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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ピッカピカの三年生一学期

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第1459話 笹魔人の群れとの闘い

 上空から勢いよく降下し、ササニシキ村に降り立ったライト。

 笹に埋もれた中に、かつて村民が住んでいたであろう民家が半壊状態で何件か残っているのが見える。

 そしてライトが降り立ったのとほぼ同時に、民家の陰から何かが出てきた。

 それは、暗い青色をしたパンダ型魔物の笹魔人だった。


 笹魔人とは、BCOの期間限定イベント『七夕・笹魔人を倒して神寄の短冊を集めよう!』にのみ出てくるイベント専用モンスター。

 体長は4メートルくらいあり、普通のパンダに比べて倍近くの大きさがある。

 そして普通のパンダと最も異なるのが、毛の色。

 普通のパンダは白地に黒の模様だが、笹魔人は黒ではなく濃藍色なのだ。


 だが、この笹魔人がパンダと違う点は他にもある。

 まず、目の瞳孔が赤い。鮮血のように赤い目は、とてもじゃないがつぶらな瞳とは言い難い狂気を孕んでいる。

 そしてその狂気に満ちた目の周りを縁取る模様が蝙蝠の羽に似ていて、それはさながらロックスターの悪魔風凶悪メイクにしか見えない。

 そして額には何故かハートマークが浮かび上がっていて、ハートマークの中に『笹』という白い字が刻印?されている。

 ここら辺はBCO運営お得意のお巫山戯(ふざけ)もとい遊び心溢れるデザインである。


 ライトの背丈の三倍はあろうかという巨大な笹魔人。

 それがどこからともなくわらわらと涌いて、ライトににじり寄る。

 笹魔人はその口に笹を咥えていて、笹には『世界平和』『家庭円満』『学業成就』『千客万来』といった様々な願いを表す四字熟語の短冊が吊るされていた。


 ちなみにこの四字熟語の短冊、周囲に生えている笹にもたくさん吊るされている。

 自然に生える笹にそんなもんが勝手についてくるはずなどないのだが、実はこれも七夕イベント期間中だけの限定仕様。この笹を野生のパンダが食べることで、笹魔人に変貌しているのだ。


 (ライト)を取り囲みながら、短冊付きの笹をバリボリと貪り食い続ける笹魔人。

 そのふてぶてしい態度に、ライトも思わずニヤリ……と不敵な笑みを浮かべる。


「おぉおぉ、相変わらず凶悪な(ツラ)してんなぁ……つーか、願い事を書いた短冊をムシャムシャ食い散らかすの、ホンット罰当たりだよな!お前らのせいで世界平和が壊れたら、どーしてくれんの?」

「……でも、俺は嬉しいよ? BCOのイベント限定モンスターのお前らと、こうしてサイサクス世界で再会できるなんてなぁ……あまりに懐かし過ぎて、ある意味夢みたいで涙が出そうだ。もっとも、お前らの方は俺のことなんざどうでもよさそうだが」


 ライトが話しかけている間も、笹魔人はグルルルㇽㇽㇽ……と唸り声を上げながらじわじわとライトとの距離を詰めてくる。

 ライトの周りには笹魔人が集まり続け、既に数十頭はいると思われる。

 ()る気満々の笹魔人の群れに、ライトは改めて気を引き締めた。


「……まぁいい、ご挨拶はこれくらいにしようか。…………行くぞ!」


 ギロッ!と眼光鋭く笹魔人を睨みつけたライト。

 右手に持ったペコペコハンマーをグッ、と握りしめ、笹魔人の群れの中に飛び込んでいった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そうしてライトが笹魔人の敵陣に飛び込んでから、二時間は経過しただろうか。

