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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
三年生の夏休み

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第1537話 カタポレンへの帰還

 ノーヴェ砂漠のジャッジ・ガベル、ガベリーナの屋上からカタポレンの家に移動したライト達。

 時刻は午後の十二時半。ちょうどお昼時だが、先程ガベリーナの給湯室でお茶会をしたばかりなので然程お腹は減っていない。


「……よし、そしたら今からツィちゃんのところに行って、ラーデを迎えに行くか」

「うん、そうだねー。昨日はこっちに帰ってくるのが遅かったから、ラーデを迎えに行けなかったもんね」

「ツィちゃんのところに行くなら、俺もいっしょに行こう」


 レオニスの案に、ライトとラウルが同意する。

 ライト達は昨日まで、二泊三日のプロステス旅行に出かけていた。

 その間ラーデはカタポレンの森でお留守番ということで、神樹ユグドラツィのもとに預けることとなった。


 本当なら昨日のうちに迎えに行きたかったのだが、三日目はプロステスからツェリザークに移動して、ツェリザーク領主ジョシュア・スペンサーと対談したり氷の女王に会うために氷の洞窟に出かけたりと、ほぼ丸一日出突っ張りだったためラーデを迎えに行けなかったのだ。


 ライト達三人は、早速カタポレンの家からユグドラツィのもとに向かって飛んだ。

 巨木であるユグドラツィの姿は、カタポレンの家の上空からでもよく見える。

 雄大な神樹目がけて一直線に飛んでいくライト達。

 程なくしてユグドラツィのもとに到着した。


「ツィちゃん、こんにちは!」

「よ、ツィちゃん、久しぶり」

『あらまぁ、ライトにレオニス、そしてラウルもようこそいらっしゃい。プロステス旅行は楽しめましたか?』

「ああ、おかげさまでな。やることが多くてかなり忙しかったが、有意義な時間を過ごせたよ」

『それは良かった』


 ライト達の帰還を喜ぶユグドラツィの優しさに、ライト達も自然と笑顔になる。


『私も貴方達のおかげで、ハドリー達とともにラーデと楽しいひと時を過ごせました。本当にありがとう』

「いや、礼を言うのはこっちの方だ。気軽に人里に連れていけないラーデを預かってくれて、俺達の方こそ助かっているんだからな」

『フフフ、これぞまさに『両者Win-Win』というやつですね』

「そうだな。……ところで、ラーデは今どこにいるんだ? 一応迎えに来たんだが……」


 互いに礼を言い合うレオニスとユグドラツィ。

 その後レオニスが、ラーデの姿を探してキョロキョロと周囲を見回す。

 レオニスだけでなく、ライトとラウルもキョロキョロと見回しているのだが、ぱっと見ではラーデどころかハドリーもいない。


 ずっと首を上下左右に降り続ける三人に、ユグドラツィがクスクスと笑いながら答える。


『ラーデは今、ハドリー達とかくれんぼをしているのですよ』

「かくれんぼ、か? ツィちゃんの上の茂みに隠れてるのか?」

『いいえ。ハドリー達のかくれんぼは、そんな単純なものではありません』

「???」

『彼らハドリー達の特技は、植物の緑葉あるところならば完全にその景色に溶け込んで、気配を完璧に消すことができるのです』

「え、何、あのちびっこ達、そんなすげー特技あんの!?」


 ハドリー達の意外な特技に、レオニスだけでなくライトとラウルもびっくりしている。

 緑の葉と同化して気配を消すことができる―――これは、カタポレンの森で過ごすならこの上ない特技だ。

 もし万が一凶暴な魔物に出食わしても、余裕で回避できるということなのだから。

 ただし、草木がない荒野や海、あるいは緑が少ない人里などではその力を十全に発揮できない可能性があるが。


「しかし、そうなるとかくれんぼでハドリー達を見つけるのはほぼ不可能じゃないか?」

『いえ、それがそうでもなくてですね。ハドリー達はまだ未熟な子供なので、ちょっとしたことで驚いたりして気配を消せる時間が短いのですよ。それをラーデが目敏く感じ取り、隠れているハドリーを見つける、というのを繰り返しているのです』

