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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
三年生の夏休み

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1473/1685

第1473話 久方ぶりの天空島

 作者からの予告です。

 明日は親戚の法事にお呼ばれしてまして、朝から出かける予定が入っていますので明日の更新はお休みとさせていただきます。

 申し訳ございませんが、ご了承の程よろしくお願い申し上げます。

 ラーデがドライアド達とかくれんぼをしている間、ライト達はユグドラエルと話をしていた。


『今日は何か用があって来たのですか?』

「はい。実はですね―――」


 ユグドラエルに来訪目的を尋ねられたライト、素直に目的を話していく。


『ヴィゾーヴニルとグリンカムビの羽、ですか……確かにそれを身の内に取り込むことができれば、更なる力を得られるでしょう』

「ですよね!」

『というか、二羽ともいつも私の頭の上で寛いでいるので、私の枝葉の間を探せば羽根の五枚や十枚見つけられると思いますよ?』


 ライトの目的を聞いたユグドラエル。

 その話に納得したかのように、彼女の枝葉がワシャワシャと揺れる。

 そして神鶏達の羽根なら今すぐにでも得られる、というユグドラエルの話に、ライトは首を横に振った。


「いいえ、その前に光の女王様と雷の女王様にもちゃんとお願いをしに行こうと思ってまして」

『ああ、そうですね……貴方方の頼みなら、彼女達が断ることなどないと思いますが……それでも一応話を通しておいた方がいいでしょうね』

「はい!」


 神鶏達の羽根を勝手に拾って得るのではなく、彼らの相棒である二人の女王にまずはお願いをするつもりのライト。

 確かに彼女達ならば、今ここで無断で持ち帰ったところで怒りもせずに快く譲ってくれるだろう。

 そうせずに、きちんと先に話をして筋を通すことを選んだことを、ユグドラエルは好ましく思った。


『では、今から三人で神殿の島に向かうのですね』

「はい!……あ、エルちゃん、すみませんがぼく達が向こうに出かけている間、ラーデのことを見ていてもらえますか?」

『いいですとも。かくれんぼに興じるラーデは、見ているだけで楽しいですからね。絶対に目を離しませんとも』

「よろしくお願いします!」


 ラーデのことをユグドラエルに託したライト。

 安心してふわり、と空を飛び、レオニスやラウルとともにユグドラエルの頭上にいる神鶏達のもとに向かった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 網のように生い茂るユグドラエルの上部の枝葉を、上手に避けながらするすると飛んでいくライト達。

 豊かな緑のエリアを抜けて青空の下に出ると、少し離れたところにヴィゾーヴニルとグリンカムビがいた。

 燦々とした日差しを浴びながら、うとうとと微睡む二羽の神鶏達。天空樹の緑葉をクッションにしながらの日向ぼっことは、何とも贅沢な過ごし方である。


 ライト達はうたた寝している神鶏達の前に行き、声をかけた。


「ヴィーちゃん、グリンちゃん、こんにちは!」

「……(スヤァ)……」

「日向ぼっこ、気持ち良さそうだなぁ」

「……(スピー)……」

「ヴィーちゃん、グリンちゃん、俺が作ったサツマイモを食べるか?」

「クエッ!?」

「コケッ!?」


 ライトとレオニスの呼びかけには、まだうつらうつらとしていて寝たままだったのに。ラウルの『サツマイモ食べるか?』という言葉を聞いた瞬間、ヴィゾーヴニルもグリンカムビもガバッ!と飛び起きたではないか。

 ラウル曰く、彼が作る数々の作物の中で二羽が最も好んで食べるのがサツマイモなのだという。

 一番の大好物を目の前に出されては、日向ぼっこなどしている場合ではない!ということか。


 寝起き直後だというのに、目をキラッキラに輝かせてラウルを見つめる神鶏達。

 そんな二羽の頬をラウルがそっと撫でる。


「よし、じゃあ美味しいサツマイモを食べるために、神殿の島に移動するか」

「コケケッ!」

「クルァッ!」


 ラウルの言葉に、ヴィゾーヴニルとグリンカムビが両翼を高々と上げて賛同する。

 この三者のやり取りを見ていたライトとレオニスが「ラウルって、ホンットすごいよね……」「ああ……あいつに掴めない胃袋なんてねぇんだろうな……」と小声でゴニョゴニョと会話している。

