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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ピッカピカの三年生一学期

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第1390話 食後の運動という名の様々な思惑

 レオニスとアウルムの大事な話も終わり、皆で一息ついていた時。

 徐にレオニスが腕を上に伸ばし、背伸びしたかと思うとライトに声をかけた。


「ライト、軽く食後の運動でもするか?」

「うん!ラウルもする?」

「いや、俺は遠慮しとく。帰りに備えてもうちょい休んでおきたいんでな」

「そっかー、じゃあバルト達といっしょにゆっくり休んでてね!」

「おう、ご主人様達も怪我とかしない程度にな」

「うん!いってきまーす!」


 レオニスの誘いに喜んで乗るライト。

 ラウルも誘ってみたのだが、素気無く断られてしまった。

 ラウルがライトの誘いを断るとは珍しいが、ラウルに言わせれば『帰りも二時間飛ぶんだから、食後の運動なんてする必要あんのか?』といったところである。


「じゃ、とりあえずライトが鬼で俺が逃げる方な」

「レオ兄ちゃんと追いかけっこなんて久しぶり!絶対に捕まえるぞー!」

「何だとぅ? 俺だってそう簡単に捕まってやる訳にはいかんからな? 絶対に逃げきってやるwww」


 レオニスとライトがともに立ち上がり、ふわり、と宙に浮いた。

 そしてレオニスが、鷲獅子達の方に目線をちろり、と向けた。


「お前らも、俺達と遊びたかったらいつでも混ざれよー」

「うん!いつでも大歓迎するからね!」


 人外ブラザーズの呼びかけに、鷲獅子達が胡乱げな視線を送る。

 しかし、ライト達は気にすることなくゆっくりと上空に飛んでいく。


「ねぇ、レオ兄ちゃん、これは普通の追いかけっこ? 魔法とか使っていいの?」

「魔法? バンバン使っていいぞ」

「ヤッター!……あ、ラウル、一応時間を見ててくれる? そうだなぁ、三十分したら教えて!」

「了解ー。つーか、三十分も追いかけっこすんのか?」


 レオニスから魔法使用OKが出たことに、ライトが大喜びしている。

 そして時間を計るようライトに頼まれたラウルが、三十分と聞いてびっくりしている。

 普通に考えて、三十分も追いかけっこをしたらヘトヘトに疲れそうなものだ。


 しかし、この人外ブラザーズに関してはこれらの常識が当てはまることなどない。

 むしろ三十分というのは良心的な方で、最初からちゃんと区切りをつけておかなければ一時間でも二時間でも、それこそエクスポーションをがぶ飲みしてでも一日中遊び続けるであろう。


「さて……ライト、お前の実力がものすごいことは、ラグーン学園の運動会でも見たが……今のお前の力がどれ程のもんか、改めて見せてもらおうじゃないか」

「うん!ぼくだって毎朝の修行を欠かさずこなしてきてるもん!絶対にレオ兄ちゃんに追いついてみせる!」

「その意気だ。じゃ、俺が逃げたら三秒後にライトも動き始めていいぞ」

「分かった!……一、二、三!」


 レオニスが勢いよく飛び、その三秒後にライトが逃げるレオニスを追いかけ始めた。

 二人ともロケットスタートし、のっけからかなりの全力モードで空を駆け回る。

 ライトの実力把握のためにライトを煽ったレオニスだが、予想以上の速さに若干焦り始めた。


「うおッ!思ってたより早ぇじゃねぇか!」

「さっきも言ったでしょ!ぼくだって毎朝修行頑張ってるって!」

「こりゃ俺も本気を出さねぇと、冗談抜きで早々に捕まっちまうな……ここからは本気でいくぞ!」


 レオニスはそう言うと、飛行速度をさらに上げた。

 ギュン!と飛ぶ勢いを増したレオニスに、ライトもニヤリ、と笑いながらマイページを開く。

 ライトはスキル欄を開き、敏捷アップのバフスキル【俊足】を素早く五回かけて敏捷を50%アップした。

 ライトはレオニスの勢いに突き放されることなく、懸命に食らいつき続ける。


 コルルカ高原の空を縦横無尽に駆け回るライトとレオニスを、ラウルが見つめながら呆れたように呟く。


「ホンット、うちのご主人様達は元気が有り余ってんな……」

『うむ、元気なのは良いことぞ。もっともあれは、もはや人族の戯れには見えんがな』

「全くだ。帰り道で疲れ果てなきゃいいんだが……ま、あの大小二人のご主人様のことだ、何とかなるだろ」

『其の方も、何とも規格外な主人を持ったものだのぅ』


 やれやれ、といった様子のラウルに、横にいたアウルムがくつくつと笑いながらラウルを労う。

 そんなラウル達の少し後ろにいるゼスや風の女王も、上空で繰り広げられている壮絶な追いかけっこをぼんやりと眺めていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



