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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
三年生の夏休み

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第1554話 証言と召喚

 フェルディナンドを連れて、例の不審な大岩に向かったレオニス達。

 大岩の特徴をレオニスが伝えると、フェルディナンド達にもその場所に心当たりがあるようでチェスワフが先頭を歩き始めた。

 そして程なくして辿り着いた大岩を見たフェルディナンドが、驚愕しながら呟く。


「これは……ここの岩は、こんな形ではなかったはずだが……」

「そりゃ仕方ない。さっきも言ったように、この岩の亀裂から罠の気配がするってことだったから、とりあえず俺の土魔法で亀裂を塞いだんだ」

「岩の中から岩を作り出したのか……全く以って奇天烈なことよ」

「魔物を移動させる魔法陣を潰すには、これが一番手っ取り早いし確実なのは実戦で経験済みだからな。要は出口を塞いじまえばいいだけのことだし」

「「「………………」」」


 すっかり変わり果てた岩の有り様に、フェルディナンド達東のオーガ達がしばし呆然と立ち尽くしている。

 そんな彼らの後ろで、ガイ達中央のオーガ三人もまた「え、何このおかしな形の岩は?」「これ、レオニスがやったんか?」「魔法陣の出口を岩で塞ぐって……俺らより脳筋だな!」等々、好き勝手なことを囁き合っている。


 するとここで、レオニスがはたとした顔でフェルディナンドに問うた。


「……あ、もしかして東の里にとってこの岩は大事なもんだったか?」

「い、いや、それはない。里の近辺にある岩などの地形は皆ある程度把握しているというだけで、それらに特別な感情や習慣などは一切ない」

「それなら良かった。……いや、例えこれが御神体だったとしても、廃都の魔城の奴等の罠が仕掛けられたからにはどの道潰さなきゃならんかったがな」


 フェルディナンドの答えに安堵するレオニス。

 人族の場合、大自然に対する畏怖の念で大岩や大木などを御神体として崇拝することもままある。

 今回の場合、大岩に特に飾りや祠などの人工的な手入れの痕跡は一切なかったので大丈夫だろうとはレオニスも思ったのだが、それでも一応確認してみたのだ。


 するとここで、チェスワフがレオニスに問うた。


「レオニスよ。我らはこれまで、その異様な気配?とやらを全く感じなかったのだが……本当にここに、何らかの罠があったのか?」

「この岩の下部に、俺の腰の辺りくらいの亀裂があった。さすがにその大きさでは、俺自身が中に入ってこの目で確認することはできなかったが……闇の精霊や闇の女王の配下が『ここには絶対に何かが仕掛けられている』と言うのでな。先んじて潰させてもらった」