「何つーか、高度な隠密訓練でもしてるみてーな遊び方だな……」


 ユグドラツィが語る『ハドリー vs ラーデ』の高度なかくれんぼ?の様子に、レオニスは驚きを隠せない。

 するとここで、レオニスの頭の上に突然何かが落ちてきた。

 ぽすん、とレオニスの頭の上に乗っかったそれは、ハドリー達とのかくれんぼに興じていたラーデだった。


「ン? 何だ何だ、何か降ってきたぞ!?」

「あ、ラーデ!ただいま!」

『うむ。其方らが来たのが見えたので、我も出てきた。其方らも無事帰還したようで何よりだ』

「ラーデ、ツィちゃんやハドリー達と楽しく過ごせたか?」

『見ての通り、実に充実したひと時を過ごせた』

「つーか、何でラーデまで俺の頭の上に乗っかってんだよ!?」


 突然のことにびっくりして、自分の頭に手を伸ばすレオニス。

 頭の上にはライトが言っていた通り、ラーデが乗っかっているではないか。

 レオニスが慌てて右手でガシッ!と掴んで引き剥がそうとするも、ラーデはレオニスの後頭部にしがみついて離れない。

 何故かは分からないが、どうもラーデもレオニスの頭の上に居たいようだ。


「ガベリーナと言い、ラーデと言い……どうして俺の頭に乗っかりたがるんだ?」

「そりゃやっぱり、見晴らしが良いからじゃない? ぼくもレオ兄ちゃんにしてもらう肩車、すっごく楽しくて大好きだし!」

「そうか、肩車か……肩車を楽しんでるなら仕方ないな」


 またも頭にしがみつかれたレオニスの疑問に、鋭く切り込みつつ答えるライト。

 子供が肩車を純粋に喜ぶのは、レオニスにも分かる。

 レオニスだって、ライトがもっと小さい頃はライトを喜ばせたくてよく肩車をしてやったものだ。


 そして今のラーデも、本来の皇竜の姿とは大きくかけ離れたちびドラゴン状態。

 かつての巨躯を誇った頃とは全く違う目線から見る、全ての物事が新鮮で驚きと喜びに満ちていた。

 そしてその感覚は、きっとガベリーナも同じだったんだろう、ということにレオニスは気づく。


 俺の肩車で、ラーデやガベリーナが喜んでくれるなら、ま、いいか……

 レオニスはそう思うことにした。


 レオニスがそんなことを考えていると、どこからかハドリー達もライト達のもとに集まってきた。

 ラーデがかくれんぼを中断したので、ハドリー達も気配の遮断をやめて表に出てきたようだ。


『ぁー、ライト君にラウル君にレオニス君も来てたんだー』

『こんにちは!』

『ねぇねぇ、ワタシ達と遊ぼ?』


 ライト達を見た途端、一気に詰め寄り挨拶してくるハドリー。

 一方で何体かはラーデの方に近づき、声をかけている。


『ラーデ君、もう帰っちゃうの?』

『うむ、お迎えが来たのでな』

『寂しいよぅ、もっとお泊まりしていってよぅー』

『何、我の療養先はここからすぐ近くにある。いつでも遊びに来れる距離だ』

『ホント? ハニー達とまた遊んでくれる?』

『皇竜の名にかけて、必ずまたここに遊びに来ると誓おう』


 ラーデが帰ってしまうことを寂しがるハドリー達。

 しょんぼりとしているハドリー達を、ラーデが懸命に励ましていた。

 その様子を見ていたユグドラツィが、ハドリー達に声をかけた。


『皆、ラーデは他者と交わした約束は必ず守りますよ。だから皆も、おうちに帰るラーデを笑顔で見送ってあげなさい』

『『『はぁーい……』』』


 ユグドラツィの言葉に、まだ若干しょんもりとしていたハドリー達。

 だが、すぐに気持ちを切り替えて頭をパッ!と上げた。

 そして十六体のハドリーがラーデを四方八方から取り囲む。


『ラーデ君、また遊ぼうね!』

『今度はもっとたくさんお泊まりしていってね!』

『かくれんぼ以外の遊びもしようね!』

『また遊びに来てね!』


 ラーデを慕う健気なハドリー達の言葉に、ラーデも『うむ』『分かった』『次の遊びを考えておいてくれ』『ああ、必ずまた遊びに来る』等々、一体一体の言葉に丁寧に応えていた。

