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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
三年生の夏休み

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第1517話 プロステスの新たな未来

 炎の洞窟を後にして、プロステスに戻ったライト達。

 時刻はまだ夕方だが、そのまままっすぐ別荘に戻り皆で風呂に入って汗を流す。

 というのも、今日はアレクシスから晩餐の誘いを受けているためだ。

 侯爵邸の晩餐にお呼ばれしてるんだから、プロステス郊外や炎の洞窟での魔物狩りで散々かいた汗をきちんと流しておかないとね!という訳である。


 初めて入るプロステスの別荘の風呂はとても大きく、ラグナロッツァの屋敷の風呂と比べても遜色ない空間だ。

 広々とした浴槽では、ライトと八咫烏の姿に戻ったマキシがはしゃぎながら泳ぐ。

 本当は風呂で泳ぐなどお行儀が悪いが、ここにはライト達しかいないので何も問題はない。


 そうして日が暮れた頃、ライト達は四人でウォーベック侯爵邸を訪れた。

 四人の歓迎会を開くことは邸内に周知されていたので、正門でもすんなり通してもらえたし玄関でもすぐに客間に通された。

 ライト達が客間でソファに座って待っていると、誰かが入室してきた。

 アレクシスの妻ヴァネッサ侯爵夫人とクラウスの妻ティアナ伯爵夫人、そしてライトの同級生のハリエットである。


「皆様、こんばんは。ようこそお越しくださいました」

「こんばんは。アレクシス直々のお招きを断る訳にはいかんからな」

「ライトさん、こんばんは!皆さん、魔物狩りではお怪我をされませんでしたか?」

「うん、この通り大丈夫だよ!」

「そうですか、それなら良かったです」


 ライト達を歓迎するウォーベック家の人達に、ライト達も笑顔で応える。


「主人はまだ仕事中でして、先程聞いたら『あと三十分くらいで終わる』と申しておりました」

「そっか、プロステスの領主ともなると忙しいだろうな」

「ええ、お客人を招いておきながら申し訳ないとは思うのですが……如何せんこの時期は多忙を極めておりまして」

「ああ、それは承知している。だから気にしないでくれ」

「お気遣いありがとうございます」


 屋敷の主であるアレクシスがここにいない理由を、妻であるヴァネッサがレオニスに語り申し開きをする。

 実際プロステスの領主は、今のような真夏の時期は一年の中で最も忙しい。

 姉妹都市ツェリザークと毎年交換している熱晶石、その生産の最盛期だからだ。

 ハリエット達ウォーベック伯爵が毎年夏に帰省するのも、アレクシスの弟クラウスが兄の仕事を補佐するためである。


「主人は仕事が終わり次第、客間に来ると申しておりましたので、今しばらくここで私達とご歓談願えますでしょうか?」

「もちろんいいとも」


 レオニスとヴァネッサが会話している間にも、ハリエットの兄ウィルフレッドやアレクシスの子供であるオリヴィア、エドガー、フローラが次々と入室してきては、客人であるライト達と挨拶を交わす。

 ライトはハリエットと仲良く話し、ラウルはウィルフレッドやエドガー、マキシはオリヴィアとフローラに質問攻めにあっている。


 そうして三十分程経過した頃、アレクシスとクラウスが入室してきた。


「レオニス君、ライト君、ラウル君、マキシ君、長らく待たせてしまってすまない」

「いや、気にすんな。あんた達が仕事で忙しいのは、俺達も承知してるし」

「そう言ってもらえると助かる。さあ、そしたら皆で食事にしようじゃないか」


 屋敷の主であるアレクシスとクラウスの登場により、晩餐に向かうこととなったライト達。

 別の客間に通され、そこには長いテーブルにパイア肉の極厚ステーキ等々豪華なご馳走が並んでいた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ウォーベック家の執事により一人一人丁寧に席に案内され、全員が席に着く。

 そして上座のアレクシスが代表として挨拶を始めた。


「プロステスの救世主であるレオニス君が、この度我が家の二件隣のご近所さんとなった。これは非常に喜ばしいことであり、レオニス君をプロステスに迎え入れることができて本当に嬉しく思う。この素晴らしき出会いに乾杯!」