 さすがに二時間ぶっ通しでの立ち回りは体力的に厳しいので、三十分戦ったら一旦空中に退いて十分休憩というルーティンを四回繰り返したライト。

 兎にも角にもひたすら笹魔人を祓いに祓い続け、その数は二時間で千体を超えた。


 この七夕イベントの肝は『笹魔人を倒す』のではなく『野生のパンダに取り憑いた非リア充の怨念を祓う』こと。

 つまり、野生のパンダもろともぶった斬って殺すのではなく、笹魔人をペコペコハンマーで叩くことで非リア充の怨念をその身体から引き剥がすのだ。


 ライトがペコペコハンマーを振り回し、笹魔人の身体にペコッ!と情けない音を立てながらヒットすると、その瞬間に笹魔人の身体から青黒い靄が抜け出る。

 この青黒い靄=非リア充の怨念が完全に笹魔人から抜け切れば、お祓いは完了。見た目も身体も普通のパンダに戻る仕組みだ。


 そしてこのペコペコハンマーも、ただ単に笹魔人の身体に当てれば良いというものではない。ハンマーが当たった場所によって、祓える率が変わるのだ。

 例えば腕や足、腹や腰などの如何にも当てやすい場所だと、完全に祓うのに三回から五回は打撃を要する。

 だが、頬や後頭部など首から上にハンマーを当てると二回でお祓い完了になる。

 特に額のハートマークが笹魔人最大の弱点らしく、そこをハンマーの面で叩くとクリティカル判定が出て一発で浄化できるのだ。


 そのことに早々に気づいたライト、なるべく笹魔人の額のハートマークを狙うのだが。毎回毎度そう上手く叩かせてはもらえない。

 身長差もあるし、笹魔人の攻撃を避けながらの一点狙いはなかなかに厳しい。

 ただ、ペコペコハンマーを笹魔人に当てるだけでスキルは一切使わないので、AP消費を気にしなくていいことだけは幸いだ。

 とはいえ振り回して当てるだけでもモンスターへの攻撃判定となるので、ペコペコハンマーを一回振る毎にHP15消費は発生するのだが。


 次々と襲いくる笹魔人を相手にライトが奮闘している傍で、正気に戻ったパンダは我に返ったようにのっそりと歩き戦線離脱していく。

 濃藍色の凶悪なメイクや額のハートマークが消え失せて、身体も普通のパンダのサイズに戻っている。

 そして周囲に生えている笹を無造作に毟り取り、ムシャムシャと食べ始めた。


 すると、正気に戻ったはずのパンダが再び青黒く染まり始めたではないか。

 身体もみるみるうちに大きくなっていき、一本の笹を食べ終える頃にはパンダは再び笹魔人に逆戻りしてしまった。

 この七夕イベントでは、パンダがササニシキ村の短冊付き笹を食べることで笹魔人化し、そのリポップを短冊付き笹が担っているようだ。


 こうして延々と湧き出る笹魔人を祓い続けた結果、ライトが得た『神寄の短冊』は189枚。

 ちなみにこの『神寄の短冊』、笹魔人を倒せば必ずドロップするものではない。

 ライトの体感では、五回に一回出てくればいい方だ。


 笹魔人の身体から追い出した青黒い靄、その中からポロッ、と現れた短冊がふわふわと空中を舞う。

 神寄の短冊が出たら、ライトは脇目も振らず速攻で短冊回収に走る。あまりモタモタしていると、神寄の短冊を笹の葉と勘違いした笹魔人が拾って食べてしまうのだ。

 一度笹魔人に神寄の短冊を食べられた時など、ライトは大声を上げて笹魔人に猛抗議した。


「あ"ーーーッ!それ食っちゃダメだってば!お前らが食っていいのは笹だけなんだぞ!!」

「ほれ、吐き出せ!ペッペッ!」


 もっしゃもっしゃと神寄の短冊を食べる笹魔人に、ライトは抗議の意味を込めてペコペコハンマーで何度も叩きつけた。

 おかげで神寄の短冊を食べた笹魔人は即時祓われ、その身体から出てきた青黒い靄の中から再び神寄の短冊が現れた。


 しかし、出てきたのは一枚だけ。その一枚も、先程食べられたものが返ってきたのか、あるいはそれとは別の短冊がドロップしたものなのか、判別のしようがない。

 いずれにしても、これでは笹魔人を倒す回数が増えて二度手間になってしまう。そのため、これ以降ライトは神寄の短冊がドロップしたらすぐに回収するようになった。


 ササニシキ村上空で、四回目の休憩を取るライト。

 神寄の短冊以外にも時折ドロップするエクスポーションをグビグビと飲みながら、アイテム欄のチェックをしていた。


「二時間バトルして、ゲットした短冊は189枚か……まあまあ取れた方、かな」

「つーか、何気にしんどい……あいつら無限に涌いてくるし、叩いても叩いてもキリがない……」

「一旦家に帰って昼寝しよう……あ、帰る前に瞬間移動用の魔石を設置しとかなきゃな」


 ケプー、とエクスポーションのゲップを吐きながら、ライトは背中に背負っていたアイテムリュックを前に持ってきて瞬間移動用の魔石を取り出す。

 そしてササニシキ村の外れの方、短冊付き笹エリアの端っこの平地に瞬間移動用の魔石を埋め込んだ。

 これでライトは、いつ何時でも心置きなく七夕イベントに挑むことができる。


「よし、これで七夕イベント期間中はいつでもここに来れるぞ!」

「てゆか、今何時だ?…………うッ、もう十二時半回ってんのか、道理で腹も減る訳だ」

「とっととカタポレンの家に帰って、お昼ご飯にしようっと!」


 瞬間移動用の魔石を埋め込んだ後、ライトがマントの内ポケットに入れてあった懐中時計を見ると、時刻は既に午後の十二時半過ぎ。

 きっと今頃ラウルがカタポレンの家でお昼ご飯の支度をして、ライトの帰りを待っていることだろう。

 いっぱい働いた後のラウルのご飯は、いつも以上に美味しく感じるに違いない。

 ライトは先程設置したばかりの瞬間移動用の魔法陣の中に入り、カタポレンの家に移動していった。

 ライトの三つ目のイベント『七夕・笹魔人を倒して神寄の短冊を集めよう!』の概要お披露目回です。

 願い事を書いた短冊ごと貪り食うパンダとか、ホンット罰当たりもいいとこですよねぇ(´^ω^`)


 ちなみに笹魔人の凶悪メイクは、某聖飢魔2や某ロックスターKissのメイクをイメージしています。

 これを文章に起こそうと思ったら『蝙蝠の羽のような悪魔風メイク』としか書きようがないのが何とももどかしいのですが。これって何と表現すればよいのでしょうね?(゜ω゜)

 パンクメイクとか、ヘヴィメタメイク?

 作者はそこら辺あまり詳しくないので、イマイチ分かんない…( ̄ω ̄)…

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