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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
三年生の夏休み

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第1565話 逸話と伝説の誕生の瞬間

 冒険者ギルドディーノ村出張所で、ライトの冒険者登録を進めていくライト達。

 次は魔力測定ということで、奥の事務室の片隅に置いてある水晶玉の前に来た。

 それはとても大きな水晶玉で、ライトの頭くらいの大きさがある立派なものだ。


 以前クレアが、このディーノ村で冒険者の新規登録は十年ぶりだと言っていたことがある。

 その割には、水晶玉はピッカピカに輝いているし、水晶玉が置かれている机や椅子なども全く埃を被っていない。

 事務室内の他のエリア含めて、全てが完璧に清潔に保たれていた。


「この水晶玉、新品みたいにすっごく綺麗ですねー」

「それは当然ですぅ。私が毎日清掃していますし、特に今年はライト君が、このディーノ村出張所で冒険者登録をすると分かっていましたからね。念には念を入れて、日々磨き上げてきましたとも!」

「ぼくのために、そんなに入念に準備してくれてたなんて……クレアさん、ありがとうございます!」


 天高く掲げた拳にグッと力を込めて握りしめながら、ライトに対する大歓迎の意を表すクレア。その姿はまるで、どこぞの覇王もしくは拳王を彷彿とさせる世紀末的オーラを感じさせる。

 十年ぶりの冒険者新規登録は、普段は冷静で常に落ち着いているクレアをも熱く滾らせるようだ。

 そんな勇ましいクレアに、ライトは目をウルウルとさせながら感激している。


「ささ、ライト君、こちらに来てください」

「はい!」

「この水晶玉に手を置いてください。手のひら全体をぺたーっとくっつけるようにしてくださいね」

「分かりました!」


 クレアの指示に従い、ライトが水晶玉の前に立ち右手を水晶玉に乗せた。

 すると次の瞬間、水晶玉から強烈な光が沸き起こった。

 そのあまりの眩しさに、クレアが「キャッ!?」と小さく叫び、レオニスが「うおッ!?」と驚きながら、それぞれ反射的に手や腕で目を覆い隠した。


 そして当のライトも「えッ!?」と驚愕していたのだが、さらに驚くべきことが起こった。

 何と水晶玉に大きな罅割れが入ったかと思うと、あっという間にパリーン!と割れてしまったのだ。

 水晶玉から発生していた強烈な光は、水晶玉が割れると同時に弾け飛ぶようにして消えてしまった。


 あまりの出来事に、ライト達三人は呆然と立ち尽くす。

 そんな中、いち早く気を取り戻したのはライトだった。


「え、えっと、クレアさん……これ、ぼくが弁償しなくちゃいけない、ですよね……?」

「……ハッ!? そ、それは大丈夫ですぅ。きっと水晶玉が古くて脆くなっていたんでしょう。ですのでこれは、冒険者ギルド側の不備ということで処理しておきますぅ」

「ご迷惑をおかけしてしまって、本当にすみません……」


 虚ろな目で申し訳なさそうに謝るライト。

 人の頭程もある巨大な水晶玉ともなると、きっとお値段も相当高額だろう。

 そんな代物を壊してしまうなんて、とんでもない賠償額を要求されるに違いない―――ライトは内心でビクビクと怯えていた。


 しかし、クレアはライトを責めることなくギルド側の不備だと断言した。

 冒険者ギルドが用意した水晶玉が古くて脆くなるなど、普通に考えたらあり得ないと思うのだが。きっとそれは、ライトが自分を責めないようクレアが配慮したのだろう。


「大丈夫ですよ、ライト君。というか、ライト君はまだ冒険者登録を済ませていませんし。それに、水晶玉の予備もあるはずですので。今からちょっと倉庫に取りに行ってきますので、少々お待ちくださいねぇー」

