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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ラグーン学園三年生二学期

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第1647話 苗木作りと豪快な男の高潔な精神

 南の天空島での濃密な一日を無事終えた翌日。

 ライト達は朝からそれぞれ元気に動いていた。


 まずラウルは、南の天空島に持っていく林檎と桃の苗木作りに取りかかった。

 直径、深さともに1メートルの巨大な植木鉢を十個出し、カタポレンの畑の土を入れる。

 そこに林檎と桃の種を一鉢につき一個づつ植えて、水をたっぷり与える。


 ちなみにこの植木鉢は、ガーディナー組に発注して作ってもらった特注品だ。

 ガーディナー組は煉瓦も作っているので、植木鉢を作るのもお手の物。

 しかし、さすがに1メートル級の植木鉢は通常販売品にはなかったので一個につき500Gでオーダーメイドした、という経緯である。


 林檎と桃の種に与える水は、昨日南の天空島で採取した温泉水にした。

 温泉水の魔力の高さもさることながら、今から育てる林檎と桃の木は南の天空島に植える予定なので、今から南の天空島の水に慣らしておこう!という訳である。


 ライトは朝の魔石回収ルーティンワークを終えた後、ラウルと合流して苗木作りの手伝いをしていた。

 畑に種を植えて水をたっぷり与えた後に、ラウルとライトが手分けして種の一つ一つに植物魔法をかけていく。


 種から芽が出てニョキニョキと育ち、高さが30cm程度になったところで支柱を括りつけて成長を支える。

 ここでまた南の天空島の温泉水をたっぷりと与えてから、再び植物魔法をかけて20cm伸びる毎に支柱を取り替えて、を繰り返した。


 そうして苗木が1メートルくらいに成長したところで、ラウルの空間魔法陣に鉢ごと仕舞い込んだ。

 十本一組の苗木を作るのに、二人がかりでも約一時間を要した。

 この一連の苗木作り作業を、ラウルはライトとともに何度も繰り返し行い順調に苗木の増産に励んでいった。

 ちなみにラーデはできることがほとんどなかったので、南側の畑でずっとのんびりと日向ぼっこをしていた。


 一方でレオニスは、夜明け直後に森の警邏に出かけて午前十時頃に帰宅し、少しも休むことなくそのままラグナロッツァの屋敷に移動していた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 レオニスはラグナロッツァの屋敷に移動して早々に、冒険者ギルド総本部に向かった。

 その目的は、サマエルが住む南の天空島に転移門の設置許可を得るためだ。

 受付窓口にいるクレナにパレンがいることを確認し、ギルドマスター執務室に向かう。

 執務室のドアを二回ノックしてから扉を開けると、そこにはいつもと変わらず書類仕事に追われているパレンの姿があった。


 いや、姿があったと言っても実際にパレンの姿が見える訳ではない。

 これまた相変わらず書類の山に囲まれて、紙の峰々の向こう側で謎の眩い光が発生しているのみ。

 これを見て、レオニスはいつも『あ、マスターパレンがいるわ』と察するのだ。


 そしてパレンの方も、レオニスの顔が直接見えないにも拘わらず陽気な声で話しかけてきた。


「おお、その気配はレオニス君かね?」

「ご名答。マスターパレンは今日もクッソ忙しそうだな」

「うむ。私はこの後一時間後に、ラグナ宮殿で開かれるギルドマスター会議に出かけなければならんからな」

「うへぁー……ギルドマスターってのは本当に大変な仕事なんだな……」


 今日も今日とて超多忙なパレンに、レオニスが心底感嘆している。

 とてもじゃないが、自分には絶対に務まらん仕事だ……とレオニスはいつも思う。


 そうしていつものようにレオニスがソファに座って待ち、パレンの第一秘書シーマがお茶とお茶菓子を持ってきてレオニスの前に置く。

 芳しいコーヒーの香りを楽しみながら五分程待った頃、書類仕事に一区切りがついたパレンが席から立ってレオニスの前に座った。


 今日のパレンの姿は『カントリーファッション』がテーマ。

 青いデニム地のサロペットに濃桃色のポロシャツ、頭には大きな麦わら帽子を被り手には厚手の軍手タイプのグローブまで嵌めている。

 しかもサロペットやグローブはところどころ本当に泥汚れしていて、それは先程まで本当に農作業をしていたかのような印象を与えるという凝りようだ。


 そして長閑な田舎で農作業に勤しむ農夫のような、本来ならのんびりゆったりとした格好のはずなのだが。ムキムキマッチョのパレンが着ると、どうしてもパッツンパッツンになって暑苦しいオーラが加わるのは致し方ない。

