第1625話 レオニスの働きとライトの目標達成
ライト達がツェリザーク領主のジョシュアとともに、氷の洞窟で氷の女王や玄武のエレと楽しいひと時を過ごしたその後。
しばらくは平和で多忙な日々が続いた。
レオニスは氷の洞窟でも行った『属性の女王と神殿守護神を繋ぐネットワーク計画』を少しでも早く稼働させるために、各地にいる属性の女王達のもとを駆けずり回った。
氷の洞窟の後に向かったのは、ラギロア島沖合の海底神殿、フラクタル峡谷の辻風神殿、地底世界の地底神殿。
本当はこれらもライトとともに行ければ良かったのだが、今はラグーン学園に通っているため平日は出向くことができない。
さすがに毎回土日を待つのも長引いてしまうので、ライトも血涙を流しつつも納得した上でレオニスが平日中に転移門設置に動いていた。
ちなみに目覚めの湖と暗黒の洞窟は、カタポレンの家のご近所ということでレオニスが九月のうちにサクッと設置していた。
目覚めの湖は当初の予定通り湖中央の小島に、暗黒の洞窟では暗黒神殿の横に転移門を置いた。
レオニスが魔法陣を展開したり、操作パネル用の石柱を設置する様子などを、水の女王やアクア、闇の女王にクロエも興味津々で見学していた。
海底神殿については、海の女王の住処である海底神殿の中に転移門を置いた。
これは、先日水の女王が目覚めの湖の湖底神殿に闇の女王を招いた時のことを参考にして、海底神殿内部も気泡で充満させることで実現したものだ。
こうしておけば、他の属性の女王や神殿守護神達も海底神殿を気軽に訪問することができる!という訳である。
そしてこの『海底神殿内部を空気で満たす』という作業に、丸一日半を要した。
何故かと言うと、海水の中から気泡を取り出す作業が海の女王にしかできなかったためだ。
目覚めの湖では、水の女王の他にも水神のアクアや水の精霊ウィカが積極的に気泡作り手伝ってくれたので、小一時間程度で作業が完了した。
しかし、海底神殿ではそう簡単にはいかなかった。
神殿守護神であるディープシーサーペント(デッちゃん)はあちこち遊び歩いていて不在だし、もし海底神殿に滞在していたとしてもおそらくは『気泡? 何ソレ、美味しいのん?』と作業の趣旨を理解できずに役に立たなかっただろう。
また、普段海の女王を守り傍に侍る女人魚達にも、海水から気泡を取り出す能力は持ってない。
そのため、海底神殿に気泡を満たす作業を海の女王一人でしなければならなかったのである。
海底神殿の気泡を漏らさないようにするための結界は、レオニスがナヌスに頼んで海樹の枝で作ってもらった結界用の駒を神殿の四隅に置くことで解決した。
その礼と報告を、レオニスが海の女王とともに海樹のもとに向かい話すと、ユグドライアは『おお、そうか!俺の枝が海の女王のところでも役に立ったか!』と、殊の外喜んでいた。
海樹の弾むような喜びの声に、海の女王も内心で密かに喜んでいたことは言うまでもない。
ラウルはラウルで、レオニスの転移門設置についていく時もあれば、カタポレンの畑やラグナロッツァの屋敷で料理に勤しむというのんびりとした日々を過ごしていた。
転移門の設置についていったのは、辻風神殿と海底神殿。
辻風神殿は最寄りの街のケセドのエヴィルヴァイパー肉が目当てで、海底神殿は海樹に頼まれた人魚達用の首飾りを届けるという用事があったため。
エヴィルヴァイパー肉の買い出しでついていくとか、相変わらずちゃっかりとした妖精である。
そしてライトはというと、濃縮ギャラクシーエーテル 作りの大詰めを迎えていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
十月下旬のとある平日の夜。
ライトはカタポレンの家の自室で、濃縮ギャラクシーエーテルの前段階であるギャラクシーエーテル五十個の完成を迎えていた。
「うおおおお……やっと、やっとこれで濃縮ギャラクシーエーテル十個を作ることができる……」
先程作り上げたばかりの、出来たてほやほやのギャラクシーエーテル十個を目の前にしてライトはただただ感慨に浸る。
ここ最近のライトは、一日につき最低でも一個以上はギャラクシーエーテルを毎日欠かさず作るように心がけていた。
でないといつまで経ってもギャラクシーエーテル十個に辿り着けないからだ。
とはいえ、手持ちの材料が尽きてしまった時には材料を補充するまで一旦中断せざるを得なかった。
何しろ物によっては四桁単位、単一材料だけで数千個もの素材が要るのだ。思うように捗らなかったのも事実である。
そうしてやっと迎えた、濃縮十回分のギャラクシーエーテル作りの完成。
後は生産スキル【遠心分離】を駆使して、濃縮ギャラクシーエーテル十個を完成させれば、エクストラクエストの54番目のお題の報酬を得ることができる。
この54番目のお題の報酬は『身代わりの実追加レシピB』。
先にクリアした同レシピAと合わせれば、エクストラクエストの1ページ目の本来のお題『★身代わりの実を10回作ろう!★』に着手することが可能になるのだ。
