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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ピッカピカの三年生一学期

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1394/1686

第1394話 中級精霊からの伝言

 ライトが平穏な平日を過ごしていた、とある日のラウル。

 その日も彼は、午後から様々な料理の下拵えをしていた。


 最近のラウルは、午前中にカタポレンの畑で巨大野菜や巨大林檎の収穫、殻焼きや肥料の漉き込みなど畑の手入れをこなし、午後はラグナロッツァの屋敷で料理に勤しむのが一日の基本的な流れとなっている。

 たまに午後にエンデアンやツェリザーク、ネツァクなどに出かけ、各街の常時依頼である殻処理依頼をこなしたりもするが、それも週一程度の頻度。

 晩御飯前まで料理作りをし、晩御飯後も二階の作業部屋で殻割り作業をこなしたり、大好きな料理三昧に明け暮れる日々である。


 ちなみにレオニス邸の執事としての本業、屋敷の各部屋の掃除や空気の入れ替え、シーツ、カーテン等の洗濯、ガラス温室以外の庭の手入れなどの家事関連の仕事は、多くても一日十分程度。

 レオニス邸には来客などほとんど来ないので、その手の手入れも毎日なんてしなくていいためだ。

 おかげでラウルは、空いた時間に好きなだけ料理に打ち込める。何とも本末転倒ではあるが、これ程ラウルにとって都合の良いホワイトな職場もそうあるまい。


 そしてこの日のラウルは、午後から砂漠蟹の下拵えをしていた。

 オリハルコン包丁で捌いたサンドキャンサーを茹でるべく、巨大寸胴に水を張って湯を沸かす。

 すると、巨大寸胴を沸かしていたコンロの火から、ふわり……と何かが飛び出してきた。

 それは炎の精霊だった。


『ラウル、コンニチハ』

「お、炎の精霊か、久しぶりだな」

『元気ニ、シテタ?』

「おう、おかげさまでな、ご主人様達ともども元気に過ごしてるぞ」

『ソッカ、ソレハ、良カッタ』


 ラウルと親しげに話す火の精霊。

 体長と話し方からするに、中級精霊と思われる。

 ラウルが炎の女王と火の女王から加護をもらって以降、時折こうして炎の精霊や火の精霊が調理中のコンロの火から出てきて、他愛もない話をしては再び火の中に消えていくようになった。

 それ以外特に何をする訳でもないのだが、きっと話好きな精霊なのだろう。

 しかし、この日の炎の精霊は違った。


『ラウル、今日ハネ、炎ノ女王様カラノ、オ言葉ヲ、伝エニ、来タノ』

「ン? そうなのか? 炎の女王は何て言ってたんだ?」

『皆、ソロソロ、炎ノ洞窟ニ、遊ビニ、来テクレテモ、イイノヨ? ダッテ』

「ククッ……そうか、ならうちのご主人様達にもそう伝えておこう」

『オ願イネ!』


 炎の女王からの伝言と言うから何事か、と思いきや、何とも可愛らしい要望が出てきたではないか。

 身構えていたラウルも思わず気が抜けて、笑いが込み上げている。

 一方の炎の精霊は、ちゃんとお遣いができたことに満足そうに笑いながら、寸胴の下の火の中に再び入っていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 その日の夜、ラウル達とご飯を食べにラグナロッツァの屋敷に来たライトとレオニスに、ラウルが火の精霊からの伝言を伝えた。


