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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
三年生の夏休み

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1552/1682

第1552話 ガイ達の苦悩

 程なくして、東の里に辿り着いたレオニス達。

 先頭を歩いていたチェスワフが一旦止まり、手を横に上げて後続を止めた。


「皆はここで待っててくれ。族長に人族を里に入れる許可を取らねばならぬ」

「……あのなぁ、チェスワフさん。今はそんな悠長なこと言ってる場合じゃねぇだろう?」

「そうだぞ、この里の近くにとんでもねーもんがあるかもしれないってのに!」


 堅物なチェスワフに、ノアやガイが呆れたように食ってかかる。

 さっきレオニスが話した件、この里の近くに不審な罠が仕掛けられたというのが事実ならば、ノア達だって見過ごす訳にはいなかい。何故ならその罠は、かつて自分達を襲ったものと同じものかもしれないのだから。

 そしてそれはとても危険なものであり、早急に確認すべき喫緊の課題だ。


 なのに、この期に及んで罠の第一発見者であるレオニスを里に入れるか入れないの確認をいちいち取るなど、ノア達の目には悠長を通り越して愚鈍にすら映る。

 東の里のオーガ達の危機感の無さに対する苛立ちを隠すことなく、チェスワフに詰め寄るノア達。そんな彼らに、レオニスが声をかけた。


「よせ、ノア。俺のような他所者、ましてや異種族である人族を里の中に入れるなんてのは、異例中の異例なんだろ」

「でもよぅ……」

「俺は別にここで待たされたって構わんさ。何時間も何日も待たされる訳じゃあるまい」

「……お前がそういうなら、仕方ないが……」


 涼しい顔で宥めるレオニスに、ノア達も渋々引き下がる。

 確かにレオニスの言うことも尤もで、族長に確認を取るだけなら三十分もあれば済むだろう。

 それに、その罠はレオニスが既に潰したという。

 ならば、確認作業は絶対に必要だがそこまで焦ることもない。今日中にレオニスを伴って皆で確認すればいいことだ。


 渋々ながらも食ってかかるのをやめたノア達に、チェスワフが申し訳なさそうに口を開く。


「すまんな。何しろこの里は他所者に対する警戒が強くてな……族長の了承も無しに他所者を入れたら、絶対にその方が後々面倒なことになるのは目に見えてるのでな」

「そりゃ知ってる。同胞である俺達ですら、里に入れるのを毎回渋るもんな」

「その警戒心の強さ、いい加減何とかならんの? せめて俺ら中央のオーガくらい、普通に出入りさせてくれてもいいんじゃね?」

「全くだ。俺達ャベスさんと同じ里の者なんだぞ? その辺りを考慮して、もうちょい融通を利かせてほしいもんだ」


 チェスワフだけでなく、東の里全体への文句や愚痴が止まらない三人。

 歯に衣着せぬ遠慮の無さに、チェスワフは苦笑いするしかない。


「これでもベス様のおかげで、昔に比べたらだいぶ開放的になってきてるんだぞ?」

「「「……ええぇぇ……」」」

「……ま、そこら辺も追々変化していくだろうさ。すまんがノア達もランベルト達とともにここで待っててくれ、すぐに戻る」

「分かりました!」


 チェスワフの言い訳めいた言葉に、ノア達三人の顔が思いっきり歪む。

 中央の里のオーガは異種族に対して寛容な方なので、チェスワフが言う『これでも開放的になった』という言葉が全く以って信じられないようだ。

 そそくさと奥に向かうチェスワフを、ガイ達は半目でスーン……とした顔のまま見送っていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 チェスワフが去った後、レオニスがふと思い出したようにガイに話しかけた。


