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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
三年生の夏休み

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1528/1682

第1528話 氷の女王との交渉

 氷の洞窟入口で始まったお茶会。

 今は夏真っ盛りで雪一つないこの時期に、氷の女王達を洞窟の外に出すのは危険なので、洞窟の外に出ないギリギリのところにテーブルを設置した。


 氷の女王と玄武は洞窟の奥側に座り、ライトやマキシは外側に近い方に座った。

 座っている順番は、時計回りで『氷の女王→玄武→レオニス→ライト→マキシ→ラウル→氷の女王』という並びである。

 氷の女王が大好きなラウルと玄武に挟まれるよう、ライトが席順を配慮したのだが。その甲斐あって、氷の女王は終始ニコニコ笑顔で実にご機嫌そうだ。


「「「『いッただッきまーーーす!』」」」


 テーブルの上にある様々なお茶菓子を、思い思いに取っては食べる。

 氷の女王にはメロン果汁100%のシャーベット、玄武にはラグナロッツァ産の野菜盛り合わせ(白菜、ニンジン、キュウリ、パプリカ)を出した。

 どちらもラウル特製で、実に美味しそうに食べている。


 すると、野菜盛り合わせをもっしゃもっしゃと食べている玄武の横にいるレオニスが、玄武に話しかけた。


「玄武、身体の大きさを変えられるようになったんだな」

「ンキャ!」

『おお、さすがレオニス、玄武様の賢さと偉大さに気づいたか。そうとも、玄武様はこの氷の洞窟内を自由に歩けるよう、身体の大きさを自在に変える鍛錬に日々真摯に取り組み、そして見事乗り越えられたのだ』

「まぁな、さっき見た玄武はもっとちっこかったしな」


 玄武の成長に気づいたレオニスに、氷の女王がドヤ顔で玄武を讃える。

 今このテーブルにいる玄武は、椅子に座って首を伸ばせばご馳走を食べられる大きさ、例えるなら大型犬くらいのサイズになっている。

 しかし、先程氷の洞窟入口でライト達を出迎えた際、氷の女王の右肩に乗っていた時には手乗り文鳥サイズだった。

 このことから、レオニスは玄武の成長にすぐに気づくことができたのだ。


「そしたら、一番大きいとどれくらいになるんだ?」

『そうさな、この洞窟の入口が塞がるくらいには大きくなられるぞ』

「そんなにか……随分成長したもんだなぁ」

『時折ラウルが玄武様のために、洞窟外の様々な食べ物を持ってきてくれるのでな。玄武様はいつもそれらを美味しそうに食べておられるのだ』

「そっか、そりゃ良かった」


 予想以上の成長を遂げている玄武に、レオニスが感心したように呟く。

 氷の洞窟内部には食糧と呼べるものが少なく、せいぜい固有魔物の氷蟹やブリザードホーク、凍砕蟲くらいのものだ。

 しかし、玄武はそうした魔物類を直接狩って食べることはないらしい。

 そのため、ラウルが時折差し入れするラウル特製野菜やジャイアントホタテなどの魚介類が頼みの綱だった。


 そして、ラウルのそうした献身的な差し入れの甲斐あって、玄武はかなり身体が大きくなったらしい。

 ラウルが届けるカタポレン産の野菜や林檎は、瑞々しいだけでなく大量の魔力も含まれている。

 その魔力が玄武の成長の大きな要因となっているのは間違いない。


 しかも、氷の女王曰く洞窟入口と同等程度に巨大化するというからびっくりだ。

 また、大きくなる一方では洞窟内での移動もままならなくなるので、氷の女王とともに魔力の精錬や身体強化などの鍛錬に勤しんだという。

 マンツーマンで、日々鍛錬に励む氷の女王と玄武―――その様子を想像するだけで心和む。


 その後もライト達は、氷の女王や玄武と様々な話をした。

 特にライト達の属性の女王詣でが完了したことを聞くと、氷の女王が『それは良かった!』『我が姉妹達の無事を全て確認してくれたこと、とても嬉しく思うし感謝している。本当にありがとう』と、殊の外喜んでいた。