 ラウルが手ずから作るこだわり野菜は、人魔どころか神鶏の胃袋までガッシリと掴んで離さない。

 無類の料理バカも、ここまで突き抜けて進化するともはや神々しささえ感じる。


「よし、そしたらヴィーちゃんとグリンちゃんの背中に乗せてもらうか」

「クエケコッ!」

「クルックァ!」

「おーい、ご主人様達よ、行くぞー」

「あ、うん!」

「はいよー」


 さっさとヴィゾーヴニルの背中に乗り込んだラウルが、未だにぽけーっ……と宙を飛んでいるライトとレオニスに声をかける。

 ラウルの呼びかけに、我に返った人外ブラザーズもいそいそとグリンカムビの背中に乗った。

 夏の午前の日差しを浴びていた神鶏達の白い羽根は、ふわっふわでお日様の匂いがする。

 そうしてライト達は、神鶏達の背に乗って神殿の島に移動していった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 神鶏達の厚意により、その背に乗せてもらって神殿の島に移動したライト達。

 二羽が天空神殿前に降り立ち、ライト達も白いふわもふの背から降りると、二人の女王が駆け寄ってきた。


『皆、ようこそいらっしゃい』

『レオニス、ライト、久しぶりね!ヴィーちゃんもグリンちゃんも、皆を乗せてきてくれてありがとうね!』

「コケッ♪」

「クエッ♪」


 ライト達を快く出迎える光の女王に、神鶏達の働きを労う雷の女王。

 相変わらず麗しい属性の女王達に、ライトだけが内心を射抜かれまくっている。

 もちろんレオニスとラウルは全く動じていない。二人とも元来の朴念仁に加え、己の顔を含む美形というものを腐る程見慣れてきているからだ。


「よう、光の女王に雷の女王。久しぶり」

『レオニスも元気そうで何よりね』

『地上の危機は無事回避できたようで、良かったわね!』

「ああ、その節は世話になった。その後回避の報告や礼も言ってなくてすまない」

『そんなこと、気にしないでいいのよ。事件の経緯はラウルからも聞いていたし』

『そうそう。皆が無事生き延びられたなら、それが何より一番良いことよ!』

「ありがとう。そう言ってもらえると気が楽になる」


 己の非礼を詫びるレオニスに、二人の女王は特に怒ったり拗ねたりすることもなく受け入れている。

 雷の女王が言う『地上の危機』とは、ラグナロッツァで起きたビースリー勃発未遂事件のこと。

 あの時レオニスは、万が一の最悪の事態に備えて二人の女王にも支援依頼を要請していた。

 結局その策は使わずに済み事件は終息したが、その後レオニス自身が天空島に出向いて経過報告や改めて礼を言うなどは今日までしてこなかった。

 そのことをレオニスは詫びたのだ。


 そうした挨拶も終えて、ラウルが二人の女王に声をかけた。


「まずはヴィーちゃんとグリンちゃんに食べ物を与えてもいいか? 二羽には俺が作ったサツマイモをあげる約束をしたんだ」

『もちろんいいわよ。というか、こちらからお願いしたいくらいよ』

『ええ!ヴィーちゃんもグリンちゃんも、貴方が作るお野菜がすっごく大好きですもの!』

「ありがとう。じゃ、今から出すからヴィーちゃんもグリンちゃんも少し待っててな」

『コケケコ♪』

『クルクァ♪』


 二人の女王の快諾を得たラウルが、早速空間魔法陣を開いて巨大サツマイモを取り出した。

 ちなみにこのサツマイモは、昨シーズンに作ったもの。

 特にサツマイモは重点的に作り続けていたため、まだ若干のストックがあった。

 その在庫ももうそろそろ切れそうなのだが、近々サツマイモ作りを始める予定なので全く問題はない。


 空間魔法陣から取り出したサツマイモを、ラウルがその場で切り分けていく。

 目の前で大好物のサツマイモが一口大にカットされていくところを、二羽の神鶏達がヨダレを垂らしつつ見守っている。

 そうしてラウルが神鶏達の相手をしている間に、ライトとレオニスが今日の本題を切り出した。


「光の女王様、雷の女王様、ぼく達今日はお願いがあって来ました」

『ン? どんなお願い?』

「それはですね、ヴィーちゃんとグリンちゃんの羽根をいただきたいんです」

『まぁ、ヴィーちゃん達の羽根が欲しいの? その理由を聞いてもいいかしら?』

「はい。実はですね、神殿守護神の羽根や鱗などをもらって、それをほんの少しだけ飲み込むとすっごく強い力を得られるんです」


 ライトが神鶏の羽根を欲しがる理由を尋ねた雷の女王の質問に、ライトが正直に答える。

 そしてその理由を伝えきると同時に、レオニスがさらに補足説明を付け加えた。


「ライトはもうすぐ十歳の誕生日を迎えて、俺やラウルと同じ冒険者になる。これから冒険者としてやっていくに当たり、己の身を守り生き延びるためにも―――ライトには、強い力を身に着けさせたいんだ」

