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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ピッカピカの三年生一学期

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1406/1686

第1406話 珍しい来客達

 黄金週間突入前日の金曜日。

 ライトはラグーン学園での授業が終わった後、急いでラグナロッツァの屋敷に戻っていた。

 この日、この屋敷にしては珍しく客を迎え入れる予定があるためだ。


 玄関の扉を勢いよく開け、屋敷の中にそのまま駆け込むライト。

 入り様に大きな声でラウルを呼んだ。


「ただいまー!ラウル、皆来てるー!?」

「おかえりー。おう、ウィカに頼んでちゃんと皆を迎えに行って連れてきたぞ」


 ライトの帰宅を出迎えるために、どこからともなくフッ……と現れたラウル。

 それから数瞬後に、ライトの帰宅の挨拶に負けないくらいに元気な声が飛んできた。


「ライトちゃーーーん!お久しぶりーーーッ!」

「ミサキちゃん!ホントに久しぶりだねー!」


 ライトの胸元に、バフンッ!と勢いよく飛び込んできた黒い塊。むっちりムチムチまん丸のカラス、マキシの双子の妹ミサキである。

 そのミサキの後ろにも、三羽の八咫烏がついてきていた。

 ライトはミサキを抱っこしながら、来客達にも挨拶をした。


「アラエルさん、ムニンさん、トリスさん、こんにちは!」

「ライト君、こんにちは。ご無沙汰してるわね」

「ライト殿、お久しぶりです」

「此度もお世話になります!」


 ライトの挨拶に、親しみを込めながら返すアラエル、礼儀正しく頭を下げるムニンにトリス。相変わらず生真面目な八咫烏の女衆である。

 そんなアラエル達に、ライトが改めて声をかける。


「ぼくもすぐに着替えてきますので、皆さんも客間でゆっくりしててください!ラウル、お客様の接待をよろしくね」

「おう、任せとけ。じゃ、皆でのんびりおやつタイムにするか」

「おやつ!ラウルちゃんの美味しいおやつを食べられるのね!ヤッター♪」

「フフフ、ミサキったら本当にラウルさんのお料理が好きねぇ。私も大好きだけど」

「私もラウル殿の作るおやつは絶品だと思います!」

「ええ、あのように甘美なものはそうそうお目にかかれないですよね!」


 ラウルの『おやつタイム』という言葉を聞き、ミサキがライトの胸元から離れて文字通り飛び上がって喜んでいる。

 無邪気な末娘のはしゃぐ姿を見て、母は微笑み二羽の姉はうんうん!と大きく頷きながら同意している。

 八咫烏の女衆全員に大絶賛されたラウルは、クールな表情を崩さずに応える。


「お褒めに与り光栄だ。さ、そしたら皆で先に客間に行こうか」

「はーい!」「ええ」「「はい!」」


 ラウルはミサキ達とともに客間に移動し、ライトは急いで二階の自室に向かって駆け出していった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そうして客間に移動し、皆でのんびりとおやつをつまみながら話す。

 ライトはリニューアルアップルパイを食べ、ミサキ達八咫烏はヴァイキング道場秘伝のたまごボーロを、それぞれ美味しそうに啄んでいる。

 ちなみにアラエルやムニン、トリスはソファにちょこん、とおとなしく座っているが、ミサキだけはラウルの膝に座っていた。


「アラエルさんやムニンさんはこないだ会ったけど、ミサキちゃんに会うのはホントに久しぶりだねー。去年の夏に会って以来?」

「そうねー。母様や姉様は、ツィちゃんや天空樹様の危機の時に駆けつけたけど……ワタシはシアちゃんといっしょに、お留守番してたから……」


 話の流れでしょんぼりとしてしまったミサキ。

 実際ミサキの言う通りで、ライト達は過去二度に渡る神樹族の危機に際して八咫烏達の助力を得たが、その両方ともミサキは参戦していない。

 それは、姉妹の危機に動揺し不安に揺れる大神樹ユグドラシアの傍に付き添い励ますという重要な役目を、ミサキに託したからである。

 そのことをライト達は声高に強調して、しょんぼりとするミサキを懸命に励ました。


「ミサキちゃん、それだって立派な仕事だよ!シアちゃんの妹やお姉さんが危険な目に遭ってたら、シアちゃんだってものすごく心配して不安になってたでしょ? そんな時にミサキちゃんが傍にいてくれたら、シアちゃんだってすっごく心強かったと思うよ!」