 これを見たレオニスが、早速脳内レビューを開始している。


 おお、今日のマスターパレンは農作業用の出で立ちか。

 確かになー、今は秋真っ盛りでまさに『実りの秋』、『収穫の秋』ド真ん中だし。稲刈りやら果物、野菜の収穫で農家は大忙しなんだろうな。

 つーか、マスターパレンが被っている麦わら帽子から後光がダダ漏れなんだが。あの後光だけで、十分に日光の代わりになるんじゃね?

 しかし……そうだな、自らの手で収穫を行うというのは自然の恵みや食べ物のありがたさを学べる、とても良い機会だよな。

 ギルドマスターという高い地位に甘んじることなく、食育の重要さをも説いてみせる……さすがはマスターパレンだ!その高潔な精神は、俺も大いに見習わなきゃならんな!


 偉大なるパレンの志を読み解くような、レオニスの脳内ファッションレビュー。

 果たしてそれがパレンの意図するところと合致しているかどうかは定かではないが、前向きで肯定的なレビューなので問題はなかろう。


 シーマがパレンの前にもコーヒーとお茶菓子を出した。

 楚々としたシーマの気遣いに、パレンが輝く笑顔で「ありがとう」と労いの言葉をかけながら、ふぅ……と一息つきつつ早速コーヒーを啜る。

 それはまるで本当に稲刈り後か芋掘りの後の休憩、寛ぎのひと時のようだ。


「さて……待たせてすまなかったな、レオニス君」

「いや、俺の方こそいつも急に訪ねてすまんな。マスターパレンは本当にクッソ忙しいってのに」

「いやいや、レオニス君の訪問ならいつだって歓迎するさ。君が私のもとに来る時は、無駄な要件など一つもないことを知っているからな」

「ハハハ、あんたには敵わんな」


 いつだってレオニスを歓迎する、と断言するパレン。

 その顔はレオニスに対する絶対的な信頼が寄せられていて、真向かいに座るレオニスにもそれがひしひしと伝わっていた。


「すまんが、今日も新しい転移門の設置許可をもらいに来た」

「ぬ? 今度はどこに作りたいのだね?」

「実は昨日、南の天空島に出かけてな―――」


 レオニスが昨日の天空島での話をパレンに話して聞かせる。

 南の天空島には皇竜メシェ・イラーデの実子の一人、サマエルがいて多数の天空竜を従えて暮らしていること。

 その南の天空島で、サマエルが所望する林檎や桃の木を植える約束をしたこと。

 天空島に果樹園を作り上げるにはラウルの指導や助力が欠かせないこと、そしてそのためにはカタポレンの家と繋がる転移門が必要なことを説明していった。


「ふむ、つまり皇竜の実子や天空竜との交流を深めるために必要、ということだな?」

「ああ。ラーデは今うちに居候という形でいっしょに暮らしているし、ラーデの家族であるサマエルとも仲良くしたいってのももちろんあるんだが……皇竜一族を敵に回すようなことは、極力というか絶対にしたくないんだ」

「ほう……レオニス君にそこまで言わせる程の者なのかね?」


 レオニスにしては珍しい物の言い方に、パレンが凛々しい釣り眉をピクリ、と動かしつつ反応する。

 確かに高位の存在を相手にするなら、決して揉めることなく友好的な関係を築いていくのが最善だというのは、パレンにだってすぐに理解できる。

 しかし、もともとレオニスはそういった利害関係をあまり気にする方ではない。

 己が心に従い、良いものは良い、ダメなものはダメ、とハッキリ分ける。それがレオニスという男だ。

 そんなレオニスが、『敵に回すようなことはしたくない』とまで言うということに、パレンが興味を示すのも当然だった。


「昨日はとりあえず、地面の土だけでも耕しておこうと思って土魔法で整備してたんだがな? そこで予定外の温泉が出てきちまって、何だかんだで温泉まで作る羽目になってな」

