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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ラグーン学園三年生二学期

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第1622話 玄武への贈り物・その三

 ライトのプレゼントも、ジョシュアのプレゼント同様にとても喜んでもらえたことにライトは安堵した。

 そして、残すはレオニスとラウルの二人。

 横並びに座っていた二人は徐に立ち上がり、テーブルから少し離れたところで無言で向かい合う。


 二人は無言のまま、シュッ!と拳を突き出した。

 それは、ジャンケンのグー。どちらが先にプレゼントを渡すか、ジャンケン勝負で決めようぜ!ということである。


 一手目がグー同士のあいこになったことで、延長戦が発生した。

 二人は間を置かずにシュバッ!シュバッ!と無言のジャンケン勝負を継続した。

 二手目はチョキ、三手目はパーでどちらもあいこ。

 四手目にしてレオニスがチョキ、ラウルがグーを出し、やっと勝負の決着がついてラウルの勝ちが決定した。


 ジャンケンで出したグーを天に突き出し、目を閉じ恍惚の表情で勝利を勝ち誇るラウル。

 ラウルのWINNERのポーズの前で、レオニスががっくりと項垂れてぐぬぬ……と歯軋りしながら敗北を悔しがっている。

 たかがジャンケン、されどジャンケン。そこには厳然とした勝ち負けが存在するし、負けず嫌いのレオニスにとっては本気で悔しいことのようだ。


 そしてラウルはラウルで、破れたご主人様の傷心などキニシナイ!とばかりに玄武の近くに歩いていった。


「よし、次は俺の番な。俺からのプレゼントは、これだ」


 ラウルが徐に空間魔法陣を開き、何かを取り出した。

 それは『人をダメにするクッション』だった。


 しかもそれは、通常品の二倍ところか五倍くらいはあろうかという超特大サイズ。

 後で聞いたところによると、人をダメにするクッションを十個買い込んでそれをアイギスに持ち込み、一つのクッションに作り直してもらったのだという。

 超多忙なアイギスに、一体何というへんちくりんな仕事を依頼するんだ……と呆れることなかれ。

 この程度のことなら、マキシにだって可能なのである。


 見たこともない不思議な形状のクッションに、玄武はもちろんのこと氷の女王までもが興味津々な様子で見ていた。


『ラウル……これは一体何なのだ?』

「これは『人をダメにするクッション』という、家具の一種でな。座ったり寝そべったりするのに適したものなんだ」

『何という恐ろしい名前か……我はラウルのことを信じているが、そんな名前のものを玄武様への贈り物にするのか?』


 ラウルの解説に、氷の女王は戸惑いながら怪訝な顔になる。

 氷の女王はラウルに対して絶対的な信頼を寄せているので、間違っても玄武に仇なすような物を贈る訳がない、と信じている。

 しかし、確かに名前だけ聞けば誕生日のプレゼントにはあまり相応しくなさそうなのもまた事実である。


『それに……人をダメにする(・・・・・・・)ということは、人族にしか効かぬのだろう? ましてや玄武様は神殿守護神、何を以てダメにするのかは我には分からぬが……玄武様に怪しげな力は効かぬぞ?』

「そう思うだろう? だがな、これは暗黒の洞窟に住む暗黒神殿守護神のココちゃんのお気に入りなんだ。もちろん闇の女王も実際にこのクッションに触れていて、ものすごく気に入っていたぞ」

