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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ピッカピカの三年生一学期

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第1392話 サプライズゲストの登場

『ねぇ、外もまだ明るいことだし、辻風神殿の中で皆でお茶しない?』

「お、それいいな、俺達も小一時間飛んだから小腹が空いてきたし」

「ちょうどおやつタイムだもんね!」


 アクアをゲストに迎えた風の女王が、皆でお茶をすることを提案する。

 確かにゼスもアクアももう少しゆっくりと話をしたいだろう。

 ここで立ち話を続けるのも何だし、今の時刻も午後三時半。一時間くらい休憩していっても全く問題はない。


 するとここで、アクアがライトに話しかけた。


『ライト君、僕はちょっとだけ席を外すから、皆で先に神殿の中に入っててくれる?』

「ン? アクア、どうしたの? どこか行くの?」

『ンーとねぇ、耳を貸してくれる?』

「???」


 少し席を外すというアクア、ライトにゴニョゴニョと耳打ちをしている。

 そのナイショ話を聞いたライトは、パァッ!と明るい顔になりながら答えた。


「そういうことね、分かったよ!」

『すぐに帰ってくるから、よろしくね』

「うん!」


 アクアはそのまま川に飛び込み、ライトは辻風神殿の入口付近でアクアの帰りを待つことにした。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 辻風神殿の中に入り、早速レオニスとラウルが空間魔法陣を開いてお茶会の準備を始めた。

