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第1574話 錚々たる面々

 レオニスの背中に負ぶさりながら、カタポレンの森の空を飛ぶライト。

 自力で飛ぶのとはまた違う爽快な風に、ライトのワクワクは止まらない。


「わーーーッ!すごいすごーい!気ー持ちいーーーい!レオ兄ちゃん、もっと早く飛んでーーー!」

「お、いいのか? ならしっかり捕まってろよ!」


 ライトのおねだりに、レオニスが速攻で快く応じる。

 ギュン!と一気に加速したかと思うと、空に向かって急上昇したり螺旋状に錐揉みで飛んだり。それはさながらジェットコースターのようなスリリングな飛行だった。

 だが、今のライトがそれに怯むことはない。

 レオニスとともに「キャッホーーーイ!」と叫びながら大はしゃぎしている。


 そうしているうちに、神樹ユグドラツィの大きな樹体が見えてきた。

 かなり上空にいたレオニスが飛行速度を下げて、ゆっくりとユグドラツィの近くに降りていった。

 すると、降りた先にはラウルとマキシ、そしてラーデがいた。


「お、ライト、時間通りに来たな」

『約束の時間を守れるのは素晴らしいことだ』

「うん!だって、ラウルとそう約束したもん!」

「レオニスさんも、ライト君のお迎えお疲れさまです!」

「おう、マキシもこっちに来れて良かったな」

「はい!」


 ラウルとラーデがライトを出迎え、マキシがレオニスを労う。

 マキシが勤めているアイギスの夏季休暇は、本当はお盆休みに合わせて明日から始まるのだが。今日はライトの誕生日ということで、半日休暇としてお昼の少し前に帰宅することができたのだ。

 そしてラウル達に続き、ユグドラツィもライトに声をかけた。


『ライト、ようこそいらっしゃいました。十歳の誕生日、おめでとう』

「ツィちゃん……ありがとうございます!」

『今日の善き日に、皆とともに過ごせることができて……私も嬉しいです』

「ぼくもすっごく嬉しいです!だって今日は、ぼくの誕生日だけじゃなくてツィちゃんの997歳を祝うお誕生日会も兼ねてますから!」

『ウフフ、そうですね。夏生まれの私の誕生を、ライトとともに今年も祝ってもらえて本当にありがたいことです』


 ユグドラツィと和やかに会話するライト。

 ライトの言う通り、今日の誕生日パーティーはライトだけでなくユグドラツィの誕生日祝いも兼ねている。

 昨年の八月十二日も、ここで皆でライトとユグドラツィの誕生日を祝った。

 あれからもう一年が過ぎたのかー、月日が経つのは本当に早いもんだなー、と思うライト。

 するとここで、ラウルがライトに声をかけた。


「さ、そしたら早速パーティー会場に行くぞ」

「ええ!皆ライト君の到着を、今か今かと待ってますよ!」

「え? 皆? ラウルとマキシ君、ラーデ以外にも誰かここに来てるの? ……あ、そういやここにいるはずのハドリー達が一人もいないけど」

「向こう側に行けば分かるさ」


 パーティー会場に行こうと促すラウルやマキシの言葉に、ライトがはたとした顔でキョロキョロと周囲を見回す。

 ここには既に主役のライトとユグドラツィの他に、二人を祝うレオニスとラウル、マキシもいる。

 他に自分達の誕生日を祝ってくれる客人なんて、ユグドラツィと同居しているハドリー達以外に誰かいたっけ?と、ライトはパッとすぐには思いつかないようだ。


 とりあえず、ラウルの言う通りにユグドラツィの向こう側に移動するライト。

 ユグドラツィの幹や根はとても太くて大きいので、反対側は全く見えないのだ。

 そうしてぐるりと向こう側に回り込んだライト。

 不思議そうな顔をしていたライトの目に飛び込んできたのは―――カタポレンの家のご近所の面々だった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「おお!今日の主役のお出ましだぞ!」

