表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1630/1632

第1630話 お出かけ先の選定

 サマエルがカタポレンの家に現れて以降、ファフニールのもとに出かけるまでサマエルは本当にコテージで三泊していった。


 晩御飯はコテージのリビングダイニングで皆といっしょに食べて、賑やかなひと時を過ごした。

 その後コテージの大きな風呂で、これまた皆でいっしょに入浴して日中動いた疲れを癒やす。

 夜はサマエルも大好きな『人をダメにするクッション』で、父ラーデとともに熟睡する。

 ズッポリとクッションに沈み込み、その身を委ねながらも腕の中にしっかりとラーデを抱っこして眠るサマエル。

 存外無防備な寝顔は、愛する父とともにゆっくりと眠れる歓喜と安堵からくるものか。


 そして早朝には、魔石回収に向かうライトの後をついてカタポレンの森を飛んでいた。


『うぬぅ……やはりこの森の魔力は、無尽蔵と言ってもいい程の膨大さだな』

「そうなんですよねー。そのおかげでぼく達はこうして魔石をたくさん作ることができるし、ラウルも美味しい野菜や果物が作れているんですよねー」


 あちこちに点在する魔石生成ポイント?を順序よく回っては、次々と魔石を回収していくライト。

 サマエルはそんなライトの後ろについて飛び回りながら、素朴な疑問を口にした。


『しかし……私や父上はともかく、お前達人族にとってはこの魔力は些か強過ぎるのではないか?』

「確かに他の人達には、この森に居続けるのはちょっとキツいらしいんですよね。強過ぎる魔力に酔うのか、あるいは中てられるのか分かんないですけど……ここに長居すると、気持ち悪くなって吐き気やら頭痛やらとにかく体調不良を起こすんですって」

『ならば、何故お前達は平気なのだ? やはりお前達は、本当は人族ではないのではないか?』

「何ソレ、しどい!」


 歯に衣着せなさ過ぎるサマエルの不躾な物言いに、ライトがガビーン!顔でショックを受けている。

 サマエルにしてみたらそれは『普通の人族よりもはるかに優れている』という意味で、むしろ褒め言葉に近いものなのだが。傍から見れば人聞き悪いことこの上ない評価である。

 ライトは頬を膨らませながらも、サマエルの質問に答えることにした。


「まずラウルとマキシ君ですが。ラウルは妖精で、マキシ君は八咫烏。どちらも魔力が高い種族で、しかももともとカタポレンの森に住んでいたので全く問題はないんですよね」

『ふむ、それなら納得だ』

「で、ぼくとレオ兄ちゃんは歴とした人族です。極々普ッ通ーーーの人族です」

『………………』

「ただ、レオ兄ちゃんはド根性でこの森の魔力を克服して、ぼくは赤ん坊の頃からこの森でレオ兄ちゃんと暮らしてきたので、カタポレンの森の魔力に耐性があるんですよ」

『ド根性とやらで、この森の尋常ではない魔力に対して耐性がつくものなのか……?』


 ライトの答えに、サマエルは手のひらの中にある魔宝石を眺めつつ時折頷いたり首を傾げている。

 解説の途中で、ライトがものすごーく強調して聞かせた『極々普ッ通ーーーの人族』という箇所は華麗にスルーしていたのがまた小憎らしい。


 サマエルが眺めている魔宝石は、先程ライトが魔石回収の途中に「サマエルさんが地上に遊びに来てくれた記念に、一つ差し上げますね!」と言って譲ってくれたものだ。

 アイギスのセイの手により美しくカットされた極上のルビーに、カタポレンの森の魔力をたっぷり四週間吸収させ続けた魔宝石。

 まるでラーデを思わせるような深みのある赤黒さは、サマエルの目から見てもとても美しいものだった。


 このような品を生み出せるとは―――人族とは存外侮れぬものだ。

 父上の御身を委ねるには未だ不安だが、この森の他に父上の療養に適した地はないのもまた確か。

 父上のお身体が完全復活なされば、必ずや父上は我らのもとにお戻りくださる。それまでの辛抱だ―――


 サマエルは己に言い聞かせるようにして、手のひらの中にあるルビーの魔宝石を握りしめていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 朝の魔石回収ルーティンワークが無事終わり、ライトはラグナロッツァのラグーン学園に向かうべくカタポレンの家を後にした。