「なぁ、ガイ。そのベスっていうニル爺の娘や孫達は、この里で元気に過ごしているのか?」

「……ぁー……それは……」


 レオニスの何気ない質問に、何故かガイが言い淀む。

 その表情からするに、何か問題があるようだ。


「何だ、もしかして病気で臥せってるとかなのか?」

「病気、なのかどうかってのは、俺らには分からんが……何でもベスさんは、半年くらい前から布団から起き上がれないらしい」

「この里には、医者や治癒師はいないのか?」

「そんなもん、俺らの里にだっていねぇよ……」

「そりゃそうか……」


 病気を心配するレオニスに、ガイが力無く呟く。

 確かにオーガ族が作る集落に、医者や治癒師などがいるケースはほぼない。そもそもオーガ族は魔法を使えないので、回復魔法を使える者など端からいないのだ。

 ならば、怪我や病気になった時にどうしているのか?というと、集落に必ず一人はいる薬師頼みなことが多い。

 薬師、つまり薬を調合するなら魔法は必要ないからだ。


 オーガ達が使う薬は、主に薬効のある植物を用いて作られる。

 薬草の葉や茎、根、花弁や蕾、あるいは木の樹皮や樹液を、適宜配合して様々な丸薬や飲み薬を作るのが薬師の主な仕事だ。

 人族の場合は出来上がった薬に魔法をかけたり、原材料の方に先に魔法をかけて効果を高めたりするが、オーガ族にそういった加工方法は使えない。


 そして、薬師が病気を治すのも限界がある。

 医療に対する深い知識など持ち合わせているはずもなく、頭痛にはコレ、腹痛にはアレ、切り傷にはソレ、といった、ごく狭い限定的な対処法しかできない。

 故に、オーガが一度(ひとたび)病気で臥せると起き上がれなくなることも多い。

 それは特に高齢者ほど顕著で、年老いたオーガが病に罹るとそのまま寝たきりになるのが常となっていた。


 そうしたオーガの事情を、これまでレオニスは知らなかった。

 何故ならニルを始めとした年寄りオーガ達は皆ピンピンしていて、ニルが時折なるぎっくり腰はともかく他の怪我や病気とは無縁な連中だったから。

 しかし、よくよく考えれば察しはつく。

 医療技術に乏しいオーガ達にとっては、風邪一つですら命を落とす危険があるのだ。


「ニル爺はあんなに元気だってのに、娘の方が布団に臥せっているってのは可哀想だな……」

「そうなんだよな……俺達も、ニル爺様に何て報告すりゃいいのか分かんなくてよ……」

「つーか、ベスさんが中央の里に里帰りしたのも、一番最近で二十年以上は前のことだし……」

「おまけに俺達、ベスさんにはちょっとだけ会わせてもらえたけど、族長以外のベスさんの子や孫にはまだ会えてねぇんだよな……」


 眉間に皺を寄せて、はぁー……と深いため息をつく中央のオーガ達。

 彼らの話によると、もともとこの東の里とはあまり行き来がなく、行商で立ち寄るのも年に一回あるかどうかの頻度らしい。

 どちらの里も、コレだ!というイチ押しの売り物がないので、交流が少なめなのもある意味致し方ない。


 そしてその滅多に立ち寄らない行商で、中央のオーガが東の里を訪ねると、いつもならベスが快く出迎えてくれていたという。

 だが、今回ガイ達が訪ねてもベスは出て来ず、危うく門前払いされるところだった。

 しかし、今回のガイ達には『ニルの娘一家の息災を知る』という重要な任務があるので、そう簡単に追い返される訳にはいかない。

 何とか食い下がり滞在することに成功し、その後ベスとの面会も許されたのだ。


「ベスさん、前の夏に会った時には元気そうだったのに……昨日ようやく会えたベスさんは、すっげー顔色悪くてさ……」

「いつものように、笑顔で俺達のことを迎えてくれたけど……身体は随分と痩せて、頬も痩けててな……」

「俺、何て声をかけていいか分からんかったよ……」


 昨日会えたというベスとの面会の時のことを、ガイ達三人が辛そうな表情で語る。

 そしてガイ達の横にいるランベルト達東の里のオーガ達も、悲痛な面持ちで俯いている。


