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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ピッカピカの三年生一学期

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第1467話 ライトの全力の火魔法

 カタポレンの家から目覚めの湖に移動したライト達。

 三人と一頭は湖中央の小島に降り立ち、ライトが湖面に向かって呼びかけた。


「皆ー、こーんにーちはー!ぼくだよー、ライトだよー!」


 ライトが大きな声で呼びかけると、数瞬後にアクア達が出てきた。


『ライト君、こんにちは』

『まぁ、レオニスにラウルにラーデ君もいるじゃないの。ラウル以外はお久しぶりね!』

『今日も皆で遊びに来てくれたのー?』

『何して遊ぶー?』


 アクア、水の女王、イード、ウィカがそれぞれ嬉しそうにライト達を出迎えてくれた。

 そんな優しい目覚めの湖の仲間達に、レオニスやラウル、ラーデも「よ、久しぶり」「皆元気にしてたか?」『皆息災そうで何よりだ』等々、和やかに挨拶を交わしている。


 ちなみに今日の面子の中で、唯一久しぶりでないのはラウル。

 ラウルは月に二、三回程度、この目覚めの湖を訪れている。

 何故かと言えば、それはもちろん『目覚めの湖産の魚介類を獲らせてもらうため』である。


 この目覚めの湖はカタポレンの森のド真ん中にあるおかげか、その豊富な魔力の恩恵により魚介類もジャンボサイズのものが多い。

 そのためオーガの里での料理教室時に、目覚めの湖産の魚介類を用いることもしばしばあるのだ。

 もちろんそれらの魚介類料理がオーガの里で大好評なのは、言うまでもない。


 そして目覚めの湖で魚介類を獲らせてもらう度に、ラウルはそのお礼として目覚めの湖の愉快な仲間達にスイーツやミートボールくんを振る舞っている。

 今やラウルは万能執事のみならず、辣腕農家という地位も確立しつつあるが。そのうち『凄腕漁師』とかいう称号も増えるかもしれない。


「皆、久しぶり!今日はぼくの魔力テストをしに来たんだ。水の女王様、ここで魔力テストをしてもいいですか?」

『魔力テスト? こないだもそんなことしてたわよねー。いいわよー、私やアクア様、レオニスにラウルもいれば、危険なことにはならないでしょうし』

「ありがとうございます!」


 ライトの突然の要請にも拘らず、水の女王が快諾する。

 水の女王も一年前に行った魔力テストのことを覚えていたらしい。

 ただし、一年も前のことを『こないだ』と言う辺り、やはり人と精霊では時間の流れや感覚がかなり違うようだが。


 ひとまず地主の許可を得られたところで、早速レオニスがライトに声をかけた。


「よし、そしたら早速テストを始めるか。ライト、火と水と風、どの順番でやりたい?」

「ンー、そうだなぁ……あ、そしたらここはアクアに決めてもらおっかな!」

『ン? 僕が決めていいの?』

「うん!アクアの好きなように選んでくれていいよ!」

『じゃあ、そしたら……まず、火魔法を見てみたいな!』


 火、水、風、これから行う魔力テストの属性決めに、ライトがアクアを指名した。

 前回の魔力テスト時は、まだアクアの言葉を理解できていなかった。

 その後アクアが親愛の証としてライト達にくれた『水神の鱗』を一欠片飲むことで、アクアだけでなくウィカやイードの言葉まで理解できるようになった。

 去年は聞けなかったアクアの感想も、今回は好きなだけ聞ける!と思うと、ライトの心は弾む。


 そして当のアクアの方も、自分がテスト項目を選べるのが嬉しいのか、弾むような声で最初のテストに火魔法を指定した。

 それを受けて、レオニスがライトに指示を出す。


「よし、火魔法な。そしたらライト、湖面に向かって今出せる火魔法をなるべく最大出力で、かつ魔力が枯渇する直前ギリギリまで出してみろ」

「それは、今のぼくがどれくらいの火魔法を出せて、どれくらいそれを続けられるかを見るの?」

「そうだ。特に火魔法は、敵を殲滅するための攻撃魔法として用いられることも多い。そして戦闘回避が不可能な場面になった時、今の自分に何が、どこまでできるのかをきちんと把握できてないと、魔力の温存や出力調整もできんからな」

「分かった!」


 レオニスの適切な回答に、ライトも納得しつつ湖面に身体を向け直す。

 先日レオニスは、クロエの石化能力の検証に関して『今の自分ができることとできないこと、常にそれを正しく把握しておかなきゃならない』『適切な判断をするには、今の自分の能力を正しく理解しておかなくちゃいけない』ということを主張していた。

