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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ピッカピカの三年生一学期

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1452/1686

第1452話 黄金週間最終日

 ライトが級友達とともに『レインボースライム戦隊ショー』を存分に楽しんだ翌日。

 いよいよ黄金週間九日目にして最終日になった。

 この日は黄金週間の三大イベントの一つ、鑑競祭り第二部がラグナ宮殿迎賓館で行われる。


 鑑競祭りは略称で、正式名称は『世界のお宝発掘!鑑定&競売祭り』という。

 世界中から様々なお宝が集められ、王侯貴族や大富豪、豪商など財力の有り余る者達が挙って参加する盛大なオークションイベント。

 レオニスがラグナロッツァ孤児院の再建資金を得るために、去年初めて出品者側として出場したビッグイベントでもある。


 鑑競祭り第二部の開催は午後一時からで、出品者側はその二時間前に会場入りする。

 レオニスの同伴者は、去年と同じくライト。

 ラグナ宮殿に入る機会自体が滅多にないことだし、ライトには子供のうちからたくさんの経験をさせてやりたい、と思うレオニスの親心である。


 まずラグナ宮殿外周部の正門で身分証を出し、内周部の門でも出し、さらに迎賓館入口でも提示。三度もの身分証提示を経て、ようやく迎賓館に入るライト達。

 迎賓館は、ラグナ大公が住まう中央本殿の真横にある施設。それだけに、出入りする者に対して相変わらずの厳重警備ぶりである。


 迎賓館入口すぐのところでレオニスが武器類を預け、ライトと二人で服装の上からボディチェックを受ける。

 その後ライト達が関係者用の控え室に入ると、ティモシーがすぐにレオニスのもとに駆け寄ってきた。


「レオニスさん、こんにちは!本日もお越しいただき、ありがとうございます!」

「よう、ティモシー。お前さんも忙しそうだな」

「何しろ今日は本番ですからね!あ、レオニスさん、こちらのチケットをどうぞ」

「おう、ありがとう」


 レオニスへの挨拶のあと、ティモシーが二枚のチケットを手渡す。

 それは、鑑競祭りの観覧席に入るためのチケット。

 ここら辺も去年と同じシステムなので、レオニスは迷わずチケットを受け取った。


「チケットの使い方は去年と同じです。観覧席のお好きな位置で、オークションの行く末をご覧ください」

「ありがとう。今年もオークションが盛り上がるといいな」

「はい!ではまた後ほど」

「おう、ティモシーも今日一日頑張れよ」


 他の出品者にも観覧席のチケットを配るべく、ティモシーがペコリ、と一礼しながらライト達のもとを去っていった。

 二人はとりあえず椅子があるテーブルに移動し、レオニスが空間魔法陣から取り出した今日のオークションのプログラム表を眺める。


「今年もレオ兄ちゃんのアレが、最初と最後を飾るんだねー」

「一応目玉商品扱いされてるからなー」

「雷の女王様のが先で、光の女王様のが大トリなんだ。今年は一体いくらになるんだろうね?」

「どうだろうなぁ……去年は二つ合わせて5000万Gになったし、今年もそれくらいはいくんだろうとは思うが。最終的にいくらになるかなんて、全く以って想像もつかん」

「だよねー」


 ヒソヒソと小声で話すライトとレオニス。

 別に悪いことをしている訳ではないのだが、乙女の雫がもたらす金額がデカ過ぎるので自然とヒソヒソ声になってしまうようだ。


 その後控え室にいる全員に出された差し入れの弁当を食べ、オークション開催一時間前に会場のダンスホールに向かったライトとレオニス。

 会場の入口前に行くと、そこには既にたくさんの人達が大行列を成して並んでいた。


「うおッ、これ、今日の入札者達か?」

「何か去年より、かなーり人数増えてない?」

「ああ、間違いなく増えてるな……これじゃ俺達、椅子にすら座れんかもしれんな」

「うはー……」


 メイン会場のダンスホールの扉が開くのを、今か今かと待ち構えている入札者達。

 礼服やドレスを着た立派な身なりの貴族然とした男性女性、たくさんの指輪や腕輪など貴金属をジャラジャラと身につけた如何にもの富豪、要人を警護する騎士や武人、魔法使い、様々な人々が整列して並んでいるではないか。

