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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
三年生の夏休み

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第1478話 サマエルの正体

 ラーデがサマエルと呼んだそれが、上空からゆっくりと降りてくる。

 それまで二人の女王と対峙していた天空竜達が、主の降臨のためにサーッ……と後ろに退いていく。それはさながらモーセの海割りを思わせる荘厳な光景だ。

 その光景をまじまじと眺めていたレオニスが、前に進み出たラーデの後ろについて問いかける。


「ラーデ……あれは一体誰なんだ?」

『あれはサマエルといって、まだこの世界が混沌に溢れていた原初の頃に我が生み出した子のうちの一体だ』

「子供!? てことは、あれはラーデの息子だか娘ってことになるのか!?」

『ああ、あれは我が三体の子の末子だ。もっとも、我ら原初の生物には明確な雌雄などない故、我が子達は皆息子であり娘でもあるのだがな』

「……マジか……」


 ラーデが語るサマエルの正体に、レオニスは驚きを隠せない。

 サマエルの見た目は上半身が人型で下半身が大蛇という、一見メデューサ族かと見紛う外見をしている。

 しかし、人型の頭に生えている頭髪は蛇ではなく普通の毛髪なので、メデューサ族ではないことがすぐに分かる。


 身長は人型の部分だけ見ればレオニスと同じくらいで、下半身の大蛇の先端部分が鏃のように鋭く尖っている。

 右手には長さ2メートル程の三叉槍を持ち、額に青い宝石のようなものが輝くサークレットを着けている。


 顔立ちは人族の作りと同じで、二つの目に鼻と口が一つづつ。

 容姿端麗な顔は中性的で男にも見えるし女にも見える。

 ラーデ曰く、ラーデもサマエルも男女という性別には当てはまらないらしいので、見た目だけでは判断がつかないのも道理か。

 ただし、耳がエルフのように尖っていて、切れ長の目は白目の部分が黒。金色の虹彩と赤の瞳孔と相まって、空恐ろしいまでの威容を放っていた。


 天空竜の主が皇竜の子孫とは、レオニスも二人の女王も全く想像だにしなかった。

 しかしこの場で唯一人、ライトだけは全く別のことを考えていた。



『サマエルって……BCOのレイドボスだったやつじゃないか!』

『確か、サマエルの討伐任務レベルは9だったよな……ラーデの前身の邪皇竜メシェ・イラーザがレベル3だったし、かなり強力なレイドボスだったことは間違いない』

『てゆか、何? BCOではレイドボスだったラーデとサマエルが、サイサクス世界では親子だったってこと!? 何この驚きの新事実!!』



 目の前に現れたサマエルを、穴が開かんばかりにまじまじと凝視するライト。

 そう、ラーデの子だというサマエルは、実はBCOではレイドボスとして登場していたのだ。

 もちろんBCOではレイドボス同士に接点などなかったし、そうした設定があるなどという話も全く聞いたことがない。

 サイサクス世界ならではの新しい解釈に、ライトは内心で驚愕しっぱなしである。


 しかし、このような緊迫した場面であからさまにはしゃぐ訳にもいかない。

 事態が落ち着いてから、ラーデにいろいろと話を聞いてみよう!とライトは心の中で思いつつ、対峙するラーデとサマエルを見守っていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 腰まである長い黄金色の髪を靡かせ、六枚の翼をはためかせながらラーデの前に降り立つサマエル。

 向き合った両者は、しばし無言で互いを見つめ合う。

 周囲が固唾を飲んで見守る中、先に口を開いたのはラーデだった。


『……サマエル、久しいな』

『…………』

『息災にしておったか? しばし会わぬうちに、こんなにも大きくなって……』

『…………』

『どうした、我のことが分からぬか?』

『…………』


 ラーデが懐かしそうにサマエルに話しかけるも、サマエルは一向に返事を返さない。ただラーデを真っ直ぐに睨みつけ続ける。

 そんなサマエルの金眼の鋭い眼光に、ラーデの声も次第に萎れていく。


『……まぁな、それも致し方あるまい。斯様な無様な姿ではな……』


 サマエルに無視され続けたのが堪えたのか、自嘲気味に小さく笑うラーデ。

 レオニス達はラーデの本来の姿を直に見たことはないが、本当のラーデはきっととても大きくて立派な身体をしていたのだろう。

 だが、今はぬいぐるみサイズのちんまりとした身体になってしまった。

 これではサマエルが自分のことを分からずとも仕方ない―――ラーデがそう思い落胆するのも無理はない。


 すると、ラーデの落胆した声にサマエルが俯きながらわなわなと震えだした。

 ラーデやレオニス達からはよく見えないが、俯いたサマエルの顔は悔しそうに歪み歯を食いしばっている。

 そしてサマエルがガバッ!と顔を上げたかと思うと、大きな声で叫んだ。


『そんなことはありません!父上はいつだって偉大なる皇竜です!私はもとより、ファフ兄様もリン姉様も父上のご帰還をずっと信じておりました!』

『なのに、どうして……どうして我らのもとに帰ってきてくださらないのですか? 我らの手で父上をお救いすることができなかった、不甲斐ない親不孝者だから、ですか……?』


