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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
三年生の夏休み

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第1599話 懐かしい面々

 ライトという主役を迎えて、冒険者ギルドラグナロッツァ総本部の直営食堂は大いに盛り上がり続けた。

 ライトは食堂のド真ん中のテーブルに座り、たくさんの先輩冒険者達がひっきりなしに挨拶や祝福の言葉をかけにくる。

 ライトが手に持つグラスには、ぬるぬるドリンク紫。

 紫以外の橙や薄黄色のグラスもテーブルの上に置かれていて、ライトの気分次第でチョイスやチェンジがてきるようになっている。


「ライトの坊っちゃん、もう何か依頼を受けたのか?」

「いいえ、こないだクレアさんの『冒険者のイロハ講座』を受け終えたばかりでまだなんです」

「ぉ、ぉぅ、そうか……あの講座をクレアちゃんから直々に受けたんか……」

「そりゃ大変だったろうなぁ……」

「???」


 ライトがクレア主催の『冒険者のイロハ講座』を受けたと聞き、周りの冒険者達がライトを心底労う。

 ライトにしてみたら、クレアの講座は楽しくてためになることばかりで、レオニスや他の冒険者達が一体何をそんなに怖れているのかがさっぱり分からない。


 しかし、ラグナロッツァの冒険者達が怯むのはほんの一瞬だけ。

 次の瞬間にはもうケロッとした顔でライトに話しかけた。


「じゃあ、ライトの坊っちゃんはまだ正式な依頼を一度もこなしてねぇってことか?」

「はい。さっきまでレオ兄ちゃん達と依頼掲示板を見てて、今どんな依頼があるかを勉強してたんです」

「じゃあ、今度俺達と何か依頼をこなしてみるか?」


 とある強面冒険者がライトを仕事に誘う。

 すると途端に周囲がざわつき始め、他の冒険者達が即座に話に食いついてきた。


「あッ、お前!抜け駆けすんじゃねぇ!俺だってライトの初めてを狙ってたんだぞ!」

「何だとぅ、こんなもん早い者勝ちに決まってんだろ?」

「待て待て、それ狙ってんのはお前らだけじゃねぇぞ? ここにいる全員がそうだからな?」

「「「そうだそうだーーー!」」」


 ライトの初めての依頼を巡り、言い争いを始める冒険者達。

 ちょっとしたヒロイン化したライト、先輩冒険者達に「ま、まぁまぁ、皆、落ち着いて……」と苦笑しながら宥める他ない。


 というか、皆ライトのことを思って依頼の同行を申し出てくれるのは非常にありがたいのだが、『ライトの初めて狙い』とは人聞きが悪過ぎる会話だ。

 冒険者というのは言葉足らずな者が多く、見た目の強面ぶりも相まって勘違いされることも多々あるという噂をライトも聞いたことはあるが、どうやらそれは本当のことらしい。


 しかし、言葉足らずな上に血の気が多い者も多いのが冒険者。

 取っ組み合いの喧嘩に発展しそうになった、その時。

 ライトの後ろからものすごい強烈な圧が放たれた。

 その圧の出処は、他ならぬライトの保護者レオニスである。


「お前ら、ライトのことを気遣って誘ってくれるのはありがたいがな。そろそろそこら辺で止めとけよ?」

「「「ぉ、ぉぅ……」」」


 互いの首根っこを掴み合っていた冒険者達の身体が、レオニスの一喝でピタッ!と止まり固まった。

 この場にいる大勢の中で、最強なのは間違いなくレオニス。

 レオニスが介入して止められない喧嘩など、この世に存在しないのである。


 レオニスが他の冒険者達をギロリ!と睨みつけながら文句をつける。


「だいたいだな。ライトの初めての依頼をともにするのは、この俺に決まってんだろ?」

「そ、そうだよな……何てったってレオニスは、ライトの養い親だもんな」

「だわな。ライトの坊っちゃんだって、レオニスといっしょの方が何かと安心だろうしな」

「騒がしくしてすまんな、ライト。俺達そこまで気が回らんかったわ」


 レオニスに睨まれて我に返った冒険者達。次々とライトに向けて謝った。

 確かにレオニスの言う通りで、今までライトを育ててきたレオニスを差し置いて他人と依頼をともにこなすなど絶対にあり得ない話だ。

 こりゃレオニスに怒られてもしゃあないわ、と皆納得しきりである。


 ちなみにレオニスの横で、ラウルが「俺もライトの初めての依頼についていくからな?」と宣言していた。

 ラウルはレオニスのラグナロッツァの屋敷の執事が本業。執事と冒険者の二足の草鞋を履いていることは、他の冒険者達にも広く知れ渡っている。

 故にラウルはレオニスと同じくライトの大事な家族であり、ラウルの同行宣言に異論を唱える者は一人もいなかった。


 その後も賑やかな宴会は続いた。

 ちょうど昼飯時だったのでたくさんのご馳走も振る舞われていて、直営食堂のメニューの他にもラウルが作ったご馳走が次々と加わり、皆溢れんばかりの笑顔で舌鼓を打っている。


「うおおおおッ、ラウルの兄ちゃんの作るご馳走が美味ぇってのは前々から聞いていたが、本当だな!」

「こんなに美味い飯を作れるなら、飯屋をやってもいいんじやね!?」

「レオニス、ライト、毎日こんなご馳走が食べられるって羨まし過ぎるぞ!」


 たくさんのご馳走に、ラウルが新しい皿をテーブルに出す度に冒険者達がワッ!と我先に群がる。

 もちろん直営食堂のメニューも美味しいが、ラウルのご馳走はそれとはまた別格の美味しさを誇る。

 強面冒険者達がご馳走に群がっている間でも、何人もの冒険者がライトのもとを訪れては顔繋ぎの挨拶をしていく。

 そんな中で、ライトも知る冒険者パーティーがライトのテーブルに挨拶にきた。

 それは若手五人組のパーティー、『龍虎双星』のメンバーだった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ライト君、冒険者登録おめでとう!」