「はい……」

「あ、レオニスさんは私が不在の間に、割れた水晶玉の片付けをお願いしますねぇー」

「はいよー」


 あくまでも明るい口調のクレア。

 きっとライトを慮ってのことだろう。

 そんな心優しいクレアに、ライトは感謝しかない。

 予備の水晶玉を用意するべく、事務室から一旦クレアが退室していった。


 そしてクレアに掃除を託されたレオニスが、退室前に彼女から渡された箒と塵取りで割れた水晶玉を集め始めた。


「……ぃゃ、さっきの光はすごかったな。俺が冒険者登録をした時にも水晶玉が結構光った覚えがあるが、あんなにすげー光じゃなかったわ」

「あれってやっぱり、ぼくの魔力量が多いからああなったのかな?」

「多分そうだろうな。……ま、ライトも気にすんな。クレアが大丈夫だって言ってんだし、むしろ魔力量が多いのは冒険者になるライトにとって良いことなんだからよ」

「うん……」


 未だにしょんぼりと落ち込むライトに、レオニスが掃き掃除をしながら懸命に励ましている。

 確かに魔力量が多いのは、これから冒険者になるライトにとって有利だ。

 ライトは既に地水火風の四大属性の魔法を使いこなせるし、魔力量が多ければ多い程攻撃魔法を繰り出せるのだから。


 するとここで、先程退室していったばかりのクレアが戻ってきた。

 彼女の両手には、先程割れたものと同程度の大きさの水晶玉があった。


「お待たせいたしましたぁー。予備の水晶玉、ちゃーんと倉庫の中にありましたぁー!」

「お、そりゃ良かった。今日中に仕切り直しができそうで良かったな、ライト」

「うん!クレアさんもありがとうございます!」

「どういたしましてー。というか、これも受付嬢の仕事ですので。どうかお気になさらずー」


 超特急レベルで急いできたのか、クレアが息咳切りながら笑顔で成果をライト達に報告する。

 そして再び台の上に水晶玉を置き、ライトに話しかけた。


「ライト君、今度はこの水晶玉で魔力測定を行いましょう」

「はい」

「今度は手のひらではなく、人差し指だけで軽ーく水晶玉に触れてみてください」

「分かりました」


 クレアの指示に再び従い、ライトが右手人差し指だけでそっと水晶玉に触れる。

 すると、水晶玉から再び光が発生した。

 しかしその光は先程のものより抑えられていて、水晶玉の中心部に複数の色が浮かび上がっているのが見える。


「これは……虹色、ですね……」

「ああ……しかも、虹色の他に茶や白、黒、灰色まで混ざってやがる」

「私も長年受付嬢をしてきましたが……こんなにも多彩な魔力は生まれて初めて見ます……」


 水晶玉をじっと見つめるクレアとレオニス。

 赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の七色に加えて、茶色と白色、そして灰色に黒色までもが水晶玉の中で犇めき合っていた。


