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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
三年生の夏休み

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第1578話 主役達への贈り物・その二

 ナヌス達のプレゼント披露が一通り済んだ後、次に立候補してきたのはクロエだった。


『はいはーい!ココも!ココもね、ライトお兄ちゃんと神樹さんにプレゼントを用意してきたの!』

「え、ココちゃんからもプレゼントをもらえるの? ありがとう!」

『まぁ、私にまでプレゼントをいただけるのですか?』

『うん!ココね、ライトお兄ちゃんの誕生日もだけど、神樹さんに会うのもすーっごく楽しみだったの!』


 ニコニコ笑顔ですくっ!と立ち上がったクロエ。

 それからすぐに、マキシに声をかけた。


『マキシお兄ちゃん、まずライトお兄ちゃんへのプレゼントを出してくれる?』

「うん、分かった!」


 クロエに頼まれて、マキシが徐に空間魔法陣を開く。

 クロエの話によると、今回のプレゼントはマキシとの共同作業の賜物らしい。

 それは、一本の大きな黒い羽根の下に小さな白い羽根が重ねてつけられたピン状のアクセサリーだった。


「これは……ブローチ?」

「はい。ブローチの一種のハットピンです」

「うわぁ、すっごく綺麗なピンだね……」


 クロエが得た漆黒の翼、その羽根を用いたハットピン。

 濡羽色の羽根が艶やかで、ピンの銀色と相まって一際目を引く美しさだ。

 しかし、不思議なのが小さな白い羽根だ。

 クロエの翼は黒一色で、白い羽根など一枚もないというのに。


「マキシ君、この白い羽根は……?」

『それは我の羽根だ』

「え、ラーデの羽根!? ココちゃんとラーデがコラボしたの!?」

『うむ、こらぼしたのだ』


 マキシに不思議そうに問うたライトの問いに答えたのはラーデ。

 ちなみにラーデは、ライトが発した『コラボ』という言葉が何を意味するか、全く分かっていない。

 しかし、そこは皇竜のプライドなのか、決して『知らない』とは言わずに知ったかぶりでドヤ顔するのが微笑ましい。


「ココちゃんとラーデの羽根を使ったアクセサリー……何て贅沢なんだろう!これ、本当にぼくがもらってもいいの?」

『もちろんよ!ライトお兄ちゃんのために用意したんだから、もらってくれなきゃ困るわ!』

「そうですよ、ライト君。もし万が一、僕の渾身の作を受け取ってくれなかったら……泣いちゃいますよ?」

『然り。要らぬと言われたら、我も泣いて拗ねてしまうぞ?』

『うんうん、ココだって泣いちゃうからね!』


 暗黒神殿守護神クロエと皇竜メシェ・イラーデが素材を提供し、八咫烏のマキシが作り上げた逸品。

 この世に二つとない稀少品に、ライトが若干気後れするのも無理はない。

 しかし、マキシ達が『受け取ってもらえなかったら泣く!』と口々に言うではないか。

 これにはさすがのライトも慌てだした。


「え"ッ!? そそそそんな、皆が泣いたらぼくも泣いちゃうよ!?」

「フフフ、そしたらちゃんと受け取ってくださいね?」

「もちろん!マキシ君、ココちゃん、ラーデ、こんなに素敵なプレゼントをありがとう!」

『どういたしまして♪』


 マキシから渡されたハットピンを両手で持ちながら、三人に礼を言うライト。

 こんなに素晴らしい品を受け取らないなど、絶対にあり得ない。

 ライトに喜んでもらえたことに、三人もまた満足そうに笑顔で頷く。


「ハットピンってことは、これは帽子につけるの?」

「基本的にはそうですが、ピンを止められる素材なら帽子以外の場所にも普通に着けられますよ」

「そうなんだ!そしたら早速マントの襟に着けようかな!」

「そしたら僕が着けてあげますね」


 スペシャルコラボのハットピンを一目で気に入ったライト。

 早速マントに着けることにすると、マキシが手ずから着けてくれるという。

 ライトが手に持っていたハットピンをマキシが受け取り、ライトのマントの襟元に手際良く着ける。

 マキシの手で留められた、黒と白が輝く美しいハットピンを見ながらクロエが誇らしげに語る。


『ココの翼の黒い羽根で、ライトお兄ちゃんに何かプレゼントを作りたかったんだけどね? ココは飾りの作り方を知らないから、ラウルお兄ちゃんに相談したの。そしたら、ラウルお兄ちゃんが『マキシに協力してもらったらどうだ?』って言ってくれて……それで、マキシお兄ちゃんにお願いして作ってもらったの!』

