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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ラグーン学園三年生二学期

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第1636話 皆で食べる昼食とサマエルの複雑な心情

 ひとまず互いの自己紹介を終えたラキ達ご近所さんとサマエル。

 その後はハドリー達を介して和やかなひと時を過ごした。


 ハドリーが三人がかりで敷地内の泉の水を木製カップで汲み、サマエルやラーデに振る舞う。

 その水を飲んだサマエルが、目を見張りながら呟く。


『これは美味い……こんなにも魔力に富んだ泉の水は、私の長き生に於いても生まれて初めてだ』

『でしょでしょー♪』

『ツィママも僕達も、このお水がすーっごく大好きなんだー!』

『皆このお水を毎日飲んでるのよー』

『このお水は美味しいだけじゃなくて、本当に身体の中に力が湧いてくるの!』


 ハドリー達がくれた水を絶賛するサマエルに、ハドリー達がドヤ顔したり嬉しそうに話す。

 この泉は、今年の夏に目覚めの湖の水の女王とアクアからユグドラツィに誕生日プレゼントとして贈られたもの。

 泉の器作りにはラキとニルも尽力し、これまでにない大きな泉を作り上げた。

 その大きさは直径50メートルくらいの円形で、深さは約100cm。

 かなり広い表面積に反して水深が浅めなのは、小柄なハドリー達が万が一にも深みにはまって溺れたりしないように、という配慮からである。


 そしてこの泉の名は、皆で考えて『神樹の泉』と命名した。

 本当は『ユグドラツィの泉』なども候補に挙がったのだが、当のユグドラツィがものすごく恥ずかしがって認めなかった。

 もちろんその時にレオニスが出した案『ツィ池』も、速攻で却下されたのは言うまでもない。


 ハドリー達はラキやヴィヒト、そして三頭の天空竜にまで木製カップで水を振る舞った。

 しかし、ラキはともかく天空竜には普通サイズの木製カップは小さ過ぎて、中の水などとても飲めそうにない。

 オロオロと戸惑っている天空竜を見かねたレオニスが、空間魔法陣から木製巨大桶を取り出した。


「リィ、そのカップじゃ小さ過ぎてこいつらには飲めんだろう。俺が大きなコップを出してやろう」

『レオパパ、ありがとう!よろしくね!』


 巨大桶を取り出したレオニス、神樹の泉の水を並々と汲んで天空竜達の前に運んだ。

 この巨大桶、ライトが普段シルバースライム用のお風呂やビースリー後の入浴に愛用している巨大桶よりも一回り大きい。

 直径約200cmで深さも100cmくらいあるのだが、これに水をほぼ満杯に入れて軽々と運ぶレオニスの何と頼もしいことよ。


 そうして運ばれた神樹の泉の水を前に、三頭の天空竜はどうしていいか分からず主であるサマエルをちろり、と見遣る。

 その視線に対し、サマエルは無言のままコクリ、と頷いた。

 これは『うむ、飲むがよい』というサイン。

 主の許可を得た天空竜達は、一斉に巨大桶の中の泉をゴクゴクと飲み始めた。


 天空竜達は一言も発しないが、神樹の泉の水を勢いよく飲んでいるところを見ると、美味しいと思っていることは間違いない。

 その様子に、ハドリー達が『天空竜さん、泉のお水、美味しい?』『ここの泉はとーっても大きいから、たくさん飲んでも全然平気よ!』『好きなだけおかわりしてね♪』等々、嬉しそうに天空竜達に話しかけている。


 厳つい天空島相手にも全く怯まないハドリー達。

 この勇敢かつ純真無垢な躑躅の精霊達の人懐っこさは、サマエル達南の天空島の者達にも十分通用するようだ。

 ハドリー達の愛らしくも頼もしい橋渡し役ぶりに、レオニス達も微笑みながら見守っていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そうしているうちに日が高くなり、時間も正午近くとお昼時になったということで皆で昼食を食べることにした。

 秋も深まって肌寒い空気になってきた昨今。木陰ではなく日向で昼食を摂るべく、レオニス達はユグドラツィの南側の日当たりの良い場所に敷物を敷き直して昼食の準備を進めていった。