「ライト、十歳の誕生日、おめでとう!」


 まず目についたのは、オーガ族族長のラキと長老ニル。

 一際目を引く体躯の良さと、その体格からくる地声の大きさは嫌でも目立つというものだ。

 そんな豪快なラキ達の横には、彼らとはあらゆる意味で正反対のナヌスがいた。


「ライト殿!此の度は誠に目出度い!」

「十歳といえば、我らナヌスではまだまだヒヨッコ扱いなのだが……ライト殿は大人顔負けの賢者、ますます将来が楽しみだのぅ!」

「ほんにのう、里で留守番をしておるシモン達に本気でライト殿を見習わせたいくらいじゃわ!」


 ナヌスの里から来たのは、族長のヴィヒトと長老パウル、ハンスの三人。

 ナヌス族の重鎮達が三人もお出ましとは、彼らが如何にライトのことを大事に思っているかが分かるというものだ。

 そしてナヌス達の横にいた水の女王が、ライト目がけて抱きついてきた。


『ライト!お誕生日、おめでとーーーッ!』

『あーッ!水の女王ちゃんってば、抜け駆けずるーい!ボクだって、ライト君にくっつきたいんだからねー!』

『こらこら、水の女王もウィカもそんなに慌てないの。今から皆でライト君と神樹のお祝いを目一杯するんだから』


 水の女王に負けじと、ウィカがライト目がけて飛び込んできた。

 水の女王とウィカのダブルアタックに、ライトが思わず「ウオッ!?」とびっくりしている。

 フライング気味にアタックした水の女王とウィカを窘めているのはアクア。

 目覚めの湖の愉快な仲間達は、今日も賑やかである。

 そんな彼女達の後ろから、ヒョコッと顔を出したのはクロエだった。


『ライトお兄ちゃん、お誕生日おめでとう♪』

『我が姉妹が騒がしくてすまぬな』


 ニコニコ笑顔で前屈みになりながら、ライトの誕生日を祝福するクロエ。

 しかし、闇の女王は声はすれども姿は見えない。

 ならばどこに隠れているのか?と思いきや、闇の女王の声はクロエの胸元についている黒水晶のブローチからだった。


 そのブローチは、今年の四月にクロエの誕生日会をした時に、マキシからクロエにプレゼントしたものだ。

 確かに今は真っ昼間だし、神樹の枝葉で日陰ができると言っても闇の女王がそのまま表に出てくるのは少々厳しいだろう。

 そこで彼女が目をつけたのは、クロエのブローチにつけられていた大粒の黒水晶である。


 闇の女王は以前、クロエとともに日中に外出するためにレオニスの黒水晶のブローチに潜んだことがある。

 それと同じことを、今回はクロエのブローチで実践したのだ。

 暗黒の洞窟にクロエ達を迎えに行ったラウル曰く『クックック……これで吾はいつでもココ様の御身を守ることができるぞ』と大層ご満悦であったという。


 そして最後にライトの前に来たのは、十五体のハドリーであった。

 可愛らしい草木の精霊達が、ライトの足元にわらわらと集まりしがみつく。


『ライトお兄ちゃーん、お誕生日おめでとー!』

『『『おめでとー!』』』

『ツィママといっしょのお誕生日、いいなー!』

『『『いいなー♪』』』

『ライトお兄ちゃん、美味しいお水、ちょうだーい!』

『『『ちょうだーい♪』』』


 あどけない笑顔でライトの身体にまとわりつくハドリー達。

 彼ら彼女らは草木の精霊なので、服のそでの隙などから蔓を伸ばしてライトの身体を器用によじ登っていく。

 総勢十五体もいるので、ライトはあっという間にハドリー塗れになってしまった。

 そんなライトを救うべく、レオニスが早々に動き出した。


「おちびちゃん達よ、これじゃうちのライトが動けんじゃないか。とっとと剥がすぞー」

『『『キャーーー☆』』』