「その、闇の精霊や闇の女王の配下から聞いたというのが、どうにも俄には信じられんのだが……」


 若干口篭りながら、なおもレオニスに問いかけるチェスワフ。

 人族であるレオニスが、闇の精霊はもとより闇の女王と交流があること自体が信じられないようだ。

 そしてそれはフェルディナンドも同じようで、うんうん、と小さく頷いている。


 確かにチェスワフ達が疑うのも無理はない。

 同胞のガイ達中央のオーガ達が、里を救った大恩人だというレオニスに全幅の信頼を寄せる、そこまではチェスワフやフェルディナンドも何とか理解できた。

 しかし、闇の女王と言えば全ての闇の精霊を統べる頂点にして長。そんな高位の存在までもが人族と親交を持つなど、常識的にあり得ないことなのだ。


 そしてレオニスの方も、チェスワフがそう疑うのも当然だと思うので、己の正当性を証明するべく動いた。


「まぁな、あんた達が疑うのもしゃあないわな。そしたら、闇の精霊の証言があれば信じてくれるか?」

「そ、それはもちろん。だが、一体どうやって証明するのだ? この真っ昼間の最中では、闇の精霊を召喚することなどできぬであろう?」

「それができるんだなー。まぁ、見てなって」


 訝しがるチェスワフの問いかけに、レオニスは全く動じない。

 まず一番近くにある木の下まで移動し、そこからチョイ、チョイ、とチェスワフ達を手招きする。

 頭の上にたくさんの『???』を浮かべながらも、レオニスの手招きに素直に応じて全員が木陰に入った。

 そしてレオニスがジャケットの胸元に着けていた黒水晶のブローチを外し、手のひらの上に乗せて話しかけた。


「闇の精霊、ちょこっと顔を出すだけでいいから、こいつらと話をしてくれないか?」

『いいわよー』

「「「!?!?!?」」」


 レオニスの要請に応じ、黒水晶の中に入っていた闇の精霊がヒョコッ☆と顔を出した。

 それまでチェスワフ達は『コイツ、飾り物に向かって話しかけるとか、頭大丈夫か?』と密かに疑っていたのだが。

 その飾り物の黒い石の中から闇の精霊が出てきたのだから、びっくり仰天である。


「何と……これは紛うことなき闇の精霊ではないか……」

『ええ、そうよ。私は闇の精霊、今日は闇の女王様からレオニスを案内するお役目を仰せつかったの』

「この滑らかな喋り具合からするに、上級精霊か……」

『アナタ、よく分かったわね。中級や下級の子だと、昼間は影の中にいてもろくに動けないの。だから私の出番なのよ』


 黒水晶から上半身を出した闇の上級精霊が、チェスワフとの会話に応じている。

 オーガ族は基本的に魔法を使えない種族だが、完全に魔力と無縁な訳ではない。

 特にラキ達中央のオーガや東のオーガ達はカタポレンの森に住んでいることもあり、力の強い上級精霊などの姿は見ることができる。

 もっともそれも上級精霊側の意思次第であり、もし精霊達が『コイツには姿を見せたくない』と思ったら、その目に映らないよう完璧に隠れることもできるのだが。


 そして、闇の上級精霊にチェスワフが質問を重ねる。


「時に闇の精霊よ。このレオニスという人族が、この岩に不審な罠が仕掛けられていたと言っていたのだが。それは本当のことなのか?」

『ええ、本当のことよ。さっきまでこの岩には、ものすごく不気味で気持ち悪い気配がしていたの。闇の女王様もこれをとても心配していらっしゃったし、だからレオニスに『様子を見てきてくれ』って頼まれたのよ』

「……そうか……」


 闇の上級精霊の証言に、チェスワフだけでなくフェルディナンドもまた認めざるを得ない。

 人族のレオニスはともかく、このサイサクス世界において『精霊は嘘をつかない』というのが全種族共通の認識だ。

 もちろんオーガ族もそれを知っており、目の前にいる闇の上級精霊が証言したことで一気に信憑性が高まった。

 彼女の言うことは全て真実であり、もはや罠の存在を疑う余地などないのである。


 そしてここで、レオニスがダメ出しの召喚(・・)を行った。


「おーい、マードン、まだここら辺にいるよなー? いるなら出て来ーい!」

『ッハァーーーイ☆ 呼ばれェて飛び出ェてジャジャンジャジャンジャンジャーーーン☆』


 空に向かって呼びかけたレオニスの声に応じ、マードンが近くの木の樹上から降りて現れた。

 突如出現した胡散臭い巨大暗黒蝙蝠に、フェルディナンド達が呆気にとられている。


「……何だ? この胡散臭い蝙蝠は……」

『あァン? おめーら、我ェのことを知らねーの? 我ェこそは!暗黒神殿守護神であらせられェる、偉大なァるココ様の下僕にして!闇の女王様ァの最側近、マードン様でアール!』

「「「………………」」」


 鼻息も荒く意気揚々と自己紹介をするマードン。

 あまりにも胡散臭い登場の仕方に、その場にいるマードン以外の全員がスーン……とした顔でマードンを見つめていた。

 その中で、いち早く我に返ったフェルディナンドが呆れ顔でマードンを指差しながら、レオニスに問い質した。


「……レオニスよ、此奴の言っていることは本当か?」

「ぁー、まぁな……闇の女王の最側近ってのは大嘘だが、下僕というのは間違いない」

『あッ、何ナニ、パパ上ッてばしどい!我ェのことを、大嘘つき呼ばわりしるなンて!』

「うるせー!その『パパ上』ってのをいい加減ヤメロ!」

『モゴゴゴゴ』


 マードンのあまりの煩さに、プチン☆と切れたレオニス。

 右手がグワッ!と前に出たかと思うと、マードンの顔面を思いっきり鷲掴みにしていた。

 喋る口を完全に塞がれたマードン、モゴモゴと口篭る。


「いいか、マードン、よく聞け。ここからは、俺達が聞いたことにだけ答えろ。あんまりうるせーと、焼き鳥ならぬ焼き蝙蝠にしちまうぞ? 炭火蝙蝠になりたくなけりゃ、静かにしとけ」

『……(コクコク)……』


 マードンを思いっきり睨みつけるレオニスから、今にも射殺(いころ)されそうな鋭い視線と『ズドゴゴドギャガガガ……』という地の底を大いに揺るがすドス黒いオーラが陽炎のように揺らめき立ち上る。

 あまりにも凄まじい圧を放つレオニスに、それまでキーキーと煩かったマードンが涙目になりながら必死に首を縦に振り続けている。


 マードンがようやくおとなしくなったところで、レオニスが左手でマードンの首の後ろを摘んで持ち上げた。

 そして改めてフェルディナンド達に、プラプラとぶら下がるマードンが何者かを説明し始めた。


「こいつは暗黒蝙蝠のマードンといって、闇の女王の下僕だ。こいつの額にある第三の目は、暗黒神殿守護神のノワール・メデューサであるココがつけた。この第三の目を通して、ココは外の世界を見ることができるんだ」