『その話をラウルから聞きつけて、我も乗っからせてもらったのだ』

「そうだったんだ……皆、ぼくのためにありがとう!」

「どういたしまして。僕もライト君へのプレゼントを何にするか悩んでいたんで、ココちゃんのお願いは渡りに船でした」

『うむ、我にも好都合であった』


 クロエが語るプレゼント作りの経緯に、ラウルもうんうん、と頷いている。

 確かにクロエもラーデも、自身の翼の羽根という超稀少な素材を提供することはできても、それをアクセサリーなどに加工することはできないだろう。それを可能にする道具も知識も持ち合わせていないのだから。


 しかし、クロエの周りにはクロエを助けてくれる人達がいる。

 その一人がラウルであり、マキシだった。

 クロエに助言を請われたラウルが架け橋となり、マキシの協力を得たことでクロエのプレゼント作りが叶った。

 クロエとラウル、そしてラーデとマキシの四人の温かい絆が感じられる逸品に、ライトは大満足していた。


 するとここで、黒水晶の中にいる闇の女王がライトに話しかけた。


『ライト、ちとこちらに近う寄れ』

「ン? はい、何でしょう?」

『ココ様が下賜された装飾に、吾の力を与えよう』


 ライトが闇の女王に指示されるまま、スススー……とクロエの前に行く。

 すると、黒水晶から闇の女王がスススー……と出てきて、ライトの襟元に着けられたハットピンを両手でそっと包み込んだ。


『……これで良し。この装飾に、吾の力を込めた。これを身に着けた者には、闇属性に対する耐性を高める効果を発揮するであろう』

「ホントですか!? 闇の女王様、ありがとうございます!」

『何、気にするな。吾もココ様達同様に、其の方に何かしら贈り物をしたかったからな』


 感激の面持ちで礼を言うライトに、闇の女王が微笑みながらライトの頭をそっと撫でる。

 そしてその後、闇の女王は再びクロエが着けている黒水晶のブローチの中に、スススー……と戻っていった。

 ライト達はユグドラツィの木陰にいるので、闇の女王も外に出てこられない訳ではないが、やはり黒水晶の中にいる方が心地良いようだ。


 そうして新たに闇の女王の力が付与されたハットピンを、ライトが大事そうに触る。

 暗黒神殿守護神に皇竜、八咫烏の逸品に、よもや闇の女王まで加わるとは。

 このハットピンはもはや、アーティファクトと讃えられても決して過言ではない品となった。

 そんなライト達のやり取りに、レオニスが羨ましそうにライトに話しかけた。


「おー、ライト、ココとラーデの翼の羽根のアクセサリーなんてすげーじゃねぇか!」

「うん!すっごい良い物をもらっちゃった!」

「大事にしないとな」

「うん!」


 レオニスに頭をワシャワシャと撫でられるライト。

 レオニスの大きな手で頭を撫でられるのは、いつだって心地が良い。

 そしてレオニスはライトの頭を撫でながら、クロエにも声をかけた。


「ココ、これと似たようなのでいいから、パパの誕生日にも一つ作ってくれないか?」

『うん!パパの誕生日にも、ココの羽根のお飾りをプレゼントするね!』

『その時は我もまた羽根を提供しようぞ』

「おお、ラーデも協力してくれるのか、ありがとうな!そしたらアクセ作りもマキシに頼もうか」

「お任せください!レオニスさんの希望の形で作らせてもらいます!」

『その品にも吾の力を込めてやろう』

「お、闇の女王もありがとう、その時はよろしくな!」


 自分にも同じようなアクセを作ってくれ!とおねだりするレオニス。

 なかなかにちゃっかりしているが、クロエとラーデとマキシが関わったスペシャルコラボを目の当たりにすれば、レオニスだって同じものを欲してもおかしくはない。

 現役冒険者たるもの、パワーアップアイテムを得られる機会は絶対に逃さない!といったところか。


 そうしてライトへの贈り物が済んだところで、クロエが今度は頭を真上に上げてユグドラツィに話しかけた。


『あのね、神樹さん。神樹さんにも、ココとラーデ君の羽根を使ったお飾りをマキシお兄ちゃんに作ってもらってあるの!』

『まぁ、私にもそんな素敵な品を用意してくれたのですか?』

『うん!マキシお兄ちゃん、神樹さんにもお飾りを渡してあげて』

「分かった!ツィちゃん、ちょっと待っててくださいね……」


 クロエの呼びかけに驚くユグドラツィと、いそいそと空間魔法陣を開くマキシ。

 そうしてマキシが取り出したのは、ライトのアクセサリーと同じく黒と白の羽根を用いたもの。

 ただしそれはハットピンなどではなく、長い麻紐が着けられていた。


