第1463話 今年の夏休みの予定
サイサクス世界で初めての季節限定イベント『七夕・笹魔人を倒して神寄の短冊を集めよう!』を無事終えたライト。
七夕が過ぎれば、いよいよライトの三年生の夏休みが間近に迫ってくる。
七夕イベントの最中は、短冊稼ぎで他のことを考える余裕など全くなかったが。その七夕イベントも無事終了した今、次に考えるべきはズバリ『夏休みの過ごし方』であった。
「さーて……今年の夏休みは何するかなー……」
「てゆか、まずは十歳の誕生日と同時に可能になる冒険者登録だよな!八月十二日にディーノ村で冒険者登録して、そこから一週間クレアさんに『冒険者のイロハ講座』をしてもらうんだ!」
「ぃゃー、俺の誕生日が夏休みのド真ん中でホンット良かったー。もし夏休みの真っ最中じゃなかったら、クレアさんの冒険者講座を受けられないもんな……そんなもったいないこと、絶対にできんし!」
カタポレンの家の自室の勉強机に向かいながら、今年の夏休みの計画を練るライト。
一番の目玉行事は、何といってもライトの冒険者登録。
このサイサクス世界では、十歳以上になれば誰でも冒険者ギルドで冒険者登録することができるようになるのだ。
実父と養父、両方が優れた冒険者であるライトにとって、このサイサクス世界で冒険者になるのは長年の夢だった。
その夢が、もうすぐ叶う。いや、正しくはその夢の入口に一歩踏み出すに過ぎない。冒険者登録した後こそが、本当の本番なのだから。
しかし、夢が叶う瞬間がもうすぐそこまできている。ライトがいつになくワクテカ顔でウキウキしまくるのも無理はない。
「てゆか、去年の夏休みはどこで何をしてたんだっけ……確か夏休み入る前の終業式の日に、初めて魔力テストをした覚えがーーー」
「その後に、白銀の君の背中に乗せてもらって初めて天空島に出かけたんだよなー……二人の女王様とエルちゃん、ヴィーちゃんにグリンちゃん、パラスさんやドライアドの皆、天空島にはたくさんの出会いがあった!」
「あとはーーー……初めて海樹のイアさんに会ったり、氷の女王様にも会ったりしたっけ……あ、そういやツィちゃんの襲撃事件も、去年の夏休みの最中だったよな……」
去年の夏休みにあった様々な出来事を思い出し、感慨に浸るライト。
特にユグドラツィの襲撃事件は、絶対に忘れられない出来事だ。
事件の黒幕であろう廃都の魔城の四帝。その極悪非道さをライトは改めて目の当たりにした。
他にも属性の女王達の存在を脅かしたり、平和に過ごすオーガ族の里を襲ったり、その傍若無人ぶりは留まることを知らない。
BCOでの廃都の魔城の四帝は『初代』と呼ばれる謎のボスキャラに辿り着く直前、ライト達勇者候補生の前に立ちはだかる敵キャラだった。
ゲームではそれ以外の描写は全くなく、ただ悪の四天王としてボスキャラの前座を務めるような、モブ以上宿敵以下という何とも中途半端な位置づけ。
しかし、このサイサクス世界では全く違うものだった。
サイサクス世界で生きる他の者達同様に己の意思を持ち、己が利益のためだけに平気で他者を蹂躙する。
その生き様は典型的な悪役キャラで、王道を地で行くといく意味では敵ながら天晴と言う他ない。
しかし、だからこそライトは許せない。
それは実父の仇という直接的な理由だけでなく、属性の女王達や神樹族などライトが敬愛してやまない者達の敵でもあるからだ。
これ以上奴等が俺の大事な者達の生命を脅かし、付け狙い続けるなら、俺も容赦はしない。
俺がこの世界唯一の勇者候補生だからって訳じゃないが、俺やレオ兄が長生きして百歳過ぎて大往生するためには絶対に奴等を滅ぼさなきゃならん。
もはやゲームのシナリオなんぞ関係ない。
俺は俺と大事な人達の人生を守るために、冒険者として強くなってみせる!
ライトは改めてそう心に誓うのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その後ライトは日を改めて、夏休み中にしたいこと、行きたいところのリストアップを少しづつ上げていった。
そのリストは、以下の通りである。
・兎にも角にも冒険者登録!