 レオニスがテーブルや椅子を出しながら、ラウルと会話をしている。


「ンー、このテーブル類はこのまま辻風神殿に置いておくかなー。神殿の中なら雨風凌げて風化しづらいだろうし」

「それがいいかもな。俺達がいない時でも、バルトと風の女王が普段使いしてもいいし」

「だよなー。そしたら暗黒の洞窟やジャッジ・ガベルんとこにも、同じようにテーブルセットを置いておくようにするか」

「テーブル類を置きっぱなしにできる場所なら、それもいいだろうな。……そしたら食器棚も置くべきか?」

「いや、さすがに食器棚までは要らないんじゃね? お茶会で使ったカップや皿を、女王や神殿守護神達が洗ったり片付けて仕舞う訳ねぇだろ」

「それもそうか」


 そんなのんびりとした会話をしつつ、テキパキと支度を整えるレオニスとラウル。

 一方ゼスと風の女王は、レオニス達の支度をおとなしく待っていたが、アクアとライトがついてきていないことに気がついた。


『あら? ライトとアクア様はどうしたのかしら?』

『おトイレにでも行っているとか?』

『あー、そうかもー。ワタシ達は何かを食べても全部魔力に変換しちゃうから、どれだけ食べても何も出ないけど。人族は食べたものの半分くらいは外に出しちゃうし』

『人族って、何かと大変だねぇ』

『そうですねー』


 ライト達が不在の理由をトイレと推察するゼスに、風の女王もうんうん、と頷きながら同意する。

 トイレになど行っていないライトにしてみれば、甚だ不本意な誤解である。

 するとここで、ライトが辻風神殿の入口から入ってきて風の女王に声をかけた。


「風の女王様ー、すみませんがこっちに来てもらえますかー?」

『?????』


 ライトのお呼びに、それまでゼスとともに床にぺたんこ座りしていた風の女王が徐に立ち上がり、ふよふよと入口に向かって飛んでいく。

 その間に今度はアクアが現れて、その大きな身体を小さくしてから『お邪魔しまーす』と言いつつ辻風神殿の中に入る。

 そしてアクアの後ろには、何と水の女王がいた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



『風の女王ちゃーーーん!』

『え"ッ!? ……水のお姉ちゃん!?』

『初めましてー!そうよ、私が水の女王よ!』


 アクアの背中からヒョコッ☆と顔を出した水の女王。

 それを見た風の女王が、息を呑みながらふるふると震える両手で口を抑えている。

 誰に言われずとも、それが水の女王であることがすぐに分かる。

 そして、今ここで水の女王に逢えるとは夢にも思っていなかった。


 水の女王がアクアの背からピョイ☆と飛び降りて、感激に打ち震える風の女王に向かって両手を広げながら突進していく。

 そして風の女王もまた勢いよく水の女王の胸に飛び込んでいった。


『風の女王ちゃん、ずっとずっと貴女に会いたかったわー!』

『……ワタシも……ワタシもお姉ちゃんに会いたかったーーー!うわぁぁぁぁん!』


 風の女王の瞳はあっという間に潤み始めて、今度は己の歓喜のために涙をポロポロと流す。

 水の女王の胸の中で泣きじゃくる風の女王。

 その感動の対面を見たライトとレオニスの涙腺が、またも緩んで大決壊を起こしている。


「遠く離れた姉妹の再会……ううッ、何て感動的なんだろう……」

「全くだ……兄弟姉妹ってのは、どんなに遠く離れていても思い合うもんだもんなぁ……」

「水の女王様も風の女王様も、こうして初めて会うことができて、本当に良かったねぇぇぇぇ」

「ああ、俺も貰い泣きしちまうぜ……頼れる兄弟ってのは、本当にいいもんだよなぁ」


 滝の如き涙をダバダバダーと流す人外ブラザーズ。どうやら水の女王と風の女王の感動の対面に、二人して思いっきり貰い泣きしているようだ。

 本日二回目の号泣モードに、ラウルだけは動揺することなく徐に空間魔法陣を開く。

 そして今度は大判のおしぼりを二枚取り出し、ライトとレオニスに手渡した。

 二回も間を置かず大泣きすれば、さぞや目が腫れるだろう、というラウルの細やかな配慮である。


 ラウルからおしぼりをもらった二人は、ぐしゃぐしゃになった顔をぐしぐしと拭いつつ綺麗な面で目を覆い冷やしている。

 二人して「はぁー……気持ちいーい……」と呟く様はなかなかに間抜けだが、人情厚いこの兄弟は決して今後も変わることはないだろう。

 そして人外ブラザーズとともに、アクアとゼスもまた二人の女王達の熱い抱擁を温かく見守っていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 湖底神殿組と辻風神殿組の感激の対面も済み、改めて皆でお茶会をすることにした。

 レオニスが急遽もう一組テーブルを出し、ラウルもアクア用のミートボールくんや水の女王の分の飲み物などを追加していく。

 アクアとゼス、そして水の女王と風の女王が隣同士に座り、皆嬉しそうに会話を交わしている。


『へー、アクア君もライト君達に孵化を手伝ってもらったんだね。僕も彼らのおかげで、この間ようやく生まれることができたんだ』

『うん、僕がいる湖底神殿はちょっと複雑でね。水の女王の居場所から少し離れているんだ。そのせいで僕もずっと湖底神殿で卵の中にいたままひとりぼっちだったんだけど。ライト君が見つけてくれて、こうして外に出られるようになったんだ』

