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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ピッカピカの三年生一学期

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第1449話 スタンプ集めのラストスパート

 ライトの同級生、リリィの実家である向日葵亭で昼食を摂ったライト達。

 リリィの父母であるビリーとシルビィも忙しい中、わざわざライト達のテーブルに来て挨拶をしに来てくれた。

 帰り際にはリリィもライトのところに来て、「明日また会おうね!」と声をかけてくれた。

 もちろんライトも「うん、また明日ね!」と元気よく返し、向日葵亭を後にした。


 気持ち良く食事をした後は、スタンプラリー巡りの再開だ。

 ラグナロッツァで催されているスタンプラリー十ヶ所のうち、八ヶ所は回った。

 残る二ヶ所は南の塔と東の塔。

 先に南の塔を回り、最後に東の塔に向かう。


 そして東の塔のスタンプを無事ゲットした後、四人はラグナロッツァ孤児院に立ち寄った。

 この日、スタンプラリー巡りで東の塔を一番最後にしたのは、その後にラグナロッツァ孤児院にも寄っていきたかったからだった。


 まだ建てられて間もない新しい孤児院から、子供達の賑やかな声が聞こえてくる。

 外庭のブランコで遊んでいる子供達が、ライト達の存在に気づき一目散に駆け寄ってきた。


「冒険者のお兄ちゃんだー!こんにちはー!」

「ラウルの兄ちゃんもいる!こんにちはー!」

「ライト君だー!」


 五歳から十歳くらいの子供達が、嬉しそうな顔でライト達を取り囲む。

 彼ら彼女らは小綺麗な洋服を着ていて、体格も少しふくよかになった気がする。

 衣服類は先日アイギス三姉妹が避難していた時に作ったもので、痩せぎすだった子供達がふくよかになったのはラグナロッツァ孤児院の食事事情が改善された証。

 もとから明るい子供達だったが、新しい環境でのびのびとした生活ができるようになって、さらに活発さを増したようだ。


「お兄ちゃん達、シスターに会いに来たのー?」

「それもあるが、お前らが元気にしてるかどうかも知りたくてな。スタンプラリー回りで東の塔に来たついでに立ち寄ったんだ」

「うん、僕達もシスターマイラも皆元気だよー!」

「そっか、そりゃ良かった」


 ライト達の訪問理由を尋ねる傍ら、年長者の子が「シスターマイラを呼んでくるねー!」と言いつつ孤児院の中に駆け込んでいった。

 一方他の子供達は、ライトやマキシの手を引っ張りながら「新しいお兄ちゃんも、皆いっしょに遊ぼー!」とブランコのある方向に連れていったり、主に女の子達がラウルの顔を見上げながら「ねぇねぇ、今日はお料理教室してくれるのー?」とおねだりしたり、レオニスにも「面白い冒険のお話ししてー!」と迫る。


