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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
三年生の夏休み

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1594/1682

第1594話 ライトのシュマルリ遠征

 誰にも内緒でシュマルリ山脈での冒険を始めたライト。

 お目当ての地点に到達するまでに、三日を要した。

 道中はルディの背に乗っての飛行移動だから、そこまで危険な場面はなかった。

 ルディにはなるべく地面から離れ過ぎず低い位置を飛ぶよう指示し、飛竜が多数飛ぶ彼らの縄張りでは一旦地面に降りてライトが主体となって走る。

 ライト達は時と場所によって臨機応変に対処していった。


 もちろんこまめな休憩も欠かさない。

 四十分飛行もしくは走行したら、二十分の休憩を取る。

 休憩時には必ず『退魔の聖水』と魔物除けの呪符を使い、二重の安全対策で休むのがポイントだ。

 休憩ではエクスポーション等の回復剤の他に、甘いものだけでなく串焼などのしょっぱいものも摘んだり。

 それはさながら遠足のような楽しさだった。


 時折小型のドラゴン、レッドドラゴン、アースドラゴン、サンダードラゴンなどがライト目がけて襲ってきた。

 しかしこれらはHP1000~1200程度、ライトの中では既に雑魚化していてもはや敵ではない。

 細い火炎放射や電撃などをヒョイ、ヒョイ、と器用に躱してとっとと飛び去る。

 本当ならその場で倒してもいいのだが、今は立ち止まる時間すら惜しいのでスルー一択である。


 そうして昼になり、三時のおやつも食べて、空が茜色を帯び始めた頃にその日の遠足もとい遠征は終了。

 なるべく平らな地面を見つけて、そこにヴァレリアからもらった瞬間移動用の魔法陣を設置する。

 こうすることで、翌日はその地点から遠征を再開できる、というからくりだ。

 早めに帰還してたっぷり休養を取り、翌日また遠征の続きをする―――レオニスのように泊まりがけでの遠征などまだできないライトが、あれこれ必死に考えを巡らせて編み出した苦肉の策であった。


 ちなみにお昼ご飯の時にも、瞬間移動用の魔法陣を一ヶ所設置していた。

 これは、後日雑魚ドラゴンを狩る必要性が出た時のための予備動作。

 別のクエストイベントなどで、雑魚ドラゴン由来の素材が指定されて採取に迫られることも想定されるからだ。


「ウィカ、ルディ、お疲れさま。明日もよろしくね」

『はい!明日も頑張りましょう!』

『お疲れちゃーん!ボクはもう用無しかもだけど、明日も絶対にボクも連れてってね☆』


 無事設置した瞬間移動用魔法陣の前で、今日一日の働きを労い合うライト達。

 中でもウィカは自分の役割をよく理解していた。


 実際ウィカの一番重要な仕事は、ライトのシュマルリ遠征のスタート地点である善十郎の滝への移動、これに尽きる。

 そしてその役割を無事果たした今、これ以上ウィカがライトのシュマルリ遠征に付き合う必要はないのだ。


 しかし、ウィカとしては最後まで遠征についていきたいらしい。

 そしてそれはウィカだけでなく、ライトとルディも同じ気持ちだった。


「用無しだなんて、とんでもない!ウィカはぼく達の大事な仲間だもん、仲間外れになんて絶対にしないよ!それに、ウィカがいっしょにいてくれるだけでとっても心強いもん。ウィカのいないシュマルリ遠征なんてあり得ないよ!」