『風の女王ちゃんは、代替わりしてからそんなに経っていないのよね?』

『うん、前の前の夏に女王になったばかりなの。水のお姉ちゃんは、女王になってどれくらいになるの?』

『うーーーん……夏だけで百回は過ごしたと思うけど……百回を過ぎた後は、もうめんどくさくなっちゃって数えるのをやめちゃった』

『じゃあ水のお姉ちゃんは、百年以上も女王をし続けてきたのね!すっごく尊敬するわ!』

『ぃゃぁ、それ程でも……』


 女王達と神殿守護神達の和やかな会話が続く。

 美味しいおやつを食べながらの会話は、ますます弾み楽しさを増していく。

 互いの身の上話やら相棒の守護神自慢トークやら、話は尽きることがない。

 そして生粋の女王ファンのライトは、目の前で繰り広げられている奇跡のツーショットに『ああッ!今こそスマホが欲しい!写真撮りまくりたい!』と思いながら悶絶していた。


 そうして楽しい時間を過ごすこと約一時間半。

 時刻は午後五時を回り、辻風神殿の中に差す陽の光に赤さが増してきていた。


「……さて、外は日が暮れ始めてきたし、そろそろ帰るか」

『まぁ、もう帰っちゃうの? ……でも、そうね、水のお姉ちゃんもアクア様も、おうちに帰らなくちゃいけないわね』

『そうだね。神殿から長く離れるのは、女王にとっても神殿守護神にとってもキツいことだものね』


 レオニスの帰宅宣言に、風の女王が一瞬だけ寂しそうにするもすぐに納得する。

 絶対的な拠点である己の神殿から長く離れることの難しさは、風の女王自身も身に沁みて知っている。

 湖底神殿組は、それを押してこの辻風神殿に来てくれた。それだけでも本当にありがたいことなのだ、ということを風の女王もゼスも理解していた。


『風の女王ちゃん、そんなに気を落とさないで。またアクア様といっしょに遊びに来るから』

『ホントに!? 水のお姉ちゃん、ありがとう!』

『もし良ければ、風の女王ちゃん達もいつか私達のいる目覚めの湖に遊びに来てね?』

『もちろん!目覚めの湖がどこにあるかもよく分からないけど、その時はレオニスに案内してもらうわ!レオニス、よろしくね!』

「ン? ……おう、任せとけ。ただし、風の女王もバルトもまだ生まれてからそんなに経ってないからな。長時間のお出かけをするには、どっちももっと大きく成長してからな」

『分かったわ!』


 風の女王を気遣う水の女王の言葉に、風の女王が花咲くような笑顔で応える。

 風の女王は女王に就任してからまだ日も浅いので、女王としての知識が乏しく力も蓄えきれていない。

 今は青龍ゼスの誕生により、辻風神殿を離れて空の散歩を楽しむくらいはできるようになったが、それでも辻風神殿があるコルルカ高原を長く離れるのはまだ厳しいだろう。

 レオニスの忠告は、そうした意味合いを含んでのものだった。


 お茶会を楽しんだテーブル類はそのままにしておき、ラウルが使用した食器類だけを手早く空間魔法陣に仕舞う。

 そうして片付けを終えたライト達は、全員で辻風神殿の外に出た。


『バルト君、風の女王、今日は君達に会えて本当に嬉しかったよ』

『僕の方こそ、とても楽しいひと時を過ごさせてもらったよ』

『私もアクア様のおかげで、風の女王ちゃんやバルト様と会えてとっても嬉しかったわ!アクア様、ありがとうございます!』

『どういたしまして。ぃゃー、レオニス君に呼ばれた先が辻風神殿だとは思っていなかったからさ? 辻風神殿には風の女王もいるのが見えたし、これは絶対に水の女王も呼んでこなくちゃ!と思ってね、一旦目覚めの湖に帰って水の女王を連れてきたんだ』

『さッすがアクア様!やっぱりアクア様は偉大ですわ!』


 ゼスとアクア、そして水の女王と風の女王が明るく別れの言葉を交わす。

 彼らの表情に寂しさや悲しさは微塵もない。また必ず会おうと約束したのだ、お世辞でも社交辞令でもない、精霊の女王とその守護神が交わした約束は絶対に守られることを、彼ら彼女らは本能で知っているのだ。


 そしてゼスがレオニスの方に身体を向き直し、改めて礼を言う。


『レオニス君、今日も本当にありがとう。金鷲獅子のアウルム君だけでなく、湖底神殿のアクア君や水の女王ともこうして会えるなんて、本当に夢のようだよ』

「どういたしまして。アクアと水の女王は、他の女王達と比べても移動がしやすい方だからな。特にここは川も流れているし、アクアを呼ぶ水場としても最適だったからな。……つーか、アクア、この場所は覚えたか?」

『うん、大丈夫だよ。これからは、ここに来ようと思えばいつでも来られるよ』

「そっか、なら良かった」


 ゼスの礼の言葉に、レオニスも快く応える。

 そしてレオニスに呼ばれてここに来たアクアが、この場所を『フラクタル川・辻風神殿前』としてしっかりと覚えたことを確認して安堵している。

 湖や泉などと違い、川は長くて特定の地点を移動ポイントとして捉えにくいという難点がある。

 しかし、アクアは水神アープ。水に関してできないことなど、アクアには一つも存在しないのだ。


 水の女王がアクアの背に乗り、ライト達もふわり、と宙に浮きフラクタル川の水面の上に移動する。

 ライト達もアクアからもらった水神の鱗のおかげで、フラクタル川から瞬時に目覚めの湖へと帰還することができるのだ。


「じゃ、またな」

「バルト、風の女王様、また来ますねー!」

『風の女王ちゃん、バルト様、またお会いしましょうねー!』

『水のお姉ちゃん、アクア様、どうぞお元気でーーー!』

『皆、さようならー。いつでも遊びに来てねー』

『バルト君達も元気でねー』


 ライトや水の女王、そして風の女王がブンブン!と大きく手を振りながら大きな声でさようならを言い、ゼスもライト達に向けて再会を願う言葉をかける。

 そうして一頻り言葉を交わしたライト達が、ゆっくりとフラクタル川の水面に入っていく。

 ライト達の身体が全部川に入り姿が見えなくなるまで、風の女王とゼスはずっと手を振りながら見送っていた。

 前話のアクアに続き、水の女王も登場です。

 ぃゃ、ホントは水の女王の登場なんて全く予定していなかったんですが。アクアがレオニスに呼ばれて辻風神殿組と対面したというのに、ここで水の女王を除け者にするのはさすがにないかなぁ……と思いまして。

 だってだって、アクアから『風の女王と青龍のゼス君に会ったよー』なんて後から聞かされたら、ねぇ? 絶対に水の女王が拗ねちゃうー><


 ここでちゃんと登場させとかないと、間違いなく水の女王ちゃんから『酷い!どうして私も呼んでくれなかったのよ!ッキーーー!!』とものすごーく怒られるのが目に見えたので。そうなる前に、作者は手を講じた訳です、ハイ(´^ω^`)

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