 それは何もクロエに限ったことではなく、ライトにも同じことが言える。

 特に敵を倒す攻撃魔法は、敵との遭遇場面においてその後の生存率を大きく左右する要因の一つとなる。

 この力を正しく把握しておくことは、もうすぐ冒険者登録をするライトにとっても間違いなく重要課題だった。


「……あ、そしたら後ですぐに飲めるように、エーテルも用意しとかなくっちゃ」

「それなら俺がコズミックエーテルを出してやるから心配すんな」

「はーい。アクア達も危ないから、ぼくの後ろ側に回るか、なるべく遠くに離れててねー」

『『『『はーーーい』』』』


 テスト後の魔力回復剤を用意しようとしたライト。

 そんなライトに、レオニスがコズミックエーテルを出してくれると言う。

 コズミックエーテルは、埒内の者であるレオニスが用意し得る最上級の魔力回復剤。

 これを出してくれるというのは、魔力テストに挑むライトへの最大級の支援だった。


 回復剤問題をクリアしたライトは、アクア達に向かって避難指示を出す。

 彼らはいずれも強い水属性の力を持っているが、それでも万が一のことがあってはならない。ライトの火魔法が彼らの身体に悪影響を及ぼすようなことなど、絶対に起きてはならないのだ。

 そうしたライトの気遣いを汲み取り、アクアとウィカは小島に上がってライトの後ろ側に回り、上陸できないイードはスススー……と小島から遠く離れていった。


 アクア達の避難も完了し、ライトが火魔法を存分に繰り出すための舞台は完璧に整った。

 そしてライトは湖面側の上空、斜め上45°の角度で両腕を上げて手のひらを前に突き出す。


 レオニスの言う『なるべく最大出力で』というのは、最大出力より少しだけ控えめで魔法を繰り出せ、ということだ。

 もし最大出力にしたとして、それが打ち上げ花火のように一瞬で掻き消えてしまうようでは、攻撃の切り札にはなり得ない。

 敵を倒すだけの火力を出しつつ、持続時間もそれなりに確保できなければ戦いの場で使い物にならない。

 今の俺が戦える技量、それがどこまであるかをレオ兄はその目で確認しておきたいのだ―――ライトはレオニスの意図を正しく理解していた。


 そしてライトが両の手のひらから火魔法を発射した。

 ライトが作り出した火柱は青白く、幅10メートル、長さは100メートルを超えていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 それをライトの斜め後ろで見ていた水の女王。のんびりとした口調で呟く。


『ぅゎーーー、綺麗な火ねー……てゆか、前のテストの時の火は球のように丸くて、火の色は橙色だったけど。今度の火は青っぽいのね?』

「ライト曰く、火は温度が高い程青白くなるもんなんだと。実際炎の女王と火の女王を比較すると分かるんだが、炎の女王は身体が橙色で火の女王は青白いんだよな」

『へー、そうなの? じゃあ火のお姉ちゃんに似た色を持つあの火柱は、すっごく熱い火でできてるってことなのねー』

「そういうことだな」


 何の気なしに呟いた水の女王の言葉を、同じくライトの斜め後ろに控えていたレオニスが拾って解説をしている。

 水の女王が火の姉妹と至近距離で会えることはないだろうが、同じ火属性である火と炎、どちらが火力面で上にあるかくらいは分かる。

 純粋な力比べで言えば、四大元素である火の方が間違いなく強い。

 故に、火の女王の身体の色に近い火ほど火力が強いことは水の女王にも理解できた。


 しかし、ここでレオニスも想定していなかった事態が起こる。

 それだけ極太かつ強力な火柱を出せば、持ってせいぜい十秒程度だろう、と考えていたレオニス。

 その漠然とした予想に反し、十秒どころか三十秒が過ぎ、一分以上経過してもライトの火柱は途切れないではないか。

 このことに、それまでライトが出す青白い火柱をうっとりと眺めていた水の女王が、だんだんと心配そうな表情になっていった。


『ね、ねぇ、レオニス……あの火柱、私の目にはすっごく太くて長く見えるんだけど……もしかして、人族にとってはあれが普通の火魔法だったりする?』

「ンな訳ねぇだろう……ありゃ俺から見ても、とんでもねー火魔法だって」

『じゃ、じゃあ、もしかしてそんなに魔力を使わないお手頃魔法なの?』

「い、いや、そんなはずは……あれだけ大きな火柱なら、魔力も一気に消耗していくはずだが……」


 轟々と燃え盛る火柱を眺めながら、ゴニョゴニョと小声で話し合うレオニスと水の女王。

 ちなみにこの二人以外は、『おおー、さすがライト君』『やっぱりライト君はスゴいネ☆』「ホントにうちの小さなご主人様はすげーよな」『うむ……とても人の子が繰り出す火魔法とは思えんな』『あれ、ワタシのあんよより長いわねー』等々、ただただひたすらに感心しまくっている。


