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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
三年生の夏休み

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第1494話 修験者の迷宮の謎

 カタポレンの森の本来の魔力を浴びて、その計り知れない力を実感したリンドブルムとサマエル。

 ライト達とともにラーデの寝床に戻り、少し早めのおやつタイムにすることになった。


 敷地の端の木陰にいつもよりたくさんの敷物を敷き、その四隅や辺の真ん中に氷の女王の氷槍入りのバケツを置く。

 こうすることで、夏の野外でもある程度涼しく過ごすことができるのだ。

 これを見たリンドブルムとサマエルが、不思議そうな顔で氷をじっと見ている。


『ねぇ、何故氷を出したの? この暑さなら、氷なんてすぐに溶けて水になっちゃうのに』

「これは特別な氷の槍でな。氷の女王から直接出してもらったもので、夏の暑い空気に晒してもなかなか溶けないから涼を取るのに使ってるんだ」

『まぁ、氷の女王が直接生み出した氷なの!?』

『道理で溶けない訳だ……』


 リンドブルムの問いかけに、氷を四隅に設置したラウルが種明かしをする。

 氷の女王が生み出した氷ならば、そう簡単に水に還らないのも納得だ。

 それが特殊な氷だと知り、リンドブルムとサマエルがバケツに近寄り物珍しそうに眺めたり、直接手でそっと触れたりしている。


『ていうか、アナタ達、たくさんの精霊の女王達と知り合いなのね』

「おう、訳あって属性の女王達全員の安否を確認しなきゃならなくてな。全ての女王達と一通り会ったことがあるぞ」

『全部!? 天空島の女王達や闇の女王に氷の女王だけでなく、それ以外の女王達全て!?』

「ああ。この家の近くには水の女王が住む目覚めの湖があるし、エリトナ山の火の女王や炎の洞窟の炎の女王、海底神殿にいる海の女王に地底世界の地の女王、フラクタル峡谷の風の女王、ノーヴェ砂漠の砂の女王、全てが俺達の友達だ」

『お前達……本当に人族か?』


 何気なく呟いたリンドブルムの言葉に、レオニスが事も無げに答える。

 レオニスはサラッと話しているが、言ってる内容はとても人族のものとは思えない。

 サマエルが半ば呆れたように、ライト達の種族に疑惑を持つのも無理はない。


 そんな話をしているうちに、おやつタイムの準備が整った。

 敷物の上には、ラウル特製スイーツや飲み物の他にも、ラーデ達用に出した林檎や苺が所狭しと並ぶ。


「よし、じゃあおやつにするか。いッただッきまーーーす!」

「「『いッただッきまーーーす!』」」


 おやつタイム開始の合図の後、ライト達は思い思いにおやつを食べていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



『ンーーー、このリンゴとかいうの、すっごく美味しーい♪』

『この赤いのは何だ? イチゴ? このようなもの、南の天空島にはないぞ……』

『私もこのリンゴを、中央の天空島に持って帰りたいわー。え、帰る時にお土産に持たせてくれるの? ありがとう♪』


 生まれて初めて食べる林檎と苺に、リンドブルムとサマエルが感心しつつもっしゃもっしゃと食べている。

 その勢いは凄まじく、幾度となくラウルが追加の皿を出すも瞬時に皿が空になる程である。


「この林檎と苺も、うちの畑でカタポレンの森の魔力を存分に吸いながら育っているんだ」

『え、ナニ、これもこの森ならではの品なの?』

「ああ、他の土地じゃこんなには育たん。この森で育てるからこそ、こんなに濃密で上手い作物が育つんだ。もちろんラーデの療養にも役立っているぞ。何しろラーデはこの林檎が一番の大好物だからな!」