『それは……腕輪のように着けるもの、ですか?』

「はい。ネックレスやブレスレットのように、ツィちゃんの枝のどこかに通して着けてもらおうかと思いまして」

『何て素敵な飾りでしょう……私も早速身に着けたいのですが……』


 プレゼントのアクセサリーを早速身に着けたいと言うユグドラツィ。

 その声はウキウキと弾んでいて、心から喜んでいることが伝わってくる。

 そしてユグドラツィの願いを叶える役に、即座に立候補した物がいた。


「なら、俺が着けてやろう」

「うん、よろしくね、ラウル」

『…………』


 マキシから黒と白の羽根アクセサリーを受け取ったラウル。

 ふわり、と宙に浮き、早速アクセサリーを着けるに適した枝を探し始めた。

 その間ユグドラツィの枝が、風もないのにザワザワと大きく揺れる。

 それは、大好きなラウルの手でアクセサリーを着けてもらうことに対する、ユグドラツィのそわそわとした緊張感の表れだった。


 ラウルが当たりをつけた場所は、幹に近い下の枝の中程から枝分かれした枝の根元。

 といってもラウルが両腕を回してもギリギリ届くような太さで、そこに麻紐をぐるりと回してアクセサリーを着けた。


「ツィちゃん、ここら辺でどうだ?」

『す、全てラウルにお任せします……』

「……(作業中)……締めつけてないからキツくはないと思うが、着け心地はどうだ?」

『だ、大丈夫ですぅ……』


 ラウルの確認の言葉に、蚊の鳴くような声で答えるユグドラツィ。

 どこからか、プシューーー……というやかんか蒸気機関車の蒸気なような音が聞こえてきた、ような気がする。

 きっとユグドラツィが照れまくっているのだろう。何とも愛らしい神樹である。


 そんなユグドラツィに、ハドリー達が一斉に群がった。


『ツィママ、すっごくステキー!』

『とっても綺麗なお飾りねー!』

『ツィママ、良かったねー!』

『皆、ありがとう』


 ハドリー達の祝福に、ユグドラツィも嬉しそうに応える。

 するとここで、闇の女王が再び黒水晶から出てユグドラツィに贈られたアクセサリーに力を付与した。


『神樹の装飾にも吾の力を与えよう』

『まぁ、闇の女王、私にも力を分け与えてくれるのですね。ありがとうございます』

『何、これもまたココ様の神樹に対する心からの贈り物なのでな。吾もココ様とともに、神樹への敬意を払ったまでのこと。長き時を生きる神樹よ、これからもこの森の行く末を幾久しく見守っていっておくれ』

『……はい……』


 闇の女王の心遣いに、ユグドラツィが感極まったように一言だけ呟く。

 今この場にいる者達の中で、一番長生きするのは間違いなくユグドラツィだ。

 その次がクロエとラーデ、闇の女王や水の女王で、以下マキシ、ラキ、ラウルと続く。

 クロエやラーデ、属性の女王達の寿命など誰にも分からないが、それでも神樹族のように何千年以上も生きるということはないだろう。


 今ここで賑やかに過ごしている者達は、いつか必ず別れの時が来る。

 それを思うと、ユグドラツィの胸中は寂寥感でいっぱいになる。

 しかし、だからこそ今この時、この瞬間を胸に刻もうとも思う。

 ユグドラツィを見上げて微笑む大事な者達の笑顔に、ユグドラツィの枝葉はサワサワと軽やかな葉擦れの音を立てていた。

 はい、皆様おはようございます。今日も33時投稿ですぅ><


 前話に続き、今話もライト&ユグドラツィへのプレゼント進呈の回です。

 プレゼント自体は一種類、黒と白の羽根アクセサリーですが、何と何と!クロエ&ラーデ&マキシ&闇の女王の超スペシャルコラボ!

 ンまーーー、何て盛り盛りなプレゼントでしょう!゜.+(・∀・)+.゜

 でもって、その途中でユグドラツィがラウルのアクセサリー装着に照れまくったりなんかして。

 ちょっぴり恋模様を織り込めた作者は大満足です!(ФωФ) ←ないものねだりの作者


 ……って、このスペシャルプレゼント、最初はクロエ&マキシの二者だけのコラボだったんですけど。

 何故かそこにまず闇の女王が『最後の仕上げで吾も参加しよう』と名乗り出てきて、その直後にラーデまで『羽根を用いた装飾なら、我にも一枚噛ませよ』と参戦してきまして。

 まぁね、闇の女王やラーデにだって、誕生日の主役であるライト&ユグドラツィに何かしらプレゼントを贈りたい気持ちはあるでしょうし(゜ω゜)

 そんな訳で、種族の垣根を超えまくった超スペシャルコラボプレゼントが実現したのでした(^ω^)

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