「温泉? 天空島には温泉も湧くのか……」

「それは俺も完全に予想外だったがな。……で、余分な水を捨てるための排水路を作った時に、サマエルが片手を翳しただけで山を貫通する穴を一撃で作っちまった」

「何と……それは恐るべき攻撃威力だな」

「ああ。万が一、あれが地上に向けられたとしたら……このラグナロッツァでさえも、一晩保たずに滅ぼされるだろうよ」

「だろうな……」


 レオニスが語って聞かせたサマエルの尋常でない強さに、パレンの顔つきも真剣になる。

 サマエル単体ですら、片手で山に穴を開ける程の高威力攻撃ができるというのに。そこにさらに数百頭もの天空竜を従えて強襲されたら―――人里などひとたまりもない。


 いや、パレンがいるラグナロッツァには魔物を弾く結界があるので多少は保つかもしれない。

 しかし、それとて一時しのぎにしかならないだろう。

 そんな恐るべき存在が天空にいると分かったからには、敵対行為は避けるべきである。


「レオニス君の話は分かった。南の天空島への転移門設置を許可しよう」

「ありがとう!」

「ただし、その運営と管理はくれぐれも慎重に取り扱うように。……ま、そこら辺はレオニス君なら重々承知しているとは思うが」

「もちろんだ。転移門の使用可能条件には『ラーデとサマエルに関する何らかの許可を持つ者』という設定をつけるつもりだ」

「ならば問題はないな。皇竜一族と交流を持つ者など、レオニス君達を於いて他にはおらんからな」

「そゆこと」


 きちんとレオニスに釘を刺すパレンに、レオニスも真剣な眼差しで答える。

 例えば転移門の使用条件に『ラーデの翼とサマエルの翼の羽根の両方を持つ者』という項目を設定すれば、間違いなくレオニス達にしか使えない転移門となる。

 こうしておけば、他者に悪用される危険性は避けられるので安心安全!という訳だ。


 するとここで、シーマがパレンに声をかけた。


「マスターパレン、そろそろお出かけのお支度をなさいませんと」

「……おお、そうだな。ゆっくりともてなすこともできなくてすまんな、レオニス君」

「いやいや、ここでゆっくりもてなしてもらおうとは思わんさ。むしろマスターパレンの貴重な時間を割いてもらったことに、俺の方こそ感謝しなきゃならん」

「ハッハッハッハ!相変わらずレオニス君は謙虚だな!」


 シーマの進言にパレンが申し訳なさそうにレオニスに謝罪する。

 先程も言っていたように、パレンはこれからギルドマスター会議に参加しなければならない。

 と言っても、パレンは余程の緊急事態でもない限り行き先によって服装を替えることはないので、今から行われるギルドマスター会議にもカントリーファッションのままで臨むのだが。


 レオニスがコーヒーの残りをクイッ!と飲み干し、徐にソファから立ち上がった。


「じゃ、俺ももう行くわ。新しい転移門設置の手続きは、クレナんとこで申請すればいいよな?」

「ああ、そうしてくれ。天空島は空中を浮遊する島だから、位置の固定は難しいだろうが……まあ、そこは北の天空島という前例があるからな。それに倣えば問題はなかろう」

「了解。マスターパレンも会議頑張ってな」

「ありがとう。レオニス君も何かと大変そうだが、これからもよろしく頼むぞ」

「おう、任せとけ!」


 眩しい笑顔でレオニスを励ますパレンに、レオニスもまた輝かんばかりの笑顔でニカッ!と笑いながら応える。

 二人は固い握手を交わした後、レオニスがギルドマスター執務室を退室してラグナロッツァの屋敷に帰っていった。

 南の天空島での卵の孵化&温泉三昧の次は、いよいよラーデの初孫とご対面!

 ……の前に、それぞれ何だかんだと働いていて、まだ出かけるに至っていないという…( ̄ω ̄)…

 てゆか、前の日にあんだけいろいろと動きまくっていたのに。君達、疲れないの?と思う作者。

 体力のないダメダメ作者だったら、あんなに働いた翌日なんてヘトヘトのヘロヘロで昼まで寝ちゃいますて><


 そして、久しぶりにマスターパレンのご登場。

 ぃぇね、ホントは『レオニスは冒険者ギルド総本部に出向き、パレンに転移門設置の許可を得ていた』とかの短い一文で済ますつもりだったんですよ?(=ω=)

 でもでも!せっかくのパレン様の登場なのに!コスプレ披露する機会を逃していいの!?という、謎の強迫観念が湧いてですね_| ̄|●

 結局マスターパレンのコスプレ披露しちゃいました♪・゜(゜^ω^゜)゜・ ←泣き笑い

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