『ああ、そうとも、ラウルの言う通りだ』


 鼻高々で作物の解説をするラウルに、ラーデもしたり顔で頷いている。

 今のラーデはラウルの毎朝の収穫を手伝い、その都度報酬として巨大林檎を丸ごと一個もらっているのだ。


『へー、スゴいわねー。どこで育ててるの?』

「林檎は向こうの畑、苺は今は休止中だ」

『私もその林檎の木ってのを見てみたいわ!』

「あ、そしたら今から見に行きますか? もし良ければぼくが案内しますよー」

『まぁ、坊やが案内してくれるの? 嬉しいわぁ、よろしくね♪』

「はい!」


 林檎の木に興味を示したリンドブルムに、ライトが案内役を買って出た。

 ライトもいつもラウルの収穫を手伝っているので、今どこに何が植わっているか分かっているし、林檎についてもどの木にどの品種が実るのか等々全部知り尽くしている。


「じゃ、ぼくはリンリンさんに林檎の木を見せてくるね!」

「おう、いってらー」

『パパン達は、ここでゆっくりとご馳走になっててねー♪』

『うむ、リンドブルムも存分に見聞を広めてこい』


 ライトとリンドブルムがすくっ!と立ち上がり、敷物から出て林檎がある畑の方にいそいそと移動していった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「これが、ラーデが大好きな林檎の木ですよー」

『うわー、本当に赤い実と緑の実が実っているのね!』

「生食向けなのはこの『つがる』と、あっちにある緑色の林檎は『王林』で、ラーデは特に王林が好きなんですって」

『まさに王のための食べ物って訳ね!』


 ずらりと並ぶ林檎の木を前に、リンドブルムが感心しながら木を見上げている。

 今朝もラウルが林檎を収穫したので、今はそんなに実っていないが、それでも一本の木に何個かの未成熟の林檎が成っている。


 するとここで、ライトがリンドブルムに問うた。


「そういえば、ぼく、リンリンさんにお聞きしたいことがあるんですが」

『ン? 何?』

「あの中央の天空島には、リンリンさん以外の住民はいないんですか?」


 ライトがリンドブルムに聞きたかったのは、中央の天空島のこと。

 リンドブルム探索時に、ライト達はリンドブルム以外の生物を見つけることができなかった。

 北の天空島には二人の女王に天空樹、天使やドライアドなど複数の住民がいるのに、中央の天空島にはそれが全くないのか?という素朴な疑問に加えて、リンドブルムがいた『修験者の迷宮』のことを知りたかったのだ。


 そんなライトの質問に、リンドブルムが答えた。


『とりあえず、外側にはいないわねー。坊やも見ての通り、あの島は山しかないから普通の生き物が住み着くにはちょっと厳しいし』

「外側にはいないってことは、リンリンさんが寝ていた内側には住民がいるんですか?」

『うん、多分ねー』

「……多分……?」


 何とも曖昧な答えに、ライトが不思議そうな顔でリンドブルムを見つめる。


『私があの部屋に入った時には、何種類かの魔物がいたのよね。火の玉みたいなのや、人族の顔が三つくらい集まってブンブン飛んでるのとか? で、そいつらが身の程知らずにも私に襲いかかってくるもんだから、そいつらを全部食べてたんだけど。いつの間にかいなくなっちゃった』

「………………」


 リンドブルムの話に、ライトがしばし考え込む。

 彼女が言う火の玉みたいなのは『プルシャ』、人族の顔三つというのは『パレルモマスク』。どちらもライトが知るBCOイベント『修験者の迷宮』で出てくる雑魚モンスターだ。