 今の時刻は午後の三時半を少し回ったところ。

 時間帯で言えばおやつタイムにできないこともないが、ここは孤児院の運営責任者であるマイラの許可を先に取っておいた方が無難だろう。

 そして先程マイラを呼んでくると言って建物の中に入っていった子供が、シスターマイラとともに外に出てきた。

 マイラが満面の笑みでライト達一行を出迎えた。


「おやおや、レオ坊!ライト君にラウルさんも、よく来てくれたねぇ!」

「おう、シスターマイラ、相変わらず元気そうで何よりだ」

「シスターマイラ、久しぶり。すまんが、子供達がおやつを作りたいようだから台所を少し貸してもらえるか?」

「ああ、もちろんいいとも!食材はあまりないが、良ければラウルさんの好きなように使っておくれ」

「ありがとう。じゃ、早速皆で料理をしに行くか」

「「「はーい!」」」


 快く出迎えるマイラに、ラウルが子供達の望みを叶えるべく厨房の使用を願い出る。

 もちろんマイラに否やなどない。

 ラウルの後をついていく子供達に「ラウルさんの言うことをよく聞いて、火の扱いには注意するんだよ!」とだけ声をかけて言い聞かせる。

 その直後にマイラが振り返り、改めてレオニスに声をかけた。


「レオ坊、こんなところで立ち話も何だから、あっちの庭にあるベンチにでも座って話さないかい?」

「そうだな、そうさせてもらおうか」


 マイラの誘いにレオニスも快く応じる。

 外庭にあるベンチなら、ブランコやジャングルジムで遊ぶ子供達のことも見ていられて安心だ。

 春の麗らかな午後の日射しが当たるベンチに、レオニスとマイラが並んで座った。


「シスターマイラ、あれから孤児院の運営の方はどうだ?」

「おかげさまで、完全に途絶えていた貴族からの寄付金も少しづつだけどもらえるようになってね。食べ物に困ることはほとんどなくなったよ」

「そっか、そりゃ良かった。やっぱあの開所式が効いたか」

「多分ね」


 孤児院の運営状況が改善されてきていることに、レオニスも安堵の表情を浮かべる。

 孤児院が旧建物から新しくここに引っ越した際に、開所式と銘打って大々的なお披露目会を行った。

 その賓客はラグナ大公の名代他多数の貴族、ガーディナー組の会長、シスターマイラが所属する修道院組織の総長、そしてラグナ教大教皇と総主教という錚々たる顔ぶれだった。

 この評判はラグナロッツァに住む貴族達の間でまたたく間に広がり、再び孤児院に寄付金を出す貴族が増えたという。


 衣服の問題も先日アイギス三姉妹が子供達の服を大量に作ってくれたことで解決し、衣食住全てにおいて困ることはなくなった。

 レオニスの孤児院に対する恩返しがようやく実を結んだのだ。


 しかし、何故かマイラの顔は晴れない。

 その理由は、マイラの口からすぐに語られた。


「レオ坊……カイちゃん達がうちに避難してた時のこと、聞いたよ。私達が前に住んでいた孤児院の建物内から、化物の巣が出てきたんだってね?」

「ああ、アレのことか。……まぁ、そうだな。隠しても仕方がないから正直に話すが……前の孤児院の中庭にあった大きな岩、あそこから次元の亀裂が発生したんだ」

「何てこと……あの場所に、そんな危険なものが潜んでいたなんて……」


 レオニスの話に、マイラが信じられない、といった表情で俯く。

 自分達が少し前まで住んでいた場所に、そんな物騒なものが潜んでいたと知れば、マイラでなくとも少なからずショックを受けて当然だ。

 そんなマイラに、レオニスが努めて明るい声で励ましの言葉をかける。


「そんなん気にすんな。今はこうして違う場所に引っ越したんだし、あの事件も無事解決してラグナロッツァにもこうして平和が戻ってきただろ?」

「ああ、レオ坊のおかげで私達も無事に生き延びることができたよ。本当にありがとうね」

「あの事件を解決したのは、何も俺一人だけの力じゃないさ。冒険者ギルドや魔術師ギルドに薬師ギルド、皆がラグナロッツァを守ろうと一生懸命頑張り続けたおかげだ。それに―――」