『そうですとも!パパ様の言う通りです!ウィカ兄様、明日も僕達といっしょに冒険しましょうね!』

『ンフフ……二人とも、しゃあないなぁ。ここはやっぱり、ボクが二人についていてあげないとね☆』


 健気なウィカを抱っこしながら頬ずりするライトに、ライトの真横でウィカを見つめ懸命に励ますルディ。

 敬愛する主と可愛い弟分の心遣いに、ウィカの糸目がますます細くなる。


「さ、そしたらまずは転職神殿に帰ろっか。その後ウィカはぼくといっしょにカタポレンの家に帰って、お風呂から目覚めの湖に帰還ね」

『はーい!』

『らじゃらじゃ☆』


 ライトが帰路の順番を明確に伝え、瞬間移動用の魔法陣の中に三人で入る。

 ウィカはライトが抱っこ、ルディは身体を小さくしてライトの左肩にちょこん、と乗っている。


 ライトが魔法陣の操作パネルをピコピコと弄る。

 行き先設定し終えたライト、移動の確定ボタンを押す前にふと真上を見上げる。

 うっすらと赤く色付き始めたシュマルリの空を見ながら、気合いの入った掛け声を上げた。


「皆、明日も頑張るぞー!」

『『おーーー!』』


 決意も新たに気合いを入れるライトに、ウィカとルディもまた嬉しそうに応える。

 そうして三人は初のシュマルリ遠征初日を終えて、それぞれの住む場所に戻っていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ライトのシュマルリ遠征四日目。

 それまでそこそこ出てきていた、雑魚ドラゴンを含む雑多な魔物達の数が目に見えて減った。

 これはそろそろ本命が出てくる兆しか、とライトは気を引き締める。


 ここに来るまでに、様々な出来事があった。

 飛竜を避けて地上を走っていたら、咆哮樹の近似種(色違いコピペとも言う)ヒステリックトレントに追いかけられたり、休憩中に大量のエリンギもどきの毒々しいキノコがどこからともなく現れて、退魔の聖水の範疇の外側に寄ってきて囲まれたり。