『何ッ!? 闇の女王が気に入っているのか!?』

「そうとも。……ま、そんな怪しいもんじゃないから、まずは試してみてくれ」


 それまで眉を顰めていた氷の女王の顔が、一瞬にして驚愕に染まった。

 闇の女王といえば言わずもがな彼女の姉妹であり、天地開闢と同時に生まれた太古の精霊の一つ。

 そんな由緒正しい闇の女王が気に入るクッションとは、一体如何なるものなのか。

 しかも彼女の相棒である暗黒神殿守護神までもが魅了されてるとなると、俄には信じ難いことである。


 しかし、ラウルは決して嘘をつかない。そのことは氷の女王もよく知っている。

 愛しいラウルがそこまで言うのなら……と氷の女王は覚悟を決めたように玄武に話しかけた。


『玄武様……ラウルの贈り物をお受け取りなさいますか?』

「ンキュ!」

『そうですか……ラウル、この上に玄武様を乗せて差し上げればよいのか?』

「ああ、そうしてやってくれ」


 躊躇いがちながらも尋ねる氷の女王に、玄武が屈託のない笑顔で右前肢をピッ☆と挙げながら承諾する。

 そして氷の女王が玄武を抱っこし、おそるおそるクッションの上に玄武を置いた。


 するとどうだろう。玄武の身体がクッションに沈み込み、玄武の顔が見えなくなってしまった。

 このことに氷の女王が慌てふためきながら声をかけた。


『げ、玄武様!大丈夫ですか!?!?』

「モキェーーー……」

『玄武様!?!?』

「ンッキューーー……ホニェホニェ」

『……え? 私もそちらに参れ、ですか???』


 氷の女王が慌ててクッションの中から玄武を掘り起こそうとするも、クッションに埋もれていた玄武の顔が何やらものすごく腑抜けている。

 凛々しいはずの玄武の目は糸目&垂れ目になり、口も半開きで蕩けるような顔になっている。

 こんな顔の玄武を初めて見る氷の女王の顔と頭上には、???(ハテナ)が無限に湧き出ているようだ。


 玄武に誘われるがまま、氷の女王がおそるおそるクッションの上に乗っかり玄武の真横に入っていった。

 そして彼女が人をダメにするクッションの魅力に気づくのも、さして時間はかからなかった。


『ンふぅ……これは……何とも言えぬ心地良さだ……』

「モッキュッキェーーー……」

『ラウルや玄武様の仰る通り……たちまちのうちに、我の動きを止めて……ここから動けなくしておる……』

「ンキャッキューーー……」

『恐ろしき中にも、抗えぬ魅力がありますな……』

「キュキャキェーーー……」


 玄武同様に、氷の女王までがみるみるうちに蕩けるような腑抜けた顔になっていく。

 いつもクールな氷の女王のこんな顔が見れるのは、実に珍しいことだ。

 特にここ最近はダリオ・サンチェスの企みに苛まれていたため、ずっと緊張していたに違いない。

 その緊張の糸が緩み切れたのか、氷の女王も玄武もムニャムニャ……と寝入ってしまった。


 人をダメにする超特大クッションに沈み込み、あっという間に眠りに落ちてしまった氷の洞窟の主達。

 静まり返った最奥の間で、ライト達が音を立てないようにクッションの周りに集まった。


「おぉおぉ、すっかり寝ちまったな」

「ここ最近、氷の洞窟でもいろいろあっただろうからな。何だかんだで疲れが溜まってたのかもな」

「そしたらこのまま寝かせといてあげようよ」

「そうだな。無理に起こすのも可哀想だしな」


 ライト達は氷の女王達の周りで、小声でコショコショと相談している。

 彼女達とてこのまま何時間も寝続ける訳でもなかろうし、お昼寝として小一時間くらい寝かせておいてやっても何ら問題はない。

 スヤァ……と眠る氷の洞窟の主達。その可愛らしい寝顔を眺めながら、ライト達も微笑んでいた。

 玄武に捧げる誕生日プレゼント第三弾、ラウルの出番です。

 この料理バカの誕プレを捻り出すのに、毎回毎度ホンットーーーに苦労してる作者。

 今度こそ、カタポレン産の巨大野菜&果物を一年分進呈!とかにしなきゃならんか……と半ば諦めかけていたのですが(=ω=)

 そんな時、作者の脳内に『人をダメにするクッション』が降臨してきまして。


 これなら氷の洞窟に置いても問題なさげじゃーん☆(º∀º) ←作者大歓喜

 黄金週間での新築コテージお披露目の時のアイテムがここで役立つとは、夢にも思っていませんでした。

 ありがとう、クロエ!ありがとう、闇の女王様!(;ω;) ←嬉し泣き

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