「そうよ。強い不安に駆られるシア様を、傍でしっかりと支えて差し上げられるのはミサキ、貴女にしかできないことなのよ」

「ライト殿や母様の仰る通りよ。戦いだけなら私達でもできることだけど、何も戦いの最前線にいることだけが偉い訳ではないわ」

「ミサキ、貴女だって私達とともに戦っていてくれたわ。もっと自分の働きに自信を持ちなさい」

「そ、そうかな? ……えへへへ、皆にそう言われると何だか照れ臭いね……」


 ライト達の嘘偽りない心からの励ましに、ミサキが照れ臭そうにはにかむ。

 そんなミサキに、ミサキを膝に座らせていたラウルが彼女の頭を優しく撫でた。


「ミサキちゃん、ライト達の言う通りだぞ。皆ミサキちゃんの頑張りをちゃんと見てるから。むしろミサキちゃんは、自分に託された役割を誇るべきだ。シアちゃんの傍にいるってことは、ミサキちゃんはシアちゃんからの信頼を一番得ているってことなんだからな」

「……うん!ラウルちゃんもありがとう!」


 静かに語るラウルの言葉に、ミサキも次第に輝きを取り戻していく。

 これまでミサキが戦場についていくことを許されなかったのは、何も『末娘で他の兄弟姉妹より力も弱くて危険だから』という戦力的な理由だけではない。

 戦力云々以上に、大神樹ユグドラシアの傍で彼女の精神的な支えとなる役割の方が大事だからだ。

 そのことの大切さを皆に諭され、己の力不足を嘆き沈んでいたミサキも嬉しそうに微笑む。


 するとここで、ふとラウルが玄関ホールの方に顔を向けた。


「お、マキシも帰ってきたようだぞ」

「え、マキシ兄ちゃんが帰ってきたの!? ワタシ、玄関にお迎えに行ってくるね!」

「おう、いってらー」


 ラウルの言葉にミサキがいち早く反応し、ラウルの膝から離れてパタパタと飛んでいった。

 その後程なくして、ミサキを抱っこしたマキシが客間に戻ってきた。


「ライト君、ラウル、ただいまでーす」

「おう、おかえりー」

「マキシ君、おかえりー!今日は早くにお仕事終わったんだね!」

「はい!今日は僕の家族がこっちに来ると聞いたカイさん達が、早めにお店を閉めてくれまして」

「そっかそっか、アラエルさん達もこっちにいるよ!」


 マキシの帰宅を快く迎えるライトやラウルに、母アラエルや二羽の姉達もそれぞれマキシに近寄り声をかける。


「マキシ、おかえりなさい。お仕事お疲れさまね」

「マキシ、久しぶりね!」

「今日から皆でお世話になるわ。よろしくね!」

「母様も姉様達もお久しぶりです!皆元気そうで何よりです!」


 人化したままのマキシに、アラエルやムニン、トリスが嬉しそうにマキシの周りをパタパタと飛んでいる。

 もちろんマキシも母や二羽の姉、そして双子の妹に会えてとても嬉しそうだ。

 するとここで、マキシがアラエル達にとある提案をした。


「母様、姉様、ミサキ、今から僕が働くお店、アイギスに行きましょう」

「え? お店はもう閉めたんじゃないの?」

「それがね、今日ミサキ達がこのラグナロッツァに来た理由をカイさん達に話したら、『是非私達にもお手伝いさせて!』って言ってくださったんだ」

「まあ!アイギスというと、私達が以前人里見学に来た時に見せてもらったマキシのお勤めするお店よね!?」

「あの時にお会いした素敵な三姉妹にお会いできるなら、是非とも私もお願いしたいわ!」


 マキシの提案に、きょとんとするミサキ。

 一方でムニンとトリスは、アイギス三姉妹との再会に乗り気のようだ。

 というのも、ムニンとトリスは人里見学と称してラグナロッツァに来た際に、マキシの職場見学も兼ねてアイギスを訪れていた。

 その時に体験した様々な出来事、そして大きく感動したことを二羽は今でも鮮明に覚えていた。

 ちなみにアラエルも、ムニン達の話を聞いて「まあ、マキシの勤めるお店を見に行けるの? それはいいわね!」と娘達以上に大乗り気である。


 ちなみにカイ達が『お手伝いさせて!』と申し出たのは、アラエル達の今回のラグナロッツァ訪問目的に大いに関係がある。

 それは、彼女達が人化した時に着る衣服を調達するためだ。


 ミサキ達が人化の術の習得に励むようになってから、早くも一年が経過する。

 二羽づつ四組に分けて人里見学を実施したので、習得時期はそれぞれ異なるが、マキシの家族は皆一通り人化の術を会得した。

 そうすると、次の課題は衣服問題だ。


 今のところ男衆は全身黒タイツ状で、女衆は黒いキャミソールワンピースやドレス風に変身している。これは、八咫烏の黒い羽根を活かした姿だ。

 しかし、その格好のままでは人里を歩くことなど到底できない。目立つこと請け合いだし、男衆に至っては不審者としてあちこちから通報されかねない。


 ただし、男衆ならレオニスやラウルから衣服を融通してもらうことができる。レオニス達のお下がりはもちろんのこと、人化した八咫烏達の体格に合わせてレオニスやラウルが市販の服を調達することだって可能だ。