 ライトの身体にへばりつくハドリー達の腰や脇の下を、レオニスがむんず!と捕まえては、右斜め後ろにいるラウルにポイー☆と手渡していく。

 ラウルはそのまた斜め後ろにいるマキシにハドリーを手渡し、最後にマキシはハドリーをユグドラツィの根元にそっと優しく置く。

 まるでというか、バケツリレーそのまんまの光景が繰り広げられていた。


 ハドリー塗れから救出されたライトが、ふぅ……と安堵したように一息つく。

 そしてこの場に集まってくれた錚々たる面々を見ると、皆が皆笑顔でライトのことを見守ってくれている。

 そんな温かいご近所さん達の好意に、ライトは胸が熱くなる思いだった。


「皆、ぼくのために集まってくれて……本当にありがとう!」


 カタポレンの森のご近所さん達に向かって、深々と頭を下げるライト。

 こんなに礼儀正しい十歳の子供を、彼らはライト以外誰一人として知らない。

 皆笑顔で頷きながらライトを見つめる中、レオニスがパン、パン、と二回手を叩き全員の耳目を集めた。


「さぁさぁ、主役が揃ったことだし、ライトとツィちゃんの誕生日パーティーを始めるぞー。ラウル、ご馳走の用意を頼む」

「はいよー。ご主人様とマキシも、配膳の手伝いよろしくな」

「了解ー」

「分かった!」


 ライトとご近所さん達の顔合わせも無事済み、レオニスが今日のメインイベントである誕生日パーティーの開始を告げる。

 レオニスの指示に従い、ラウルが空間魔法陣を開いてご馳走を取り出しては自分で置いたりレオニスやマキシに渡す。

 一応ライトも手伝おうとしたのだが、レオニスに「お前は今日の主役なんだから、おとなしく座って待っとけ」と言われてしまった。


 地べたで地面に直接座っている皆の前に、それぞれが好むご馳走や飲み物が行き渡った。

 その後レオニスが乾杯の音頭を取り、全員で「乾杯ーーー!」と高らかに祝福する。

 そうして神樹ユグドラツィのもとで、ライトの二回目の誕生日パーティーが始まっていった。

 ようやく大本命の誕生日パーティーの始まりです。

 今回も去年同様、ライトとユグドラツィの誕生日パーティーを開くにあたり、前回と同じじゃつまらんよなー、と思った作者。

 ならご近所さん達を呼べばいいじゃなーい♪゜.+(・∀・)+.゜……てことで、ご近所さん達を総動員しちゃいました☆(ゝω・)


 その中で一番ご無沙汰のは、ナヌスですねー(゜ω゜)

 ナヌスという種族名だけなら、ちょくちょく出てきてはいるんですが。ナヌスのキャラが作中に出てきたのって、一体いつ以来だ?と思いサルベージしてみたところ、第1230話以来でした。

 ラーデがカタポレンの家に滞在することになったので、挨拶のためのご近所回りした時ですね。

 リアルタイムでちょうど丸一年ぶりの登場です。

 あまりにお久過ぎて、ナヌスのキャラが族長ヴィヒトと衛士のエディ、シモンくらいしか思い出せなかったという_| ̄|●

 なので、第781話を読み返してから今回の派遣キャラを決めましたですよ('∀`)


 ついでに言うと、オーガ族代表のラキとニルも当人達が出てくるのは第1233話以来で、ナヌス達同様かなり久々の登場です。

 いや、名前だけならナヌス以上にバンバン出てきてるんですけどね? 先日まで、レオニスが東のオーガの里であれこれしてきたばかりですし。

 ホントはねー、ラキやニル爺ももっと出番が増えてくれたらいいんですけど。オーガ達も割と台詞や行動がスラスラ出てくる方なんで。

 作者としては、とても助かる子達なんですよねぇ( ´ω` )

 でも、なかなか出番が作れないのが悲しいー><

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