『レオニス君もライト君も、すっごく早く飛べてるよねー……あれは、今の僕では追いつけなさそう……』

『バルト様もそう思います? ワタシももしあの追いつけっこに混ざったら、とっとと捕まっちゃう自信がありますわぁ……』

『僕達の大恩人は、本当に偉大だねぇ』

『ですねぇ。でも……』


 ぽけーっ……と空を眺めるゼス。

 風を司る青龍が、人外ブラザーズの追いかけっこを見て白旗を揚げるとは驚きだ。

 しかし、ゼスはまだ生まれて四ヶ月しか経っていない。

 如何に強大な力を持つ神殿守護神かつ四神の一角であろうとも、生後四ヶ月の未熟な身で人外ブラザーズに勝て!という方が無体というものだ。


 そんなゼスに、風の女王が熱い眼差しを向けながら声をかけた。


『レオニス達のあの早さは、バルト様の鱗の力を取り込んだおかげなのだから、やっぱりバルト様が偉大なのですわ!』

『フフフ……風の女王は僕に甘いねぇ』

『もちろん!バルト様はワタシの生き甲斐ですもの!』

『ならば僕も、風の女王の期待に応えられるよう日々精進しなくちゃね』


 ニコニコ笑顔でゼスを崇め讃える風の女王。

 生き甲斐とまで言われるとさすがに少々愛が重い気もするが、ゼスがそれを厭うことなどない。

 ゼスも風の女王と同じで、河原にうち捨てられたまま孤独に耐えてきた。

 長きに渡り孤独に耐えてきた者同士、互いが互いを支え合っているのである。


 するとここで、一頭の鷲獅子が空に飛び上がった。

 他の鷲獅子も見るからにウズウズしており、一頭が飛び出した後は我も我も!とばかりに次々と鷲獅子達が飛んでいく。

 彼らの行き先は、もちろんレオニス。ライトとの追いかけっこに自分達も混ざる気満々なのだ。


「あッ!鷲獅子さん達が来た!」

「グルルルルァ!」

「お、ようやく来たか!何頭来ようと絶対に捕まってやらんからな!」

「キエエェェッ!」


 ライト達の追いかけっこに、次々と参戦し群がる鷲獅子達。

 ここ最近、足繁くこの地に来る鷲獅子騎士団ともよく追いかけっこをして遊んでいる。鷲獅子達にとって、この追いかけっこがまた実に楽しいのだ。

 故に鷲獅子達は、ライト達の追いかけっこを見ているだけでは堪らず自ら飛び込んだのである。


 レオニスとしては、鷲獅子達が追いかけっこに混ざるのは大歓迎だ。

 アルフォンソ達鷲獅子騎士達じゃないが、レオニスだって鷲獅子達と交流を持てるものなら持ちたい。強い者達との研鑽は、レオニスが求めて止まないものの一つなのだ。


 レオニスの思惑通りに事が運んだ格好だが、その後はあちこちでド派手な魔法がバンバン飛び交う戦場と化した。

 鷲獅子達が繰り出す火球や水柱を、ライトは手で弾き返しレオニスは蹴散らし霧散させる。

 そして返す刀で雷魔法や風魔法で迎撃するライト達。

 まるで特撮映画の見せ場のような派手なやり取りに、ラウル達はもはや突っ込む気にもならなかった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そうして三十分程が経過しただろうか。