 端正な顔を極限まで歪めながら叫ぶサマエル。

 禍々しい黒眼金瞳からポロポロと涙を零すその様は、まるで愛する親に許しを乞う幼子のようだった。

 サマエルの心の叫びに、ラーデが激しく動揺する。


『泣くな、サマエル……我は其方らを蔑ろにしたのではない』

『では何故!何故に父上は天空島におられぬのですか!父上は天空に君臨すべき御方、それなのに……天には戻らず、地を這う蜥蜴(とかげ)の如き生活をしておられるなど……』

『……蜥蜴……』


 幼子のような泣き顔の我が子から出てくる容赦ない毒舌に、思わずラーデの顔が引き攣る。

 どうやらサマエルは、ラーデが天空島ではなく地上で療養しているのが甚く気に入らないようだ。

 そしてこの毒舌をきっかけに、サマエルの口から次々とおかしな言葉が出てくるようになった。


『このままでは、父上が本当に蜥蜴になってしまう……そんなこと、私には耐えられない!』

『私が尊敬する父上は、偉大なる皇竜であって蜥蜴ではない……父上は、未来永劫偉大なる皇竜でなくてはならないのだ!』

『……うん、そうだ。父上が蜥蜴になってしまうくらいなら、その前に父上を殺してしまおう!』

「『『!?!?!?』』」


 謎の理論でとんでもない方向に思考が飛んでしまったサマエル。

 血走った目で呟く数々の恐ろしい言葉に、レオニスも二人の女王も仰天している。

 ラーデが皇竜メシェ・イラーデであることを理解していて、なおかつ今でもラーデを父と慕っている様子なのに、何をどうしたらラーデを殺してしまえ!という結論に至るのか。

 あまりに理解し難い暴論に、思わずレオニスが前に出て口を挟んだ。


「おいおい、ちょっと待て、サマエルとやら。ラーデを殺してしまおうって、貴様、それ本気で言ってんのか?」

『ン? 何だ、今日日の蟻は風に乗って空を飛ぶようになったのか?』

「あァン? 誰が蟻だ、コラ。お前、ラーデの子供なんだろ? 何だって親殺しを率先しようとしてやがんだ、頭イカれてんのか?」

『この蟻め、言わせておけば図に乗りおって……父上より先に、蟻退治をせねばならぬようだな』


 暴走するサマエルを止めたいレオニスと、レオニスを見下す態度を隠そうともしないサマエル。

 両者の間に、バチバチとした目に見えない数多の雷が迸る。

 先程までのラーデとの緊迫した空気が消えた代わりに、今度はレオニスとサマエルの一触即発状態となってしまった。


 この思わぬ事態に、ライトとラウル、二人の女王がラーデのもとに駆け寄った。


「ラ、ラーデ、これ、何とかならないの?」

『うむ……サマエルのやつは、昔からああいう気質の子でな……思い込みが激し過ぎるというか、何かの拍子にとんでもない方向に思考がすっ飛んでいく子なのだ』

『そ、それを親御様であるラーデ様が止めることはできないのですか?』

『う、うむ……あれは昔から我の言うことは、素直に聞くようでいて実はあまり聞かんのだ……ただ、我よりも兄姉の言になら無条件に従う子だから、ここにファフニールかリンドブルムを呼ぶことができれば止めることも可能かとは思うが……』