「このような怪しげな者が下僕というのは、如何なものかと思うが……我らには到底理解できないような、何かしらの深い理由があるのだろうな」

「ン、まぁな……こいつが胡散臭いってのは俺も認める……ただ、闇の女王達の名誉のために言わせてもらうが、こいつはあくまでも洞窟の外の様子を知る偵察兵として使われているだけだ」

「そうか……」


 クロエと闇の女王の名誉を守るため、レオニスが懸命に言い募る。

 部下の評価は上司の評価に直結しやすい。部下がこんなに煩いなら、上司も似たようなもんなのか?とフェルディナンド達に思われたらたまったものではない。

 うちの可愛いココが、こんなのと同類と思われたら困る!といったところか。


「とりあえずだな……こいつや闇の精霊達の目を通して、闇の女王やココがこの岩の異変を察知したんだ。そして闇の女王は俺に、この不審な岩の調査を頼んできたんだ」

「そうだったのか……闇の精霊の長たる闇の女王がそう言うのならば、それは決して勘違いや間違いなどではないのだろうな」

「ああ。俺がその話を聞いたのは昨日なんだが、森の安寧を守るのが俺の一番の仕事なんでな。早急にここに来たって訳さ」


 フェルディナンド達に闇の上級精霊の証言やマードンの存在を明かしたことで、自分の話は本当のことであるとレオニスは見事に証明してみせた。

 マードンの煩さには若干閉口したが、闇の上級精霊の話と合わせればレオニスの正しさは揺るぎないものとなろう。


「とりあえず、こいつには今から十日程この岩を見張るように言いつけてある。ただし、この罠を張った奴等はものすごく狡猾で油断はできん。あんた達の方でも警戒は怠らないでくれ」

「承知した。中央の里が襲われたという話は、我らにとっても決して他人事ではないからな。ただ……今後もし何かしらの異変があった場合、どうすれば良いのだ?」

「その時は、夜を待って闇の精霊に声をかけてくれ。夜中なら闇の精霊はそこら中にいるし、姿を隠していても俺の名を出して呼びかければ、きっと出てきてくれるはずだ」


 今後の方針を話し合うレオニスとフェルディナンド。

 万が一異変が起きた場合は、闇の精霊を通して知らせればよい。

 住処が遠いレオニスや闇の女王には直接連絡できずとも、日が暮れて夜になれば闇の精霊達の出番となる。

 夜は彼女達闇の精霊の領域にして庭なのである。


 そしてレオニスが、左手で掴んでいたマードンを離した。


「ほれ、お前も仕事に戻れ」

『ッたくーーー……ココしゃまのパパ上は、ホンット蝙蝠使いが荒ァくて敵わン!』

「ココの役に立てるなら御の字だろ?」

『まァなー♪ 我ェの命は、ココしゃまと闇の女王しゃまのためだけェにあるからナ!』


 レオニスからの扱いの酷さにマードンが文句を垂れるも、ココの名を出せば速攻で舞い上がるから扱いやすいものだ。

 さっきまで涙目で萎縮していた姿はどこへやら。マードンのこのタフさや凝りなさは、目を見張るものがある。

 それは決して見習いたいとは思わないが、なかなかにすごいことだけは確かだ。


「そう思ったら、ココ達の平和のためにも岩の監視を頑張れよ」

『うむッ!万事我ェに、(まッか)せるがよーいドン☆』


 上機嫌でレオニス達の上をくるくると飛び回るマードン。

 しばらくそうしていたかと思うと、スススー……と軌道を変えて森の中に消えていった。


「「「…………」」」

「……とりあえず、里に戻るか……」

「ええ、そうしましょう……」


 大きな嵐が過ぎ去った後のように、フェルディナンド達が力無く呟く。

 マードンのような奇っ怪な生き物と接したことが今までなかったのか、皆どこかぐったりとしていて疲れたようだ。

 ひとまず罠の存在とその信憑性を確認したフェルディナンド達は、再びレオニス達とともに東の里に戻っていった。

 罠が仕掛けられた大岩の実況見分的な回です。

 レオニスの正当性の証明は、ブローチの黒水晶の中にいる闇の上級精霊の証言だけでも良かったんですが。

 さっきまでマードンもここにいたんだし、十日は見張っとけってレオニスが言っといたんだから、こいつも出せば万全よね!と思い召喚したのが作者の運の尽き。

 まーーー相変わらずうるせーばかりで、ほとんど役に立たんという_| ̄|●


 マードンよ、ホンット君はうるせーよね……何でそんなにうるせーの?<◎><◎>

 駄菓子菓子。マードンのへこたれなさは、お世辞抜きでサイサクス世界一かも。

 何かと生き難い世の中ですが、マードンのへこたれなさの0.0001%だけでもあれば、少しは気楽になれるかも?(´^ω^`)

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