 鷲獅子達はヘロヘロになり、一頭、また一頭と戦線離脱してアウルムのもとに戻る。

 最後には再びライトとレオニスの一騎打ちになり、ライトの急襲をレオニスが紙一重で躱すという激しい攻防が繰り広げられていた。


「ハァ、ハァ……ライト、思った以上にやるじゃねぇか」

「ハァ、ハァ……レオ兄ちゃんを、捕まえるまでは……諦めないッ!」


 レオニスの言葉に、ライトがクワッ!と目を大きく開き、渾身の突撃を繰り出した。

 その早さは、もはやラウルの目にも映らない。

 しかし、レオニスも負けてはいない。レオニスの身体がフッ……と消えたかと思うと、ライトの突撃を躱して下に逃げていた。


 するとここで、地上にいるラウルが大きな声でライト達に呼びかけた。


「おーい、ご主人様達よ、三十分経ったぞー」

「……お、時間切れか。ライト、あっちに戻るぞー」

「あ"ーーーッ!結局レオ兄ちゃんを捕まえられなんだーーー!悔しいーーー!」

「いやー、良い運動になったな!」


 ラウルのタイムアップ宣言に、レオニスは高笑いしながら地上に降りていき、ライトは頭を抱え天を仰ぎながら悔しがる。

 ライトはバフスキルの【俊足】を最終的には二十回、つまりは上限の200%まで上げていた。

 それでも結局はレオニスを捕まえることができなかったのだ。ライトが悔しがるのも当然である。


 そしてレオニスの方は、ラウルのタイムアップに心から安堵していた。

 あのビースリーを生き抜いてきたライトだ、その実力は生半可なものではないだろうことも容易に想像がついていた。

 そんなライトの実力を計るつもりで、食後の運動と称してライトに追いかけっこをしようと持ちかけたのだ。


 しかし、ライトが見せた実力はレオニスの予想をはるかに上回るものだった。

 レオニスが本気を出して飛んでも、距離を大きく引き離すことはできなかったし、何度も肉薄しては本当に捕まりそうになった。

 このまま何時間も追いかけっこを続けていたら、最後には捕まっていただろう。

 こりゃ俺もうかうかしちゃいられんな……今以上に強くなるよう、修行し直さなきゃならん……

 レオニスはそんなことを考えながらも、その顔には子供の成長を喜ぶ父親のような笑顔が浮かんでいた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「さて……食後の腹ごなしもしたことだし。ぼちぼち帰るとするか」

「アウルムさん、バルト、風の女王様、お待たせしてすみません!」

『いやいや、良いものを見せてもらったよ。それに、ライト君達が追いかけっこをしている間に、アウルム君ともたくさんお話しできたし』

『ええ!アウルム君はバルト様ともよく気が合う、とても素敵な紳士ね!』

『うむ、我も其の方達が戯れている間、ゆったりと寛いでいたので問題はない。ラウルが吾の身体をブラッシングしてくれたのでな』


 食後の運動を無事終えて、そろそろ帰宅するかという話になった。

 三十分もの間、バルトやアウルムのもとを離れ遊んでいたことを詫びるライト。

 しかし、ラウル達はラウル達でそれなりに楽しい時間を過ごしていたらしい。

 ゼスと風の女王はアウルムのことを君付けで呼んでいるし、特にラウルにブラッシングをしてもらったというアウルムは実にご機嫌であった。


 そう言われて改めてアウルムの身体を見ると、彼の黄金色の毛並みがふわふわサラサラになっていて、いつにも増して煌めいていた。

 ラウルの功績を知ったライトが、ラウルに向かって声をかける。


「そうなの? ラウル、ありがとうね!」

「どういたしまして。三十分も時間があったら、アウルムやバルト達とのんびり話しながらブラッシングする方が有意義だしな。おかげで俺も皆とゆっくりしながら話を楽しめたよ」

「そっか、それは良かった!」


 ライト達は雑談に花を咲かせながら、敷物やら使用した食器などをテキパキと片付けていく。

 ちなみにレオニスはその間、追いかけっこでヘロヘロになった鷲獅子達に労いのビッグワームの素を一頭につき一個づつ与えていた。


 そうして片付けや労いを終えたライト達は、改めてアウルムに挨拶をした。


「アウルム、今日もいろいろとありがとうな」

『うむ。こちらこそ、こやつらの遊び相手になってもらって助かった。美味い昼飯も馳走になったしの』

『アウルム君、今日は君と友達になることができて本当に嬉しいよ。これからも、時々ここに遊びに来てもいいかな?』

『もちろん!吾が友バルトよ、吾はいつでもバルトと風の女王の来訪を歓迎するぞ』

『アウルム君も、もっと元気になったらワタシ達の辻風神殿に遊びに来てね!』

『それは楽しみだ。吾は精霊達の神殿に入ったことがないのでな、一日も早く辻風神殿に遊びに行けるよう療養に努めるとしよう』


 レオニスやバルト、そして風の女王が次々とアウルムに声をかけては和やかに言葉を交わす。

 そうして別れの挨拶を終えたライト達は、コルルカ高原奥地を後にしてフラクタル峡谷に戻っていった。

 サブタイ通りの、昼食後の様々な思惑とそれぞれの過ごし方です。

 ホントにねぇ、ラウルが頭の中で考えていたように、アウルムのところから辻風神殿に帰るだけで二時間も飛び続けなきゃならないんだから、食後の運動なんてしなくていいのに!とか思いますでしょう?(゜ω゜)

 そこは額面通りではなく、主にレオニス側に様々な思惑があったりします。

 その思惑とは作中でも書いた通り、ライトの実力を改めて確認しておきたかったのと、大型の鷲獅子達との触れ合い。

 この二つがレオニスの密かな目的だったのですね(・∀・)


 ちなみに作者は食後の運動なんてしません。つか、食後どころか普段から運動なんて全くしません。

 ホントはねー、健康のためには少しくらい運動するべきなんですけどねー(=ω=)

 作者は喘息持ちであまり運動ができないのもありますが、もともと運動嫌いなので。徒歩三分距離の近所の711に行くのもいちいち車を出すモノグサさんなのです(´^ω^`)

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