「「「乾杯!」」」


 アレクシスの乾杯の音頭に、テーブルに着いていた全員が飲み物のグラスを高く掲げて乾杯をした。

 その後は豪華なご馳走に舌鼓を打ちつつ、あちこちで会話が弾む。

 レオニスはアレクシスとクラウスに挟まれるような形で座っており、早速アレクシスから質問を受けていた。


「レオニス君、炎の女王様とフラム様には無事会えたかね?」

「もちろんだ。炎の女王もフラムも元気にしてたぞ。つーか、ちょっと見ない間にフラムがすげー大きくなってたな」

「おお、そうか!フラム様は健やかに成長しておられるのか!それはとても喜ばしいことだ!ちなみに、どれくらい大きくなっておられたのだ?」

「あー、身体の大きさで言えばライトより大きくなってたんじゃねぇかな? 朱雀は尾が長いから、尾まで含めると俺の身長よりあるだろうな」

「そんなにか!」


 炎の女王とフラムに会ってきたばかりのレオニスが、その成長ぶりをアレクシスとクラウスに語って聞かせる。

 そしてフラムの成長ぶりを聞き、二人の目がこれでもか!というくらいに輝きまくっている。


 アレクシス達は冒険者ではない、極々普通の一般人なので炎の洞窟の中に入ることは不可能に近い。

 故に炎の女王やフラムに実際に目通りするのは非常に難しいのだが、こうしてレオニスから話を聞くだけでも嬉しいようだ。


「瑞鳥であらせられるフラム様が、健やかに成長してくださっている……それはこのプロステスにとっても喜ばしいことだ」

「そうですね。我らプロステスの民にとって、これ以上の喜びはありません」

「あんた達、本当に炎の女王とフラムのことを敬愛してるんだな」

「「もちろん!!」」


 喜色満面の笑みで炎の洞窟の主達の息災を喜ぶウォーベック兄弟。

 その様子に思わずレオニスが微笑みながら漏らした言葉に、アレクシス達がハモるように食いつく。

 そんなウォーベック兄弟に、レオニスが追い打ちをかけるように空間魔法陣を開き何かを取り出した。


「そんなあんた達に朗報だ。炎の女王からアレクシスにプレゼントを預かってきたぞ」

「え? プレゼント???」

「ほら、これだ」

「「………………」」


 レオニスがアレクシスに炎の勲章を渡す。

 しかし、アレクシス達にはそれが何だか分からない。

 そもそも属性の女王達が作り出す勲章は、冒険者でさえ滅多にお目にかかれない代物。ましてやアレクシス達は一般人、一見しただけでそれが何なのか分かるはずもない。


「これはな、『炎の勲章』といって炎の女王が認めた者にだけ与える勲章だ」

「「…………」」

「俺がアレクシスからの伝言を炎の女王に伝えたら、炎の女王がこれをアレクシスに与えたいから渡してやってくれと申し出てくれてな。こうして渡せることになったんだ」

「「…………」」


 レオニスの解説に、アレクシスとクラウスの目が丸くなっていく。

 そして炎の勲章を持つアレクシスの手が小刻みに震えだしていた。


「そそそそんな貴重なものを……いただいてもいいのか?」

「いいのかも何も、炎の女王自らがアレクシスに渡してくれと俺に頼んできたんだぞ? ……まさかとは思うが、要らんのか?」

「ととととんでもない!そんな罰当たりなこと、考えようはずもない!」


 訝しげに不要かと問うレオニスに、ウォーベック兄弟が全身全霊全力でクビを横に振りまくる。

 そしてアレクシスの目にみるみるうちに涙が浮かび、炎の勲章を両手で大事そうに高々と掲げながら宣言した。


「ウォーベック一族の家宝にさせていただく!」

「兄上、子々孫々まで受け継ぐウォーベック家の家宝を得られましたこと、心よりお祝い申し上げます!」


 感極まるウォーベック兄弟の言動に、その場にいた全員の耳目が集まる。

 ライトやマキシはアレクシス達の言動の意味が分かるので、『あー、ウォーベック侯爵様が喜んでくれてるー、良かったなぁ』程度にしか思わないが、ウォーベック家の人々には何が何やら分からない状況だ。

 しかし、感激に噎ぶウォーベック兄弟は人目も憚らず盛り上がりまくる。


「クラウス、私は決めたぞ!」

「何をなさるのですか?」

「今日はフラム様の誕生日ということで、プロステス独自の『炎帝の日』という祝日を作ったが、それだけでは足りん!来年からは八月三日と前後の日、この三日間を『炎帝生誕祭』と銘打って盛大な祭りを催すぞ!」

「それはいいですね!公国生誕祭に負けぬくらいに、大きくて賑やかな祭りにしましょう!」


 アレクシスの発案に、クラウスも大乗り気で賛成している。

 この時期のプロステスは、ただでさえ熱晶石の生産でクッソ忙しいだろうに、そんな盛大な祭りを開催できるのだろうか?

 もしかしたら来年の今頃は、ウォーベック兄弟が過労で倒れてしまうかもしれない。


 だが、炎の洞窟の主達を敬うウォーベック兄弟には、そんな心配の声などきっと届かないことだろう。

 何故ならこの計画は、ウォーベック兄弟にとっては単なる仕事などではない。

 最推しの炎の女王と朱雀(フラム)を崇め奉るのは、プロステスの民ならば当然のこと。

 言ってみれば趣味と実益を兼ねたようなもので、最推しと趣味に打ち込むことに疲労など発生しないのである。


「うむ!そしていずれはサイサクス全土に名を轟かすような、商業都市プロステスに相応しい祭りにしてみせようぞ!」

「微力ながら私もお手伝いさせてください!」

「クラウスよ、お前の力が微力なものか!大いにアテにさせてまらうぞ!」

「はい!」


 ウォーベック兄弟の気炎は、もはや留まることを知らない。

 ここプロステスは『商業都市』という二つ名が示す通り、アクシーディア公国内でも首都ラグナロッツァに負けぬくらいに交易が盛んな街。

 もとより交易が盛んな街で、三日間に渡る盛大な祭りが年に一度は催されるとなれば大繁盛必至だ。


 そしてこのウォーベック兄弟の計画は見事に大当たりし、八月のプロステスの『炎帝生誕祭』が『アクシーディア公国三大祭り』と讃えられるようになるのは、そう遠くない未来の話。

 この時の話を、ウォーベック一族だけでなくライト達もまた後年に懐かしい思い出話として時折語り継ぐようになったのだった。

 炎の洞窟から帰還後の、ウォーベック侯爵邸での食事会です。

 前話で炎の女王から託された炎の勲章を、レオニスがちゃんとアレクシスに渡すところ。ホントはレオニスの予想通りにアレクシスを卒倒させたかったんですが。

 食事会の最中にプロステス領主が卒倒したら、さすがに大事になり過ぎてその後の後始末がめんどくなりそうなのでやめました…(´^ω^`)…

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