 予想以上の大盛況ぶりにライト達が呆然と立ち尽くしていると、厳かな装飾の重厚な扉が開かれた。


「……レオ兄ちゃん、一応列の一番後ろに並ぼうか」

「だな」


 気を取り直したライト達、大行列の最後尾に並んで会場入りをする。

 席は前列からどんどん埋まっていき、ライトとレオニスはかろうじて最後尾の列の長椅子に座ることができた。

 ライト達が椅子に座った後も、会場にはどんどん人が入ってくる。

 人の多さに慌てた運営事務局の人間が、別の場所から椅子を運び入れ続けている。


 するとここで、何者かがライト達に声をかけてきた。


「やあ、レオニス君にライト君」


 名前を呼ばれたことに思わず二人が振り返ると、そこにはプロステス領主のアレクシス・ウォーベックがいた。

 アレクシスの後ろには、彼の弟であるクラウス・ウォーベックと二人を護衛する騎士もいる。

 気さくな笑顔で右手をひらひらと振るアレクシスに、ライトが立ち上がって挨拶をする。


「ウォーベック侯爵様、ご無沙汰してます!」

「……お、ウォーベック侯爵じゃないか。久しぶりだな」

「ああ、本当に久しぶりだね。君達に直接会ったのは、去年の夏以来か」

「そうだな、あの時以来か……」


 アレクシスとの久しぶりの再会を喜ぶライト達。

 ライトがアレクシスに向かって改めてペコリ、とお辞儀をしているのを見たレオニス、ライトにつられて自分も立ち上がってアレクシスを迎えている。


 ライト達がアレクシスに会ったのは、昨年の七月下旬。

 その時にライト達が訪れていたのは、炎の洞窟。

 そこで思いがけず守護神の卵を孵化することになり、その結果炎の洞窟に新たな神殿守護神である朱雀が誕生した。

 このことをプロステス領主であるアレクシスに報告するために、領主邸を訪問して以来のことだ。実に九ヶ月ぶりの再会である。


 しかし、その時に本当はそのまま領主邸に一泊するはずだったのに、運悪くカタポレンの森でユグドラツィ襲撃事件が起きてしまった。

 闇の精霊からそのことを聞いたライト達は、取るものもとりあえずカタポレンの森に帰還した。

 頭の中で当時の様々な出来事を振り返りながら、レオニスがアレクシスに向かって謝罪する。


「あん時は緊急事態が起きて、ろくな挨拶もしないまま屋敷を出てっちまってすまなかったな」

「いやいや、何の。君が謝ることではないよ。君は君に任された職務を全うしただけなのだから」

「そう言ってもらえたらありがたい。気が楽になる」


 レオニスの謝罪に、アレクシスが微笑みながら快く許す。

 当時カタポレンの森に何らかの異変が起きたことは、アレクシスもライトとピースからの説明で聞いていたし、何よりカタポレンの森の安寧が脅かされたとあっては一大事。

 何をさて置いてもレオニスが駆けつけなければならない事案であることは、アレクシスも重々承知していた。


 そうして一通りの挨拶が済んだところで、レオニスが改めてアレクシスに問うた。


「何だ、今年も兄弟揃ってオークションの視察か?」

「もちろん。私達は既に欲しいものを手に入れたが、それはそれとして世の経済状況や流行のものなど最先端の知識は常に把握しておくのが領主たる者の務めだからな」

「ええ、兄上の仰る通りです。私自身は領地運営の補佐をする程度ですが、それでもやはり世の流行の何たるかくらいは知っておかねば。でないと社交の場で恥をかくことになりかねませんからね」

