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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
三年生の夏休み

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1521/1682

第1521話 新米領主の人となり

 作者からの予告です。

 明日は昼と夜に出かける予定が入っていますので、更新をお休みさせていただきます。

 ご了承の程、よろしくお願い申し上げます<(_ _)>

 冒険者ギルドツェリザーク支部を出て、ライト達と分かれて一人ツェリザーク領主邸に向かうレオニス。

 このツェリザークは、冬が厳しい分今の真夏の時期でもとても涼しく、避暑地としても名高い。

 そのため街は多くの人で賑わっており、さすがに大通りは人熱(ひといき)れで夏らしい暑さが漂う。


 しかし、そこから領主邸のある方向に進んでいくにつれ人気も減っていき、秋風を思わせる爽やかな風がレオニスの頬を優しく撫でる。

 ラグナロッツァやカタポレンでは決して味わえない涼やかな夏の香りに、レオニスの足取りも軽やかになる。


 そうして辿り着いたツェリザーク領主邸。

 塀が高く外からは中の建物が見えないが、高さ15メートルはありそうな塀だけでもかなりの重圧感を放っている。

 さらに道を進んでいくと、塀が途切れる場所が見えてきた。

 どうやらそこが正門のようだ。

 正門の左右に二人立つ門番に、レオニスが気軽に話しかける。


「あー、すまんがツェリザーク領主の邸宅はここで間違いないか?」

「ン? そうだが……何者だ?」


 レオニスを訝しげにジロジロと見る門番。

 初めて訪問するのだから最初は怪しまれて当然だ、とレオニスも思うので、門番の失敬な視線に構うことなく話を続ける。


「俺はこういうもんで、プロステス領主のウォーベック侯爵に頼まれてスペンサー侯爵に会いに来た」

「……!?!?!?」

「とりあえず、ウォーベック侯爵から預かった紹介状もここにある。スペンサー侯爵に取り次いでくれ」

「…………」


 レオニスが門番に提示したのは、冒険者ギルドのギルドカード。

 そこには『金剛級』という最高階級と『レオニス・フィア』という名が記されており、レオニスが差し出した封書にもウォーベック家の家紋の封蝋が施されているのを門番達は正しく理解した。


 この領主邸には様々な貴族が訪ねてくる。

 中でもツェリザークの姉妹都市であるプロステスは最も重要な取引先であり、その領主であるウォーベック家の家紋はスペンサー家に仕える者なら一人残らず知っていて当然の知識なのである。


「わ、分かりました、少々ここでお待ちください」

「おう、よろしくな」


 ウォーベック家が直々に橋渡しする者を無碍に扱うことはできない。

 門番の一人が紹介状を受け取り、急いで中に入っていく。

 そうして五分か六分くらい待っただろうか。

 中に入っていった門番が戻ってきて、開口一番レオニスに告げた。


「ジョシュア様がお会いになるそうです。こちらにお越しください」

「お、すぐに会えるのか。そりゃ良かった」


 門番の案内により、レオニスは門を潜り領主邸内に入った。

 塀の中には多数のガラス温室があり、その向こうに領主一族が住むであろう邸宅があった。

 三階建ての建物は華美さなど全くなく、質実剛健といった風格を感じさせる。

 門番に玄関前まで案内され、扉の向こうからは執事がレオニスを案内してくれた。


 建物の中は外観同様質素で、絵画や彫刻などの飾りも一切ない。

 だが、建物そのものはかなり頑丈に作られているであろうことはレオニスにも分かる。

 ツェリザークの長く寒い冬を耐え凌ぐための作りなのだろう。


 そうして執事に案内された、二階の一角にある執務室。

 執事が扉をコン、コン、と二回ノックすると、執務室の中から「どうぞ」という声が聞こえた。

 扉を開けて恭しく頭を下げる執事に、レオニスが「ありがとう」と声をかけてから中に入った。

 すると、執務室の主が席を立ちながら入口に向かって歩いてきていた。


「やあ、ようこそ来てくれたね。君がかの有名な金剛級冒険者、レオニス・フィア君だね? 私はジョシュア・スペンサー、ツェリザークを治める新米領主だ。以後お見知りおきいただけるとありがたい」

「ツェリザークの領主に会えるとは思っていなかった。こちらこそよろしく頼む」


 ジョシュアが右手を差し出し、レオニスもそれに応じて右手で握手を交わす。

 初めて会うジョシュア・スペンサーは、見た感じ三十代になったかどうかという若い青年だった。

 身体の線は細く、背丈はレオニスより少し低いくらい。

 肩まである白群色の髪に竜胆色の瞳は、理知的な印象をもたらしている。

 存外若い新領主に、レオニスが思わず本音を漏らす。


「ていうか、ツェリザークは領主が代替わりしたばかりだって聞いてたから、てっきりアレクシスより少し若いくらいの当主かと思っていたんだが……かなり若い当主で正直驚いたよ」

「まぁね、私は兄弟の中で一番下の末弟だからね。上に二人の兄と二人の姉がいるんだが、姉は二人とも既に他家に嫁いだし、兄はこの寒いツェリザークを厭うて二人とも中央官僚になって後継を私に押し付けたのさ」