 他にも新顔のマキシがラウルの幼馴染と知り、氷の女王がワクテカ顔でラウルの幼少期の思い出話をおねだりしていた。

 そうした様々な話で盛り上がっているうちに、玄武がカタポレン産野菜の盛り合わせ(三皿目)をペロリと平らげた。

 ラウルがおかわりの四皿目を玄武の前に差し出しながら、今日の本題を切り出した。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「氷の女王、玄武。今日は二人に頼みがあって、ここに来たんだ」

『何だ?』

「ある人物が、氷の女王と玄武に会いたいと言ってるんだ。その人物は、ツェリザークの領主で―――」


 ラウルが今日ここに来た目的を、氷の女王達に(つまび)らかに明かして聞かせる。

 氷の洞窟の最寄りの街、ツェリザークという人里の首長=領主であるジョシュア・スペンサーという者が氷の洞窟の主達に会いたいと思っていること、そのためにまずは二人の知己であるレオニスと接触したこと、そのレオニスを通じてラウルもジョシュアに会ったこと等々。

 それらの経緯を話し終えて、ラウルが氷の女王に改めて問うた。


「俺もその領主、ジョシュア・スペンサーにさっき会って実際に話をしてきたばかりだが……話した感じでは悪い奴ではなかったし、氷の女王達と仲良くしたいと思っているのは本当のことだと思う。だから、その……何というか……一度だけでもいいから、ジョシュア・スペンサーに会ってやってもらえるか?」

『うむ、良いぞ』

「「「………………」」」


 おずおずと打診するラウルに、氷の女王は三杯目のメロンシャーベットを頬張りながら事も無げに答えた。

 あまりにもあっさりと了承したことに、ラウルだけでなくライトやレオニスもびっくりした様子で氷の女王を見つめている。

 その様子に気づいた氷の女王が、不思議そうに口を開いた。


『ン? 何だ、我の顔に何かついているか?』

「ぃ、ぃゃ……実はこの話をしたら、氷の女王には嫌がられるんじゃないかと思ってたんだ」

『何故そう思ってたのだ?』

「だってほら、氷の女王は人族のことが嫌いだろう? いくら俺達の頼みとはいえ、人族に会うのなんて嫌がってもおかしくないだろうし……もちろん氷の女王が嫌がったら、この話はなかったことにするつもりだった」


 氷の女王の問いかけに、ラウルが戸惑いながらその思いを語る。

 そしてそれは、ライトやレオニスも全く同じことを考えていた。


 あれだけ人族嫌いで名を馳せた氷の女王だ、いくらラウルの頼みでも氷の女王が嫌がる可能性は少なからずあるだろう―――ライト達はそう予想していた。

 だが、先程の氷の女王は何の躊躇もなくラウルの願いを聞き入れた。

 これはライト達にとって、完全に予想外だったのだ。


 しかし、氷の女王は嫋かな微笑みを浮かべながらラウルに語りかける。


『我がラウルの願いを断る訳がなかろう?』

「それは、非常にありがたいことだが……でも、本当にいいのか? 無理して会うこともないんだぞ?」

『大丈夫、無理などしていない。ラウルやレオニスが認めし者ならば、我も会ってやろうと思ったまでのこと。それに―――』


 ラウルの気遣いが嬉しいのか、氷の女王が終始にこやかな笑顔で答える。


『その者に会う時にはラウル、其方が我らの傍にいてくれるのだろう?』

「!! それは当然だ!その日は俺だけじゃなく、ご主人様達だってついてきてくれるから絶対に安心だ。なぁ、ご主人様よ?」


 氷の女王の問いかけに、ラウルが力強く頷きながらレオニスにも同意を求める。

 もともと人族嫌いで有名な氷の女王、ラウルやレオニスの同席無しにジョシュアと引き会わせるのは無謀極まりない。

 何か不測の事態が起きた時のために、ラウルはもとよりレオニスもまた仲裁役としてその場に立ち会うのは当然である。


「もちろんだ。もし万が一にも、スペンサー側がおかしなことをしだしたら、その時は必ず俺達が氷の女王と玄武を守る。そしてスペンサーにはそれ相応の報復をすると誓おう。だから、氷の女王も玄武も安心してくれ」