 そう、ここで一番問題となるのは『ライト達だけでは、女性用の服が満足に用意できない!』ということだった。

 そのため、ライト達が黄金週間という長期休暇の間に八咫烏の女性陣全員にラグナロッツァに来てもらい、それぞれに見合った衣服を用意しよう!というのが、今回アラエル達をラグナロッツァに招いた理由である。


 そしてこのことをマキシがカイ達に何の気なしに話したら、アイギス三姉妹が目を輝かせて協力を申し出た。

 しかし、マキシとしてはそんなつもりなど全くなく、大慌てで断ろうとした。

 何故ならアイギスは超一流ブティックであり、マキシが働いてもらう月給では一着のワンピースすら買うことができない。下手をすれば、カイ達のアドバイス料だけで月給が吹っ飛びそうだ。


 だが、アイギス三姉妹も引かない。

 皆それぞれに「別にお金なんか取らないから、安心して?」「そうよそうよ!うちでいつも作っているような貴族向けのドレスなんて絶対に勧めないし!」「ていうか、お母さんやお姉さん達のスリーサイズだけでも計っておけば、後でマキシ君一人でも服を選んでお母さん達に渡すことができるでしょ?」等々、怒涛の勢いでマキシを説得し始めたではないか。

 マキシも決してその勢いに負けた訳ではないが、最後のメイの言葉(スリーサイズだけでも計って云々)はマキシ自身も納得できたので、最終的にはアイギス三姉妹の厚意に甘えることにしたのである。


 マキシはこれらの経緯をライト達に語って聞かせた。

 すると、ライトが真っ先に動き始めた。


「カイさん達がそう言ってくれたんだったら、ここは是非ともお言葉に甘えなくちゃね!」

「そうだな。俺達じゃアラエルさん達のスリーサイズを正確に計るなんてできないからな」

「そうそう、ここはプロフェッショナルな職人さんにやってもらうのが一番だよね!」


 ライトの言葉に、ラウルもすぐに同意する。

 そしてラウルがマキシに向かって話しかけた。


「なら、マキシはアラエルさん達を連れてアイギスに行ってきな。俺はその間に、皆を歓迎するため晩御飯の支度をしてるから。ライトはどうする?」

「ぼくはねぇ、ラグーン学園の宿題が結構出てるから、今のうちにそれをできるだけこなしておきないな!」

「そっか、宿題があるなら早くにやっちまった方がいいな。マキシもそれでいいか?」

「うん!晩御飯になるまでには帰ってくるよ!そしたら母様、ムニン姉様、トリス姉様、ミサキ、アイギスに行きましょう!」

「「「ええ!」」」「うん!」


 マキシの言葉に、アラエル達四羽がすぐに文鳥サイズに変化した。

 彼女達も人里に出た経験があるので、人目がある街中に出る時には怪しまれない文鳥サイズになる!ということをちゃんと熟知しているのだ。


 時刻は午後四時半少し前。晩御飯前にアイギスを訪ねるには、まだ十分な時間がある。

 マキシは両肩に二羽づつの文鳥もどきを乗せてアイギスに向かい、ラウルはアラエル達の歓迎会用意のために厨房に行き、ライトは黄金週間中の宿題を済ますべく二階の自室に向かっていった。

 黄金週間突入直前の、八咫烏女衆達の来訪です。

 去年の黄金週間中に何をしていたかを改めて振り返ると、八咫烏初の人里見学第一弾としてミサキ&アラエルの母子がラグナロッツァを訪れていたんですよねー(・∀・)


 マキシの家族達の人化の術会得は順調に進んでいますが、ここではたと作者が思ったのは、作中でも説明したように『このままでは、女物の服が調達できん!』ということ。

 まさかねぇ、ライトやレオニスに女物の服を買わせる訳にはイカンザキというか、彼らが適切なものを選べるはずもなし。

 えぇえぇ、普段から拙作には女っ気がほとんどないことをね、今回ほど作者は痛感&悔いたことはございませんですよ_| ̄|●


 しかーし!拙作には超一流ブティックを経営する三姉妹がいるではないか!(º∀º)

  ↓

 あ、でも、アイギス三姉妹は黄金週間中はバカンスにお出かけする習慣があったっけ…( ̄ω ̄)…

  ↓

 なら、黄金週間突入直前の前日に捩じ込んでしまえばいいじゃなーい!(º∀º) ←今ココ


 そんな訳で。黄金週間中の初イベントは八咫烏女衆達の来訪に決定☆(ゝω・)

 マキシも普段は家族と離れて暮らしているので、かーちゃんやねーちゃん、双子の妹と久しぶりにのんびりと会えて喜んでいることでしょう( ´ω` )

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