「そ、そうか……あんたも大変なんだな」


 レオニスの歯に衣着せぬ本音に、ジョシュアはフフッ……と苦笑いしつつ家庭事情を語る。

 普通侯爵家と言えば、後継の座を争って血で血を洗う諍いをイメージしがちだが、スペンサー家は全く当てはまらないらしい。


 ちなみに先代のスペンサー家当主も、ツェリザークの長く厳しい冬を嫌って、六十歳になった途端にジョシュアに家督を譲り、自分は温暖な地方に別荘を購入してとっとと移住してしまったという。

 確かに年老いた身体には、ツェリザークの厳冬はキツいだろう。

 ジョシュアもそれが分かるからこそ、親孝行だと思って爵位を受け継いだのだとか。


 そうしたジョシュアの愚痴をしばらく聞いていたが、はたとした顔になり話題を変えてきた。


「おっと、愚痴ってばかりですまない。会ったばかりの君に聞かせるような話じゃなかったね」

「いや、別に気にしないでくれ。平民の俺には無縁な話だが、あんた達貴族には貴族なりの苦労があるんだろうってのは分かるしな」

「そう言ってくれると助かる」


 ジョシュアがレオニスに謝ったところで、執事が二人分のお茶とお茶菓子を出してきた。

 コーヒーの芳しい香りに、二人とも自然とカップに手を伸ばして一口二口啜る。


「君の噂は、ウォーベック侯から常々聞いているよ。当代最強の冒険者にお目にかかれて光栄だ」

「まぁな、アレクシスやクラウスとは俺もそこそこ懇意にさせてもらっている」

「ウォーベック侯のおかげでこうしてレオニス君に会えたのだから、今度会った時にまた礼を言わねばな!」


 二人の橋渡し役であるアレクシスの話になり、ジョシュアがニカッ!と笑う。

 人好きのする笑顔は、レオニスの中にほんの少しだけあった貴族への警戒心を溶かしていった。


 アレクシスの話から、ジョシュアという新領主の人柄の良さを感じさせるものだったが、そこはやはり本人に会ってみないと判断はできない。

 そしてこうして本人と話をしてみて、このジョシュア・スペンサーという人物もまたウォーベック家の人々同様に信に足る人物だ、ということをレオニスは確信した。


 その後もレオニスはジョシュアと様々な話をしていった。


「ツェリザークとプロステスは姉妹都市なんだってな」

「ああ。ここツェリザークには氷の洞窟があり、ウォーベック侯のおられるプロステスには炎の洞窟がある。どちらも精霊の女王が御座す住処であり、環境も尽く似ているのでな。古くから先祖代々、姉妹都市として互いに助け合っている」


 執務机の前にある応接ソファに向かい合わせで座り、和やかに話すレオニスとジョシュア。

 しかしここで、ジョシュアが竜胆色の瞳を伏せながら呟く。


「だが……ここ十年くらいプロステスは異常気象に晒されて、特に夏は途端の苦しみに喘いでいた。私達もそれを憂い、冬の間中ずっと冷晶石を作り続けては在庫を貯め続けて、プロステスに送っていたが……それでも焼け石に水だった」

「そんな、死に瀕したプロステスを救ってくれたのは、他ならぬレオニス君、君だと聞き及んでいる。私からも礼を言わせてくれ。プロステスを救ってくれて、本当にありがとう」


 両手を腿に置き、レオニスに向けて深々と頭を下げるジョシュア。

 当時まだジョシュアは当主ではなかったが、プロステスの要請に応じて官僚達とともに冷晶石の増産に務めるなど尽力したという。

 それでもプロステスの灼熱化問題は一向に解決には至らず、ジョシュアも忸怩たる思いを抱えていたのだろう。


「そんなん礼を言われる程のことでもない。俺はアレクシスから炎の洞窟の調査依頼を受けて、その延長線上で問題解決ができただけのこと。俺は俺のすべきことをしたまでだ」

「それでもだよ。君が炎の洞窟の問題を解決してくれなければ、今年もプロステスで何百人もの死傷者が出ただろうからね」

「まぁな……つーか、あんた、相当クソ真面目だな? 他領のことなんて、我関せずなやつが多いってのに」


 ジョシュアから褒められ続けて、レオニスが照れ臭そうにはにかむ。

 プロステスという一都市がもらたした縁を、二人で改めて感じていた。

 ツェリザーク領主ジョシュア・スペンサーの初登場&レオニスとの初対面です。

 新キャラの登場で毎回悩むのは、その見た目。

 背格好はもちろんのこと、髪や瞳の色などもその都度決めなければならないので、何気に苦心してます(;ω;)


 そして、リアルではゴールデンウィークが終わりますね。

 作者は今年も特に出かけたりはしませんでしたが。明日の最終日は、昼間は買い物をして夜もお外で食べる予定です(・∀・)

 里帰りとか行楽地にお出かけ等、経済活動には大きく寄与できませんが、少しくらいは連休を楽しまないとね!( ´ω` )

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