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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ピッカピカの三年生一学期

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第1435話 凄まじい魔力の奔流

 クロエが泣き止み笑顔に戻ったところで、レオニスが改めてクロエに声をかけた。


「ココ、そしたらまず俺にだけその目を見せてくれ」

『うん……怖いけど、パパならきっと大丈夫……よね?』

「もちろんだ。パパはな、こう見えて人族の中で一番強いんだぞ?」

『そんなの当たり前よ!だってパパは、ココのパパだもん!』

「だろ?」


 まだ鼻が黒ずんでいるクロエが、ニパッ☆と笑いながらレオニスを見つめる。

 その目は鋼鉄の包帯で隠されているが、きっとその下の瞳はキラキラに輝いているだろう。

 そしてレオニスは、ライト達他の者にも声をかけた。


「まずは俺一人でココの目を見る。皆はココの後ろ側にいてくれ」

「分かった!」

「それからラウル、この瓶はお前に預ける。万が一俺が石化したら、この瓶の中身を俺の頭にゆっくりとかけてくれ。一瓶使い終わる頃には、石化が解除される」

「了解」

「マキシはライトをしっかり掴んでてくれ。間違っても好奇心で覗き込んだりできないようにな」

「分かりました!」


 闇の女王以外の三人に、それぞれ指示を出すレオニス。

 最後のマキシへの指令には、それを聞いたライトが「何ソレ!レオ兄ちゃん、しどい!」とプンスコ怒っている。

 割と本気で憤慨するライトに、マキシが後ろに回り込んでライトの身体を抱っこしつつ「まぁまぁ、ライト君もそんなに怒らないで。レオニスさんがライト君のことを一番に心配している証拠ですよ?」と宥めていた。


 そうして各自配置につき、準備は整った。

 薄暗いリビングの中で、レオニスとクロエが向かい合わせに座り対峙する。

 ライト達はクロエの後ろ側で、結構距離を取って二人をじっと見守っていた。


「……よし、いいぞ。ココ、その仮面を外してくれ」

『…………分かった』


 レオニスが発した合図に、クロエも意を決したようにコクリ、と小さく頷く。

 そしてクロエの目元の鋼鉄の包帯が徐々に薄らいでいく。

 薄らいでから約五秒後には完全に消えて、クロエの五つの目が露わになった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「「「「……ッ!!」」」」


 クロエの目が露わになった瞬間、彼女の全身からとんでもない勢いで魔力が溢れ出した。

 リビング内はものすごい量の魔力で満ち溢れ、ソファやテーブル等の家具類がガタガタと音を立てて揺れ動く。

 クロエが無意識のうちに放つ膨大な魔力の奔流は、レオニスが復元魔法を駆使した時のそれと大差ないくらいに凄まじいものだった。


 しかし、事の中心にいるレオニスとクロエは微動だにしない。

 それはまるで台風の目の中にいるかのようだ。

 実際周りにいるライト達は、魔力の奔流で髪や衣服がバッサバッサと激しく靡いているが、レオニスとクロエは髪がほんの少し揺らいでいるだけ。

 そこだけ見ていると、二人の周りだけ真空空間なのではないか、と思えてくる。

 だがそれは、全くの間違いで―――二人の間では、リビング内に渦巻く莫大な魔力よりもさらに凄まじいことが起きていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 隠されていたクロエの目。

 赤と紫のマーブル模様の虹彩と金色の瞳孔、白目の部分が漆黒の大きくて濡れたような美しい瞳。

 見た者の目を釘付けにして決して離さないクロエの双眸を見た瞬間、レオニスが真っ先に抱いた感想は『何て綺麗な瞳なんだろう』だった。


 しかし、見惚れるような美しさだけでなく、凄まじい威力の圧がレオニスに襲いかかる。

 それはまるで、かつてライトとともに初めて暗黒の洞窟最深部に乗り込んだ時のような、無限に広がる漆黒の闇。

 果てしなく広がる闇の中で、レオニスは自分が海辺の砂浜の砂粒にでもなったかのような錯覚に陥っていた。


 前後左右上下も分からなくなるような、一欠片の光も存在しない巨大な闇。

 するとそこに、ノワール・メデューサの持つ瞳―――赤と紫の虹彩と金色の瞳孔が一つ、また一つと闇の中に浮かんで現れた。

 赤紫と金色の瞳はあっという間に増殖し、レオニスは百以上の目に囲まれた。


 もしこれが常人ならば、その光景のあまりの恐ろしさに即座に気が狂っているところだろう。

 だがレオニスは、この異様な怪異の真っ只中においても動じる気配は全くない。

 何故ならこの莫大な魔力は、全てクロエから発せられたものだからだ。


 レオニスにとってクロエは、血の繋がりこそないが大事に思う愛娘であることに変わりはない。

 その力が如何に強大であろうとも、愛娘の魔力は決して恐怖の対象になることなどなかった。


「こんなにたくさんの魔力を持っているなんて、ココは本当にすげーなぁ」


 レオニスが思わずポロッと本音を漏らしたその瞬間。

 目の前に広がっていた闇が瞬時に消え去った。

 そして気がつけば、レオニスの前に素顔を出したままのクロエがいた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



