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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ラグーン学園三年生二学期

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第1620話 玄武への贈り物・その一

 氷の女王達とジョシュアの和解が無事済んだところで、今度は玄武の誕生日を祝うプレゼント進呈の時間だ。

 一旦テーブルの上の空の皿やカップを全てラウルの空間魔法陣に仕舞い、テーブルもレオニスが一回り小さなものに替えて場を整えた。

 プレゼント披露の一番手は、先程の順番と変わらずジョシュアである。


「ぇー、コホン……改めて、玄武様の一歳のお誕生日を心よりお祝い申し上げます」

「キュキュ!」

「私からのお祝いの品は、ラウル君に預かってもらっておりまして。ラウル君、出してもらえるかね?」

「了解」


 ジョシュアの要請に応じ、ラウルが空間魔法陣を開いて何かを取り出した。

 ラウルの手のひらの上に三個乗せられたそれは、魔石に似た物で白く輝いていた。

 その美しさに、氷の女王と玄武がとても興味深そうにじーーーっ……と眺めている。


『これは……何ぞ?』

「こちらは『冷晶石』というもので、冬にツェリザーク周辺に発生する寒気を物質化したものです。言うなれば『冷気だけを閉じ込めた魔石』とでも申しましょうか」

『ほう……人族にはそのような智慧があるのか』

「はい。この地は一年のうちの半分以上が冬。我らツェリザークの民は、冬の間にこの冷晶石をできる限りたくさん生産して蓄えておきます。そしてこの冷気を必要とする他の街に冷晶石を提供することで、脆弱な人の身には厳しい冬を乗り切っていくのです」


 ラウルの手のひらにある冷晶石を繁繁と眺めながら、ジョシュアの解説に聞き入る氷の女王。

 氷の女王が冷晶石の実物を見るのは、今回が生まれて初めてのことだ。

 というのも、冷晶石とは人族が独自に開発したものなので、氷の女王達がそれを目にする機会などなかったのである。


『これを、どういうところで使うのだ?』

「ツェリザークと姉妹都市締結している、プロステスという人里に主に輸出しております。プロステス近郊には炎の洞窟があり、夏は殊の外暑くなる地としても有名でしてな。プロステスの猛暑を乗り切るには、ツェリザークで得た冷晶石が欠かせないのです」

『炎の洞窟か。我の姉妹である炎の女王が住むところだな』

「その通りでございます。プロステスでも『熱晶石』という、夏の熱気を閉じ込めた魔石を生産しておりましてな。我らツェリザークの民は冬の間に暖を取るために、そしてプロステスの民は夏の間に冷気を得るために、冷晶石と熱晶石を物々交換しておるのです」

『なかなかに聡い交流をしておるのだな』


 淀みなく解説していくジョシュアの話に、氷の女王がとても感心している。

 そして氷の女王の横で、玄武までしたり顔で頷いているのが何とも愛らしい。

 そんな玄武に、ジョシュアが微笑みながら話しかけた。


「時に玄武様、こちらの冷晶石をお食べになってみますか?」

「モキェ?」

「この冷晶石は石などの依代は一切使わず、水を凍らせた氷と寒気のみでできております。ですので、玄武様がお召し上がりになっても問題はないかと」

「ンキャ!」


 ジョシュアの突然の提案に、玄武も最初は不思議そうしていた。

 しかし、冷晶石は魔石のように石でできた物ではなく、氷をもとに作っているならばお腹を壊す心配はないだろう。

 いや、もし普通の人間が冷晶石を直接食べたら、それはそれでお腹が冷え過ぎて崩壊からのトイレ立て篭もりになること請け合いだろうが。

 氷の女王の相棒である玄武ならば、冷たさが原因でお腹を壊すことは絶対にないはずだ。


 しかし、ここで氷の女王が心配そうにレオニスやラウルに問うた。


『ラウル、レオニス、この冷晶石なる品は玄武様に食べさせても大丈夫なものなのか?』

「あー、さっきジョシュアも言っていたが、冷晶石ってのは冷気純度100%の魔石だからなぁ。水晶をもとにした魔石のように石そのものを食う訳じゃなくて、氷でできた冷たい魔力の塊なら問題ないんじゃねぇかな」

「だな。玄武には【冬帝】という異名があるくらいだからな。【冬帝】が冷え過ぎで腹壊すなんて絶対にねぇだろ。つーか、そもそもこの冷晶石自体が、主に氷の洞窟から吹き出る氷の女王の魔力をもとにしたもので、言わばツェリザークの特産品だからな。地産地消って意味でも、玄武との相性は良いと思うぞ」