「なぁ、クレア……これって属性が十個以上あるって解釈でいいのか?」

「そうですねぇ……赤は火、青は水、緑は風、茶は地、白は光、黒は闇として……橙は炎、黄色は雷、藍は海、紫は氷、灰色は砂、てとこですかねぇ」

「属性の女王全部が揃い踏み、か……」


 レオニスとクレア、二人して水晶玉をガン見しながらゴニョゴニョと話し合っている。

 水晶玉の中で犇めき合っている十一色は、このサイサクス世界にいる属性の女王の数と一致していた。

 ライトはレオニスとともに属性の女王探しに奔走し、全ての女王と知己と加護を得ている。

 故に今回のライトの魔力測定で、彼女達の色全てが反映されていてもおかしくないのである。


「ライト君、水晶玉から指を離して結構ですよ」

「はい」

「ライト君は、私が思っていた以上に素晴らしい魔力をお持ちですねぇ」

「ホントですか!?」

「ええ、本当ですとも。かつてレオニスさんが、このディーノ支部で冒険者登録をした際にも私が立ち会いましたが……その時の衝撃をはるかに上回る素晴らしさですぅー!」


 ライトが叩き出した前代未聞の十一色の魔力に、クレアが惜しみない絶賛を送る。

 職務に忠実なクレアは、この手の話でお世辞を言うことは決してない。如何にライトが相手であっても、それは絶対に変わらない彼女の矜持である。

 つまりライトの能力は『サイサクス大陸全ギルド受付嬢コンテスト』の殿堂入りを果たしたクレアのお墨付き、ということになるのだ。


 クレアは手に持っていたボードの上にある、ライトの冒険者登録申請書類に何事かをサラサラと書き込んでいく。

 そこには『魔力量:超莫大』『属性:虹色+白、黒、茶、灰』などが書き込まれていった。

 ライトの魔力測定結果を記入しながら、クレアが心底感嘆しつつ呟く。


「いやー、ライト君の魔力測定結果は本当に素晴らしいですね!ここまで傑出したのは、フェネセンさん以来じゃないですかね?」

「え。クレア、何、お前、フェネセンの冒険者登録申請にも立ち会ってたの?」

「そんな訳ないでしょう。一応フェネセンさんも冒険者登録はされていますが、あの方はそもそも魔術師ギルド所属ですし」

「だよなぁ?」


 クレアの呟きに、レオニスが敏感に反応している。

 かの稀代の天才大魔導師の名を、よもやここで聞くとは思わなかったのだろう。


「フェネセンさんの魔術師ギルド加入時の凄さは、魔術師ギルドでは伝説の一つになっていましてね。魔術師ギルドの代々の受付嬢達に語り継がれているんですよ」

「へー、それは初めて聞いたな。一体どんな伝説があるんだ?」

「フェネセンさんの魔術師ギルド加入時の各種測定で、水晶玉が壊れたり、数え切れない程の魔力の色が観測されたんですよ」

「それって……」

「ええ、今回のライト君の魔力測定結果と同じですね」


 レオニスも知らなかった、魔術師ギルドの伝説の逸話。

 そこにフェネセンが出てくるのは当然としても、まさかそれが今目の前で起きたライトの魔力測定と全く同じだとは、想定外もいいところである。


「つまり、何か? ライトはフェネセンと肩を並べる程の逸材ってことか?」

「ええ!これぞまさに、冒険者ギルドにおける伝説の誕生の瞬間ですね!」

「ライト、お前はホントにすげーなぁ!さすがはグラン兄とレミ姉の子だ!」


 太鼓判を押しまくる上機嫌なクレアに、レオニスが破顔しつつライトを大絶賛している。

 レオニスは普段からライトの能力を認めていたが、そこにクレアのお墨付きやら太鼓判まで加わったのだ。

 レオニスの『うちの子、天才!』が、決して養い親の欲目や兄馬鹿のせいではないことを証明できたようなものである。


 こうして一通りの魔力測定が行われ、測定結果の記入を書き終えたクレアがライト達に声をかけた。


「……さて、では次は攻撃力測定に移りましょう。攻撃力測定は会議室で(おこな)…………」

「……外でやった方がいいんじゃね?」

「ですよねぇー……」


 魔力測定の次に行われる項目、攻撃力測定。

 それは、このディーノ村出張所では会議室で代用するらしいが、ここでクレアの動きがはたと止まる。

 何故止まったかと言えば、『本当にこのまま会議室でやってもいいものなのか?』という素朴かつ真っ当な疑問が湧いたためである。


 今行った魔力測定だって、水晶玉の損壊というイレギュラーが起きたのだ。攻撃力測定でもイレギュラーな事態が起きることを想定すべきである。

 となると、会議室という室内で攻撃力測定を行うのは、割と本気で危険なのでは?という疑問が生じるのも当然の流れだ。

 そしてそれはクレアだけでなく、レオニスも全く同じことを考えていたようだ。


 珍しく意見が一致したレオニスとクレア。

 早速クレアがレオニスに頼み事をした。


「そしたらレオニスさん、会議室に置いてある攻撃力測定用の人形を外に運ぶ手伝いをお願いできますか?」

「おう、いいとも。あの人形、見た目に反してすんげークッソ重たいもんな」

「そうなんですよねぇー。会議室の掃除の度にいちいち動かすのが、もうしんどくてしんどくて」

「それでもあんた一人でアレを動かせるのがすげーよ……アレって確か、一体だけでも300kgはあるよな?」


 冒険者登録の第三ステップ、攻撃力測定。

 そのための会場を、クレアの一存で会議室から急遽外で行うことにした。

 しかし、それには測定のための道具である人形を外に運ばなければならない。

 そうした重労働はレオニスに丸投げするあたり、クレアの要領の良さは健在である。


 そして、人形一体300kgはあるというレオニスの話は事実である。

 その人形を、掃除の度に移動させているというクレア。

 何気に彼女の怪力を思わせる話だが、そこはきっと『ものすごーく重たいものを気軽に動かせる秘訣』があるのだろう。多分。


「ではとりあえず、皆で会議室に行きましょうか」

「はい!」

「了解ー」


 話がまとまったところで、三人で会議室に向かっていった。

 冒険者登録の第二ステップ、魔力測定の様子です。

 冒険者の新規登録については、かつてラウルがラグナロッツァ総本部で冒険者登録した時と同じ流れで書いています。

 でもって、そのラウルが冒険者登録したエピソードが第434~437話なのですが。

 あれからもう1000話以上経ってるんか…( ゜д゜)…


 ラウルが冒険者になったのはつい最近、ほんのちょっと前のことのような気がしてたのに。リアル時間で二年と三ヶ月も前の話でした・゜(゜^ω^゜)゜・

 作中時間では一年半前の出来事なんですけどねー。

 キャラ達よりも、かーちゃんの方がどんどんBBAになっていっちゃうという><

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