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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ピッカピカの三年生一学期

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第1389話 レオニスの誘いとアウルムの固辞

 アウルム達鷲獅子がビッグワームの素を美味しそうに頬張る中、ライトがレオニスに向けて声をかけた。


「レオ兄ちゃん、ぼく達もお昼ご飯にしない? ぼくもうお腹ぺこぺこー」

「そうだな、俺達も普通に昼飯時だもんな。よし、そしたら皆でここで飯にするか。ラウル、支度するぞー」

「了解ー」


 ライトのお昼ご飯の催促に、レオニスも頷きつつ同意する。

 そしてラウルとともに空間魔法陣から敷物やら食べ物を出し、昼食の準備をちゃちゃっと進めていく。

 敷物を四枚くっつけて広々とした場所を確保し、そこにゼスや風の女王もちょこんと座った。


「いッただッきまーーーす!」

「「『『いッただッきまーーーす!』』」」


 皆で食事の挨拶をし、敷物の上にずらりと並べられたラウル特製のご馳走を頬張る。

 今日はレオニスだけでなく、ライトもハンバーガーや唐揚げを結構な勢いでパクパクと食べている。

 片道二時間の空の旅の最中では、飛行に必要なMPを回復のためのアークエーテルを飲んでいたが、それだけではやはり腹は膨れないのだろう。


 一方ゼスと風の女王は、おにぎりやらサンドイッチやら初めての食べ物に舌鼓を打っている。

 最初は初見の食べ物におっかなびっくりといった様子だったが、ライト達がそれらをもりもり食べているのを見てパクッ☆と一口食べて、すぐに気に入ったようだ。


『この、オニギリ、というの? とっても美味しいわね!』

『手に持って気軽に食べられるのがいいね』

『何よりこの飲み物にもとっても合うのがいいわ!』

「そ、そうか? 俺は普通のお茶の方が好きだがな……」

「……ま、美味しく食べられているならな、それが一番だ」


 おにぎり片手に時折ドリンクをグビッ!と飲む風の女王。

 その飲み物とは、もちろん海色のぬるぬるドリンクである。

 炭酸ラムネ味のドリンクは、果たしておにぎりに合うのか。甚だ疑問であり、現にそれを聞いたライト達が首を傾げている。

 しかしラウルが言うように、飲み食いしている当人達が大満足しているのなら問題ないだろう。


 そうしてライト達が昼食を食べ終える頃には、アウルム達鷲獅子もビッグワームの素を食べて大満足していた。

 ちなみに今回レオニスが鷲獅子達に振る舞ったビッグワームの素は、アウルムに十個、他の大型鷲獅子達に三個づつ。合計百五十個以上は消費した勘定だ。


『ぷはー……満腹満腹。このビッグワームの素は、いつ食うても美味だのぅ!……ゲプー』

「「「グルルルルァ!」」」


 軽いゲップを漏らしながら満足しているアウルムに、他の鷲獅子達も追随するように応える。

 するとここで、レオニスがアウルムに話しかけた。


「なぁ、アウルム。さっき、ここら辺は食糧事情がよろしくないって言ってたが……普段はどうしてるんだ?」

『いつもはこの者達が、近辺にいる蜂や虫を獲ってきては吾の前に持ってきてくれるので、それを食うておる。ちなみに猿は毛皮が邪魔な上に、肉は固く生臭くて食えたものではない。目玉は水分補給に多少役立つがな』

「そ、そうなんか……やっぱこの辺にいる魔物だけじゃ、アウルムの回復の足しにはならなさそうだな……」


 レオニスの問いかけに、アウルムは渋い顔をしつつ答える。

 レオニスも現役冒険者だから知っているが、この辺りにいる魔物は捕食に向かないものが多い。

 大きな猿型魔物のシャドウエイプは毛むくじゃらの皮と生臭さがネックで、単眼蝙蝠の亜種であるイービルアイは肉と呼べる部分がほとんどない。

 故に蜂=蜂型魔物のキラーワスプや、虫=ビッグワームの亜種バレンワームが主食となっているという。


 しかし、蜂や虫では思う程栄養がつかなさそうではある。

 それを心配してか、レオニスがアウルムにとある提案をし始めた。


「なあ、アウルム。もしアウルムさえ良ければ、カタポレンの森で療養してみないか?」

『カタポレンの森というと……其の方達が住んでいて、ラーデが療養しているという魔力に満ちた森林のことか?』

「そう。あの森は、ラーデが所望していた龍脈に勝るとも劣らぬくらいに、常に魔力に満ちている。そこでアウルムも療養すれば、弱りきった身体もきっと早く良くなるだろう」

『………………』


 レオニスの魅力的な提案に、アウルムはしばし無言になる。

 確かにレオニスの言う通りで、この痩せこけた不毛の高地にしがみつくよりも、カタポレンの森に移住して療養した方が余程アウルムの身体に良いだろう。

 アウルムはカタポレンの森を一度も見たことはないが、彼の親友であるラーデからその有用性を聞かされたので知っている。


 だが、アウルムは何故か首を縦に振らない。

 本当ならすぐにでも飛びつくくらいに良い話なのに。

 未だ無言で思案するアウルムに、レオニスがさらに語りかける。


「アウルム一頭でカタポレンの森に引っ越しするのが不安か? あっちにはラーデが常時いるから、寂しいと思うこともないぞ? もちろん俺達だって、アウルムが快適に過ごせるよう手伝おう。寝床はもちろん、食べるものだって俺達が毎日用意してやれるし」