 ルディの背に乗って飛んでいて、ふと地上を見たら青白く光る何かがあり、よくよく見たらミスリルゴーレムの群れだったり等々。


 初日に見かけたミスリルゴーレムの群れは、上空から目撃しただけなので特に問題はなかった。

 ただその数が五十体近くいて、さすがにこの群れと地上で直接エンカウントしたくはない。

 ミスリルゴーレムも雑魚ドラゴンと同程度のHPを持っているので、五十体近くに一気に囲まれるとさすがにライトでも厳しい。

 もっとも、ミスリルゴーレムは空を飛べないので、隙を見てライトが空中に飛んでしまえば逃げ切れるだろうが。


 エリンギもどきの毒々キノコの群れと遭遇したのは、遠征二日目の午前中。

 二回目の二十分休憩時に、十分を過ぎたあたりで突如紫色&黄緑色の水玉模様という気色の悪いキノコ型魔物がわらわらと現れ、あっという間に取り囲まれてしまった。


 キェキェキェキェ♪という不気味な鳴き声?を上げてライトを睨みつける毒々キノコ。

 こいつは『パープルマタンゴ』という魔物で、これの色違いが何種類か存在するはずだ。


「あー、前にレオ兄ちゃんがシュマルリ遠征した時に囲まれたってヤツかな?」

『そそそ。夜寝て朝起きたら、この毒々キノコがびっしりいたんだよねー。ボクもレオニス君もびっくりしたよー』

「あ、そっか、あの時はウィカもレオ兄ちゃんといっしょに遠征したんだっけ」

『そだよー♪ 見ててねー、あの時はこうしたんだー』


 今にも胞子を吐き出しそうな毒々キノコに、早速ウィカがライト達の前に進み出て長い尻尾をくるくるん☆と動かした。

 すると、たくさんの水の塊が空中に発生し、その場にいるパープルマタンゴ全部を瞬時に水で包み込んでしまった。


「「「キェキェモゴゴゴ!?!?!?」」」


 突然の出来事に、パープルマタンゴ達が水中で必死にモゴモゴと足掻いている。

 手足をジタバタと動かして藻掻くパープルマタンゴに、今度はルディが前に進み出た。


『パパ様、ウィカ兄様、仕上げは僕にお任せください!』

「うん、ルディ、よろしくね!」

『ボクの弟は、本当に頼もしいなぁ♪』


 ライトとウィカの快諾を得たルディ。

 敵対者に向けて容赦なく雷撃を放った。


「「「ウキェキェキェキェ!!!!!」」」


 ルディが放つ大量の雷撃に、毒々キノコ達はなす術もなく黒焦げにされていく。

 後方にいてライト達から距離があった毒々キノコは、何とかウィカの水の檻を破りびしょ濡れのまま這々の体で逃げていく。

 逃げていくキノコを追討ちする程ライトも暇ではないので、そのまま捨て置くことにした。


「これ、素材になるかもしれないから一応持ち帰ろうっと」

『間違っても食べられそうにないけどね☆』

『パパ様、僕もキノコ拾いのお手伝いします!』


 プスプス……と煤けた煙を立ち上らせるパープルマタンゴの死骸を、ライトがちゃちゃっとアイテムリュックに仕舞い込んでいく。

 黒焦げになった状態でも素材として使えるかは分からないが、ひとまず持ち帰って検証するのは大いにアリだ。


 そしてヒステリックトレントとの遭遇は、遠征三日目の昼過ぎに起きた。

 ヒステリックトレントは、最初は普通の木に擬態していた。

 ライト達もなるべく怪しい場所は避けて走っていたのだが、決められたマラソンコースのように万難を廃して先に進んでいけるほど、このサイサクス世界は甘くない。

 ライト達が怪しい木の横を駆け抜けようとした瞬間に、ヒステリックトレントの枝がライト目がけて急伸した。


 急な攻撃に対し、思わず「うおッ!?」という叫び声を上げたライト。

 反射的に身体が動いて、ヒステリックトレントの枝攻撃を何とか避けることができた。

 そして後ろを振り返ると、樹高15メートルはありそうな巨大な木が追いかけてくるではないか。


「キエエェェエェエエェッ!!」


 巨大な樹木が、ドスドスドスドス!という轟音を立てて、悪意を持ってライト達の後を走っている。

 幹の中央にはおどろおどろしい顔が浮かび上がっていて、転職神殿の近所にいる咆哮樹にそっくりどころか生き写しの顔つきをしていた。


 あー、こりゃ間違いなく咆哮樹のコピペモンスターだな。

 えーと、何だっけ、ヒステリックトレントとかいう名前だったか? そっかそっか、ヒステリックトレントはこんなところにいたんだな。

 ……ン? てことは? そのうちヒステリックトレントの木片やら樹皮やらが必要になる時も来るかも?

 よし、ならここで試しに枝の一本も持ち帰っておくか!


