第1570話 ライトに捧げる贈り物
転職神殿でのライトの誕生日パーティーを準備するミーア達。
円形の大きなテーブルに、椅子が六脚。
ライト、ミーア、ミーナ、ルディ、レアには座面をより高くした幼児用の椅子。
まだ着席のない椅子は、もちろんあの人のために用意したものだ。
しかし、あの人はいつ何時現れるか全く予測できない。
もしかしたら、ライトが帰らなければならないお昼前までに現れないかもしれない。
いつ来るかも分からない客人をずっと待ち続ける訳にはいかないので、一通り準備が整ったところでパーティーを始めることにした。
パーティー開始の挨拶は、転職神殿専属巫女であるミーアが務める。
ミーアが椅子から立ち上がり、嫋かな微笑みとともにライトに向けて語りかける。
『ライトさん。十歳のお誕生日、おめでとうございます』
「ありがとうございます!」
『今日はライトさんがこの世に生まれて十年目という、とてもお目出度い日です。ライトさん、このような善き日に私達のもとに来てくださって、本当にありがとうございます』
「い、いえ、こちらこそ!ミーアさんにはいつもお世話になってますし、ミーアさんだけでなくミーナにルディ、レア、ここにいる皆はぼくの大事な仲間です!」
『主様……』
『パパ様……』
『パパ……』
ライトにお祝いと礼を言うミーアに、ライトが恐縮しながら返す。
ライトは勇者候補生であり、NPCであるミーアや使い魔のミーナ達とも立場が全く異なる。
しかし、今や彼ら彼女らはライトにとってなくてはならない存在。
ライトのことを心から理解し慕ってくれる転職神殿の皆は、勇者候補生という重大な秘密を生まれながらに背負ったライトの心
の支えとなっていた。
そんなライトの言葉に、ミーナやルディ、そしてレアまでもが感激に打ち震えている。
使い魔とは、もとより主人のために尽くすもの。
厳然とした主従関係がある間柄なのに、ライトはミーナ達のことを決して下僕扱いしない。
それどころか、常に対等な仲間として接してくれる。
ミーナ達使い魔にとって、これ程嬉しいことはない。
『では、ライトさんの十歳のお誕生日を祝して、皆で乾杯しましょう。全員グラスを持ってください』
ミーアの指示に従い、お子様用椅子に座ったレア以外の全員がそれぞれのグラスやコップを持って立ち上がる。
ちなみに皆の飲み物は、ミーアがぬるぬるドリンク紫、ミーナはぬるぬるドリンク薄黄、ルディはぬるチョコドリンク濃いめ、レアはツェリザークの雪解け水。
そしてライトは特別なぬるぬるドリンク、レインボーデラックスである。
『ライトさん、十歳のお誕生日、おめでとうございます。乾杯!』
「『『『乾杯ーーー!』』』」
グラスを高々と上げて乾杯するミーアに続き、ライト達も乾杯の声を上げた。
皆それぞれに飲み物をコクコクと飲む。
そうしてライトの誕生日を祝うパーティーが始まっていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ライトの誕生日を祝う乾杯をした後、早速ミーナやルディがライトに話しかけてきた。
『主様!私達、この日のためにいろんなアイテムを集めました!よろしければ、是非とも受け取ってください!』
『パパ様、僕もたくさんのアイテムを拾い集めました!僕からの贈り物も受け取ってください!』
『パパ、私もちょっとだけだけど拾いました……』
「え!? ミーナ達だけじゃなくてレアもお使いに出てたの!? 皆、ぼくのために本当にありがとう……」
使い魔達の献身に、ライトが感激している。
そしてミーナとルディが収納魔法を開き、様々なアイテムを取り出してテーブルの上に広げ始めた。
その大半は食べ物系アイテムで、草餅やチョコレートケーキ、マシュマロキャンディにみたらし団子、バニラクッキー、ホットドッグ、そして何故かバカガイやシジミといった海産物まで出てきた。
何故にこんな山中で海産物?と思うところだが、実はこれには、ちゃんとした理由がある。
このバカガイやシジミ、夏の期間限定イベント『夏休みフィールド』に出てくる三つのフィールドのうち、海がテーマの『真夏のリゾート』で得られるアイテムなのだ。
その効果は他の食べ物系アイテムと同じで、シジミはHP50回復、バカガイはHP1回復する。
回復がHP1ぽっちとか、バカガイだけにバカにしてんのか?と思うような仕様だが、ダジャレ兼ネタアイテムと思えば納得できる、かもしれない。
次々と食べ物系アイテムを出してくるミーナ達に、ライトがぽそり……と呟いた。
「チョコレートケーキやお団子なんかは、ミーナ達の経験値になるんだから皆で食べてくれてていいのに」
『いーえ!そうはいきません!だって今回のアイテム拾いのお使いは、全て主様に捧げるためだけに集めたんですもの!』
『そうですとも!僕達の経験値なんかより、パパ様に喜んでもらうことの方がずっとずっと大事なことです!』
「そ、そうかな? ぼくとしては、ミーナ達が経験値を得てレベルアップしてくれると、すっごく嬉しいんだけど……」
ミーナ達のことを思ってのライトの発言に、ミーナとルディがとんでもない!と反論する。
五日間の収集アイテム、その全てを何としてでもライトへのプレゼントにしたいミーナ達の力説が続く。
『もちろん私達も、今後もレベルアップは頑張ります!でも、今日だけは!お誕生日を迎える主様を最優先させてください!』
「……うん、そうだね。ミーナ達がぼくのことを思ってくれる気持ちは、すっごく嬉しい!」
ミーナの主張に、ライトがハッ!とした顔になる。
テーブルの上に出された数多のアイテムは、ライトを慕うミーナやルディ、レアがライトの喜ぶ顔見たさに懸命に集めてきた品々だ。
それをライトに見せる前に、自分達だけでさっさと食べてしまうような身勝手な子達ではないことに、ライトは思い至ったのだ。
しかし、ミーナ達の出してきた量が何しろ半端ない。
とてもじゃないが、ライト一人では絶対に食べきれない量だ。
なので、ライトは改めてミーナに提案した。
「でも、こんなにたくさんのご馳走はぼく一人じゃ食べきれないから、ここで皆でいっしょに食べよう?」
『まぁ、それは良い案ですね。ライトさんのお誕生日を祝うご馳走として、これ以上良いものはないと思いますわ』
『『『はい!』』』
ライトの提案にミーアの助け舟が加わり、ミーナ達も笑顔で承諾した。
自分達が捧げた贈り物が、誕生日プレゼントという意味合いだけでなく『皆で食べる美味しいご馳走』に昇格したのが思いの外嬉しいようだ。
するとここで、ふいにどこからか声が聞こえてきた。
「美味しそうなご馳走だねぇ。私もご相伴に与りたいのだけど、いいかな?」
「『『『『ヴァレリアさん!』』』』」
ライト達の頭上から聞こえてきた声の主。
それは、神出鬼没でお馴染みのヴァレリアだった。
うおーん、ねもいー><
もうちょい先まで書きたかったけど、無理ぽ_| ̄|●
寝落ちする前に何とか投稿だけして、後書きはまた後ほど……




