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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
三年生の夏休み

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第1477話 天空竜の主

 ライト達がラーデを伴って天空樹の島から飛び立つより少し前のこと。

 巡回の天使による緊急事態発生の知らせを受けて、レオニスは二人の女王と二羽の神鶏達とともに天空竜の大群と対峙していた。


 その位置は、北側の天空諸島から南に約500メートル程。まさに目と鼻の先と言える近距離まできていた。

 天空島を背に、巨大な天空竜の群れと睨み合う光の女王と雷の女王。

 ちなみにレオニスは天空島の住人ではないので、一応第三者という立場を示すべく神鶏達の斜め後ろに控える形での付き添いである。

 そして一番最初に口を開いたのは、雷の女王だった。


『貴方達!ここはもうとっくに私達の縄張りよ!私達に無断でこれ以上近づくことは許さないわ!』

『貴方達、何を目的にここに来たの? こんなに近くまで来るからには、私達の天空島を目指して来たと思って間違いないのよね?』

「「「………………」」」


 (いき)り立つ雷の女王に、冷静に質問を投げかける光の女王。

 だが、天空竜の群れからの返事はない。ただ黙して飛んでいるだけだ。

 このことに、怒り心頭の雷の女王がますます怒鳴り散らした。


『ちょっと!貴方達、私達の問いに答える知能もない訳!? 何とか返事くらいしなさいよ!』

『……この中で一番強いのは……貴方ね?』


 プンスカと怒る雷の女王の横で、光の女王が冷静に天空竜の大群の中の一頭を指差した。

 その天空竜は二人の女王達から見て真正面より右側にいて、ど真ん中よりもむしろ右端側にいた。


 体格もど真ん中にいる天空竜より明らかに小さいのだが、光の女王はそいつを大群のリーダーであると断言した。

 これは、天空竜の中で最も強い魔力を持つ者を指した故である。

 そしてこの光の女王の指摘は正解だったようで、彼女に指差された天空竜がのっそりと動き出して二人の女王の前に出た。


「…………ヨク、分カッタナ」

『この程度のこと、見破れないとでも思った?』

「サスガハ、精霊ノ女王ヲ、務メルダケノ、コトハアル」

『それはどうも。……で? 貴方達の目的、ここに来た理由は何? まさかいきなり戦争をしに来たのではないわよね? 事前連絡もなくこんな大群で押し寄せてくるなんて、そう思われても仕方ないと思うのだけど』

「………………」

『とにかく、貴方達の目的が分からないことには、私達も何をどうすべきか分からないわ。だから、今ここではっきりと答えてちょうだい』

「………………」


 再び天空竜達の目的を問い詰める光の女王。

 それに対し、群れのリーダーと思しき天空竜は無言のまま微動だにしない。

 そうして数旬の静寂が流れた後、ようやく天空竜がその答えを口にした。


「皇竜ヲ、コチラニ、引キ渡セ」

「『『!?!?!?』』」


 思いがけない答えに、二人の女王のみならずそれまで静観していたレオニスも固まった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 空中で対峙する両者の間に、再び訪れた静寂。

 だがその静寂は、先程のものよりはるかにひりついた空気を醸し出している。

 あからさまに不機嫌な顔の雷の女王と、同じく眉間に皺を寄せて警戒する光の女王。


『皇竜を引き渡せとは、聞き捨てならないわね。貴方達、皇竜メシェ・イラーザ様がどういう御方なのか、分かっててそれを言っているの?』

「モチロン」

『メシェ・イラーザ様に一体何の用があると言うの? ただ会いたいだけなら『引き渡せ』なんて言う必要はないわよね』

「タダ単ニ、ココデ、会ウコトニ、何ノ意味ガ、アル?」

『それは私達が聞いてんのよッ!!』


 未だにその理由を明確にしない天空竜に、雷の女王が爆発寸前といった様子で声を荒らげる。

 彼女の身体からは、もはや静電気などというレベルでは到底収まりきらない量の電気がバチバチと迸っている。


 確かに光の女王が言うように、ラーデに会って挨拶をするだけなら『引き渡せ』などという不穏かつ強硬な言葉は使わないはずだ。

 だが、天空竜が雷の女王の怒声に怯む様子は全くない。

 感情が全くこもっていない声で、天空竜のリーダーが言葉を発した。


「我ラガ、主ガ、皇竜ノ、引キ渡シヲ、望ンデ、オラレル」

『貴方達の主? それは一体誰のことを言っているの? ここにはいないようだけど』

『この場にいない者の望みなんて、私達が聞いてやる道理はないわね。もし本当にそんな者がいるのなら、直接ここに来てその理由をきちんと説明するのが筋というものよね』

「…………」


 二人の女王の尤もな言い分に、天空竜のリーダーが再び黙り込む。

 するとここで、ふと天空竜のリーダーが視線をずらした。その視線は二人の女王のはるか後ろに向けられている。


「……来タカ」

「『『??? …………!!!』』」


 ニヤリ……と笑ってみえる天空竜の様子に、二人の女王とレオニスがつられて背後を振り向き驚愕する。

 そこには、ライトに抱っこされたラーデが近づいてきていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 最前線に現れたライト達に、レオニスが慌ててすっ飛んで駆け寄った。