『……それはとても魅力的だし、ありがたいことなのだが……今はやめておこう』

「何故だ? もし理由があるなら、聞いてもいいか?」

『………………』


 目を閉じ首を小さく横に振りながら、アウルムがレオニスの提案を断る。

 そして、レオニスに断る理由を尋ねられたアウルムが視線を移す。

 その視線の先には、野生の鷲獅子達がいた。

 レオニス達の話を理解してか、彼らは非常に不安そうな顔をしていた。


『確かにここは、草木もろくに生えぬ不毛の地。其の方が言う通り、ラーデのいる森に移れば吾の身体も疾く良くなるであろう。しかし……吾には吾を慕ってくれるこやつらがいる。鷲獅子の王たる吾が、可愛いこやつらを置き去りにして他の地に移る訳にはいかん』

『それにな、今はここに居るのもそう悪いことではないのだぞ? こやつらは吾のために懸命に蜂や虫を獲ってきてくれるし、其の方もよく知る鷲獅子騎士団の連中も吾に良くしてくれる。あの連中も、己らのための鍛錬と称しつつ、常に吾の身体を気遣ってはたくさんの供物を出していってくれるのだ』

「「「………………」」」


 静かに語るアウルムの言葉に、ライト達は全員無言で聞き入っている。

 アウルムの言うことは全て事実で、自分を慕ってくれる他の鷲獅子達を置いて他所の土地にいく訳にはいかないのだろう。

 それに、ここに足繁く通ってくる鷲獅子騎士団の連中も、もしこの地にアウルムがいなくなったらものすごくがっかりするはずだ。

 特にアウルムを尊敬して止まない団長のアルフォンソや副団長のエドガーなど、それはもう年単位で立ち直れない程に落胆するに違いない。

 そのことはレオニスでも容易に想像がついた。


『吾はこんなにも不甲斐ない王だがな。それでも……今でも吾を王と認め、吾を慕い続けてくれる者達がいる限り、吾が生まれ故郷であるこの高地を離れる訳にはいかんのだ』

「……そっか。そうだよな。ここはアウルムの生まれ故郷で、そう簡単に離れる訳にはいかんよな」

『うむ。分かってもらえたか』

「ああ。無粋なことを言ってすまんな。今の話はなかったことにしてくれ」


 アウルムの覚悟を知ったレオニスが、早々にカタポレンの森への移住話を撤回した。

 確かにカタポレンの森に移住すれば、アウルムの身体は早く良くなるだろう。

 しかし、この地に様々な心残りがあるならそれは無理強いすべきではない。

 例え療養期間が長引こうとも、今ある環境でアウルムが満足しているならここで療養を続けていくのがベストなのだ。


 アウルムの勧誘をスッパリと止めたレオニスに、アウルムが戯けたように話しかける。


『……でもまぁな? 吾の身体が完全に元通りになって、ラーデのやつも復活したら、いずれはラーデとともに世界中を見て飛び回る予定だがな!』

「そういやラーデとそんな話をしてたっけな。それが何年後になるかは分からんが、そん時には俺も連れてってくれ」

『おお、いいとも!其の方なら、吾とラーデの旅にもついてこれようぞ!』


 今はこの地を離れることはできないが、元気になったら子分達を置いて皇竜とともに世界中を旅するぞ!というアウルム。

 そんなお茶目なアウルムの物言いに、レオニスが速攻で参加表明をする。

 そしたらカタポレンの森の警邏はどうすんの?という話になりそうだが、これはきっとレオニス個人の願望を口にしただけなのだろう。

 それを実現させるかどうかは別として、願いを口にするだけならタダなのだから。


 そして、世界中を旅するというレオニスの言葉に、今度はライトが敏感に反応した。


「あッ、そしたらぼくもぼくも!レオ兄ちゃんといっしょについていっていいですか!?」

『ぬ? 其の方も吾らの旅についてきたいと申すか? もちろん良いぞ、旅の友は多い方が楽しいからな!』

「ありがとうございます!ぼくもその日が来るのを楽しみにしてますね!」

『うむうむ、来たる日のために今から研鑽に励むが良いぞ』

「はい!」


 今から意気込むライトに、アウルムが励ましの言葉をかける。

 こんな小さな子供が何を馬鹿なことを言っているのか、などと嘲ることなく真摯に受け止めるアウルム。彼の王としての器が大きいことがよく分かる。


 ライトがレオニスとともに、ラーデやアウルムと本当に世界中を旅することができるかは、今のところ全く分からない。

 ラーデ達の身体の回復が早ければ、療養のために留まっていたカタポレンの森を旅立つ日も早まるだろう。

 それに、ライトはまだラグーン学園初等部三年生。中等部を卒業するまであと四年はかかる。

 ライトが己の意思で好きな場所にいけるようになるまで、少なくとも四年は我慢しなければならない。


 だが、ラーデ達の旅立ちの時には間に合わなくとも、四年後にラグーン学園卒業してから合流したっていい。

 ラーデ達ならきっと、遅れて合流したライトを仲間外れにすることなどないだろう。

 今から四年後というかなり先の未来の話だが、冒険者になることを夢見るライトにとっては今から大きな楽しみと目標ができた瞬間だった。

 美味しい昼食を食べた後の、レオニスからの真面目な提案です。

 その提案は本当にアウルムの身を案じてのことで、これ以上の好条件はそうないだろうことはアウルム自身もよく分かっています。

 ですが、自分を慕ってくれる可愛い子分達を置き去りにするのはね、アウルムでなくとも忍びないですよねぇ。

 もっとも、元気になったら親友ラーデとともに諸国漫遊の旅に出る気満々なんですけどねwww(´^ω^`)

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