 それらがいたということは、やはりあの場所は『修験者の迷宮』で間違いないのだろう。


 しかし、何故今はそれらのモンスターが出てこないのだろうか。

 このサイサクス世界はBCOがベースとなっているので、雑魚魔物はいくら倒そうとも時間が経過すればリポップして涌いて出てくる。

 それはあの『修験者の迷宮』も例外ではないはずで、どんなにリンドブルムが雑魚魔物を食い尽くそうともリポップが止まることなどあり得ないのに。

 謎は深まるばかりで、ライトの顔も険しくなる一方だ。


 そんなライトの険しい顔など、リンドブルムは気にすることなく話を続ける。


『でもね、私がたまーに外に出かけてから島に戻ると、何でかまた魔物が蔓延ってるのよ』

「え"ッ、そうなんですか!?」

『そうなのよー。私がちょーっと留守してる間に、どこかから入り込んでるのかしら。ホンット、乙女のいない隙を狙うなんて卑怯よねぇ』

「………………」


 プンスコと怒るリンドブルムからもたらされた追加情報に、またもライトがしばし考え込む。

 あの場所が『修験者の迷宮』で合っているならば、そこにレイドボスであるリンドブルムが長期滞在するなどということは、それこそ本来なら絶対にあり得ない事態だ。

 『修験者の迷宮』とレイドボス討伐は別々のコンテンツであり、BCOゲーム内でこの二つが混ざったイベントが開催されたことなど一度としてない。


 しかし、このサイサクス世界ではそのあり得ないことが起こっている。

 それは超特大のバグと言っても差し支えない事態。

 そのバグ故に、リンドブルム不在時には『修験者の迷宮』が正常化し、魔物が復活しているのではないか……? とライトは考えていた。


 この推測は実際に当たっていて、ライトがリンドブルム探索時に『修験者の迷宮』内で魔物が一切出てこなかったのは、リンドブルムが迷宮内にいたせいである。

 そしてリンドブルムがいると魔物が涌いてこなくなるのは、魔物がリポップするための魔力をリンドブルムが無意識のうちに吸い取ってしまっていたからだった。


 これらの正解は、ライトには知る由もない。

 誰かが正解と告げてくれる訳でもないし、ただただ推測の域を出ない。

 でも、これらの事象をヴァレリアに報告することはできる。

 今度ヴァレリアさんに会った時に、報告がてら訊いてみよう……とライトは考えていた。


 そんなライトの横で、リンドブルムがはたとした顔で呟く。


『……あ、そしたら島に戻ったらまーた雑魚どもが涌いてるってことよね? イヤーン、またお部屋の掃除しなくっちゃだわぁ』

「あー、中央の天空島は昨日から誰もいない状態ですもんねー。でも、リンリンさんは強くてカッコいいから、雑魚なんてすぐいなくなっちゃいますって!」

『そ、そうかしら?』


 強くてカッコいい!とライトに持ち上げられたリンドブルム。

 褒められ慣れていないのか、照れ臭そうにはにかんでいる。


『坊やもまた天空島に遊びに来てね!パパンの世話をしてくれている坊やなら、私もいつでも歓迎するわ!』

「え、ホントですか?」

『ホントホント、リンリンお姉さんは嘘つかなーい♪』

「ありがとうございます!是非遊びに行かせてもらいますね!」


 リンドブルムの歓迎の意に、ライトが嬉しそうに破顔する。

 するとここで、二人のもとにラーデが来た。

 背中の白い翼をパタパタと動かしながら、ラーデがふよふよと飛んでくる。


『リンドブルム、ライト、林檎の木はどうだ?』

『あら、パパンも木を見に来たの?』

『うむ。これらの木を、我は毎日世話しておるからな』

『天に御座すパパンが樹木の世話をするなど、以前の私ならば想像もできませんでしたわぁー』

『我も実際にやってみるまで知らなんだのだがな? 野菜を育てたり樹木の世話をするというのは、存外心安らぐものでな。リンドブルムも、この先機会があれば是非とも挑戦してみるがいい。なかなかに楽しいものだぞ』

『そうですわねぇ。島に戻ったら検討してみますわぁー』


 ふよふよと飛んできたラーデを、リンドブルムが抱っこしながら歩き始める。

 偉大なる父を抱っこする娘、その姿は何度見ても微笑ましい。

 そうしてライト達は、おやつタイム開催中のラーデの寝床エリアに戻っていった。

 カタポレンの森でのおやつタイムと謎解きターンです。

 第1483話でライトが修験者の迷宮に入った際に、何故か魔物に一匹も出食わさなかった理由をどこかで明かさなきゃならなかったんですが(=ω=)

 それにはなるべくライトとリンドブルムのツーショット場面を作り出さなければならなくてですね、これがなかなかに苦労しまして(;ω;)


 だってねぇ、修験者の迷宮は完全にBCOと直結する話なので、ライトとしてはレオニスやラウルにはなるべくどころか絶対に聞かせたくない訳ですよ。

 なのでライトはリンドブルムと二人っきりになるチャンスを虎視眈々と狙っていて、おやつタイムの中座でそれがようやく実現したのですね(ФωФ)

 とはいえ、それを知ることができたのは読者の皆様方だけで、作中のライト自身はまだ正解の告知を得ていないんですけども(´^ω^`)

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