 ニルの一人娘、ベスはこの東の里のオーガの青年と恋に落ち、目出度く結ばれて結婚した。

 それが今から約二百七十年前のことで、来年でベスは四百歳になる。

 人間の年齢で言えば五十七歳くらいだ。


 ベスはこの東の里に嫁いで以来、子供や孫に恵まれ、十年前には曾孫も生まれた。

 ベスの夫、マクシミリアーノは族長一族の嫡男で、結婚前はもちろん猛反対されたし結婚後も何かと苦労は多かったらしい。

 排他主義の強い東の里では、長い間他所者として邪険に扱われることも多々あったことだろう。


 しかし夫婦仲はとても良く、今でも東の里一番のおしどり夫婦として有名らしい。

 マクシミリアーノは先代族長で、曾孫が生まれたのをきっかけに族長を退くことを決意したのだとか。

 そして五年前に息子のフェルディナンドに代替わりを果たし、さぁこれからは余生を夫婦でのんびりと過ごそう―――そう約束を交わしたというのに。

 半年前から床に臥せるようになったベスは、ゆっくりと、だが確実に衰えていった。


「なぁ、レオニス……お前なら、魔法で病気を治すことはできるか?」

「ンーーー……俺が使う回復魔法は、怪我とか消耗した体力なんかを回復することはできるんだが……病気の治癒となると、聖職者や専門家でないと厳しいな」

「そっか、お前でもダメか……魔法使いなら、あるいは治してもらえるかと思ったんだがな。無理ならしゃあない」

「役に立てなくてすまん。ただし、ベスに会えたら回復魔法をかけて体力回復を促すくらいならできると思う」

「いや、レオニスが謝ることじゃないさ。それに、回復魔法をかけてくれるだけでもありがたい。俺達には絶対にできんことだからな」


 寂しそうに目を伏せるテオに、レオニスはどう言葉をかけていいものか分からない。

 レオニスとて医療の心得がある訳ではないので、実際にベスと直接会ってみないことには何とも言えない。

 安易に楽観的なことを言って、下手に希望を持たせておいて「やっぱりダメでした」なんてことになったら話にならないからだ。


 しかし、ダメ元を承知の上で回復魔法をかけることならできる。

 もしかしたらそれで免疫力が回復して病気も良くなるかもしれないし、病気の寛解や全快が無理でも何らかの良い傾向が得られれば御の字だ。

 そんな話をレオニス達がしていると、里の中に入っていったチェスワフが戻ってきた。


「族長がお会いになるそうだ」

「おお、そりゃ良かった。早速案内してもらおうか」


 チェスワフからもたらされた朗報に、ガイ達の顔も綻ぶ。

 そうしてレオニスは、東の里のオーガを束ねる族長に会うべく里の奥に入っていった。

 様々な紆余曲折を経て、ようやく東のオーガの里に入っていけ……ると思いきや、入口で待たされることに。

 まるでお役所仕事のようなやり取りですが、まぁ堅物で四角四面なクソ真面目気質あるあるですね(´^ω^`)

 でもまぁね、待ち時間があるのは何も悪いことばかりではなく。その間に、ニルの一人娘ベスの生い立ちなんかも軽く出しといたりなんかして。


 あと、東の里のオーガ達の名前について、ちと補足。

 第1548話で、東の里のオーガの名有りキャラのチェスワフが登場して以降、モブっぽい若者三人とか今回の前族長とその息子も何かと長めの名前ですが。

 これは東のオーガの里では『長い名前ほど高貴さを表す』という文化があるためです。

 ……って、何でまたそんな設定にしたかってーと、中央の里の名付け文化が二文字もしくは三文字という短さなので、それと違うことにしよう!と考えたからです。

 駄菓子菓子。そんな安易なことを思いついたせいで、ただでさえ苦手なキャラの名付け作業がますます困難化することに_| ̄|●

 うわーーーん!馬鹿バカ作者の馬鹿ーーー!名付け作業に苦戦して頭煮えさせてどーすんのだ!

 頭煮えて疲れて連日寝落ちしとるジャマイカ!(TдT) ←本気で後悔中

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