「その、ファフニールとリンドブルムってのは今どこにいるんだ?」

『かつては中央の天空島にいたはずだが……今でもそこにいるかどうかは分からぬ。何しろ我は、何千年もの間囚われていた故な……』


 オロオロとするラーデに、ライトが大きな声で話しかけた。


「そしたらぼくが、中央の天空島に行ってくるよ!」

『!?!?!? それは危険過ぎる!』

「でも!このままじゃ、レオ兄ちゃんとサマエルさんが戦い始めちゃうよ!そんなことになったら、軽い怪我だけじゃ済まないかもしれない!」

『そ、それは確かにそうだが……』


 ライトの提案にラーデがすぐに否定するも、ライトの尤もな話に思わず言葉に詰まる。

 確かにこのままでは、レオニスとサマエルの衝突は避けられそうにない。

 そうなったら両者が大怪我を負うことは必至だし、できることならラーデの子と仲違いしたくない。

 そのためには、サマエルの兄姉をこの場に呼び寄せるのが最善の策なのは間違いなかった。


 するとここで、ラウルが徐に口を開いた


「よし、そしたら俺も小さなご主人様とともに中央の天空島に行こう」

「ありがとう、ラウル!」

「どういたしまして。それよりラーデ、俺達がここに戻ってくるまでご主人様達が本気の戦いに突入しないよう、何とか時間稼ぎをしてくれるか?」

『……承知した。ただし、中央の天空島に今もファフニールとリンドブルムがいるかは分からん。もし誰もいなかったら、すぐに戻ってきてくれ』

「了解」


 ライトの護衛も兼ねて、中央の天空島にラーデの子達を探しに行くことを志願したラウル。

 確かにライト一人に行かせるよりは、ラウルと二人で向かった方が何かと安心だ。

 そしてラウルは二人の女王にも声をかけた。


「光の女王、雷の女王、すまんがラーデとともにあいつらが戦うのを阻止してくれ。うちのご主人様も何気に血の気が多い方だから、引き留めるのも苦労するとは思うが……」

『分かったわ』

『任せて!何ならヴィーちゃんの浄化砲で、天空竜達だけ撃ち落とすから!』

「ぉぃ、それは引き留めるとは言わんぞ……」


 ラーデとともに二人の女王にも協力を仰ぐラウル。

 光の女王が快諾する横で、雷の女王が何気に物騒なことを言っている。

 そしてラウルがラーデに改めて質問した。


「ラーデ、中央の天空島がある方角はどっちだ? ここから真南に飛べばいいか?」

『いや、中央の天空島は常に北の天空島の南東側を浮遊している。高度も北の天空島より上のはずだ』

「分かった。ここから南東側に飛んで、もうちょい高度を上げりゃいいんだな」

『ああ、それで良い。……あと、二人ともこれを持っていくように』


 今から目指す中央の天空島の位置を確認したところで、ラーデが徐に自分の背中に生える翼を前に持ってきた。

 そして翼に生える羽根を小さな手で掴み、ブチッ!と無造作に毟り取った。

 羽根を無理矢理毟り取ったことで生じた痛みに、ラーデの顔が僅かに歪む。

 そうして手にした真っ白いふわふわの羽根を、ラーデがライトとラウルに一枚づつ差し出した。


『この羽根を持っていくがよい。もしファフニールとリンドブルムを見つけることができたら、この羽根を差し出して見せよ。さすれば其方らが我の遣いであり代行者であることが、ファフニール達にも分かるであろう』

「分かった!ありがとうね、ラーデ!」

「ありがとう、ラーデ。ほら、これを飲みな。今羽根を毟ったところが痛むだろ」

『うむ、すまぬな』


 ラーデの輝く羽毛の羽根を受け取ったライトとラウル。

 絶対になくさないように、でもすぐに使えるようにそれぞれマントや燕尾服の内ポケットに仕舞い込んだ。


「じゃ、行ってくる」

「ラーデ、光の女王様、雷の女王様、後はよろしくお願いします!」

『分かったわ!』

『二人とも、気をつけてね!』


 ラーデと二人の女王に挨拶をした後、ライトとラウルは全速力で南東上空に飛んでいった。

 前話に引き続き、緊迫した空気が絶賛継続中。

 でもって、サマエル=ラーデの子=BCOレイドボスという驚愕の事実が判明。

 てゆか、BCOレイドボスの新キャラって久しぶりよね!゜.+(・∀・)+.゜……と思ったら、100話ちょい前に砂の女王の相方のガベリーナさんが出てた件…( ̄ω ̄)…

 相変わらず作者の物覚えはズタボロです…_| ̄|●…


 ちなみに今回新たに出てきた新キャラのサマエル。

 作者のイメージはズバリ!『ヤンデレさん』です。

 ……が。作者はそもそもツンデレとかヤンデレといった話にあまり詳しくなくてですね…(=ω=)…

 果たしてこれでヤンデレと言えるのだろうか?という不安がががが><

 もし読者様の中にヤンデレマニアがいらっしゃったら、『こんな甘っちょろいのは、ヤンデレでもなんでもないわ!』と思われるかもしれませんが。

 そこは何卒ご寛恕くださいませ<(_ _)>

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