 レオニスとラウルはいつものようにおにぎりやサンドイッチを食べ、ラキには特大串焼きや巨大きゅうり、ヴィヒトには親指の爪サイズの肉団子や炒り卵を出した。

 ラキが特大串焼きをガブリ!と豪快に頬張りながら「美味い!」と大絶賛し、ヴィヒトも「ラウル殿の料理は本当に美味いな!」と舌鼓を打つ。


 ハドリー達にもツェリザークの雪解け水を出し、ユグドラツィにはレオニス特製ブレンド水をバケツ六杯分用意して、レオニスとラウルが手分けして根元にかけた。

 ちなみに本日のブレンド水は、北の天空島のアクアの泉の水をベースにした『薬師ギルド製濃縮エクスポーション一本入り(カタポレン産巨大桃果汁フレーバー付き)』と『同濃縮アークエーテル一本入り(同巨大苺果汁フレーバー付き)』の各三杯づつである。


 そしてラーデにはカタポレン産巨大林檎、サマエルと三頭の天空竜にもカタポレン産巨大桃を出した。

 今朝食べた朝食と大差ないのだが、ラーデもサマエルも『林檎がいい!』『桃がいい!』と強く言うので、本人達の希望に添っただけである。


 皆が皆思い思いに美味しい昼食を食べる。その光景は、実に長閑で平和だ。

 そんな穏やかな時間が流れる中、ふとサマエルが横で林檎を食べていたラーデに声をかけた。


『父上……父上はいつ、天空島に戻られるのですか?』

『ン? ……(シャリシャリ)……今は、まだ……(もくもく)……その時では、ないな……(ゴクン)……』

『今ではないのなら、いつになるのですか? 三日後? 十日後? それとも季節を複数跨がなければならぬのですか?』

『それは……(シャリシャリ)……我にも……(もくもく)……分からぬ……(ゴキュン)……』


 巨大林檎を頬張りながら、サマエルの問いかけに答えるラーデ。

 口篭った口調がどことなく暗さを帯びているのは、ただ単にラーデが林檎を目いっぱい頬張り続けているせいだけではないのだろう。


『父上、確かにこのカタポレンなる森には強大な魔力がそこかしこに満ち満ちています。なればこそ、父上の本来の御力や御姿も早々に取り戻せるのではないですか?』

『……サマエル、確かに其方の言う通りだ。我はこの森で日々療養に努め、力を蓄えている。……だが……』

『………………』


 なおも問い詰めてくるサマエルに、ラーデが巨大林檎を食べる手を止めて俯く。


『我が邪皇竜メシェ・イラーザに奪われた力は、あまりにも大きい……正直なところ、我はもはや邪皇竜に完全に飲み込まれて消滅を免れないであろう、と―――死を覚悟していた』

『………………』

『この見窄らしくも小さな姿で日々を過ごすのも、未だ身の内に貯まりきらぬ魔力を少しでも長く留め置くため……今の我の脆弱な身体では、この森に溢れる膨大な魔力を受け止めきれないのだ。故に我は身体に貯めた魔力を体力に変換し、大きな身体を作れるよう鋭意努力しておる』

『………………』


 静かに現状を語るラーデの話に、サマエルはずっと俯いたまま無言を貫いている。

 ラーデは決して嘘をついているのではないことは、サマエルにも分かっている。


 サマエルが知る皇竜メシェ・イラーデの本来の姿は、実に凛々しくて雄大だった。

 体格の大きさは言うに及ばず、艶々と輝く赤黒い鱗に三対六枚の純白の翼、全てを見通す金色の双眸と額に輝く金色の第三の眼―――その威容の全てが皇竜の名に違わず、まさに竜の祖に相応しい神々しさに満ちていた。


 かつての威風堂々とした姿に比べたら、今のラーデは赤ん坊に還ったも同然。

 赤ん坊にまで落ちた力を取り戻し、いずれ皇竜の成体に戻ろうとするには、如何にこのカタポレンの森の魔力を以てしても容易ではない。

 高々三日や十日で完全復活などできるはずもなく、それっぽっちでは焼け石に水なのは明らかだった。


 しょんぼりと俯くサマエルに、ラーデが静かに声をかけた。


『サマエルよ……必ずや我は、其方達のもとに帰る。果たしてそれがいつになるかは、我にも分からぬが……我は決して約束を違えぬ。だからサマエル、其方もしばし待っててくれないだろうか』