 そんなことをしているうちに、ついにライトの手から火柱が消えた。

 ライトの魔力が枯渇する寸前までに至ったのだ。

 そして彼の火魔法の持続時間は、何と二分にも及んでいた。


 この時のライトは、マイページをその場でチェックできるはずもないのですぐには分からなかったが。一秒につき50MPを消費していた。

 だが、今のライトのMP総量は5000を軽く超える。

 一秒50MPを消費するとして、一分間維持して3000MPの消費、二分で6000MPという計算になる。

 先程までこんな大技を二分に渡って出し続けられたのは、ライトの基礎魔力量のバカ高さのおかげだった。


 しかし、実はこれでもかなり軽減されていることをライトは知らない。

 ライトが出していた青白い火柱は、本来なら一秒につき150MPを消費する。

 しかし、これまでライトが得ていた火の姉妹の称号と加護に加え、朱雀の加護と朱雀の羽毛を飲み込んで朱雀の力を取り込んでいたことで、本来の三分の一の50MPにまで消費を抑えられていたのである。


 そうしてほぼ全力の火魔法を停止したライト。

 テストを終えて力が抜けたのか、思わずぺたん……と尻もちをついて地面に座り込んだ。

 全力を出し切ったライトのもとに、レオニスが小走りで駆け寄った。


「ライト、大丈夫か? ほら、これを飲め」

「うん、大丈夫……ありがとう、レオ兄ちゃん」


 レオニスが差し出したコズミックエーテルを、ライトが受け取ってくぴくぴと飲み始めた。

 魔力回復のためのエーテルは、いつもならアークエーテルを使うのが定番なのだが。今回はライトが持つ魔力の限界ギリギリまで使うということで、市販品の中では最上級品のコズミックエーテルを出してくれたのだ。


 あまり美味しくないコズミックエーテルを飲みながら、ライトは内心で『近いうちに、美味しいコズミックエーテルの研究をしよう……』と思う。

 そんなライトのもとに、ラウルやアクアも駆け寄ってきた。


『ライト君、お疲れさま!』

『火のお姉ちゃんの色をした火柱、本当に綺麗だったわ!』

『ボク、あんな大きな火は初めて見たよ!』

『今日この湖に来た理由がよく分かった。あれだけの火は、ここでしか出せぬわな』


 口々にライトの放った火魔法を褒め称える仲間達に、ライトも照れ臭そうにしている。

 そして一番最後に悠々と寄ってきたラウルがライトを労う。


「お疲れさん。あんだけデカい火を長く出したんだ、エーテルを飲むだけじゃ足りんだろう。ここは一つ、休憩がてら早めのおやつにするか?」

「うん!する!ラウル、美味しいおやつをちょうだい!」

「はいよー」


 ラウルの魅力的な提案に、ライトは一も二もなく飛びつく。

 実際のところ、コズミックエーテル一本のMP回復量は2400。

 これまで増えに増えた各種称号により、ライトのMPはレベル1で5000を超えているので、コズミックエーテルを一本飲んでもその回復量は半分にも満たなかった。


 もちろんこれはライトだけの秘密で、レオニス達に明かせることではない。

 しかし、ラウルが提案してくれたおやつタイムに突入すれば三十分は休めるし、何より美味しいおやつは身も心も癒やしてくれる。

 そう、ラウルが作り出す美味しい料理はエーテル類以上にMP回復の役割を果たしてくれるのだ。


 まだ地べたに座りながらコズミックエーテルを飲むライトに代わり、レオニスとラウルが休憩の準備を進めている。

 敷物を敷き、美味しいスイーツやミートボールくんを出してちゃちゃっと支度を整える赤と黒のイケメン達。

 そしてそのイケメン達がいそいそとおやつの準備をする様子を、ラーデやアクア達目覚めの湖の仲間達がワクテカ顔で見ている。

 そうした長閑な光景を、ライトも嬉しそうに見守っていた。

 ライトの二つ目の魔力テスト、火魔法のテストの様子です。

一秒につき50MPを消耗する火魔法って、コスパ的にはあまり良くないように思えるかもしれませんが。

 超高温の極太火柱を二分間も出せりゃ、大抵の敵は薙ぎ払えるよね!(º∀º)

 てゆか、薙ぎ払う以前にに周囲もろとも溶解しそうですけど(´^ω^`)


 とはいえ、そこら辺は出力調整で如何様にも火力は変化させられるので。

 今後は出力調整のための微調整コントロールの修行ですね!(`・ω・´)

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