『まぁ、ライトは十歳になるのね。それはとてもお目出度いことだわ』

『そういうことなら、私達からの誕生日プレゼントにもなるわね!』

『ええ。別に誕生日じゃなくても、貴方達の頼みならいつでもグリンちゃん達の羽根をあげるけど』


 レオニスの補足説明を聞いた二人の女王の顔が、パァッ!と明るくなる。

 ライトはレオニスやラウル同様に、天空島の危機を救った大恩人にして天空島の住民全ての友。大恩あるライトが誕生日を迎えるのだ、ライトが所望する神鶏達の羽根はその祝いの品としてもまさに最適である。


『グリンちゃん達の換羽は、だいたい夏の終わりから秋にかけてなのだけど。そういうことなら、すぐにでも羽根が欲しいわよね?』

「そうだな。今日もらえたら、それが一番良いに越したことはないが……もし無理そうなら、日を改めることも考えてはいる」

『ンー、そしたらエルちゃん様の枝の間を探すのはどう? いつもヴィーちゃん達はエルちゃん様の天辺に座っているから、枝に抜けた羽根がいくつかあると思うわ』


 できれば今日のうちに羽根をもらいたい、というレオニスに、雷の女王が案を出した。

 その案は先程ユグドラエルが言っていたのと全く同じもの。

 今生えている羽根を、無理に引き千切って毟りとるのはさすがに可哀想だが、自然に抜け落ちた羽根を拾う分には全く問題はない!という訳だ。


「それを持ち帰ってもいいか? ライトの誕生日プレゼント用だけでなく、俺やラウルにも羽根を分けてもらえるとありがたいんだが」

『もちろんいいわよ。それと、換羽が始まったら改めて教えてあげるから、その時にまた羽根を取りに来てもいいわ』

「ありがとうございます!」

「ありがとう、恩に着る」


 神鶏達の羽根を持ち帰ることを快諾した二人の女王に、ライトとレオニスが破顔しつつ礼を言う。

 するとここで、光の女王が空に向かって声をかけた。


『パラス、ちょっとこっちに来てくれる?』


 光の女王の呼びかけから数瞬後、畑の島のある方向からパラスがすっ飛んできた。


「光の女王様、お呼びでございますか!? …………って、おお、人族の英雄兄弟に畑の師匠ではないか!いつこちらに来ていたのだ?」

「よう、パラス、久しぶり。さっき来たばかりだ」

「そうだったのか。いや、今までずっと畑で収穫をしていてな、客人が来ていたことに全く気づかなかった。いやはや面目ない」

「パラスも野菜栽培に勤しんでいるようで何よりだ」


 光の女王に呼ばれてすっ飛んで来たはずのパラス、神殿前にライト達三人がいることにすぐに気づいて声をかけてきた。

 今までなら、ライト達が何をせずともいつもパラスが飛んできて、その用向きを尋ねていたのだが。今日は畑の島での野菜収穫に夢中で、ライト達の来訪に気づかなかったらしい。

 もともとライト達は天空島の面々に対して敵意は微塵もないので、そういう意味でもパラスがライト達をすぐに捕捉できないのも無理はないのだが。


 そして、ラウルの呼称がいつの間にか『畑の師匠』になっている。

 また面白い二つ名がついたものだが、ここでも順調に親交を深められているようで何よりだ。

 申し訳なさそうに照れ笑いするパラスに、光の女王が声をかけた。


『パラス、今からエルちゃん様のところに行って、グリンちゃんとヴィーちゃんの抜け落ちた羽根を拾ってきてくれないかしら?』

「グリン様とヴィー様の抜け落ちた羽根、ですか? それは一体、何にお使いになられるので?」

『ライトやレオニスが、神殿守護神の羽根や鱗を集めているらしいの。特にライトは、もうすぐ誕生日を迎えるのですって。その誕生日祝いに、グリンちゃん達の羽根を分け与えたいの』

「そういうことでしたか!でしたら配下の天使も総動員して、すぐに羽根の捜索隊を結成してまいります!」

『よろしくね』


 光の女王に呼ばれた理由を聞き、パラスが己の拳で胸をドン!と叩いてみせる。

 羽根を探すのに天使総動員で捜索隊を結成とは、これまた大仰なことだ。

 しかし、パラスにとって女王からの命令は絶対。それを遂行するためなら、どんな努力も犠牲も厭わないのである。


 来た時と同じく、ピューッ!と畑の島の方にすっ飛んでいったパラス。

 その頼もしい背中を、ライトとレオニスは微笑みながら見つめていた。

 サブタイ通り、久方ぶりの天空島です。……って、前話で既に天空樹の島に到着しているんですけど( ̄ω ̄)

 天空島に住む二人の女王やパラスが作中に出てきたのは、邪竜の島の討滅戦で決着がついた翌日の第1208話以来ですね(゜ω゜)

 邪竜の島討滅戦という大仕事を終えた後、なかなか出番が来なかった天空島の面々ですが。こうして時折でも作中に出すことができて、作者は嬉しいです( ´ω` )

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