 こうした算段を弾くのに、ライトが要した時間およそ三秒。

 鈍足のヒステリックトレントとライトでは走る速度が天地の差なので、あっという間に距離が開いていたのだが。

 ライトは急ブレーキをかけて一転、背中に背負っていたガンメタルソードを取り出してヒステリックトレントに斬りかかった。


「うおおおおッ!」

「キエエェェエェエエェッ!?!?!?」


 ライトはヒステリックトレントの横を駆け抜け、すれ違いざまにガンメタルソードを一閃し太い枝数本を一気に刈り取った。

 よもやこんな小さな人族の子供に反撃されるとは、夢にも思ってもいなかったヒステリックトレント。

 それまで釣り上がっていた洞の目が途端にハの字になり、オロオロと狼狽え始めた。


 その間にライトは刈り取った枝を素早く拾い上げ、マイページに放り込み仕舞った。

 そしてすぐさまヒステリックトレントと真正面から対峙した。


「ウィカ、ルディ、ごめんね、ちょっとだけ寄り道するよ」

『大丈夫です!パパ様ならイケます!』

『ライト君、頑張ってー☆』


 ウィカとルディの声援を受けて、ライトがチャキッ!と改めてガンメタルソードを握り直す。

 真正面にいるヒステリックトレントを見据えるライトの目は、狩人そのもの。ギラリ!と鋭い眼光が獲物を捉える。

 一方で獲物認定されたヒステリックトレントは、オロオロどころかビクビクし始めた。

 どうやら『コイツはヤバい!』と本能的に気づいたようだ。


「キエエェェエェエエェッ!!」

「あ"」


 ヒステリックトレントが身体の向きを180°変えて、すたこらさっさどころかバビューン!とものすごい勢いで逃走していく。

 その逃げ足の早さは、先程までの比ではない。

 己の命を賭けた必死の逃走に、ライトは呆気にとられたまま立ち尽くしていた。


「くッそー、せっかくの検証チャンスを逃がしたか……まぁいいや、ここで無駄に時間を食い過ぎてもいけないし。ウィカ、ルディ、お待たせ!」

『パパ様、あんな大きな木を相手に一歩も引かないなんてすごいですー!』

『さッすがライト君、あの程度の木なんてライト君の敵じゃないね☆』


 危機を脱してウィカ達のもとに戻ったライトに、ルディもウィカも笑顔で迎え入れる。

 その後しばらくしてこの日の遠征は終了し、再び瞬間移動用の魔法陣を設置してライト達は転職神殿とカタポレンの森に帰還した。


 そうして迎えた遠征四日目。

 昼の少し手前、午前十時半頃には辺りの景色がこれまでと違うことにライト達は気づいていた。


 ヒステリックトレントではない普通の木は、何者かによって何ヶ所も抉り取られた枯れ木ばかり。

 砕けた岩があちこちに転がっていて、生き物の気配が感じられない。

 しかし、何故か悍ましい空気だけは強烈に感じる。

 その悍ましさは底知れず、ただただ悪意に満ちていた。


 空中飛行を止めて、一旦地面に降り立ったライト達。

 一見何もない荒れ地で、ライトは周囲を窺う。


「そろそろ出てきそうだ……ウィカ、ルディ、気をつけてね。どこから出てくるか分からないから」

『はい!』

『らじゃ☆』


 ライトの呼びかけに、ウィカとルディが気を引き締めつつ応じる。

 すると、ドシン、ドシン……という地響きがライトの右斜め後ろから発生した。

 慌ててライトが振り返ると―――

 そこには全身が明るい茶色の鱗で覆われた、ティラノサウルス型の魔物ドラゴタイラントがいた。

 前話に続き、ライトのシュマルリ遠征の様子です。

 途中出てくる毒々キノコは、かつてレオニスが決行した『野良ドラゴンと友達になろう!大作戦』でも遭遇したヤツですね(・∀・)

 それが出てきたのは第603話のこと。あれからもう二年と十ヶ月が経ったのか…(=ω=)…

 月日が経つのは本当に早(以下略


 その時には毒々キノコに命名していなかったのですが。

 再登場を記念?して、今回新たに名前をつけることに。

 キノコ系魔物に『マタンゴ』という名は、もはやお約束のような鉄板ネーミング。

 てゆか、このマタンゴって一体どこから来てるん?(゜ω゜)

 ふと不思議に思った作者は、早速ggrksしました!(・∀・)


 これ、1963年に製作された東宝の特撮ホラー映画が元ネタなんですねー(゜ω゜)

 Wikipedia先生曰く『カルト映画の1つとしても知られており、「世界の珍妙ホラー映画ベスト5」の第3位に挙げられているほか、海外での人気も高い。』とのこと。

 興行成績的にはイマイチだったようですが、半世紀以上経った今でも『マタンゴ』という単語がこうして語り継がれ、人々の意識や知識に浸透しているというのはやっぱりすごいことだなぁ、と作者は思います。


 そして、ようやく辿り着いた目当ての地、そしてドラゴタイラントとの遭遇。

 ライトの冒険や如何に———

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