表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
三年生の夏休み

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1497/1685

第1497話 不思議の森の案内役

 中央の天空島にある修験者の迷宮の奥。

 その一部の床がフッ……と消えて、ライト達を背に乗せたリンドブルムの身体が真下に落ちていく。

 普通なら、巨躯のリンドブルムが真下に落下したらすごい勢いになりそうなものだが。そこはリンドブルムが上手に両翼を動かして、落下速度を調整している。


 リンドブルムが両翼をバッサバッサと動かせるくらいに大きな穴の中を、彼女はゆったりとした速度で降りていく。

 それはまるで落下傘を用いているような、ふわふわとした何とも優雅な降り方である。

 穴の壁はぱっと見では岩石でできているように見受けられる。

 それはまるで縦穴の洞窟を潜っているかのような、不思議な感覚にライトはワクワクしっぱなしだ。


 そうして程なくして、リンドブルムが最下層と思われる地面に着陸した。

 リンドブルムの背中から降りたライト達の前には、鬱蒼とした森が広がっていた。


「うわぁ……これが不思議の森……」

「ところどころに蛍みたいなのが飛んでて、なかなかに綺麗だな」


 目の前だけでなく、ライト達のいる周囲全てに生い茂る木々を眺めながら感嘆する。

 そこにはカタポレンの森に負けないくらい大きな木々が多数生えていて、葉の隙間や幹、そして空中にも蛍のように青白く光る球状の何かが浮遊している。

 これは、目覚めの湖に生息している『湖の宝石』と同種の魔物で『森のランタン』という。

 こちらも湖の宝石同様ボツ魔物で、他者に襲いかかる破壊衝動は全くない。

 鬱蒼とした森を優しく照らしてくれる、無害な魔物だ。


 そしてライトがふと上を見ると、不思議なことに天井がない。

 先程までは修験者の迷宮にいて、そこから不思議の森に通じる縦穴の洞窟を通ってきたというのに。どういう訳か、ライト達が出てきたであろう穴がどこにも見当たらないではないか。

 それどころか、夜空のような暗い空に白く輝く大きな満月のようなものまで空に浮いている。


 そういえばライト達の背後にも壁などないし、リンドブルムがどこからこの森に降り立ったのかも全く分からない。

 これはやはり、この不思議の森はライト達が普段過ごしているサイサクス世界とは異なる空間である、ということなのだろうか。

 するとここで、レオニスがリンドブルムに問うた。


「あの蛍みたいなのは無害なのか?」

『そうねー、あれが襲いかかってきたことは一度もないわねー』

「あれ以外の魔物はいるのか?」

『一応いるけど、ここの魔物達は割と賢いから、私に向かって襲いかかってくることはないわねー』

「なら安心か」


 現状把握に努めるレオニスの質問に、リンドブルムが飄々とした口調で答える。

 さすがは現役冒険者だけあって、レオニスの危機管理能力は抜群である。

 そうしてリンドブルムの答えを踏まえた上で、改めて森の奥を見ると確かに何らかの魔物達が息を潜めているのが分かる。


 それらはBCOイベント『不思議の森』に出てくるイベント専用魔物だ。

 しかし、現時点ではどの魔物もリンドブルムに恐れをなして、木陰に隠れて一匹も出てこない。

 そのため、どんな魔物がいるかはライト達側からは全く分からなかった。


 とりあえず、この先で魔物達に襲われるリスクが少ないと知ったレオニス。

 ひとまず安堵しつつも、リンドブルムに更に問うた。


「で? 俺達はここからどこに向かえばいいんだ?」

『ここでしばらく待っていれば、チュシャ猫の方から現れr』

『呼んだー?』


 リンドブルムが『チュシャ猫』という言葉を口にした途端、巨大な頭だけの猫がライト達のド真ん前にヌッ……と現れた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「「「『うわッ!』」」」