『……分かりました』


 ラーデの懇願に、ようやくサマエルが口を開き認めた。


『私もそうですが……ファフ兄様もリン姉様も、我ら兄弟はずっと父上のご帰還を待ち望んでおりました。その念願が叶った今、天空島へのご帰還が多少延びたところで大差ありますまい』

『おお、サマエルよ、分かってくれたか』

『はい。……本音を言えば、口惜しいことこの上ないのですが……ファフ兄様達の卵の孵化を私に知らせてくださったリン姉様からも『パパンを困らせるんじゃないわよ?』と釘を刺されてますので』

『ぉ、ぉぉ、そうか……』


 本当に渋々と行った様子で呟くサマエルに、ラーデが顔を引き攣らせている。

 サマエルがラーデのもとに赴く前にガッツリと釘を刺しておくとは、相変わらずリンドブルムは優秀な姉である。


 しんみりとした空気が続いたが、そうした空気を全く読まない妖精がここに一人。


「そしたらラーデ、少しでも早く身体を大きくするためにも林檎をおかわりしないとな」

『う、うむ。おかわり!』

「サマエルも、気分が落ち込んだ時には甘いものを食べるといいぞ。甘いものや美味しい食べ物を食べるってのは、それだけで憂鬱な気分を吹っ飛ばしてくれるからな。ほれ、桃のおかわりを出してやるから好きなだけ食べろ」

『そんな、食べ物一つで気分が変わる訳がなかろう……』


 ラウルが差し出した林檎のおかわりに、ラーデが己を奮い立たせるようにしてパクパクと頬張る。

 間を置かずに桃のおかわりが乗った皿がサマエルの前に出されたが、ラウルの一見意味不明な主張にサマエルが呆れ顔をしている。

 だが、呆れ顔に反してサマエルの目は皿の上に乗せられた瑞々しい桃に注がれ続けていた。


『しかし……この桃とやらは極上の甘露にして、実に美味であることは認めよう。このような素晴らしい果実こそ、私に相応しい果実である』

「お褒めに与り光栄だ」


 だいぶどころか壮絶に上から目線のサマエルだが、ラウルはクールな態度のままラキやレオニスのおかわりの串焼きを空間魔法陣から出している。

 サマエルが上から目線なのは今に始まったことではないので、ラウルももう慣れっこである。


 冬直前の僅かに温かい日差しの下で摂る、長閑で平和な昼食。

 その温かさは、ここにいるたくさんの者達に安らぎを与えていた。

 多種多様な種族が集う中での昼食です。

 今回の昼食にかこつけて、第1580話で出てきたユグドラツィへの誕生日プレゼントの一つ、目覚めの湖組&オーガ族コラボの泉もお披露目しちゃったりなんかして。

 第1580話以降に泉を作る様子などは全く描写してこなかったので、今回初めてその詳細を出した訳ですが。大きさとかどうしようかなー、と何気に悩んだ作者。

 ここはいっちょ、どデカく400メートルトラックくらいにしちゃおうかしら?とも思ったんですがー(=ω=)

 それだと内径だけで横156メートルの縦76メートルという巨大さに…( ̄ω ̄)…

 さすがにそりゃちと大き過ぎるかな?と思い、ミニバン十台程度=50メートルとしました。


 でもって天空竜達のコップ代わりの木製巨大桶。

 これも今回サルベージしたら具体的な大きさを記述してきていなかったので、家庭用の大型ビニールプール程度をイメージして約2メートルにしました。

 これもねー、5メートルとか大きくし過ぎると持ち運びするだけで壮絶に苦労しそうなので自重したという(´^ω^`)


 そして神樹の泉の命名を即却下されたレオニスが、何か作者の脳内でぶつくさと文句を言っているような気がしますが。多分気のせいでしょう。キニシナイ!(・з・)~♪

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