「???」


 何故か突然言い淀むレオニスに、マイラが不思議そうな顔をしながらレオニスを見つめる。

 あの時誰よりも頑張ったのは他ならぬライトで、ライトこそがラグナロッツァを救った真の救世主だという事実。

 しかしその真実は、マイラ相手でも明かすことはできない。

 レオニスは決して口には出せない言葉を飲み込みつつ、それをマイラに悟られないよう笑顔で誤魔化す。


「……あれはもう完全に解決した事件で、もう二度とあんな恐ろしいものは出てこないさ」

「だといいねぇ……ビースリーなんて厄災、二度と御免だよ……」


 目をギュッ……と閉じ、苦悶の表情で言葉を絞り出すマイラ。

 彼女もビースリーがどういうものなのか知っている。

 それはレオニスの父母やアイギス三姉妹から両親を奪った元凶。

 リアクトの街で起きたビースリーにより大量の孤児が生まれ、ディーノ村の孤児院でもたくさんの孤児を受け入れることになった。

 故にマイラにとってもビースリーは最も忌むべき厄災であり、決して対岸の火事ではなかった。


 胸の前で両手を組み、祈るように俯くマイラ。

 背中を丸めながら平穏を祈るマイラの肩に、レオニスがそっと手を置く。


「この世に絶対なんてもんはないが……それでも、俺が生きてる間は絶対に皆を守ると約束する。だから、シスターマイラも安心してくれ」

「……そうだね。レオ坊はこんなに立派な冒険者になったんだものね。レオ坊がいてくれるからこそ、皆安心してここにいられるよ」

「そうそう。それもこれも、全て育ての親の躾が良いおかげだな」


 マイラを励ますためのレオニスの軽口に、思わずマイラが噴き出す。


「ププッ……レオ坊も言うようになったじゃないか」

「育ての親の顔が見てみたいだろう? 何なら手鏡を貸すから、好きなだけ見てくれていいぞ」

「アハハハハ!手鏡を渡されたところで、皺くちゃのお婆ちゃんを眺めるだけじゃないか!そんなの一体何が楽しいってんだい?」


 留まるところを知らないレオニスの軽口に、マイラが堪らず大声で笑い出した。

 沈み込んでいたマイラに笑顔が戻り、レオニスも小さく微笑む。

 するとここで、ラウルとともにおやつ作りをしていた子供達が建物から出てきて大きな声で呼びかけた。


「皆ーーー、今日のおやつができたよーーー!」

「今日のおやつはバニラとチョコのクッキーだよーーー!」

「皆、食堂に来てーーー!」


 料理をしていた女の子達が、ご機嫌な声で外にいる全員に向けて声をかける。

 女の子達のおやつコールに、それまで外で遊んでいた子供達が「わーい!おやつだー!」と大はしゃぎしながらブランコやジャングルジムから離脱していく。


「シスターマイラ、俺達も行くか」

「そうだね、せっかく子供達が作ってくれたおやつだ、私が食べない訳にはいかないね」

「早く行かんと、子供達に全部食われちまうかもな」

「ああ、そうだねぇ、何しろ私が面倒を見る子達は昔から(・・・)食いしん坊揃いだからね!」

「………………」


 ピューッ!と猛ダッシュで食堂に向かう子供達に対し、マイラは「よっこいしょ……」と呟きつつゆっくりとベンチから立ち上がる。

 そんなマイラを軽く揶揄ったつもりのレオニスだが、速攻でマイラの反撃に遭い撃沈していた。

 そんなレオニス達のもとに、子供達と遊んでいたライトとマキシが合流する。


「レオ兄ちゃん、シスターマイラさん、皆でいっしょに行きましょう!」

「ウフフ、ライト君とそっちの君も、うちの子達と遊んでくれてありがとうねぇ」

「いえいえ、ぼくも皆と遊ぶのがすごく楽しいですし!ね、マキシ君!」

「はい!遊具がたくさんあって、良い運動にもなりますし!」

「あれだけ子供達と遊んでいたら、お腹も空くだろう。早いとこおやつを食べに行かないとね」

「「はい!」」


 他の子供達はとっくに建物の中に入り、外にいるのはライトとレオニス、マキシとマイラの四人だけ。

 きっと今頃子供達は、食堂にいるラウルに「全員手を洗ってから着席しろよー」と指導を受けながら、順番に手洗いをしていることだろう。

 ライト達も年老いたマイラを気遣いつつ、四人でゆっくりと食堂に向かっていった。

 黄金週間の四つ目のイベント、『五月病御祓いスタンプラリー』のラストです。

 向日葵亭での昼食や南の塔はサクッと割愛しちゃいましたが。それでも今回のスタンプラリーは前回よりあれこれたくさん書いたというか、関係者の近況をさり気なく捩じ込みまくった気がするー。

 でもってラストは東の塔から新ラグナロッツァ孤児院訪問で締め括り。


 ちなみに作中でマイラがベンチから立ち上がるシーンで「よっこいしょ」と口にしていますが。実は作者も似たようなもんでして。

 椅子から立ち上がったり寝転んでるコタツで起き上がる時など、毎回「あンぎゃぁぁぁぁッ!」「おごごごご……」と気合いを入れないと、なかなか身体が動きませんで。

 ホント、大人になってからというもの運動なんてこれっぽっちもしないもんだから、身体がどんどん重たくなるばかりで(;ω;)

 全くねぇ、人間歳は取りたかねぇですやねぇ(  ̄д)y-~~~ ←非喫煙者

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