「ライト、ラーデ!どうしてここに来たんだ!」

「ラーデが、どうしてもここに行くって言うから……」

「だからって!ライト、お前までここに来るこたねぇだろう!ラウル、お前がついていながらどうして止めなかったんだ!?」

「それは、ラーデとライトの意思を尊重したからだ。エルちゃんから聞いたぞ、天空竜の奴らの目的はラーデなんだってな?」

「……そ、それは……」


 天空竜との話し合いが筒抜けになっていたことに、レオニスは思わず言葉に詰まる。

 しかし、少し考えれば筒抜けなのは当然のことだ。

 レオニスが身に着けている分体入りアクセサリーがあるし、それでなくともここは天空樹の島から至近距離にある。ユグドラエルの力を以ってすれば、いちいち分体など通さずともここでのやり取りの見聞きくらいは容易にできるだろう。

 ラウルから事実を突きつけられ、黙り込んでしまったレオニスにラーデが声をかけた。


『レオニスよ、ライトやラウルを叱らないでやってくれ。この者達は、我を守ると言って手を差し伸べてくれただけなのだから』

「……ラーデ……」


 ラーデが抱っこされていたライトの腕の中からスルッと抜け出し、前に進み出た。ラーデは自ら天空竜達と話をするために、一番前に出ようとしているのだ。

 その途中、光の女王と雷の女王が心配そうにラーデに声をかけた。


『ラーデ様……』

『自らここに来られずとも……』


 進み出ようとするラーデに、二人の女王が引き留めようとする。

 そんな二人の女王に、ラーデは小さく微笑みながら返した。


『我のせいで、天空島の平和を乱してすまなかったな』

『そんな!皇竜様のせいではございません!』

『そうですとも!ラーデ様が天空竜達の言いなりになる必要などございません!ラーデ様の御身は、私達がお守りいたします!』


 ラーデに向かって懸命に訴える二人の女王。

 二人の決意は本物で、天空竜の大群と戦うことを厭わない目つきだ。

 彼女達の心意気を、ラーデは本当にありがたく思う。

 するとその時、ラーデ達の頭上から強い光が降り注いだ。


「『『『ッ!?!?!?』』』」


 突如降り注いだ強烈な光に、ライト達は思わず怯む。

 それはまるで、真夏の太陽がもう一つ現れたかのような強烈な光。

 目の上に手を翳して影を作りながら、上空で一体何が起きたのかを必死に知ろうとしている。


 そうしているうちに、上空に現れた強い光は徐々に弱まっていった。

 その光は円形や様々な模様、文字から出ていて、魔法陣から発せられていたもののようだ。

 そしてその魔法陣の中央から、何者かが現れてゆっくりと降下してきた。どうやらその魔法陣は、転移門のような瞬間移動のためのものと思われる。


 瞬間移動の魔法陣が掻き消えて、そこから出現した者の姿がはっきりと顕わになった。

 それは上半身が人型で下半身が大蛇で、全身が赤黒く光っている。

 背中には左右三枚づつ計六枚の羽毛の翼があり、頭には二本の大きな赤黒い角が生えている。


 さながら高位の堕天使のような、禍々しくも神々しささえ感じる謎の存在に、レオニスも二人の女王もただただ絶句する。

 一方で、それまで二人の女王と対峙していた天空竜達が一斉に恭しく頭を垂れた。その赤黒い堕天使っぽいやつが、天空竜の主のようだ。


 誰もが絶句し言葉も出てこない中、ラーデだけがぽつりと呟いた。


『……サマエル……』


 謎の赤黒い堕天使の名を呟いたラーデの眼差しは、長らく会っていなかった親友と邂逅したかのような懐かしさに満ち溢れていた。

 天空竜側のボスの登場です。

 その細かい描写や詳細なデータ、彼らの真の目的などは次話以降に持ち越しですが、ラーデとは何やら浅からぬ因縁がありそうな感じがヒシヒシとします。

 今の非力なラーデに、果たしてこの因縁の相手を説き伏せることはできるのでしょうか?


 そして今日は珍しく、23時前に投稿できそうでウッキウキに嬉しい作者。

 ぃゃ、ホントはそれだってちと遅い時間なのですが。

 てゆか、そういや今日は旗日、春分の日ですね(・∀・)

 今日から日中時間の方が長くなる、つまりは春や夏にどんどん向かっていくということ。

 ホントにねぇ、クッソ暑い夏は勘弁ですが暖かい春なら大歓迎!な作者。

 早く春になってー!><

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