「あッ、クルトさん!お久しぶりです!」

「ライト、やっと俺達の仲間入りだな!」

「ガロンさん!ありがとうございます!」

「ライト君、お久しぶりね!元気にしてた?」

「ヴァハさんも、お元気そうで何よりです!」

「今日ここでライト君の歓迎会が開かれるって聞いて、私達も参加させてもらったの」

「モルガーナさん、ぼくのために来てくれて嬉しいです!」

「やっとわたしの後輩ができた……とっても目出度い」

「ネヴァン先輩、これからもよろしくお願いします!」


 クルト、ガロン、モルガーナ、ヴァハ、ネヴァン、龍虎双星のメンバーがはち切れんばかりの笑顔でライトの冒険者登録を祝福してくれている。

 彼ら彼女らの温かい言葉に、ライトは感激することしきりだ。


 ライトが彼ら『龍虎双星』の面々とこうして直接会って話をするのは、二年ぶりくらいか。

 当時はまだ幼さが残る彼らだったが、年長者のモルガーナやクルトは二十歳を過ぎ、最年少のネヴァンでも十七歳になっていて皆大人びたオーラが増していた。


「皆さんは、今どこでどんな依頼を受けているんですか?」

「最近はもっぱら薬草採取依頼をこなすことが多いかな」

「そうそう、このラグナロッツァの依頼掲示板にもたくさんの依頼書が出てたけど、他の街でも高く買い取ってくれるんだよな!」

「薬草採取は回復剤の材料だから、私達冒険者にも欠かせない必須アイテムだしねー」

「でもって、今は何故だか高価買取の他にも貢献ポイントが多めにつくから、階級上げのためにもなって一石二鳥なのよね!」

「薬草様々……」

「そ、そうなんですね……」


 ここでも薬草不足の話を聞くとは思わなかったライト。

 後ろのレオニスやラウルとともに、三人して頬を引き攣らせながら乾いた笑いを浮かべている。

 そんな微妙な空気を誤魔化すためか、レオニスがクルト達に話しかけた。


「お前達、どの街で薬草採取をしてるんだ?」

「えーとですね、ちょっと前まではアドナイでやっていたんですが……アドナイに滞在する冒険者がかなり増えてきたんで、最近はビナーの街にいます」

「おお、ビナーか。ビナーには、お前達と同じく薬草採取をメインに活動しているフェリックスがいるはずだが」

「ああ、フェリックスさんですね!僕達もフェリックスさんにはお世話になっています」

「フェリックスさんの薬草知識はそりゃもうすごくて、もはや『薬草採取のプロフェッショナル』として名を馳せていますよ!」


 互いの知己の話で盛り上がるレオニスとクルト達。

 レオニスの旧知であるホド出身の聖銀級冒険者、フェリックスも未だにビナーの街で健在らしい。

 フェリックスはレオニスより年上だが、聖銀級冒険者として現役活動していることはレオニスにとっても素直に嬉しいことだ。

 旧友の健在を知ったレオニスの顔も自然と綻ぶ。


「そうかそうか、フェリックスのやつもまだビナーにいるんだな。よし、そしたら近いうちに俺もビナーの街に行ってみるか」