・冒険者登録を済ませたら、ユグドラツィのところで今年も誕生日パーティーをする
・属性の女王達のところに遊びに行く
・現在の職業、闘士職の闇系四次職【獣魔拳帝】の習熟度をMAXにする
・シュマルリ山脈中央にいるロドン=ドラゴタイラントの爪の採取
・ブリーキー島にある『呪われた聖廟』にて、神威鋼入手のための魔物狩り=素材採取をする
・ノーヴェ砂漠での素材採取と仕留めた魔物の解体
・レオニスが最近購入したばかりの、プロステスの別荘に泊まりに行く
今は去年のように、属性の女王探しやまだ見ぬ神樹族のもとに赴くといった喫緊の課題はない。
だが、新しい冒険をする必要はなくとも、ライトにはやりたいことがたくさんある。
特にまだ出会って日が浅く、交流が少ない風の女王、地の女王、砂の女王の三者には絶対に夏休み中に会いに行きたい!と思うライト。
ここら辺はレオニスやラウルも賛同してくれると思うので、今日明日にでも二人を誘ってみるつもりだ。
そして、現在の職業【獣魔拳帝】のマスター。
そのご褒美の六回目の質問で、ヴァレリアに異空間の時間差問題を尋ねて解決しておかなければならない。
でないといつまで経っても『呪われた聖廟』に行けないからだ。
そして、こちらも属性の女王達のお宅訪問?同様、ライトの誕生日前にはクリアしておきたい。
というのも、ライトが無事ディーノ村で冒険者登録を果たした暁には、クレアが開催する『冒険者のイロハ講座』を一週間みっちりと受けるつもりだからである。
この、冒険者ギルド各支部で新人冒険者を対象に必ず催される講座は、だいたいがクレア十二姉妹もしくはマリア十二姉妹が講師を担当している。
何故なら彼女達は、一人残らず『何でもできるスーパーウルトラファンタスティックパーフェクトレディー!』。
彼女達受付嬢は、冒険者ギルドが果たす様々な役割はもちろんのこと、冒険者達のことを最も熟知している。
特に右も左も分からない新人冒険者を正しく導くには、彼女達は最も適した人材であると言えよう。
ちなみに余談ではあるが、クレア十二姉妹もマリア十二姉妹もいない冒険者ギルド支部では『受付を兼任するベテラン男性職員が講師をするイロハ講座』もしくは『クレア十二姉妹またはマリア十二姉妹がいる最も近隣の支部にイロハ講座を受けに行く』を選ぶことが可能らしい。
そしてその選択肢を授けられた新人冒険者は、一人残らず後者を選ぶのだとか。
完璧な淑女達の有能さは、サイサクス大陸全土に轟いているのである。
今年の夏休みは、七月二十五日から八月二十八日まで。
一ヶ月以上の長期休暇は、普段そう遠くに出かけられないライトにとって絶好の機会。
それこそ天空島やエリトナ山など、遠い地へのお出かけもし放題。もっともそれは、保護者であるレオニスの了承及び同行がないと許されないのだが。
あと一週間後に迫った夏休みを前に、ライトの胸はしきりに踊るのであった。
七夕イベントが無事終了した後は、待ちに待った夏休み到来!ということで、来たる夏休みに向けて様々な計画を練るライト。
ええ、ライト君はすんげー楽しそうですが。作者は今から戦々恐々としてたりして…( ̄ω ̄)…
だってだってー。前回の夏休み、198話も書いたんですもの_| ̄|●
たかが一ヶ月ちょいの夏休みでほぼ200話も食うなんて、作者ですら予想だにしてませんでしたよ_| ̄|●
とはいえ、作中で触れたように、今現在ライトとレオニスが担う新天地探索ミッションは一つもないんですよねー(゜ω゜)
属性の女王や神樹にも全員会えたし、新しく何かを探すという冒険要素が一つもないというのは、作者もほんの少し寂しかったりして。
だからねー、きっと今回の夏休みは100話くらいで収まるんじゃないかしら?と作者は予想しています。
どうかどうか、この予想が当たりますようにー><
あ、ちなみに前話で得たミステリー箱の処遇について。
作者は決して忘れてはいませんよ? ですが、今回の夏休みの予定に終始していて、話の流れ的に捩じ込むことができませんでして(=ω=)
なので、ここ後書きにてこっそり予告。
通称ゴミ箱の開封は『ヴァレリアに会えた時に、転職神殿で皆の前で開ける!』と決めてあります。
当たりとハズレ、悲喜こもごもなゴミ箱開封の儀。そうした喜びや悲しみを分かち合える相手が、ライトにとっては本当に極一部の仲間しかいないんですよねぇ。
なので、これだけたくさんのゴミ箱を手に入れたんだから、皆の前で開けて楽しもう!とライトも思っているのです(^ω^)




