固な結界が張られているに違いない。

 前に思いっきり結界にぶつかって顔面アタックしてしまったリンドブルム。二度と同じ轍を踏まぬよう、洞窟の中に向かって大きな声で呼びかけた。


『ファフ兄、いるーーー? いたらこの結界を解いてーーー!ファフ兄の可愛い可愛い妹と弟、そして父上と父上の大家さん達がフレジャちゃんと可愛い赤ちゃんのお見舞いに来たわよーーー!』


 リンドブルムが大きな声で洞窟の中に呼びかけながら、洞窟の入口を青紫色の鋭い爪でチョンチョン、と突ついている。

 その爪の先は見えない何かにコツン、コツン、と当たっているところを見ると、やはりここには未だに強固な結界が存在しているようだ。


 実際生まれたばかりの赤子がいるなら、赤子を守るための結界は張ってあって当然だ。

 そのことはリンドブルムにも理解できるので、今回は無理矢理破壊してでも中に入ろうとはしないし、先に声をかけて待機しているのである。


 そうして程なくして、洞窟の中からファフニールが現れた。

 ファフニールが洞窟の出口の手前まで来て、リンドブルム達に話しかけた。


『おお、麗しくも騒がしい我が妹よ、よくぞ来てくれた。フレアが心待ちにしていたぞ』

『麗しいはいいけど、騒がしいは余計よね?』

『そんなことはない。お前が騒がしいのは事実なのだからして』

『ファフ兄って、ホンット余計な一言が多いわよね……フレジャちゃんにまで余計なこと言ってないでしょうね?』


 ファフニールにシレッと騒がしい扱いされたフレア・ジャバウォックが、ムスーッ……とした顔で兄に文句を言うも、華麗にスルーどころかダメ押しまでされる始末。

 そんな妹のご機嫌などキニシナイ!とばかりに、ファフニールはラーデ達にも声をかけた。


『父上、ようこそおいでくださいました。サマエルも、父上達の案内、大儀であった』

『このサマエル、ファフ兄様にお会いできて嬉しゅうございます。今日は父上達とともに、ファフ兄様のお子に会いに参りました。本日はお目通り叶いますでしょうか?』

『もちろんだとも。我が妻フレアも、皆に会えるのを楽しみにしておった』

『ありがとうございます』


 敬愛する兄からの声がけに、サマエルが恭しく答えている。

 そしてラーデもファフニールに労いの言葉をかけた。


『ファフニールよ、其方もとうとう己が血を引く我が子を持つ父親になったのだな』

『おかげさまで……父上も、とうとうお祖父様(じいさま)になられましたね』

『我がお祖父様、か……斯様な日が来るとは、夢にも思わなんだ』


 血を分けた子ファフニールがを得たことに喜ぶラーデ。

 語り口こそいつもと変わらず静かなものだが、その表情はこの上なく喜びに満ち溢れていた。

 そんな男達の静かな喜びなどキニシナイ!とばかりに、今度はリンドブルムが二人の間に割り込んできた。


『ささ、こんなところで立ち話も何だし。ファフ兄、早いとこ結界を解いて私達を中に入れてくれる?』

『我が妹は、麗しくも騒がしいだけでなくせっかちだな……まぁ良かろう、フレアも我が子とともに中で待っておるしな』

『だぁーからぁー、せっかちとか余計な一言が多過ぎるっての』


 再び兄に腐された妹がブチブチと文句を言っている。

 それすらもファフニールは華麗にスルーし、結界を解いた。


『さ、結界を解いたぞ。早く入れ、全員入ったらすぐに結界を張る故』

『何よぅー、ファフ兄こそせっかちなくせにー』

『前に来た人の子らも、父上達とともに歓迎しよう』

「ファフニールさん、ありがとうございます!」

「「お邪魔しまーす」」


 さっさと中に入れと促すファフニールに、リンドブルムが未だにブチブチと文句を垂れる。

 親や弟妹だけでなく、ライト達までちゃんと歓迎してくれるファフニールは何気に紳士である。

 ファフニールの気遣いに、ライト達も礼を言いつつ洞窟の中に入っていった。

 舞台はリンドブルムの自宅?から、ファフニール夫妻が住む不思議の森へ。

 そして不思議の森の案内猫、チュシャ猫も再登場です。

 不思議の森とチュシャ猫の初登場が第1497話なので、前回に倣って不思議の森の光景やらチュシャ猫の言動を再現?しているのですが。

 たかだか150話ちょい前のことを、いちいちサルベージしないときちんと書けない己の記憶力の脆弱さが憎い(;ω;)

 でもまぁね、たかだか150話と言いつつリアル時間で五ヶ月半は経過してるんですが(´^ω^`)

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