「えッ、レオニスさんがビナーの街に来るんですか!?」

「あの街、薬草が豊富に採れる以外にこれといった特徴もないですが……」

「でも、レオニスさんがビナーに来てくれるなら嬉しいです!」

「そしたらフェリックスさんにもそうお伝えしておきますね!」


 レオニスがビナーの街を訪ねると言い出したことに、クルト達が一瞬戸惑いつつもすぐに大喜びし始めた。

 そんなクルト達に、レオニスがいたずらっぽく笑う。


「いや、フェリックスには内緒にしといてくれ。俺がビナーの街に顔を出すと知ったら、さっさと逃げ出しかねんからな」

「え? レオニスさん、フェリックスさんと仲が悪いんですか?」

「いや、俺は仲良しだと思ってるぞ? 会えば普通に会話もするしな。ただ、フェリックスの方はどうだか分からんがな!」

「そ、そうなんですね……」


 カラカラと笑い飛ばすレオニスに、クルト達が複雑そうな顔をしている。

 顔を見て逃げ出すとか、話に聞くだけならそれは決して仲良しとは言わないだろう。

 しかし、レオニスの様子だとそこまで険悪な仲でもなさそうだし、レオニスがビナーの街に来たからといって問題が起こることもなさそうだ。


「ま、そんな訳で。俺もいつビナーの街に行くかは分からんし、今日明日とかすぐに行く訳じゃないからフェリックスには内緒な!」

「分かりました!」

「ビナーでレオニスさんに会えるのを楽しみにしてますね!」


 思わぬ話の展開に、クルト達もますます喜んでいる。

 そんな中で、ネヴァンがライトに向かって話しかけた。


「その時は、ライト君にも会える、よね?」

「はい!もちろんぼくも、レオ兄ちゃんといっしょにビナーに行きます!ぼく、ビナーにはまだ行ったことがないので」

「そっか、そしたらライト君達が来たら私達がビナーの街を案内するわね!」

「よろしくお願いしますね!」


 ネヴァンの誘いにライトも応じ、モルガーナがビナーの街の案内を買って出る。

 ライトはまだビナーの街に行ったことがないし、何より冒険者登録したばかりの新人冒険者であるライトには難易度低めの薬草採取はもってこいの依頼だ。


 まだ見ぬ街ビナーに思いを馳せるライト。

 新たな冒険の予定が入ったことに、ライトを見守るレオニスとラウルの顔も自然と綻んでいた。

 前話から始まったライトの冒険者登録記念の歓迎会の様子です。

 ライトの新しい門出を祝うために、たくさんの人々が集まるということで、超懐かしい『龍虎双星』の面々も引っ張りだしちゃいました♪゜.+(・∀・)+.゜


 この子達が出てきたのは第200話より前で、ジョブシステムの解説とラグナ神殿の魔剣【深淵の魂喰い】情報をもたらして以降、全く出番がなかったという(=ω=)

 半ばどころかほぼほぼ消えかけてた不憫な子達ですが、ライトを祝うために駆けつけてきた!という体での再登場は、作者としても嬉しい限りです( ´ω` )

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