「レシピBを手に入れれば、身代わりの実の作り方が全部分かる、はず。……よし、濃縮ギャラクシーエーテルを仕上げるぞ!」
しばし感慨に浸っていたライト、意を決したように最後の仕上げを開始した。
生産スキル【遠心分離】を発動し、目の前に現れた分離器の中にギャラクシーエーテル十個分の中身を注ぎ入れる。
全て入れたら【遠心分離】を開始し、三十秒程待てば五倍濃縮液の完成だ。
遠心分離で分けられた、少量の方の有効成分を一本の瓶に移し、残りの水分九本分を他の空瓶に移してアイテムリュックに仕舞い込む。
この残りの水分は純度の高い水なので、普通に飲んでも問題はない。
これを十回繰り返し、出来上がった濃縮ギャラクシーエーテル十個。
これをマイページのアイテム欄に仕舞い込み、ライトはすぐさまイベントページに移動した。
今現在のエクストラクエストの進捗状況は、以下の通りである。
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★身代わりの実を10回作ろう!★
〔身代わりの実 原材料(1個分)〕
【51.閃光草の根10個 報酬:エネルギードリンク1グロス 進捗度:10/10】
【52.濃縮マキシマスポーション10個 報酬:身代わりの実追加レシピA 進捗度:10/10】
【53.熱晶石10個 報酬:魔法の刷毛1個 進捗度:10/10】
【54.濃縮ギャラクシーエーテル10個 報酬:身代わりの実追加レシピB 進捗度:10/10】
【55.銀色のべたべた10個 報酬:荊棘の巻物【刃】1個 進捗度:10/10】
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ずっと躓いていた54番目のお題の進捗度が『10/10』になっていることを確認したライト。
思わず「おおお……完了している!」と感激の声を漏らした。
そしてすぐさまお題の箇所を指でタップし、その報酬である『身代わりの実追加レシピB』を受け取った。
レシピBの中身を確認するべく、すぐさまマイページ内の『レシピコレクション』に移動するライト。
何が待ち構えているのか、ドキドキワクワクしながら新作レシピの封を開けた。
するとそこには、以下の内容が書かれていた。
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☆身代わりの実レシピB☆
1.エクストラクエスト53を除く51~55の材料を一個づつ混ぜ合わせて【遠心分離】を一回かけ、有効成分を取り出す。
2.1の有効成分とエネルギードリンク10個を混ぜ合わせたものに、咆哮樹の実を入れて24時間以上浸す。
3.神威鋼1個と金1個を【金属錬成】で混ぜ合わせて液状にする。
4.魔法の刷毛を用いて、3.の液体を2.の咆哮樹の実に均等に塗る。
5.日当たりの良い場所で24時間以上天日干しする。
6.4.と5.を五回繰り返す
7.実を左右に振って鈴のような綺麗な音がすれば完成!
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「おごごごご……こ、これを十回繰り返すんか……?」
上記の内容に一通り目を通したライト、呆然としながら思わず呟いている。
レシピAが材料を示すものだったのだから、レシピBの方に作り方の手順が書かれているであろうことはライトにも容易に想像がついた。
しかし、ここまで煩雑な手順が出てくるとは。予想をはるかに超える難易度の高さに、ライトが思わずビビるのも致し方ない。
しかし、ここで諦めるライトではない。
これまでに出てきた数々の難題だって、何とかクリアしてきたのだ。
このエクストラクエストだって、何が何でも絶対にクリアする!
ライトの執念は尽きることを知らない。
「くッそー……BCOのクエストイベントって、相変わらずっつかホンット鬼畜仕様だな!」
「でも……これで俺は、材料さえ揃えればいつでも『身代わりの実』を作ることができるようになるんだ……って、その材料も手順も死ぬほどくッそ面倒臭いけど」
「つか、身代わりの実を一個作るのにエネドリ十個食うのは結構痛いけど……これも仕方ない、身代わりの実の効果を思えばアリだしな」
「……よーし、今度は身代わりの実作りだ!明日から頑張るぞー!」
大きな目標だった『身代わりの実追加レシピB』を手に入れたライト。
己を鼓舞するべく、両手を高く掲げて気勢を上げる。
次なる試練、更なる困難に挑むライトのやる気は、ますます燃え上がっていた。
氷の洞窟の楽しいひと時の次は、前半がレオニスの属性の女王と神殿守護神を繋ぐネットワーク作成、後半がライトのライフワークであるクエストイベントのお話です。
ホントにねぇ、このクエストイベント、一体いつ完了するんでしょ?( ̄ω ̄) ←作者ですら分からない
しかし、イベントというのは終わりが見えないようでいていつかは必ず完了するもの。BCOの鬼畜イベントも例外ではなく、もう少しで完了が近づいてきています。
とはいえ、その『もう少し』がまた難易度激高で、果てしなく長いんですけど(´^ω^`)