『ならば何の問題もない。其方らは我だけでなく、我が姉妹達全員の恩人でもある。その恩返しとして、出来る限り願い事を聞き届けるのは当然ぞ』

「ありがとう!」


 氷の女王の思いがけない快諾に、ラウルが思わず大きな声で礼を言う。

 断られても致し方ないと思っていた案件だったが、存外スムーズに話が進んで何よりである。


『して、そのジョシュアとやらにいつ会えばいいのだ?』

「ジョシュア本人も、なるべく早くというかすぐにでも氷の女王や玄武に会いたい様子だったが……領主ってのは多忙な上に、好き勝手に出歩くのも難しいらしくてな。はっきりとした日取りは決まっていないんだ。すまんな」

『何、其方が謝ることではない』

「ありがとう、恩に着る」


 ラウルの全てを受け入れる氷の女王に、ラウルが深々と頭を下げる。

 そんなラウルに、氷の女王が深く下げた頭を両腕でそっと抱きしめた。


『ラウル、何度でも言おう。我が其方の願いを断ることなど、天地がひっくり返ってもある訳がないことを。我はラウルと玄武様のためならば何でもするし、どんなことだって願いを聞き届けよう。だから、これからも何でも相談しておくれ』

「ああ。俺もその恩に報いるために、これからも氷の女王と玄武に美味しい野菜や果物、菓子類をたくさん用意して届けよう」

『フフフ、楽しみにしておるぞ』

「期待しててくれ」


 頭を上げたラウルを、じっと見つめ続ける。

 二人の何かと熱烈なやり取りに、ライト達はゴニョゴニョと小声で会話する。


「ラウルってさぁ、ホンッ……トーーーにモテるよね……」

「全くだ。しかもあれ、狙ってやってる訳じゃねぇからな……あれを自覚なしに素でやれるって、マジすげーよな」

「ああいうところは、実にプーリアらしいんですよねぇ……」


 万能執事のモテっぷりに、三人はほとほと感心しながら呟く。

 ラウルは朴念仁の中の朴念仁、エンペラー・オブ・朴念仁なのに、どうしてこうもあちこちで慕われモテるのだろうか。

 何ならラウルの爪の垢を煎じて飲みたいところだが、ラウルの言動を真似たところで決して同じ結果にはならないだろう。

 そう、ラウルの天然ジゴロは誰にも真似できないのである。


 何はともあれ、氷の洞窟の主達とツェリザーク領主ジョシュア・スペンサーを引き会わせる算段は無事取り付けることができた。

 その後ライト達は空が茜色になる頃まで氷の女王達と歓談し、数日後に再び会う約束をしてツェリザークに戻っていった。

——天然ジゴロを目の当たりにしたライトとレオニスの会話——


ラ「レオ兄ちゃんもさ、ラウルを見習ってみたらどう? そしたら今よりもっと女の人にモテるかもよ?」

レ「バカ言え、ありゃラウルだからこそ許されるんだ。俺がたくさんの女にモテたところで、逆に痴話喧嘩やら痴情のもつれで背中を刺されるわ」

ラ「それもそっか……ラウルがモテるのは、基本的に人族じゃない存在ばっかもんね」

レ「そゆこと」


 ライトとしては、レオニスにももう少しモテてもらいたいところなのですが。なかなか思うようにはいかないようです(´^ω^`)

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