『パパ……大丈夫……?』


 とても不安そうな小さな声で、レオニスに問いかけるクロエ。

 その声に、我に返ったレオニスが優しい口調で返す。


「ああ。この通り大丈夫だ、何も問題ない」

『本当に? パパは、ココの目を見ても石にならないってこと?』

「そうだ。こうしてココとちゃんと話ができてるし、手だって普通に動くぞ」


 レオニスが右手をゆっくりと伸ばし、クロエの頬をそっと撫でる。

 頬を優しく撫でられたクロエは、レオニスの右手を両手で包み込むように握りしめた。


『……うん、やっぱりパパは世界で一番強くて、優しくて、とっても頼もしいパパね』

「だろう? だってパパはココのパパだからな!」


 五つの目を閉じ、レオニスの大きな手の温かさを感じるクロエ。

 父親(レオニス)の大きな愛に包まれていることを実感し、心から安堵していた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 レオニスとクロエが言葉を交わせるようになった頃には、暴風にも近かったリビング内の魔力の奔流はすっかり収まっていた。

 テーブルやソファはだいぶ揺れ動いて位置がかなりずれていたが、実験前にテーブルの上のものは全て片付けて何も置いていなかったので、特にこれといった被害はない。

 そしてクロエの背後から見えるレオニスが、何事もなくクロエと会話をしている様子にライト達も安堵していた。


「レオ兄ちゃんのあの様子じゃ、ココちゃんの目を直接見ても石化はしなさそうだね……」

「だな。魔力の暴風も収まったことだし、こっちから声をかけてみるか」


 ゴニョゴニョと小声で話していたライトとラウル。

 早速ラウルが先陣切ってレオニスに声をかけた。


「ご主人様よ、その様子だと大丈夫そうだな?」

「ああ。これこの通り、何ともねぇぞ」

「そりゃ良かった。なら、俺達もそっちに行っていいか?」

「ああ。ただし、念の為石化解除用の瓶は誰かに預けてから一人づつ来いよ」

「了解ー。じゃ、まずはライトから行きな」

「うん!」


 レオニスの許可と指示を受けて、ライト、マキシ、ラウルの順にレオニス達のもとに歩いていく。

 ちなみに一番最後のラウルの時は、石化解除アイテム【メデューサの涙】を闇の女王に預けてから移動していた。


「うわぁ……ココちゃんの目、とっても綺麗で可愛いね!」

「ええ、赤と紫と金色がすっごく素敵な色合いですよね!」

「こんな綺麗な目が五つもあるとは、素晴らしいじゃないか。可愛さも五倍、いや、それ以上だ」


 クロエの前に回り込み、クロエの素顔を直視したライト達。

 目を大きく見張りながら感嘆するライトとマキシに、ラウルまでもが手放しで大絶賛している。

 ちなみにこの時は、先程のような激しい魔力の奔流が起きることはなかった。

 それは、既にレオニスの例を通して無事だったことを確認できたクロエの精神状態が安定したからに他ならない。


 そして、ライト達の言葉に嘘偽りは微塵もない。

 ライトは目を輝かせながら褒め称えているし、ラウルとマキシはそもそも嘘がつけない。

 彼らの心からの賛辞に、クロエが照れ臭そうに両手で顔を覆い隠す。


『ぃゃーン……皆にそんなに見つめられたら、ココ、恥ずかしーい……』

「そんな、照れることないよ!ココちゃんの綺麗な目を見ることができて、ぼく、すっごく嬉しい!」

「そうですよ!これも全て、ココちゃんが僕達に加護を与えてくれたおかげですね!ココちゃん、本当にありがとう!」

『えへへ……ライトお兄ちゃん達にもそう言ってもらえて、ココもすっごく嬉しい!』


 ライトとマキシの言葉に、クロエがニパッ☆とした笑顔になる。

 ただし、五つの目は既に鋼鉄の包帯で再び覆い隠されていた。

 そして満面の笑みのクロエの後ろに、今度は闇の女王が来てクロエの両肩に手を置きながら話しかけた。


『ココ様、皆にココ様の素顔を見てもらうことができて、本当に良うございましたな』

『うん!ママも見守っててくれてありがとう!』

『どういたしまして。ただし……ココ様の素顔を安心して見せられるのは、今ここにいる者達のみですぞ? それ以外の者には、決して見せてはなりませぬ』

『もちろん分かってるわ!』

『ただし、ココ様を害し仇なす不届者は例外ですが』


 クロエの持つ石化能力の検証、それが無事完了したことを労う闇の女王。

 そのついでに今後の力の扱い方もさり気なく添えるあたり、さすがは母親役を務めるだけのことはある。

 敵対する者に対しては容赦なく誅してもいいが、それでも決して(みだ)りにその力を濫用してはいけない。

 そうした心得を説く闇の女王に、クロエがクスクスと笑いながら応える。