「……ああ、そういや今日はご主人様達に伝言を預ってたんだ」

「ン? 伝言? 誰からだ?」

「炎の女王。うちの厨房の火を通って、たまに火の精霊が出てくるんだ」

「そうなのか!? ……って、ラウル、炎の精霊にいたずらとかされてねぇだろうな?」

「されてねぇよ。もしそんなんされてたら、この屋敷なんざ今頃とっくに灰になってるわ」

「だよな……ならいいが」


 ラウルの話にびっくりして問い質すレオニス。

 確かに精霊はいたずら好きの者も多く、地底世界行きの最中にラウルが闇の精霊に目隠しされたこともある。

 レオニスはそれを心配したのだが、さすがに火の精霊や炎の精霊がいたずらをすることはないという。


 実際火の精霊や炎の精霊がいたずらだのちょっかいだの出し始めたら、それこそ洒落にならない。

 精霊達には気軽ないたずらでも、火を操る精霊がそれをしたらあちこちで物が燃えたり、最悪の場合は家が全焼などという目も当てられない事態になる。

 そこら辺は炎の女王や火の女王の教育が行き届いているのか、兎にも角にも伝言役の火の精霊がいたずら好きではない性格で幸いである。


「……で、何だっけ? 炎の女王の伝言というのは、一体何だったんだ?」

「炎の精霊によると『そろそろ皆で炎の洞窟に遊びに来てくれてもいいのよ?』ということらしい」

「ぁー、まぁなぁ……炎の洞窟には、今年の正月明けに行ったきりだしなぁ」

「そうなんだよな。俺も朱雀の成長とか気になるし、炎の女王や炎の精霊が言うようにそろそろ様子を見に行ってもいいとは思う」


 炎の女王からの伝言を聞いたレオニスが、上目遣いになりながら思案している。

 もちろんラウルも炎の洞窟行きには賛成だ。

 そしてここで、ライトも明るい声で話に加わってきた。


「てゆか、こないだようやく全ての女王様に会えたんだから、炎の女王様にもその報告をしなくちゃ!」

「そうだな……もともと属性の女王達の無事や生存を確認してくれって依頼をしてきたのは、炎の女王だったもんな。だったら依頼主にも、そのことをきちんと報告しなきゃな」

「そそそ、そゆこと!」


 ライトの言葉に、レオニスも大きく頷きながら納得している。

 冒険者は、任務を引き受けたり指名依頼されたらその遂行に努め、依頼を達成したらそれを依頼主に報告しなければならない。

 炎の女王からの依頼は、冒険者ギルドを通しての正式な依頼ではないが、それでもライトとレオニスが炎の女王から直接依頼されて引き受けた仕事だ。

 その仕事が一年がかりで完了したのだから、依頼主である炎の女王にその旨を伝えるのが筋というものである。


「よし、じゃあ今度の週末は三人で炎の洞窟に行くか」

「賛成ー!ラウルもいっしょに行こうね!」

「もちろんだ。プロステスに行くなら、ついでにパイア肉も仕入れてこよう」

「ラウル……こないだのケセドの朝市と言い、お前って食材のことに関しては本当に余念がないよね……」

「お褒めに与り光栄だ」


 レオニスの決定に、ライトが両手を上げて大喜びしている。

 そしてラウルはラウルで、『炎の洞窟に行く=プロステスに行く』という必然の図式から『プロステス=パイア肉を仕入れることができる!』と判断したようだ。

 そのことにレオニスが呆れながらツッコミを入れるも、ラウルがそれに動じることはない。むしろ褒められた!と思っている有り様だ。

 レオニスの言うように、相変わらずちゃっかりとした図太い妖精である。


「じゃ、土曜日の朝イチでプロステスに行くか。でもって、せっかくだからエリトナ山の火の女王にも会いに行こう。炎の女王もきっとそれを望んでいるだろうし」

「賛成ー!」


 炎の洞窟だけでなく、エリトナ山にも行こうと言うレオニスの提案に、ライトがますます大喜びしている。

 こうしてライト達の次の週末は、炎の洞窟とエリトナ山に行くことが決定したのだった。

 主にラウルの平穏な一日の様子です。

 ラウルがレオニス邸でこなす仕事、家事関連は基本的にメイドや使用人が行うもののはずなのですが。レオニス邸の使用人はラウル一人きりなので、そこら辺も全部執事であるラウルの仕事となっています。

 ……とか言いつつ、掃除とかやらなきゃならないことが一日十分程度で済んで、他の時間全部を好きなこと=料理に費やすとか、ホンットサイサクス世界で一番ホワイトな職場よね!( ゜д゜)


 しかし、その好きなことの成果=様々なスイーツや美味しいご馳走が、ライトやレオニスの活動に大きな恩恵をもたらしているのもまた事実。

 ラウルは好き勝手なことをしているように見えて、実はライトもレオニスもそれに大いに助けられているのです(^ω^)

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