 その後サマエルはレオニスとラウルの案内のもと、カタポレンの森の中を散策した。


 行き先については、サマエルがライトの魔石回収についていって出かけている間にレオニス、ラウル、ラーデの三者で作戦会議を行っていた。



 …………

 ………………

 ……………………



「さて……これからの今日明日、サマエルをどこに連れていってやるか、だが……ラウルにラーデはどう思う? 意見があれば聞かせてくれ」

「そうだなぁ……日帰りで簡単に行き来できる範囲ってことだよな?」

「もちろん」

「まず、ここから簡単に行ける場所となると、目覚めの湖やナヌスの里、オーガの里なんかだが……」

「……その三つは厳しいだろうなぁ……」

「だよなぁ……」


 作戦会議を開いて早々、すぐに言葉に詰まるレオニス達。

 サマエルの見聞を広めるため、できればたくさんの場所を見せたり他種族とも触れ合いをさせてやりたいところなのだが。

 サマエルのナチュラルな傲慢さを考えると、紹介先を慎重に選ばなければならない。


 最も身近なご近所さんの目覚めの湖組は、かなり不安がある。

 水の女王は何気に勝ち気な性格だし、アクアは寛容な方だがそれでもサマエルを快く迎合できるかというと微妙なところだ。

 ナヌスはラーデの出現にもビビッていたくらいだから、サマエルのことだって『何事か!?』と戦々恐々としているだろう。

 今頃ナヌスの重鎮達は、皆で身体を寄せ合いながら震えてるかもしれない。


 その点オーガは魔力に乏しいので、サマエルが放つ圧倒的な魔力にも臆することはないだろう。

 ただし、サマエルの傲岸不遜な物言いに対しての忍耐力はおそらくない。

 ラキやニルに対して、ライトやレオニスに言い放つのと同じような感覚で『地を這うしか脳のない虫けら』などと言おうものなら、他のオーガ達が黙ってはいない。

「あァン? 何だ、コイツ」「いっぺん痛い目見せねぇと分からん奴か?」等々即座に険悪になり、その場で血の雨が降ることになるだろう。

 しかもその血はサマエルのものではなく、大多数のオーガ達の方の血が流れる可能性が高い。


 そうした様々な観点により、目覚めの湖、ナヌスの里、オーガの里は行き先から真っ先に除外した。

 他にもウィカの水中移動を使って、大神樹ユグドラシアや竜王樹ユグドラグスのもとへの訪問なども候補に挙がったが、どちらも却下となった。


 ユグドラツィのもとには八咫烏、ユグドラグスのところには白銀の君他竜族がたくさんいる。

 ユグドラシアがサマエルに小馬鹿にされようものなら八咫烏達が猛反発するだろうし、ユグドラグスの場合はさらに最悪なことになる。

 特にユグドラグスは、神樹族の中でも最も年若い。

 それをサマエルに鼻で笑われた日には、白銀の君 vs. サマエルという最終戦争並みの死闘が繰り広げられること間違いなしだ。


 要らぬ諍いを避けつつも、サマエルの見識を広めるためにはどこに出かければいいか。

 レオニス達が必死にあれこれと考えては議論を続けた。

 その上で残った候補は二ヶ所。神樹ユグドラツィのもとと、暗黒の洞窟だった。


 ユグドラツィならきっと、サマエルの不遜な物言いも笑って聞き流してくれるだろう。

 彼女のもとにいる多数のハドリー達の反応はどうなるか分からないが、もし万が一サマエルを恐れてギャン泣きしたらすぐに出ていけばいいだけのことだ。


 そしてそれは暗黒の洞窟にいる、闇の女王とクロエも同じ。

 闇の女王の度量ならサマエルに対しても鼻で笑いつつやり過ごすだろうし、暗黒神殿守護神たるクロエの圧倒的な存在感はサマエルですら侮ることはできないだろう。


 こうしてサマエルがコテージに泊まった次の日、滞在二日目は神樹ユグドラツィのもとに出かけることに決まったのだった。



 ……………………

 ………………

 …………



 作戦会議が一息ついたところで、魔石回収に出かけたライトとサマエルが戻ってきた。

 レオニス達が三人で立ち話しているところに、ライトが駆け寄った。


「皆、ただいまー!」

「おう、ライト、おかえりー」

「魔石回収ご苦労さん」

『ライト、サマエル、おかえり。森の中に異変はなかったか?』

「いつも通りで特に何もなかったよ!」

『そうか、なら良かった』


 ライトの帰還を労うラーデに、ライトも嬉しそうにラーデを抱っこする。

 そしてライトはすぐにレオニス達に声をかけた。


「じゃ、ぼくは軽く朝ご飯を食べてからラグナロッツァに行くね!」

「おう、今日も勉強頑張れよ」

「うん!レオ兄ちゃんとラウルも、サマエルさんと仲良くしてね!」

「ああ、任せとけ」

「ラーデもサマエルさんといっぱい仲良く遊んでね!」

『うむ、気遣い感謝する』


 腕の中に抱っこしていたラーデを、ヒョイ☆と両手で抱え直してレオニスに渡すライト。

 レオニスがラーデを受け取ると、ライトはすぐに家の中に向かって駆け出した。


「じゃ、いってきまーす!」

「おう、いってらー」

「学園が終わったら、ぼくもすぐにこっちに来るからねー!」

「はいよー。気をつけてなー」


 振り返りながら元気にいってきますの挨拶をするライトに、レオニスとラウルが微笑みながら返事を返す。

 そうしてライトが家の中に消えていき、しばしの静寂の後にレオニスが徐に口を開いた。


「……さ、俺達も軽く朝食を済ませてから出かけるか」

「そうだな。朝食もコテージで食うか」

『うむ、そうしよう。サマエルも、我とともに来るのだぞ』

『承知いたしました』


 ライトを見送った後、レオニス達はお出かけ前に朝食を摂るべく四人でコテージの中に入っていった。

 サマエル滞在中のお出かけ先を決めるあれやこれやです。

 作中でも多数の行き先を挙げては却下してましたが。ここら辺、作者もホンットーーーに苦労しましてね(;ω;)


 いつもなら、カタポレンの家のご近所さんである目覚めの湖の仲間達やオーガ達に引き合わせて、仲良くキャッキャウフフ☆させるところなのですが。

 如何せんサマエルの性格的に、どーーーにも行き先が決まらないというか_| ̄|●

 どこに出かけさせても、激しい言い争いやら血の雨が降るバトル勃発等々トラブる未来しか見えないんじゃー!><


 ホントに、どうして作者はこのサマエルという子をこんなヤンデレ子にしてしまったんでしょう_| ̄|●

 こんなに扱い難い子は正真正銘初めてで、舵取りが断トツに厳しいよぅぉぅぉぅ(;ω;) ←絶賛後悔中

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
サマエルは回復したらラーデが自分のところに戻って来ると思っていますが、ラーデはここの暮らし気に入っていますよね? 回復しても戻る気があるのかしら?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