『ウフフ、でもそれはココだけじゃなくて、パパやママ、お兄ちゃん達にも当て嵌めていいよね?』

『……そうですな。ココ様が家族と思う大事な者達を攻撃する輩に対しては、成敗も止む無しですな』

『だよね!』


 クロエの確認に、闇の女王も頷きつつ同意する。

『目には目を、歯には歯を』ではないが、悪意を向けられたら返すのは当然のこと。

 もしそれまで止められたらどうしよう?というクロエの心配は、杞憂だったようだ。


 するとここで、二階で寝ていた八咫烏母娘達が慌てて一階に下りてきた。


「い、一体何事が起きたのですか!?」

「今、すっごい揺れと膨大な魔力が噴き出してきてましたよね!?」

「敵襲ですか!? 我らも戦います!」


 泡を食ったように慌てふためくアラエル、ムニン、トリス。

 ミサキだけがいないが、実はこの時ミサキはぐっすり熟睡していて、あの膨大な魔力の奔流にも全く気づかす起きなかったらしい。

 さすがはミサキ、いつ何時においても期待を裏切らない大物ぶりである。


 慌てて飛び起きてきたアラエル達三羽に、レオニスが申し訳なさそうに話しかける。


「ぁー、ぃゃ、さっきのは敵襲とはではないんだ。だから大丈夫、心配は要らない」

「……ぇ? ならばあの凄まじい魔力は、一体何だったのですか?」

「あれは、ココの魔力だ。ココの素顔を見たらどうなるのかを、皆で試してみていたんだ」

「ココ様の……ぁぁ、そういうことですか……」


 レオニスが語る思いがけない理由に、アラエル達がすっかり拍子抜けしている。

 しかし、先程起きた凄まじい魔力の奔流は、アラエル達が『すわ、敵襲か!?』と身構えるのも無理はない。

 ヘロヘロと力無く座り込んだ八咫烏母娘達に、クロエが慌てて駆け寄った。


『皆、気持ち良く眠っていたのに、ココのせいで起こしちゃってごめんなさい!』

「いえいえ、ココ様のせいではございませんから、謝らないでくださいまし」

「そうですとも。敵襲でないなら、何の問題もございません」

「これでまた安心して寝れるというもの。どうかココ様もお気になさらず」


 クロエに気を遣い、懸命にクロエを宥める八咫烏母娘達。

 そんな心優しい八咫烏達に、それまで申し訳なさそうに謝っていたクロエが明るい声で話しかける。


『皆、ありがとう。じゃあ、今からココも二階に行くから、皆でいっしょに寝よう♪』

「まぁ、よろしいのですか?」

『うん!パパ、ママ、いいよね?』


 八咫烏達といっしょに寝る!と言い出したクロエ。

 クルッ!と後ろを振り返り、レオニス達の許可を得るべくキラッキラの顔で父母を見つめている。


「もちろんいいとも。そしたら、ココが気に入ったこのクッションを、二階に持っていってやろう」

『ありがとう、パパ!そしたらパパもママもお兄ちゃん達も、皆でいっしょに上で寝ようよ!』

『そうですな。吾はともかく、人族はもうとっくに寝付いてもよい時間ですからな』

「よし、そしたらここにあるクッションを全部二階に持っていくか。ライト、ラウル、マキシ、手伝ってくれるよな?」

「もちろん!」

「了解」

「分かりました!」


 クロエや八咫烏母娘達だけでなく、今ここにいる全員でいっしょに二階で寝たい!というクロエの願いに、闇の女王も同意する。

 その後ライト達が人をダメにするクッション四つを全て二階に持っていき、先程までアラエル達が寝ていた部屋に入る。

 四つのクッションには、クロエ&闇の女王、ライト&マキシ、レオニス&ラーデ、ラウルの四組で使い、皆で朝まで眠りについた。

 いよいよクロエの石化能力検証です。

 かつて第1200話では『ライトやレオニスがクロエの本当の顔を見ることは一生ないだろう。』と書きましたが。ここ最近の話の流れで、それが白紙に……


 でもまぁね、クロエはレオニスをパパ、ライトをお兄ちゃんと慕っていて家族同然の子ですし。

 ここは重大な苦難を乗り越えてこそ、家族の絆をより一層深められるでしょう!と早々に宗旨変えした作者。

 言ってみれば、ライトの重大な秘密、勇者候補生の件がレオニス達にバレたのと似たようなもんですね!(・∀・) ←適当


 でもって、ついでに第1200話で予言していたライトとレオニスの兄バカ親バカも実現させちゃったりして。

 そう、クロエのことを妹&娘として愛して止まない彼らが、彼女の目が五つや百個あったところで褒め称えこそすれ忌避するはずがないのです。

 それを身を以って知ったクロエも、さぞ大喜びでしょう。

 『雨降って地固まる』とはまさにこのことですね( ´ω` )

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