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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
三年生の夏休み

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第1583話 感謝の気持ち

 レオニスから誕生日プレゼント兼冒険者新規登録祝いとして、父グランの形見のダガーをもらったライト。

 父が初めて自分のお金で買ったというダガーを、改めて見つめる。


 お金を貯めて初めて武器屋で買ったというくらいだから、きっとグランが十一歳か十二歳の頃に手に入れたものなのだろう。

 ただでさえ貧しい孤児院の出のグラン、ディーノ村の孤児院にお金を入れつつ自分の武器を買うための貯金までするのに、相当苦労したに違いない。

 使い込まれたダガーからは、そうした父の思いが垣間見えてくる。

 それを思うと、ライトの目頭はどんどん熱くなってくる。


 しかし、ここは誕生日パーティーという目出度い場。

 しかも自分は祝われる側で、自分だけでなくユグドラツィというもう一つの主役がいる。

 ここで泣く訳にはいかない。ライトは左手でめをぐしぐしと擦りながら、必死に涙を堪え誤魔化す。


 ライトはレオニスから受け取ったダガーをアイテムリュックに大事そうに仕舞った。

 そしてついでに何かを取り出して、クルッ!と振り向いてユグドラツィに声をかけた。


「じゃ、ぼくが一番最後ね!ツィちゃんへのぼくからのプレゼントは、これです!」

『まぁ、今年も私のためにプレゼントを用意してくれたのですか?』

「当然です!だって去年もプレゼントを贈りましたもん!」

『ありがとう、ライト』


 ライトの気遣いに、ユグドラツィが戸惑いながらも嬉しそうに応える。

 そうしてライトが上空に向かって両手で差し出したのは、一本の簪だった。


 それは『玉簪』という簪の中では最もポピュラーなタイプで、一本の串状の棒の頭に三つの玉が連なった飾りつけられている。

 玉簪を見たユグドラツィが、興味津々な様子でライトに問う。


『これは……何ですか?』

「これはですねぇ、簪といって人族の女の人が髪を飾るために使う、アクセサリーの一種です!」

『まぁ、髪飾りなのですね。初めて見る形ですが、とても美しいですね』

「ですよねー。簪というのは、基本的に着物を着た女性が着けるアクセサリーなんで……って、着物ってのはサイサクス大陸全土に伝わる伝統的な衣装で云々」


 簪について詳細を語るライト。

 一応というか、このサイサクス世界のアクシーディア公国にも着物文化はある。

 何故かと言えば、ここはBCOがベースとなっている世界。

 BCOでは正月には振袖、夏には花火大会や浴衣といった日本文化をそのまま用いた衣装が度々使われてきたからだ。


 例えばそれは期間限定のイベント内だったり、あるいは季節限定の課金ファッションだったり。

 人の名前や街並みなどは中世ヨーロッパ風なのに、随所に日本文化が混じるちゃらんぽらんさは、いい加減なようでいてどことなく懐かしくもある。


「でもって、この棒の部分はランガさんの枝で、玉飾りはランガさんとイアさん、そしてラグスさんの枝を使ってます!」

『ランガ兄様とイア兄様と、ラグスの枝……』


 ユグドラツィの兄弟、冥界樹ユグドランガと海樹ユグドライア、そして末弟の竜王樹ユグドラグス。

 神樹族三兄弟全員分の枝を使って作った玉簪とは、何という贅沢なことか。間違いなく世界一、いや、宇宙一の玉簪である。


 玉簪の素材を知ったユグドラツィが、感極まったように呟く。


『兄様方やラグスの素材の髪飾りなんて……とても嬉しいです……ライト、こんなに素晴らしい品を私のために用意してくれて、本当にありがとう……』

「どういたしまして!ツィちゃんに半端なものを贈るのは、ぼくのプライドが許しませんからね!」

『フフフ、ライトはもう立派な紳士なのですね』


 ユグドラツィにプレゼントを気に入ってもらえたようで、大満足のライト。

 フフン☆とばかりに胸を張る少年に、ユグドラツィが最大級の賛辞を贈る。

 するとここで、ユグドラツィの枝葉がサワサワと揺れ動き始めた。


『さて、そしたら私も皆からもらいっぱなしではいられませんね。私からも皆に何か返さねば』

「ン? ツィちゃんはそんなことを考えなくていいんだぞ?」

「そうですよ!ツィちゃんはライト君と同じく、今日のパーティーの主役なんですから!」

『いいえ、そうはいきません。それでは私の気が済みませんもの。それに、返すといっても大したことなどできないのですがね』


 ラウルとマキシがユグドラツィを止めようとするも、ユグドラツィの枝葉は揺れ動き続ける。

 そして次第にライト達の周りに、淡く金色に光る粒子のようなものがふわふわと浮いてきた。

 それを見たハドリー達全員が、嬉しそうに声を上げる。


『あッ、ツィママの魔力だー!』

『ツィママの魔力、美味しいー♪』

『ツィママの魔力って、すっごく美味しいだけじゃなくて温かくて、身体がぽかぽかしてくるから大好きー♪』


 空中をふわふわと浮きながら、金色の粒子を身体中で浴びるハドリー達。

 ハドリー達の話によると、どうやらこの金色の粒子はユグドラツィの魔力そのものらしい。

 確かにライト達がその金色の粒子に触れても、物質的な質感は全く感じない。だが、粒子に触れた途端に身体の中に温かい何かが吸収されていくような、不思議な感覚が沸き起こるのは分かる。


 特にナヌス達にはその感覚が顕著なようで、ヴィヒト達がわなわなと小刻みに震えながら感動している。


「おおお……ツィちゃん様の魔力を分け与えていただけるとは……何という光栄の極み」

「儂らの寿命が百年は伸びたぞぃ!」

「うむ!伸ばしてもらったこの命、ツィちゃん様のためにお使いせねばな!」


 神妙な面持ちのヴィヒトに、キャッキャと喜ぶパウルとハンス。

 族長が真面目で年寄りがフリーダムなのは、どうもラキ達オーガ一族に限った話ではないらしい。

 そんなヴィヒト達含めて、ユグドラツィが皆に話しかける。


『ここにいる皆に、これからもたくさんの善きことが起こりますように……私からの願いです』

「ツィちゃん、ありがとう!」

「これからもよろしくな」

『ツィちゃん、私もアクア様もずーっとツィちゃんのお友達よ!』

『私も私も!ツィちゃん、私やママとも仲良くしてね♪』


 ユグドラツィの温かいお返しに、ライト達だけでなくその場にいる全員が口々に礼を言う。

 特に水の女王など、水でできている身体にユグドラツィの魔力をまとって全身がキラキラと輝いていて眩しいくらいだ。

 その横でクロエも背中の翼をパタパタとさせながら、ニコニコ笑顔でユグドラツィを見上げる。


 水の女王とアクア、闇の女王とクロエ、ラキ達オーガ族、ヴィヒト達ナヌス、そしてユグドラツィと十六体のハドリー達。

 これら全てライト達が結んだ縁。

 この稀有にして温かな絆を大事にし、カタポレンの森でともに生きていこう―――

 ここにいる全ての者達が、心に固く誓った。

 のごおおおおッ、とうとうお昼過ぎそう><

 ホントはこの後もうちょい、恒例のアレを足してから締めるつもりだったのですが。とりあえず先に投稿して、後書きとともにまた追加しますぅ><

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