 そうしてハドリー達と一頻り挨拶をし終えたラーデ。

 最後にユグドラツィに声をかけた。


『ツィちゃんよ、此度は大変世話になった。心から礼を言う、ありがとう』

『どういたしまして。私達はご近所さん同士ですもの、助け合うのは当たり前ですよ。ねぇ? レオニス、ラウル、ライト?』

「そうだな、ツィちゃんの言う通りだ」

「はい!ツィちゃんの言う通りです!」

「俺も異論はない」


 フフフ、と可愛らしく笑うユグドラツィの言葉に、ライト達三人が即座に賛同する。

 ラーデがいつの間にかユグドラツィのことを『ツィちゃん』と呼ぶようになっているが、きっと今回のお泊まりの間に仲良くなっていった証だろう。

 今回のお泊まりは、ラーデにとっても良い経験となったに違いない。


 ラーデを無事迎えたライト達は、ユグドラツィの軽やかな葉擦れの音とハドリー達の『さようならー!』という大きな声に見送られながら、ユグドラツィの結界の外に出ていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ユグドラツィのもとを後にし、ライト達はのんびりとした足取りでカタポレンの森の中を歩く。

 すると、レオニスの頭にしがみついているラーデがレオニスに問うた。


『このまま家に帰るのか?』

「ンーーー……まだ時間はあるよな。そしたらこのまま目覚めの湖に行って、転移門を作るとするか」

「そうだねー。これからまだ他のところも回らなきゃならないもんねー」

「そゆこと」


 レオニスの案に、ライトが賛同する。

 ライト達はこれから属性の女王達のための転移門を作りに回らなければならない。

 属性の女王の拠点十ヶ所のうち、転移門を設置できたのは今のところ四ヶ所。

 光の女王と雷の女王がいる北の天空島、火の女王がいるエリトナ山、炎の女王がいる炎の洞窟、そして先程設置したばかりの砂の女王の神殿守護神であるガベリーナ。

 他の六ヶ所も、できることならライトが夏休みのうちに回っておきたい。

 そのためにも、まずは手近なところからちゃちゃっと済ませてしまおう!という訳である。


「ラウルはどうする? この後予定はあんのか?」

「ンー、そうだな……ここ数日ずっと出かけてて畑の手入れが全くできてないから、できれば少しだけでも畑弄りをしたいかな」

「そっか……まぁな、プロステスの別荘旅行の間はずっと留守にしてたしな」

「そゆこと。ラーデはどうする?」

『我もラウルとともにあの家に帰り、久しぶりにのんびりと昼寝したいな』

「そっか、じゃあ俺といっしょに帰るか」

『うむ』


 ラウルの希望を訊ねたレオニスが、ラウルの答えに頷きつつ納得している。

 今日はライトとレオニスが砂の女王とガベリーナに会いに行くと聞いたから、ラウルもそれに同行することを望んだ。

 しかし、昨日までラウルはライト達とともにプロステスの別荘に二泊三日のお泊まり旅行に出かけていた。

 その間は、当然カタポレンの畑の手入れなどできようはずもない。


 何事もなければ、ラウルは毎日必ず何かしらカタポレンの畑弄りをしていた。

 そしてラウルが家庭菜園を本格的に始めて以来、こんなにも長く畑から離れた日はなかった。

 それが、今年に入ってから黄金週間にも二泊三日のティファレトに出かけたり、畑が弄れない日が増えた。

 ただし、旅行の時はラウルの方でも畑の収穫等、事前にある程度調整してはいたのだが。


 泊まりがけの旅行から帰ってきた今、ラウルが最も気になるのはカタポレンの畑のこと。

 今は何も植わっていない閑散とした畑に、新たな作物を植えたくて仕方ないに違いない。


 そしてラーデの方も、カタポレンの家でのんびりと昼寝をしたいという。

 ユグドラツィのもとで過ごした三日間は、確かに楽しい日々だっただろう。

 しかし、十六体ものハドリーに囲まれて遊びまくる日々は、楽しい反面かなり疲れたに違いない。


「とりあえず、ご主人様達が帰ってくるまで種や苗を植えてるわ」

「了解ー。ラーデもゆっくり休めよ」

『うむ』


 ラウルがライト達と分かれ、ラーデとともにカタポレンの家のある方に飛んでいく。

 一方ライト達は、目覚めの湖がある方向に駆け出していった。

 久しぶりのカタポレンの森です。

 ホントは帰宅直後に目覚めの湖にお出かけさせるつもりだったんですが。よくよく考えたら、ユグドラツィに預けていたラーデをお迎えに行ってないことに気づいた作者( ̄ω ̄)

 こりゃお迎えに行かなきゃイカンザキ!てことで、急遽ユグドラツィのもとにダッシュ!


 ラーデのお泊まりの様子は全然出てきていませんが、きっととても楽しく過ごしたことでしょう( ´ω` )

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