 突如現れた奇妙な生物に、ライト達だけでなくラーデまで思わずびっくりして声を上げた。

 サマエルに至っては『ウヒェッ!?』という素っ頓狂な声を漏らしている。


 それは、幅3メートルはあろうかという巨大な猫。しかも頭だけがふわふわと空中に浮いていて、胴体と呼べるものが全くない。

 巨大な顔はまん丸で、大きな口は両端の口角が上がっていてニヤニヤとした笑顔に見える。

 顔の大きさの割には耳が小さめで、毛の色は白とクリーム色と濃グレーの三毛猫。

 ニヤニヤ笑顔の三日月型の口からは、ノコギリのようなギザギザ歯が見える。


 そしてこの謎の猫頭の何が驚きかというと、レオニスはおろか魔力探知に優れたラウルでさえもその気配に全く気付なかったことだ。

 もしこれが、ライト達の生命を狙う刺客だったら―――そう思うと、ゾッとすることこの上ない。

 一方リンドブルムは、そんなライト達の震撼など全く気にすることなくチュシャ猫に声をかけた。


『あらー、チュシャ、久しぶりねー』

『おおッ、リンリン嬢じゃにゃーの。おひさー☆』

『元気にしてたー?』

『これこの通り、ボクは元気も元気だニャハハハ☆』


 久しぶりに会う知己に、双方相好を崩しながら和やかに挨拶を交わしている。

 チュシャ猫の一人称が『ボク』ということは、性別でいうとオスなのだろうか。


 そしてこのチュシャ猫、ライト達と並べば巨大な猫頭だが、リンドブルムと並ぶと一見普通サイズの猫のように思える。

 しかし、よくよく考えると頭だけで3メートルはあるのだから、もし胴体がついていたら体長15メートルくらいはある超巨大猫ということになる。

 体格だけで言えば、鷲獅子の王である金鷲獅子アウルムにも引けを取らないであろう。

 もっとも、チュシャ猫に胴体があるのかどうかも定かではないし、あったとしても他にどういう能力を持っているのか、現時点では全く分からないのだが。


『ところでさー、チュシャ。うちのファフ兄が今どこにいるか、知ってる?』

『あー、ファフ君? ちょっと前までまでトランプタウンにお出かけしてたけど、一昨日こっちに帰ってきてたはずにゃよ?』

『そうなのね、それはちょうど良かったわぁ。そしたらチュシャ、私達をファフ兄のおうちに案内してくれる?』

『いいにゃよー。てゆか、リンリン嬢、珍しいお客さんをたくさん連れてきてるにゃね?』


 チュシャ猫によると、ライト達のお目当てであるファフニールはちょうどこの森の中にいるらしい。

 もしこれが他の異空間に出かけている最中だったら厄介だが、このタイミングで不思議の森に滞在しているなら超ラッキーだ。


 そしてリンドブルムがチュシャ猫に早速案内を頼むと、チュシャ猫がヒョイ、と横に動きライト達のことを覗き込んだ。

 チュシャ猫は、オレンジ色の虹彩に縦に細い黒の瞳孔を爛々と輝かせながら、ライトやレオニス、ラウルをジロジロと見つめ続けている。

 どうやらチュシャ猫は、リンドブルムが連れ込んだ初めて見る客人達に興味津々のようだ。

 そんなチュシャ猫に、リンドブルムが声をかける。


『私の連れのことは、道中で歩きながら紹介するわ。とりあえず、ファフ兄のところに案内して?』

『うぃうぃ。じゃ、皆、ボクの後をついてくるにゃ』

『パパン、サミー、坊や達、私の背中に乗っていいわよー』

「はーい」


 ファフニールのいる場所に案内するというチュシャ猫に、リンドブルムがライト達に再びその背に乗るよう促す。

 リンドブルムは巨躯だけに歩幅も大きいので、その分自分以外の全員の移動が大変になる。そのことにリンドブルムは配慮してくれたのだ。


 リンドブルムの配慮に、ライト達も甘えて彼女の背に再び乗り込む。

 その後リンドブルムは、チュシャ猫の導きに従い不思議の森の奥深くに入っていった。

 修験者の迷宮から不思議の森に舞台チェンジです。

 チュシャ猫の名前は前々話から出てきていますが、これは別に誤字ではありません。普通にもじっているだけです(´^ω^`)

 でもって、不思議の森も某不思議の国のホニャラリスのあれやこれやをちょこちょこと魔改造しています。……って、今更某とか伏字にしたところでゴニョゴニョウケケなんですが(´^ω^`)


 そしてチュシャ猫を描写するにあたり、元ネタの方もきちんとggrksしてみたのですが。

 チェシャ猫のモデルは、ブリティッシュショートヘアなのですねー(゜ω゜)

 でもって三毛猫は遺伝子上の問題で、基本オスは生まれないというのは有名な話ですが。拙作のチュシャ猫は一応オスということにしています。

 リアルでは絶望的に生まれ難い三毛猫♂ですが、ハイファンタジー世界でなら実現できちゃう。

 これぞハイファンタジー世界ならではの利点ですよね♪(^∀^)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