「領主や貴族ってのは、何かと大変なもんなんだな……」


 オークション視察に意欲的なウォーベック兄弟に、レオニスがほとほと感心したように呟いている。

 去年のウォーベック兄弟は、レオニスが出品した乙女の雫が炎の女王由来のものではないことを非常に残念がっていた。

 その後アレクシスから直々に『もし炎の女王の雫を手に入れたら、すぐに連絡してくれ!』と頼まれて、その後入手できた【炎の乙女の雫】をアレクシスに譲渡した。

 故にレオニスとしては、二人とももうオークションに来る必要なんてねぇだろうに?と思ったのだが。事はそう簡単なものではないらしい。


 実際この鑑競祭り第二部で取り扱われる品々は、特に貴族の間では格好の話の種になる。

 その証拠に、昨年レオニスが出品した二種類の乙女の雫は、その後しばらくは貴族達の間でも話題沸騰だった。


 ウォーベック兄弟は、二人とも基本的に貴族達の噂話や自慢話などどうでもいいと思っている。だがそれでも、由緒あるウォーベック家の一員として恥をかくような真似はなるべく避けたい。

 そのためには、貴族達の間で話に上るような時事ネタや流行の話くらいはある程度の知識を得ておかなければならない。

 誰かに話を振られた時に対処できないようでは、赤っ恥もいいところだからである。

 もっとも、これら貴族特有の事情などレオニスには全く分からないし、分かりたいとも思わないが。


「つーか、あんた達、このまま立ち見か? 何なら俺達も席を詰めるから、アレクシスとクラウスだけでもここに座るか?」

「ありがたい申し出だが、多少詰めたところで私達二人が座れるほどの余裕はないだろう?」

「いや、何ならライトは俺の膝に抱っこすりゃいいし。ほら、ライト、こっち来て座れ」

「はーい」


 レオニスの指示に、ライトが素直に従いレオニスの膝に移動し、ちょこんと座った。

 身分的に言えば、ライトとレオニスが立ち上がってウォーベック兄弟に席を譲るべきところなのだろう。

 しかし、レオニスは必要以上に貴族に謙ることは絶対にしないので、ここで彼らに席を丸ごと譲る気は毛頭ない。

 それでもウォーベック兄弟は、レオニスが信用できる数少ない貴族の知己。

 せっかくなら席を空けて座らせてやりたい、と思う程度にはウォーベック兄弟のことを友として認めているのだ。


 そんなライト達の気遣いに、アレクシスが嬉しそうに微笑みながら礼を言う。


「気を遣わせてしまってすまないね。せっかくの厚意だ、二人で座らせてもらおうか」

「ええ。レオニス君、ライト君、私達のために席を空けてくれてありがとう」

「どういたしまして!ぼくだって、ハリエットさんにはいつもお世話になってますから!だからお互い様です!」


 クラウスからの礼の言葉に、ライトがニパッ☆と破顔しながら応える。

 ライトの同級生であるハリエットのことを引き合いに出されれば、アレクシス達も頷かざるを得ない。

 レオニスももともと貴族に対して物怖じしないが、その養い子であるライトもレオニス同様全く物怖じしない。

 気難しい偏屈な貴族なら、レオニスはともかくライトの態度に憤慨して突っかかるところだ。


 しかし、ウォーベック兄弟はそんなことで怒るような狭量な人間ではない。

 むしろライトは娘や姪がラグーン学園で懇意にしている大事な友達であり、レオニス同様今後も親交を深めていきたい相手として認識していた。


 ライトを膝に乗せたレオニスが、さらに座る位置をずらして二人分の空きを長椅子の中に作る。

 そこにアレクシスとクラウスが仲良く座った。

 するとここで、会場内にアナウンスが流れた。


『ご来場の皆様、準備はよろしいでしょうか?』

『それでは只今より、競売祭りを開始いたします』


 オークション開始のアナウンスに、それまでざわついていた会場内が一気に静まり返る。

 そうして鑑競祭り第二部が始まっていった。

 いよいよ黄金週間最後の九日目です。

 鑑競祭りの流れは昨年度と変わらない=全く同じなので、大まかな説明のみでだいぶ割愛しています。

 細かい点を読み返したい方は、第566話をチェケラ☆(ゝω・)

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