『そ、そうか、それならいいが……【冬帝】……何と素晴らしい響きであろう』


 ラウルとレオニスの太鼓判に、氷の女王が安堵した顔になる。

 特にレオニスの意見の中に出てきた【冬帝】という玄武の異名に、氷の女王が頬を白く染めて喜んでいる。


『玄武様、これは食べても大丈夫なものらしいので、どうぞお食べになってくださいまし』


 ジョシュアの提案に乗った玄武が、ノリノリでラウルの手のひらに近づく。

 そして冷晶石をクンクン、と匂いを嗅いだ後、パクッ☆と一気に頬張った。


「……(もくもく、シャリシャリ、ゴッキュン)……ンキャ!」


 冷晶石を食べた玄武の顔が、みるみるうちに笑顔になった。

 どうやら冷晶石は玄武の口に合ったようで、味?もあるのかどうかは分からないが、とにかく美味しく食べられたようだ。

 そして二個目、三個目と立て続けに頬張り、ラウルの手のひらにあった冷晶石全てをあっという間に平らげた玄武。

 満足そうな顔で、ケプー☆というゲップまで吐いている。


「玄武、冷晶石は美味しかったか?」

「ンキャキャ!」

「もっと食べるか?」

「モキェー」

「おお、そうか、もうお腹いっぱいか」

「ケプー☆」


 ラウルの問いかけに、玄武が心底満足そうに答えている。

 美味しかったか、という問いにはコクコクと頷き、おかわりの問いには首を横に降って否定する玄武。

 ラウルの言葉が全て分かっているようで、その賢さにライト達はただただ感嘆するばかりである。

 そしてここで、ジョシュアが玄武に声をかけた。


「玄武様、冷晶石をお気に召していただけたようで何よりです」

「ンキュ!」

「この冷晶石を、今回は百個ご用意してまいりました。玄武様のおやつとして、日々お召し上がりいただけましたら光栄に存じます」

「キェッキュ!」


 ジョシュアの声かけに、玄武が花咲くような笑顔で応えている。

 思った以上に玄武が冷晶石の味を気に入ってくれて、ジョシュアもホッと一安心、といったところか。

 そんな二人の会話に、氷の女王が加わってきた。


『ジョシュアよ、この冷晶石をもっとたくさん用意できぬか?』

「冷晶石の生産は、今からどんどん盛んになります。今後は玄武様と氷の女王様のために、生産体制を強化していきましょう」

『おお、そうしてくれるとありがたい!玄武様のためにも、是非ともよしなに頼む』

「お任せください」


 もっとたくさんの冷晶石を望む氷の女王に、ジョシュアが恭しく承諾する。

 今は十月初旬で、外は雪が降り始めたばかり。

 今回ジョシュアがラウル経由で持ってきた冷晶石は、昨年の冬に作られたもの。冷晶石の在庫は一年のうちで最も少ない時期に当たるため、ジョシュアとしてもたくさんの量を持ってくることができなかったのだ。


 しかし、ツェリザークはこの先どんどん寒くなっていくし、これからいくらでも冷晶石を増産することができる。

 氷の女王と玄武が望むのであれば、ジョシュアは彼女達の願いを叶えるために尽力を惜しまないだろう。


 そして、美味しい食事は玄武の成長、レベルアップを促進させることにも繋がる。

 この場ではライトしか知り得ないことだが、BCO由来の神殿守護神や使い魔達は、食べ物を摂取することで経験値を得てレベルアップすることが可能だ。

 ラウルやジョシュアが差し入れする野菜や果物だけでなく、純粋な魔力の塊である冷晶石を摂取することで身の内に取り込めば、玄武のレベルもどんどん上昇していくに違いない。


 新しいデザート?である冷晶石を食べて、実に満足そうな玄武。

 そして満足そうな玄武を見て、氷の女王もまたとても嬉しそうに微笑んでいた。

 誕生日パーティーの食事&ジョシュアの正式な謝罪の後は、誕生日に欠かせないプレゼント進呈です。

 今回はいつもの面々だけでなく、ツェリザーク領主のジョシュアもいるのでジョシュアにもプレゼントを用意させました。

 と言っても、これがまた何気に難産でして(=ω=)


 人外ブラザーズやラウルにプレゼントを用意させるだけでも毎回苦労するってのに、正真正銘普通の人間であるジョシュアに用意できる物って、一体なんだろう?と考えた時、思い浮かぶのが冷晶石しかありませんでした。

 あー、これならジョシュアの領主権限でいくらでも増産できるじゃーん♪゜.+(・∀・)+.゜

 しかも冷晶石は魔力の塊だから、玄武の成長にも大きく寄与するだろうし!

 てことで、ジョシュアからの玄武へのプレゼントは冷晶石に決まりましたとさ♪(^∀^)

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